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奈々の これが私の生きる道!

映画や読書のお話、日々のあれこれを気ままに綴っています

源氏物語の魅力その16 紫の上の魅力

2010-08-24 12:16:21 | 源氏物語
紫の上の魅力について書く前に、あなたにまず知ってほしい事があります。

源氏物語の作者は、紫式部という女性なのですが、これは本名ではなく、源氏物語の中の、紫の上から、一文字取って名付けられたのです。
つまり、紫の上は、当時の人々にとって、もっとも理想的な女性として描かれ、愛されてきた女性なのです。
それは、源氏物語が、時の権力者、藤原道長の娘の中宮彰子の為に書かれたからで、帝の寵愛を得て、子供を産み、より高い身分と権勢を手に入れる為に、理想的な女性を描く必要があり、紫の上に、もっとも理想的な女性の姿が託されているのです。

それは、他の女性たちが大人になってから登場するのに対して、紫の上がまだ幼い十歳から書かれているのにも顕著に現れています。
ちなみに、光源氏が、若紫と初めて出会った時、光源氏は十七歳でした。

幼い紫の上、その頃は、若紫と呼ばれていますが、本当にかわいらしく書かれてあります。
まだ幼くて、何も知らない若紫は、愛と言うのでなく、優しくて、かっこいい光源氏が大好きなのです。
光源氏が外出から帰ってくると、飛んで出て迎え、まとわり付いて、留守中の出来事をあれこれ話し、夜は光源氏に抱かれないと眠れないのです。
そんな若紫を、光源氏は愛おしくてならず、お人形やおもちゃを買い与えたり、同じ年頃の女の子たちを集め、遊ばせたりするのです。
そして、さらに文字や、お行儀を教え、女性としての、たしなみを熱心に覚え込ませるのです。
「女は心が素直で優しいのが一番なのですよ」
そう言う光源氏に、若紫は自分が気にかけてもらう事が何より嬉しく、素直にこっくりうなづくのです。
これは、現代でも言える事ではないでしょうか?
どんなに好きな相手でも、いちいち、反発されたら、いい気持ちはしませんよね。
それに、従順で、性質が優しいのは、男性に無上の安らぎを与えてくれると思うのです。

そうして、幼い若紫を熱心に養育した光源氏なのですが、いくら光源氏にロリコンの素養があったとしても、若紫のからだに、すぐに手を出した訳ではないのです。
光源氏は、正妻の葵の上が子供を産み、もののけに襲われて亡くなったあと、左大臣の家で静かにお経をあげる日々を送り、しばらく振りに二条の屋敷に帰って、大人ぽくなった若紫の姿に気づき、その時、初めて抱きたいと思うのです。
時に、光源氏、二十二歳、若紫、十四歳でした。

しかし、この頃、誰も、若紫にセックスの作法を教えた者はなく、ある晩、光源氏が自分のからだに覆いかぶさって、からだが一つになったのに驚き、あの気高くてお優しい、あの方が、けだものみたいな、いやらしい事をするなんてと思い、体中が真っ赤になるのです。
そんな若紫に、光源氏は、翌日の朝「どうしたの、気分が悪いのですか?」と、いつもの調子で話しかけ、すねている若紫の横に来て、その日、一日中、ぴったり寄り添い、二人きりで御帳台にこもるのです。

こうして、名実ともに夫婦の契りを結ぶのですが、実は紫の上は光源氏の正妻ではないのです。
当時の結婚形態は通い婚で、夫が妻の家に通うのが習わしでした。
ところが、紫の上の場合、両親に早く死に別れ、後見役がいなかったために、光源氏の二条のお屋敷に同居するほかなく、正式な妻になれなかったのです。
そうして、紫の上は第一夫人の座にはいたのですが、正妻のポストの座は、長らく開いたままになり、後々、女三の宮が光源氏のもとに降嫁する悲劇を生んでしまうのです。


つづく

源氏物語の魅力その15 紫の上の人気に思う

2010-08-23 08:05:04 | 源氏物語
先日もお伝えしたように、紫の上は源氏物語に登場する数ある女性の中で、長い間、人気ナンバーワンの不動の座にあったのですが、この二十数年の間に、不倫を楽しむ朧月夜に、その座を追われてしまいました。
では、今、彼女の人気は何番なのか?

