前回、熱血柔道漫画「イガグリくん」の作者福井英一さんは手塚治虫先生の強力なライ
バルだとお伝えしました。
そうなると、手塚先生のもう一人のライバル横山光輝さんについても書いてみたくなっ
ちゃいました。
そこで、気になったのが、私が読んだ「イガグリくん」が入っていた冒険活劇大ロマン
というシリーズの中の横山光輝著「魔剣列剣」です。
しかし、この本も「イガグリくん」同様、本棚に置いたまま、ずっと読んでいなかった
のです。
理由は、横山ファンじゃないというのもあるのですが、簡単に説明すると時代劇が苦手
だからです。
ファッションだって、今と全然違うし、言葉遣いも、「恐縮至極に存じます」とか、す
っごく固苦しいでしょう?
それに、お侍って、普段から、人殺しの道具を腰にぶら下げていて、物騒じゃないです
か。
だから、黒澤明監督の映画ならともかく、それ以外はまったくと言っていいほど興味が
なかったんです。
それより私は白馬に乗った王子さまが、囚われの身のお姫さまを助けようと、様々な困
難を乗り越え、見事、ハッピーエンドで幕を閉じるお話のほうが、断然、魅力を感じてい
たのです♪
あ!
だけど、そんな私でも、時代劇ごっこというか、悪代官ごっこは好きな人とよく遊んで
いましたっけ?
例えば、こんなふうに。
悪代官(好きな人)
「ヒッヒッヒ、おぬし、見るからに美味しそうなカラダをしとるのう。
どうじゃ、わしに抱かれぬか?
嫌とは言わせぬぞ。」
私
「嫌です!私は愛する夫がいる貞淑な人妻なんです。だから、私のカラダは夫だけのも
のなの。私に近づいたら、承知しないから!」
悪代官
「何をぬかす。だったら、こうしてくれるわ!」
そう言い放った次の瞬間、悪代官は、私の着物の帯に手をかけ、思いっきり、帯を引っ
ぱるのです。
すると、そのはずみで、私のカラダはクルクル回り、「あ~れ~」と言いながら着てい
るものが、全部ほどけて、あられのない姿になり、悪代官(好きな人)にじっくり、いい
ようにされるってわけ♪
もしかしたら、「魔剣列剣」にも、それと同じ場面が出てくるかも?
そうしたことを期待しつつ読むことにしました♪
しかし、読み進めていくうちに、あれ?これは、手塚先生の「リボンの騎士」に、ちょ
っと似てるなと気づいたんです。
この物語は、天下の刀工と言われた白雲が、越中富山之守に一振りの刀を作れと命じら
れ、二振りの刀を作ったことに端を発します。
その二振りの刀は、当の白雲でさえ、ほれぼれするほどの出来だった。
ところが、その素晴らしい出来栄えに、目を見はっていた時、突如として、凄まじい嵐
が吹き荒れ、天地を圧するかと思わんばかりの雷鳴が轟き始めたのだ。
しかし、白雲が刀を鞘に収めた途端、荒れ狂っていた嵐は急にピタッと止んでしまうの
だった。
その後、刀を抜くたびに嵐は起こったので、白雲は、その刀が嵐を呼ぶことを、はっき
り悟るのだった。
すると、もう一振りの刀も嵐を呼び起こすのだろうか?
おおっ!
なんと不思議、その刀を抜くと嵐が起こるどころか、たちまちしずめてしまった。
いかに嵐を呼ぶ刀を振り回しても、その刀を抜いていると、空はいつまでも青々と澄み
切っているのだ。
何という不思議な力を持った刀だろう。
白雲は、嵐を呼ぶ刀に、黒龍、嵐をしずめる刀に、白龍と名付けた。
その後、白雲は黒龍を持って、殿様のもとへ参上した。
殿様は、黒龍を見て、あまりの美しさにしばらくは口もきけなかった。
やがて、刀をじっと見つめているうちに、殿様の頭のなかに恐ろしい考えが浮かんだ。
「白雲を生かしておけば、ほかの大名にもこんな名刀を作ってやるかもしれない。殺せ
ば、もう刀は作られない。わしだけが、名刀の持ち主になる。」
そうして、白雲は無残にも殺されてしまったのだ。
その白雲を父に持ったのが、少年、夕日照之助であった。
照之助は、亡き父の敵を討とうと、山本竜馬、村雨次郎の協力を得て、忍者組織・白龍
党を結成し、越中富山之守が雇った人斬り新九郎や山彦族を、次々と追い詰めるのだが、
照之助の実の正体は男を装った乙女だった。
ね?
