先日、テレビアニメの「ふしぎなメルモ」のお話をしたばかりですが、この作品は手塚治虫先生が、子供たちの性教育のために作られたというのは、皆さんご存知だと思います。
ところが、この作品には大人になったメルモちゃんのパンチラや、ヌードシーンがあるためか、当時、PTAを始めとする大人達の中に、子供に害悪だと批判した人がいたらしいです。
そればかりか、性教育のために描かれた漫画の「アポロの歌」や「やけっぱちのマリア」までも批判されたとか。
これは、非常に残念な事です。
手塚先生は医学博士でもあり、お医者様の立場から、氾濫する性情報や、無知から子供たちを守り、正しい性知識を与えようとしたのに、それを受け入れない人達がいたのですから。
そこで、今回は、こんなお話をしたいと思います。
手塚先生は「ぼくはマンガ家」という自叙伝の中で、本業は医者で、漫画は副業だというふうに書いていらっしゃいます。
また、角川文庫の「火の鳥 ギリシャ・ローマ編」の解説を手塚先生の妹さんの宇都美奈子さんが書かれているのですが、それによると手塚先生は子供の頃から漫画が好きだったけれど、職業にするつもりは毛頭なかったそうです。
手塚先生が、大阪帝国大学附属医学専門部に入学したのも医者になるためで、漫画はあくまでも趣味だったとか。
ところが、在学中の1947年に描いた「新寶島」がベストセラーになったのをきっかけに漫画の仕事が次々に舞い込み、それに連れ学業に専念できなくなってしまい、たいそう悩まれた末に漫画家への道を歩む決心をされたそうです。
しかし、手塚先生は、それで医学の道を断念された訳ではなかったんです。
1951年に大学を卒業されると、大阪大学医学部附属病院で、1年間インターンを務められ、1953年7月には国家試験を受けて、医師免許を取得されています。
医師としての専門は外科で、その後、奈良県立医科大学の研究生となり、1960年10月に「異形精子細胞における膜構造の電子顕微鏡的研究」を発表し、翌1961年に医学博士号を取得されているのです。
ですから、「ブラック・ジャック」は言うに及ばず、アニメの「ふしぎなメルモ」や漫画の「アポロの歌」や「やけっぱちのマリア」は、当然、医者の立場から発表されたものだったのです。
そして、今回、ご紹介する「吸血魔団」もその一つなのです。

この漫画を読まれた方はあまりいらっしゃらないのではないでしょうか?
私が、この「吸血魔団」を、なぜ知ってるかと言いますと、手塚先生が1966年にアメリカで作られた映画「ミクロの決死圏」は、この漫画を真似たんじゃないかと、「ぼくはマンガ家」に書かれていたからです。
それ以来、この漫画が、ずっと気になっていたのです。
私は、子供の頃、テレビで、「ミクロの決死圏」を観た事はあったのですが、「吸血魔団」はまったく知りませんでした。
ところが、講談社から、手塚治虫漫画全集が出版され、手塚先生の過去の作品を読むチャンスがやってきたのです!
私は「ジャングル大帝」や「リボンの騎士」を始め、読みたい作品は沢山あり、そのなかに「吸血魔団」も読みたい作品の一つだったのです。
ですが、私の期待とはうらはらに「吸血魔団」は出版されなかったのです。
数年前に出版された手塚治虫文庫全集にも入っていませんでした。
なぜなの?
こんなに読みたいのに、どうして意地悪するの?
だいたい、日本でも、なかなか手に入れるのが難しい「吸血魔団」を、アメリカ人がどうやって知ったの?
そこで、ネットを通じて、いろいろ調べてみたんです。
すると、テレビアニメの「鉄腕アトム」に、「吸血魔団」のアイデアを流用した「細菌部隊」というエピソードがあるらしく、それにヒントを得て「ミクロの決死圏」が作られたと突き止めたのです。
漫画の「鉄腕アトム」はその当時、10年以上、月刊誌に連載されていたのですが、アニメ版は毎週、放送されていたため、原作をあっという間に食いつぶしてしまい、手塚先生のほかの作品からアイデアをもらっていたらしいのです。
スタンリー・キューブリックもアニメの「鉄腕アトム」の大ファンで、「2001年宇宙の旅」を作る時、手塚先生に協力を求めたという話もありますし、やはり手塚先生は世界に誇る偉大な方なんですね♪
ところが、話はこれで終わらないのです。(笑)
「吸血魔団」は読めないのか?という問題が残っちゃったんです。
全集に入っていなかった理由は、「38度線上の怪物」という作品でリメイクしたものを入れたからだと分かりました。
それで、その作品を読んでみたのですが、解説で手塚先生が、(描き版で、ひどい絵だけれど、「吸血魔団」の方が、ずっと好きだ)と書いてらっしゃるのです。
あ~ん、どうしても「吸血魔団」が読みたい!
でも、とうとう、ついにヤフオクで、復刻版を見つけちゃったのです!