現在の順位は二番だそうです。
だけど、一番の朧月夜との差は広がる一方で、歯止めがかからない状態にあるらしく、紫の上が一番好きな私としては、残念でなりません。
そこで、先日に引き続き、紫の上人気凋落の原因をもう少し詳しく掘り下げてみたいと思います。
私が、紫の上が好きな主な理由は、光源氏を心の底から愛し、かわいらしく従順で、女性の哀しみを表現しているからなのですが、おそらく現代の女性には彼女の美質を理解出来ない人が増えてきたのだと思います。
とくに、キャリアウーマンに代表される、意志を強く持って生きている人達にとって、従順というのは、自分の意志を持たないという意味での欠点にしか捉えられない。
つまり、自分の生き方を愛情以外に求めている人が増えたからではないか。

そして、性に対する捉えかたも、昔と変わってきているような気がするのです。
昔の女性は、今ほど性に対する知識は少なかったし、身持ちが固かったと思うのです。
今は、性の情報が氾濫し、セックスに対しても、かなりオープンになっていますよね。
そのいい例が、できちゃった婚です。
昔は、結婚前に妊娠する女性は少なかったのですが、今では当たり前と思っている人がいるほどです。
これは芸能人でも言える事ですね~
今の芸能人は、できちゃった婚する人が多いですけど、昔の芸能人には、めったにいませんでしたから。
私には清純を売りにしている芸能人が、結婚もしてないのに妊娠するなんて、とても考えられません。

つまり、セックスを気軽に楽しむ女性が増えたのが、不倫を楽しむ朧月夜人気に拍車をかけた。

読者
「という事は、あなたは結婚する前、ご主人様とは、何もしなかったのね?」


「えっ!それは~・・・どうしよう?」
モジモジ・・・

読者
「ははーん、分かった!
あんたも、やる事は、ちゃんとやってたけど、たまたま運よく妊娠しなかったって訳ね。
なんだ、それだけじゃない。」


「あ~ん、いじわる~!」(苦笑)


そのほかの理由として、私はテレビゲームや携帯ゲームなどの影響も大きいんじゃないかなと思うのです。
敵をバッタバッタやっつけるゲームをする女性は、結構いらっしゃるみたいですけど、女性は本来、愛に満ちた生き物で、人に攻撃を仕掛ける事は出来ないと思うのです。
女性は愛する人を支え、その人の赤ちゃんを産んで、守り育てなければならない。
そのためには深い愛情がどうしても必要になってくる。
だけど、敵をやっつけるゲームをするには、優しさや愛情を持っていると、攻撃する気持ちが鈍ってくる。
そこで、怒りや憎しみの感情が必要になって、敵と戦っているうちに、相手を思いやり、愛する気持ちが薄れて、残虐な心を育ててしまう。
そんな人達が増えたから、夫婦間の暴力が後を絶たず、離婚まで増えてしまったのではないか。

私には、女性にとって、もっとも大切な、人を思いやり、愛する気持ちが薄れたのが、紫の上の人気凋落の原因に思われてならないのです。

源氏物語の魅力その14 男性が女性に望むもの

2010-08-21 13:33:25 | 源氏物語
男性は同時に複数の女性を愛せる生き物である。

しかし、女性は一人の男性しか愛せない。

では、もし女性が複数の男性を愛せるようになったら、男性はどう思うでしょう?
快く、ほかの男性とからだを重ねるのを認めてくれるでしょうか?


