あれは、半年くらい前だったでしょうか?
石ノ森章太郎さんの「快傑ハリマオ」を古本屋さんで見つけたのは。
その少し前に、親しくさせていただいている風こぞうさんが、この漫画の記事を書いていらしたのです。
それで気になって、手に取り、パラパラめくってみたんです。
買おうかな?
どうしようかな?
上下2巻で、一冊1600円が350円ですので、合わせて700円です。
昭和30年代の漫画は、再出版のものでも、結構高くて、なかなか手が出せない場合が多いのです。
だから、とてもリーズナブルだなと思いました。
風こぞうさんがご紹介されるご本ですから、ストーリーも面白いに違いありません。
ですけど、風こぞうさんはブログで沢山、漫画のご紹介をされていらっしゃるのです。
そのご紹介された漫画を、古本屋さんで偶然見つけたからと言って、全部買っていたら、いくらお金があっても足りなくなります。
なので、この漫画は見なかった事にしようと、本棚にそっと返し、その時は何も買わずにそのまま古本屋さんをあとにしたのです。(苦笑)
でも、完全に忘れようとしていた訳ではなく、二、三ヶ月にいっぺん、その古本屋さんに行くたびに、まだ売れ残ってるなと確認していたのです。
そう、その漫画はなかなか売れなかったのです。
これは最近、気づいたのですが、手塚治虫先生や横山光輝さんや石ノ森章太郎さんなど、かつての大御所と言われた方の名作もなかなか売れずに、いつまでも店頭に並んでいる事が多くなりました。
今の若い人の中には、漫画の神様と呼ばれた手塚治虫先生すら知らない人がいるらしいです。
この現実は、手塚先生を敬愛している私には嘆かわしいとしか言いようがありません。
温故知新という言葉もありますので、若い世代の方にも、ぜひ昔の名作にふれてほしいものです。
ところで、少し前に、再びこの漫画の話題を、風こぞうさんと空飛ぶアカエイさんがしていたのです。
風こぞうさんが「快傑ハリマオ」を重複して持っているので、空飛ぶアカエイさんに譲ろうかと、お二人で文章のやり取りをされていらしたのです。
その清らかで美しいお二人の友情に、私は感激して、涙をこぼしてしまったのです。
その時、ふとこの漫画は手塚先生も関与していたのを思い出したのです。
「快傑ハリマオ」は、当初、少年マガジン側から、手塚先生にお話があったのですが、先生はすでに少年サンデーと専属契約していたため、少年マガジンには描けなかったらしいです。
そこで、最初のうちだけ、手塚先生が鉛筆で下書きをして、そのあとを石ノ森章太郎さんが描いて仕上げていたとか。
手塚先生が関与した漫画だったら買うしかありません。
だけど、まだ古本屋さんにあるかしら?
勇んで、古本屋さんに行ったら、まだ売れずに残っていました!
坊や(快傑ハリマオ)、半年以上も売れずにいたのは私に買ってほしいためだったのね?(涙)
風こぞうさんにも、早速、買った事をご報告し、名作なので大切に保管するようにという有り難いお言葉までいただきました。
風こぞうさんに誉められちゃったわ!
私、うれしい♪
ところが、なんて事でしょう。
お店では気づかなかったのですが、家でご本をめくってみたら、最初のページに落書きがしてあったのを発見しちゃったのです!
しかも文字なのか絵なのか、まったくわからない大きな落書き。
文字だとすると、かなりの下手くそです。(笑)
ああ、なんて事なの?
もしかしたら、半年以上も誰も買わなかったのは落書きがしてあったからかも?
これじゃ、大切に保管する気にもなれやしない…
風こぞうさんには悪いけど、一度読んだら、ごみ箱行きね。
いいえ、読まずにこのまま捨てちゃおうかしら?(苦笑)
そう思って、無造作に部屋の片すみに置いたままにしていたのです。
だけど、ある日、何気なくその落書きを見ていたら、石ノ森章太郎と書いてあるように見えたのです。
はっ!もしかしたら、この漫画は、石ノ森章太郎さんのサイン本では?
でも、石ノ森章太郎さんて、すでに亡くなっていますよね。
亡くなられたあとに出版されていたら、当然、サイン本ではない事になります。
そこで、出版された日付を見ると、1995年6月25日と書いてありました。
石ノ森章太郎さんは1998年にお亡くなりになっていますので、本物のサイン本に間違いありません!
そう思うと、とても達筆で味わい深いサインに見えなくも。(苦笑)
あの世の石ノ森章太郎さん、こんな下手くそな落書き見た事ないと言って、ごめんなさい!
絶対、ごみ箱には捨てたりしません。
家宝として、子々孫々に伝えていきます~!
わ~!すごく得しちゃったわ!
風こぞうさんも空飛ぶアカエイさんも、びっくりして、うらやましがるに違いないわ♪
(なんて、げんきんなのかしら?私って)
でも、そうなると、気になるのが、このサイン本のお値段です。(笑)
本当は一体、いくらするものなんでしょう?
石ノ森章太郎さんはすでに亡くなっていますので、かなりの高値がつきそうな気がします。
そこで、漫画史研究家の風こぞうさんと空飛ぶアカエイさんに鑑定してほしいのです。
きっと、お二人ともテレビ番組「開運何でも鑑定団」の中島誠之助さんのように「いいお仕事してますねぇ」と言って、高値をつけて下さると信じています。
風こぞうさん、空飛ぶアカエイさん、鑑定どうかよろしくお願いします!
それではお二人が鑑定価格を思案している間に、感想を述べさせていただきますね♪
この漫画は、簡単に説明しますと、東南アジアを舞台に、現地住民を苦しめる悪人達を、日本人のハリマオが大活躍して、こらしめるストーリーです。
それに、拳銃の名手、太郎少年や、タドン小僧、ドンゴロスの松、太郎少年の姉のれい子もハリマオの味方として、重要な役割を担っています。
ところで、私がこの漫画を読んで、疑問に思ったのは、ハリマオを慕う太郎少年の登場場面が非常に多いという事です。
確かにハリマオはかっこよくて、最終的に事件を解決するのも彼なのですが、太郎少年の活躍ぶりはハリマオの比ではないのです。
そして、あともう一歩というところで、いつも窮地に陥り、ハリマオに助けられて、事件が解決するのが殆どなのです。
太郎少年だって、あれほど頑張ってるんだもの。
ハリマオの助けを借りなくても、一度くらいは悪人に勝ってもいいのでは?と思いたくなってしまいます。
私の、この疑問に石ノ森章太郎さんは後書きで、こう答えて下さっていました。
石ノ森章太郎さんは本当は小説家か映画監督になりたくて、「快傑ハリマオ」を描いていた頃は、漫画家という仕事を踏み台くらいにしか考えていなかったそうです。
だけど、何をやっても思わしくなく、計画通りに事が進んでいなくて、とっても悩んでいらしたとか。
そんな時に、「快傑ハリマオ」の仕事が舞い込んで来たそうです。
太郎少年のあと一歩のところで、いつも及ばないのは、石ノ森章太郎さんの悩みや焦燥感をそのまま現したものだったのでしょうね。
でも、太郎少年はそれでも何度でも悪に挑んでいくのです。
この漫画が名作たりえるのは、若い人に有りがちな、自分が抱いていた夢や憧れにつまずきそうになりながらも、決して諦めずに、何度でも果敢に挑戦していく太郎少年の姿にあるのだと私には思えました。
風こぞうさん、空飛ぶアカエイさん、無理なお願いをしてごめんなさい。
鑑定価格の見当がつかなければ、感想だけでもお願いしますね。