照之助って、「リボンの騎士」のサファイアそっくりの設定でしょう?
私は、この事実に、横山さんが、手塚先生の強力なライバルになり得た秘密が隠されて
いる気がしてきたのです。
というのも、数年前、私は野球漫画「グラゼニ」の原作者森高夕次さんが、NHKのイ
ンタビューで、ライバルについて、熱く喋ってるのを聞いたことがあるからです。
ところで、「グラゼニ」とは、「グラウンドには、銭が埋まってる」を略したもので、
ずばり、お金がテーマの野球漫画だったらしいです。
これ、昔のスポーツ漫画が好きな人はどう思うでしょう?
私は、スポーツマンに爽やかなイメージを期待してますので、ちょっとどうかしら?と
思わないでもないのですが、何でもプロ野球の選手や業界関係者にはただの夢物語でなく
、現実に近いという理由で、評判はよかったのだとか。
この「グラゼニ」は、ライバルについても描かれているらしく、森高夕次さんによると
、普通、ライバルは自分とあまりにもかけ離れた人とは成り立たないそうです。
例えば、プロ野球選手ですと、境遇や能力、健康状態や、年収など、自分に近いければ
、近いほど、人はライバル意識を持つらしいです。
そこで、手塚治虫先生と、福井英一さんです。
福井英一さんは、「イガグリくん」という柔道漫画の傑作で、人気を博していましたが
、手塚先生はスポーツ漫画が大の苦手でした。
だから、お二人はお互いに切磋琢磨して、才能を遺憾なく発揮するという意味での良好
なライバル関係を築くのは難しかったかもしれません。
その福井英一さんが、過労で倒れ、亡くなったのが、昭和28年だそうです。
その福井英一さんと入れ替わるようにして、横山光輝さんは、翌昭和29年に手塚先生
の前に、彗星のごとく現れるのです。
この事実だけでも、運命を感じませんか?
その後、横山光輝さんは昭和31年に、手塚先生が「鉄腕アトム」を描いている漫画雑
誌「少年」に「鉄人28号」の連載をスタートし、アトムの人気に肉迫していくのです。
そうして、お二人は、かたや電子頭脳を持った人間に近いアトムと、リモコン操作で動
く巨大ロボット鉄人28号という同じロボットもので、熾烈な人気競争を「少年」誌上で
、10年にも渡って繰り広げるのです。
そのほかも例を挙げれば枚挙にいとまがなく、横山光輝さんが、昭和46年に漫画雑誌
「希望の友」で歴史ものの「三国志」を描けば、手塚先生も翌昭和47年に歴史ものの「
ブッダ」を描いて、ともに大人気を博します。
さらに、横山光輝さんが、超能力少年の「バビル2世」を描けば、手塚先生も「三つ目
がとおる」を描き、横山さんが、昭和50年に久々に少女漫画を、週間少女コミックに「
フェニックス・クイーン」を描けば、手塚先生も負けてなるものかと言わんばかりに、同
じ昭和50年10月に同じく週間少女コミックに「虹のプレリュード」を発表するのです
。
こうして見ると、このお二人がいかに素晴らしいライバル関係を結んでいたかが分かる
ようです。
また、手塚先生は、ライバルの重要性を認識しておられたようで、アシスタントさんに
も、「早く一人前の漫画家になって下さい。そして、私のライバルになって下さい。」と
、常々、仰られていたとか。
手塚先生の創作の秘密は、良きライバルを持つことも、その一つだったのでしょうね?