しかし、「虫の標本箱」というセット本で売られていて、たとえバラ売りでも、プレミアが付いて高額過ぎて、手が出ないんです。(涙)
欲しいけど、金に糸目をつけないという訳にはいかないの・・・
だけど、最近になって幸運の女神がほほえんでくれて、所有者の名前がマジックで書いてはありましたけど、それだけに安くで落札出来たんです。
落札価格は2800円でした♪
そこで、気になっていた両者の似ているところを確かめるために、映画の「ミクロの決死圏」も観てみる事にしました。
「吸血魔団」は、1948年に描かれています。
ストーリーは、ヒゲおやじが発明した細胞を極小化させる薬品で、ケン一君とヒゲおやじが小さくなり、人の体内に入って、様々な冒険をした後、元の大きさに戻り、病原菌をやっつける内容になっています。
これを読んで、私が面白いと思ったのは病原菌が人間の形と一緒で、ドリルの先から液体を放射して、器官に穴を開けたり、メカニックに描いてあった点です。
その逆に、心に残ったのはケン一君と仲良くなり、危険から助けてくれたモオドという女の子が、実は病原菌で、哀しい最期を迎えなければならなかったことです。
では、映画「ミクロの決死圏」はどうでしょう。

物質をミクロ化する技術はすでに開発されていましたが、1時間しか持たず、長時間、ミクロの状態を保てる技術を考案した科学者が狙われ、瀕死の重傷を負っていました。
そこで、脳の内部から手術すべく、医療チームは潜航艇とともにミクロ化して、体内から治療する事になります。
ミクロ化のタイムリミットは1時間しかなく、時間との戦いあり、体を守ろうとする抗体との戦いあり、また裏切り者の存在あり、ハラハラ・ドキドキという趣向になっています。
特筆すべきは、人体内部の造形や潜航艇の特撮で、アカデミー美術賞、及び、視覚効果賞を受賞している点です。
「吸血魔団」と「ミクロの決死圏」
確かに、薬品でミクロ化し、時間の経過で、元の大きさに戻る点は一緒だなと思いました。
しかし、「吸血魔団」は、病原菌が人間の形で、ドリルや機械を使って、人を病気にするなど、あくまでも漫画チックに描かれていて、かたや「ミクロの決死圏」はリアルっぽさを追求していて、その点が違ってるなと思いました。
両者には、それぞれの良さや楽しみ方がありました。
「吸血魔団」を読んで、私は胸をはって、こう断言出来ます。
手塚先生は漫画の神様であるとともに、優れたお医者様でした♪
ところが、この作品には大人になったメルモちゃんのパンチラや、ヌードシーンがあるためか、当時、PTAを始めとする大人達の中に、子供に害悪だと批判した人がいたらしいです。
そればかりか、性教育のために描かれた漫画の「アポロの歌」や「やけっぱちのマリア」までも批判されたとか。
これは、非常に残念な事です。
手塚先生は医学博士でもあり、お医者様の立場から、氾濫する性情報や、無知から子供たちを守り、正しい性知識を与えようとしたのに、それを受け入れない人達がいたのですから。
そこで、今回は、こんなお話をしたいと思います。
手塚先生は「ぼくはマンガ家」という自叙伝の中で、本業は医者で、漫画は副業だというふうに書いていらっしゃいます。
また、角川文庫の「火の鳥 ギリシャ・ローマ編」の解説を手塚先生の妹さんの宇都美奈子さんが書かれているのですが、それによると手塚先生は子供の頃から漫画が好きだったけれど、職業にするつもりは毛頭なかったそうです。
手塚先生が、大阪帝国大学附属医学専門部に入学したのも医者になるためで、漫画はあくまでも趣味だったとか。
ところが、在学中の1947年に描いた「新寶島」がベストセラーになったのをきっかけに漫画の仕事が次々に舞い込み、それに連れ学業に専念できなくなってしまい、たいそう悩まれた末に漫画家への道を歩む決心をされたそうです。
しかし、手塚先生は、それで医学の道を断念された訳ではなかったんです。
1951年に大学を卒業されると、大阪大学医学部附属病院で、1年間インターンを務められ、1953年7月には国家試験を受けて、医師免許を取得されています。
医師としての専門は外科で、その後、奈良県立医科大学の研究生となり、1960年10月に「異形精子細胞における膜構造の電子顕微鏡的研究」を発表し、翌1961年に医学博士号を取得されているのです。
ですから、「ブラック・ジャック」は言うに及ばず、アニメの「ふしぎなメルモ」や漫画の「アポロの歌」や「やけっぱちのマリア」は、当然、医者の立場から発表されたものだったのです。
そして、今回、ご紹介する「吸血魔団」もその一つなのです。

この漫画を読まれた方はあまりいらっしゃらないのではないでしょうか?