おそらく、男性は、自分が愛する妻や恋人以外の女性と浮気をしたとしても、自分の妻や恋人には、決して浮気を認めないのではないでしょうか?

私は、最近、さまざまな名作と言われるご本を読んだり、映画を観ているのですが、それらの作品の中で、女性のからだが、重要な位置を占めている事に気づいたのです。
島尾敏雄の「島の果て」では、朔中尉が特攻隊として出撃する直前、心の安らぎを得ようとして、恋人のトエと毎晩、からだを重ねる場面が出てきますし、映画「ハワイの若大将」では、プレイボーイに、スミちゃんのバージンが奪われそうになるのを、若大将と青大将が死に物狂いで守るのです。
また、太宰治の「人間失格」では、妻のヨシ子が、ほかの男性にからだを奪われたのを悲嘆に暮れて、再起不能に陥るほど、夫は精神的ショックを受けるのです。

どうやら、男性にとって、女性のからだは、とても大切なもので、自分以外の男性に寝取られるのは、身を切られるほど辛い事のようです。

自分の妻が浮気していると知って、夫婦仲が険悪になり、離婚したケースは枚挙にいとまがありません。
だけど、その浮気の原因を作ったのは、ほとんどが男性で、女性から積極的に働きかけたケースは少ないそうです。


そもそも結婚とは何なのでしょう?
ここで私は、結婚について考えてみたくなりました。
今の世の中では、恋愛結婚が主流ですが、昔はどうだったのでしょう?
一昔前は、お見合い結婚が多かったみたいです。
昔の人のお話を聞くと、結婚相手をお見合い写真だけで決めて、結婚式当日に初めて対面したとか、双方の親同士で結婚を決めたとか、今では考えられない事が、いろいろあったみたいです。
源氏物語の世界では、夜中、お姫様がお眠りになられている時に、光源氏がそっと忍び込み、有無を言わさず、レイプ同然で、からだを奪って、結婚に至るケースがほとんどです。

つまり、昔は女性に結婚相手を選ぶ権利はなかったのです。
男性の心だけが優先されて、女性はそれにただ従うしかなかった。

そういえば、あなたは結婚指輪の成り立ちをご存知ですか?
結婚指輪に、さまざまな意匠をこらし、二人だけの愛の証しにするご夫婦も大勢いらっしゃるみたいですけど、あの指輪は、最初は新妻のからだに巻き付けていた鎖(くさり)が起源だったと、私は聞いた事があります。
その鎖が時代を経るに連れて、薬指にはめる愛の証しの指輪になったのだと。
それでは、最初は、なぜ鎖だったのでしょう?
その頃の人達にとって、結婚とは男性が女性を奪うものであり、女性の気持ちが、かえりみられる事はなかったと言うのです。
つまり、恋愛という概念がなかった。
だから、強引に自分のものにした妻は逃げ出さないように、家の柱と妻のからだを鎖で繋いでいたのだそうです。
どうです、びっくりしたでしょう?
こんなお話を聞くと、結婚指輪なんか要らないと言いたくなりませんか?(笑)

また、こんなお話を、私は聞いた事もあります。
昔、男性中心で、女性の存在が軽々しく扱われていた事実に、歴史を意味する英語のhistoryという言葉があるそうです。
これは、彼のを意味するhisと、物語のstoryが、くっついて出来た言葉なのだそうです。
そう、歴史は男が作るものという意味が、このhistoryという言葉にあるのです。

ああ、なんて思い上がった考えなのでしょう・・・

そうなると、今の世の中、女性にもさまざまな権利が認められて、いい世の中になったものですね~
現代は、お仕事に情熱を燃やすキャリアウーマンも大勢生まれ、人生観や価値観が多様化して、女性の幸福は結婚だけでなく多岐に渡るようになりました。