ところで、「魔剣列剣」には、あれほど期待していた悪代官は登場しませんでした。
それだけが、ちょっぴり残念だったかな~・・・(苦笑)
バルだとお伝えしました。
そうなると、手塚先生のもう一人のライバル横山光輝さんについても書いてみたくなっ
ちゃいました。
そこで、気になったのが、私が読んだ「イガグリくん」が入っていた冒険活劇大ロマン
というシリーズの中の横山光輝著「魔剣列剣」です。
しかし、この本も「イガグリくん」同様、本棚に置いたまま、ずっと読んでいなかった
のです。
理由は、横山ファンじゃないというのもあるのですが、簡単に説明すると時代劇が苦手
だからです。
ファッションだって、今と全然違うし、言葉遣いも、「恐縮至極に存じます」とか、す
っごく固苦しいでしょう?
それに、お侍って、普段から、人殺しの道具を腰にぶら下げていて、物騒じゃないです
か。
だから、黒澤明監督の映画ならともかく、それ以外はまったくと言っていいほど興味が
なかったんです。
それより私は白馬に乗った王子さまが、囚われの身のお姫さまを助けようと、様々な困
難を乗り越え、見事、ハッピーエンドで幕を閉じるお話のほうが、断然、魅力を感じてい
たのです♪
あ!
だけど、そんな私でも、時代劇ごっこというか、悪代官ごっこは好きな人とよく遊んで
いましたっけ?
例えば、こんなふうに。
悪代官(好きな人)
「ヒッヒッヒ、おぬし、見るからに美味しそうなカラダをしとるのう。
どうじゃ、わしに抱かれぬか?
嫌とは言わせぬぞ。」
私
「嫌です!私は愛する夫がいる貞淑な人妻なんです。だから、私のカラダは夫だけのも
のなの。私に近づいたら、承知しないから!」
悪代官
「何をぬかす。だったら、こうしてくれるわ!」
そう言い放った次の瞬間、悪代官は、私の着物の帯に手をかけ、思いっきり、帯を引っ
ぱるのです。
すると、そのはずみで、私のカラダはクルクル回り、「あ~れ~」と言いながら着てい
るものが、全部ほどけて、あられのない姿になり、悪代官(好きな人)にじっくり、いい
ようにされるってわけ♪
もしかしたら、「魔剣列剣」にも、それと同じ場面が出てくるかも?
そうしたことを期待しつつ読むことにしました♪
しかし、読み進めていくうちに、あれ?これは、手塚先生の「リボンの騎士」に、ちょ
っと似てるなと気づいたんです。
この物語は、天下の刀工と言われた白雲が、越中富山之守に一振りの刀を作れと命じら
れ、二振りの刀を作ったことに端を発します。
その二振りの刀は、当の白雲でさえ、ほれぼれするほどの出来だった。
ところが、その素晴らしい出来栄えに、目を見はっていた時、突如として、凄まじい嵐
が吹き荒れ、天地を圧するかと思わんばかりの雷鳴が轟き始めたのだ。
しかし、白雲が刀を鞘に収めた途端、荒れ狂っていた嵐は急にピタッと止んでしまうの
だった。
その後、刀を抜くたびに嵐は起こったので、白雲は、その刀が嵐を呼ぶことを、はっき
り悟るのだった。
すると、もう一振りの刀も嵐を呼び起こすのだろうか?
おおっ!
なんと不思議、その刀を抜くと嵐が起こるどころか、たちまちしずめてしまった。
いかに嵐を呼ぶ刀を振り回しても、その刀を抜いていると、空はいつまでも青々と澄み
切っているのだ。
何という不思議な力を持った刀だろう。
白雲は、嵐を呼ぶ刀に、黒龍、嵐をしずめる刀に、白龍と名付けた。
その後、白雲は黒龍を持って、殿様のもとへ参上した。
殿様は、黒龍を見て、あまりの美しさにしばらくは口もきけなかった。
やがて、刀をじっと見つめているうちに、殿様の頭のなかに恐ろしい考えが浮かんだ。
「白雲を生かしておけば、ほかの大名にもこんな名刀を作ってやるかもしれない。殺せ
ば、もう刀は作られない。わしだけが、名刀の持ち主になる。」
そうして、白雲は無残にも殺されてしまったのだ。
その白雲を父に持ったのが、少年、夕日照之助であった。
照之助は、亡き父の敵を討とうと、山本竜馬、村雨次郎の協力を得て、忍者組織・白龍
党を結成し、越中富山之守が雇った人斬り新九郎や山彦族を、次々と追い詰めるのだが、
照之助の実の正体は男を装った乙女だった。
ね?
