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映画「黒蜥蜴(くろとかげ)」美輪明宏・三島由紀夫

2012-10-28 08:47:05 | 映画・テレビ
私がこの映画に興味を持ったのは若かりし頃の美輪明宏さんと、作家の三島由紀夫が出演していると知ったからです。
とくに美輪さんは、昔のお写真を見て、なんてお綺麗でお美しいのかと思い、この映画を観てみたくなったのです。
ご覧になった方はおわかりになると思いますが、学生時代の頃のお写真は、まばゆいばかりに悪魔的な美しさを放っていますよね。
そうして、私は「黒蜥蜴」を、いつか観たいと思っていたのですが、ずっと引き延ばしにしていたのです。
ところが、最近になって、この映画に出ている三島由紀夫と、美輪さんのキスシーンがあると知って、断然観たくなったのです。
この映画の原作は江戸川乱歩で、それを戯曲にしたのが三島由紀夫で、三島は美輪さんとキスしたいばかりにキスシーンを無理矢理でっちあげたらしいのです。
しかも、リハーサルの時、美輪さんは三島のくちびるの手前で、寸止めしたらしいのですが、三島に「どうしてキスしてくれないの?」と言われ、美輪さんが軽くキスすると、今度は「どうして、もっとしてくれないの?」と言ったというではありませんか!

どうやら、三島由紀夫は美輪さんの美しさに魅了されていて、くちびるを奪いたいくらい好きだったそうです。

だけど、この「黒蜥蜴」という映画を観たら、どんな男性でも、いいえ女性だって、美輪さんの美貌と、ただならぬ妖しい雰囲気に夢中になってしまうに違いありません。

では、どうして美輪さんは三島由紀夫が関わる、この映画に出演する事になったのでしょう。
それは美輪さんの著書「愛と美の法則」に詳しく書いてあります。
このご本によると、美輪さんは寺山修司さんの「毛皮のマリー」というアングラ演劇に出ていて、それを見た三島が「黒蜥蜴」をやってくれないかと頼んだそうです。
なんでも、美輪さんは16歳の頃から、当時25歳の三島由紀夫とお付き合いをされてたとか。
三島は芝居のための戯曲も書いていて、「卒塔婆小町」が芝居になった時、「俺はこんなわけのわからない芝居を書いた覚えはないんだけどな」と嘆くほど、演出家、役者さんが三島のセリフを解釈出来なかったらしいのです。

その芝居を三島と観劇した美輪さんは、いつも意気消沈して、がっかりする三島の姿を見ていて、芝居もずっと不入りが続いていたそうです。

そういう事から美輪さんは三島の期待通りに演じようと、この映画の黒蜥蜴という女性の盗賊の役を引き受けた時に、三島の家に行って、このセリフはこういう意味でいいのと、何度も三島に聞いて役作りをしたそうです。
例えば、婦人が「今日はいつもの夜と違うようだわ。夜がひしめいて息をこらしてるわ。精巧な寄せ木細工のような夜。こういう晩には、かえってからだが熱くほてって、いききとするような気がするわ」
というセリフがあるのですが、これを普通の方がやると、「今日はいつもの夜と違うようだわ」を、ただ普通の時間の夜のことだと思ってしまう。
「夜がひしめいて息をこらしているわ」は、夜の雰囲気が息をこらしているというふうに解釈する方が多い。

それをどう解釈したのか、美輪さんはこう書かれています。
このホテルの中の雰囲気が緊張して、何かがピーンと張り詰めていて、いつもののどかなホテルの状態じゃない、そうでしょう、とぐさりと手の内を見透かして言うセリフなのです。
つまり、あんたの手下や警察官がホテルの角々に全部網を張っていて、息をひそめて黒蜥蜴が出てくるのをじっと待っているんでしょう、という意味です。
そのあとで「こういう晩には」と、そこで初めて日時を表す「晩」という言葉を使い、「こういう晩には、かえってからだが熱くほてって、いきいきとするような気がするわ」。つまり、網を張って待ち伏せされてるので、「こういう」というのは、そういうふうにされると私はかえってファイトが湧いてやる気が出てくる、という意味なのです。
その言葉に「犯罪が近づくと夜は生き物になるのです」と返す明智探偵。
つまり、お前さんが近づくと夜は生き物になる、私たちもまた生き物になるので生き生きとするんだよ、というわけです。
こういうふうに犯人が出てきたらこうなる、では待ち伏せしてこうすればいいというふうに、それぞれが知恵比べで網を張って緻密な計算をしている。
婦人の「精巧な寄せ木細工のような夜」は、そういうことを指しています。つまり、犯罪者と追いかける方ではあるけれども、それぞれ精密な頭の中で犯罪を楽しむ、そういう犯罪が起こるのはお互い様だし、二人は同じ資質を持っているのよ、という意味の言葉なのです。そういうことを一行一行細かく深層心理から計算していくわけです。そこで人間を作り上げて、ただの紙細工の人形に息を吹き込んでいって、立体的にして、現存しないし実在しない人間を、あたかも実在するかのように血肉を通わせていく。そこには演じてる役者がいるのではなく、本人そのものがそこで生きている。生活しているということになる。

以上、美輪明宏著「愛と美の法則」より


すごい!

美輪さんて、まさに役者さんの鑑(かがみ)そのもの!

それにしても、あの上品な美しさと、妖しい雰囲気は、そう簡単に表現出来るものではないと思います。

ただ、お化粧して、高価なファッションに身を包めば、誰でも美輪さんみたいになれる訳ではないですよね?

私は美輪さんの著書を何冊か持っているのですが、それによると、映画、演劇、文学、絵画など、各分野の芸術に深く関心がおありだという事が、よくわかります。
そうした幾多の芸術作品で、知識と教養と鋭い審美眼で得たものが、今の美輪さんを作り上げたのだと、私は思います。


ところで、肝心の美輪さんと三島由紀夫のキスシーンはどうだったかと言いますと、剥製になって、目をぎろっと見開いている三島に美輪さんがキスしていて、私は思わず失神しそうになるほど胸がドキドキしてしまいました。

二人とも、素敵♪

そうして私は三島由紀夫の意外な一面にふれた思いで、すごく感激しちゃいました。


そういえば、三島由紀夫は幼い頃、祖母に女の子みたいに育てられたそうで、着物を着せられて、おすまししている写真を、私は見た事があります。

それが、彼の人間形成にどう影響を及ぼしたのか興味は尽きないですね。

映画「黒蜥蜴」
美輪明宏さんと三島由紀夫が共に作った奇跡のような映画、私は現実を忘れ、ただ酔いしれるしか出来ませんでした。














 

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