私が、この「吸血魔団」を、なぜ知ってるかと言いますと、手塚先生が1966年にアメリカで作られた映画「ミクロの決死圏」は、この漫画を真似たんじゃないかと、「ぼくはマンガ家」に書かれていたからです。
それ以来、この漫画が、ずっと気になっていたのです。
私は、子供の頃、テレビで、「ミクロの決死圏」を観た事はあったのですが、「吸血魔団」はまったく知りませんでした。
ところが、講談社から、手塚治虫漫画全集が出版され、手塚先生の過去の作品を読むチャンスがやってきたのです!
私は「ジャングル大帝」や「リボンの騎士」を始め、読みたい作品は沢山あり、そのなかに「吸血魔団」も読みたい作品の一つだったのです。
ですが、私の期待とはうらはらに「吸血魔団」は出版されなかったのです。
数年前に出版された手塚治虫文庫全集にも入っていませんでした。
なぜなの?
こんなに読みたいのに、どうして意地悪するの?
だいたい、日本でも、なかなか手に入れるのが難しい「吸血魔団」を、アメリカ人がどうやって知ったの?
そこで、ネットを通じて、いろいろ調べてみたんです。
すると、テレビアニメの「鉄腕アトム」に、「吸血魔団」のアイデアを流用した「細菌部隊」というエピソードがあるらしく、それにヒントを得て「ミクロの決死圏」が作られたと突き止めたのです。
漫画の「鉄腕アトム」はその当時、10年以上、月刊誌に連載されていたのですが、アニメ版は毎週、放送されていたため、原作をあっという間に食いつぶしてしまい、手塚先生のほかの作品からアイデアをもらっていたらしいのです。
スタンリー・キューブリックもアニメの「鉄腕アトム」の大ファンで、「2001年宇宙の旅」を作る時、手塚先生に協力を求めたという話もありますし、やはり手塚先生は世界に誇る偉大な方なんですね♪
ところが、話はこれで終わらないのです。(笑)
「吸血魔団」は読めないのか?という問題が残っちゃったんです。
全集に入っていなかった理由は、「38度線上の怪物」という作品でリメイクしたものを入れたからだと分かりました。
それで、その作品を読んでみたのですが、解説で手塚先生が、(描き版で、ひどい絵だけれど、「吸血魔団」の方が、ずっと好きだ)と書いてらっしゃるのです。
あ~ん、どうしても「吸血魔団」が読みたい!
でも、とうとう、ついにヤフオクで、復刻版を見つけちゃったのです!
しかし、「虫の標本箱」というセット本で売られていて、たとえバラ売りでも、プレミアが付いて高額過ぎて、手が出ないんです。(涙)
欲しいけど、金に糸目をつけないという訳にはいかないの・・・
だけど、最近になって幸運の女神がほほえんでくれて、所有者の名前がマジックで書いてはありましたけど、それだけに安くで落札出来たんです。
落札価格は2800円でした♪
そこで、気になっていた両者の似ているところを確かめるために、映画の「ミクロの決死圏」も観てみる事にしました。
「吸血魔団」は、1948年に描かれています。
ストーリーは、ヒゲおやじが発明した細胞を極小化させる薬品で、ケン一君とヒゲおやじが小さくなり、人の体内に入って、様々な冒険をした後、元の大きさに戻り、病原菌をやっつける内容になっています。
これを読んで、私が面白いと思ったのは病原菌が人間の形と一緒で、ドリルの先から液体を放射して、器官に穴を開けたり、メカニックに描いてあった点です。
その逆に、心に残ったのはケン一君と仲良くなり、危険から助けてくれたモオドという女の子が、実は病原菌で、哀しい最期を迎えなければならなかったことです。
では、映画「ミクロの決死圏」はどうでしょう。

物質をミクロ化する技術はすでに開発されていましたが、1時間しか持たず、長時間、ミクロの状態を保てる技術を考案した科学者が狙われ、瀕死の重傷を負っていました。
そこで、脳の内部から手術すべく、医療チームは潜航艇とともにミクロ化して、体内から治療する事になります。
ミクロ化のタイムリミットは1時間しかなく、時間との戦いあり、体を守ろうとする抗体との戦いあり、また裏切り者の存在あり、ハラハラ・ドキドキという趣向になっています。
特筆すべきは、人体内部の造形や潜航艇の特撮で、アカデミー美術賞、及び、視覚効果賞を受賞している点です。
「吸血魔団」と「ミクロの決死圏」
確かに、薬品でミクロ化し、時間の経過で、元の大きさに戻る点は一緒だなと思いました。
しかし、「吸血魔団」は、病原菌が人間の形で、ドリルや機械を使って、人を病気にするなど、あくまでも漫画チックに描かれていて、かたや「ミクロの決死圏」はリアルっぽさを追求していて、その点が違ってるなと思いました。
両者には、それぞれの良さや楽しみ方がありました。
「吸血魔団」を読んで、私は胸をはって、こう断言出来ます。
手塚先生は漫画の神様であるとともに、優れたお医者様でした♪