照之助って、「リボンの騎士」のサファイアそっくりの設定でしょう?
私は、この事実に、横山さんが、手塚先生の強力なライバルになり得た秘密が隠されて
いる気がしてきたのです。
というのも、数年前、私は野球漫画「グラゼニ」の原作者森高夕次さんが、NHKのイ
ンタビューで、ライバルについて、熱く喋ってるのを聞いたことがあるからです。
ところで、「グラゼニ」とは、「グラウンドには、銭が埋まってる」を略したもので、
ずばり、お金がテーマの野球漫画だったらしいです。
これ、昔のスポーツ漫画が好きな人はどう思うでしょう?
私は、スポーツマンに爽やかなイメージを期待してますので、ちょっとどうかしら?と
思わないでもないのですが、何でもプロ野球の選手や業界関係者にはただの夢物語でなく
、現実に近いという理由で、評判はよかったのだとか。
この「グラゼニ」は、ライバルについても描かれているらしく、森高夕次さんによると
、普通、ライバルは自分とあまりにもかけ離れた人とは成り立たないそうです。
例えば、プロ野球選手ですと、境遇や能力、健康状態や、年収など、自分に近いければ
、近いほど、人はライバル意識を持つらしいです。
そこで、手塚治虫先生と、福井英一さんです。
福井英一さんは、「イガグリくん」という柔道漫画の傑作で、人気を博していましたが
、手塚先生はスポーツ漫画が大の苦手でした。
だから、お二人はお互いに切磋琢磨して、才能を遺憾なく発揮するという意味での良好
なライバル関係を築くのは難しかったかもしれません。
その福井英一さんが、過労で倒れ、亡くなったのが、昭和28年だそうです。
その福井英一さんと入れ替わるようにして、横山光輝さんは、翌昭和29年に手塚先生
の前に、彗星のごとく現れるのです。
この事実だけでも、運命を感じませんか?
その後、横山光輝さんは昭和31年に、手塚先生が「鉄腕アトム」を描いている漫画雑
誌「少年」に「鉄人28号」の連載をスタートし、アトムの人気に肉迫していくのです。
そうして、お二人は、かたや電子頭脳を持った人間に近いアトムと、リモコン操作で動
く巨大ロボット鉄人28号という同じロボットもので、熾烈な人気競争を「少年」誌上で
、10年にも渡って繰り広げるのです。
そのほかも例を挙げれば枚挙にいとまがなく、横山光輝さんが、昭和46年に漫画雑誌
「希望の友」で歴史ものの「三国志」を描けば、手塚先生も翌昭和47年に歴史ものの「
ブッダ」を描いて、ともに大人気を博します。
さらに、横山光輝さんが、超能力少年の「バビル2世」を描けば、手塚先生も「三つ目
がとおる」を描き、横山さんが、昭和50年に久々に少女漫画を、週間少女コミックに「
フェニックス・クイーン」を描けば、手塚先生も負けてなるものかと言わんばかりに、同
じ昭和50年10月に同じく週間少女コミックに「虹のプレリュード」を発表するのです
。
こうして見ると、このお二人がいかに素晴らしいライバル関係を結んでいたかが分かる
ようです。
また、手塚先生は、ライバルの重要性を認識しておられたようで、アシスタントさんに
も、「早く一人前の漫画家になって下さい。そして、私のライバルになって下さい。」と
、常々、仰られていたとか。
手塚先生の創作の秘密は、良きライバルを持つことも、その一つだったのでしょうね?
ところで、「魔剣列剣」には、あれほど期待していた悪代官は登場しませんでした。
それだけが、ちょっぴり残念だったかな~・・・(苦笑)