だけど、人を愛する気持ちは、いつの時代も大切なんじゃないかなぁと、私は思うのです。
世の中に、男性と女性がいる意味を、よく考えるべきではないかと・・・


今回は、源氏物語のお話から、大幅にズレてしまいました。
ごめんなさい。

次回は、紫の上の魅力について書いてみたいと思います。

源氏物語の魅力その13 紫の上、女性の哀しみ

2010-08-19 12:45:08 | 源氏物語
最初にお詫びいたします。
私は、紫の上を正妻と以前書いたのですが、たしかに結婚はしていましたけど、紫の上の両親は早く他界し、後見人がいなかったために、当時の通い婚という仕組みでは紫の上を正式な妻にする事は出来なかったらしいです。
私が勘違いしたのは、ほかの妻達はそれぞれの家にいて、光源氏が通ってたのに対して、紫の上は光源氏の屋敷に同居していたからです。
私のはやとちりでした。
ごめんなさい。

それでは、気を取り直していきますね。


前回、私は紫の上が源氏物語に登場する沢山の女性の中で一番好きと書き、その理由を、女性の哀しみを一身に背負っているように思え、従順でかわいらしく、心から光源氏を愛しているからと説明しました。

では、女性の哀しみって何なのでしょう?

私が考える女性の哀しみは、男性が光源氏のように、複数の女性を一度に愛せる点にあります。
芸能人の石田純一さんが、以前、「浮気は男の文化だ」と言って、物議をかもした事がありましたけど、どうして男性は愛する女性がいるのに、さらに別の女性を求めようとするのでしょう?

なかには、こんな事を言う男性もいますよね。

浮気は男の甲斐性

据え膳、食わぬは男の恥

つまり、目の前に魅力的な女性がいて、女性の方から寄ってくるのに、その期待に応えないのは男として恥だ、という訳。
だけど、その男性を一筋に愛している恋人や奥様の事は、どうお考えなのでしょう?
それでも構わないのかしら?

そんな浮気の出来る男性に対して、女性は一人の男性しか愛せないのであります。

いや、自分は複数の男性と付き合っている女の子を知ってるよ、という人もいるかも知れません。
だけど、それはただの恋愛遊戯に身を任せているだけであって、複数の男性を心から愛している訳ではないのです。

なぜ、男性は複数の女性を同時に愛せるのでしょう?

私が聞いたところによると、男性は種の保存の為に、出来るだけ沢山の子供を作るように脳にインプットされているらしいのです。
だけど、沢山の子供を作るのに一人の女性ではどうしても限界がある。
だから、複数の女性を同時に愛せるのだという説です。

なるほど~
種の保存て事は、人類が滅びないようにって訳ね?
そんなお話を聞くと、浮気がなんだかとても立派な事のように思えてきたりして・・・

だけど、ちょっと待ってよ。
う~ん、違う!違う!やっぱり違~う!!

浮気していい訳ないじゃない!

私、あなたをこんなに愛してるのに、私の恋心はどうなるのよ~!

もし、あなたが浮気なんかしたら、私、ただじゃすまさないから!

よ~く、覚えときなさい!


コホン、え~つまり、これが私の言う女性の哀しみなのであります。
え?哀しんでいるというよりも、怒ってるんじゃないか?ですって?
いいえ、哀しんでるんです!

女性は愛する男性に、自分以外の女性に振り向かず、自分だけを見つめていてほしいと願っているのに、男性は機会さえあれば浮気をしようと狙っている生き物なのです。


これが続く限り女性の哀しみは永遠になくなる事はないと、私は思うのです。

源氏物語の、紫の上もまた光源氏を愛し、当時の一夫多妻制から浮気を許していたのですが、身内から沸き上がる哀しみは抑えようもなく、光源氏が女三の宮を正妻に迎えるにいたって、いよいよ心労は激しくなり、出家を思い立つのです。

しかし、紫の上を愛する光源氏はそれを許さず、自分といつまでも一緒にいたせたかった。

光源氏、そんなに紫の上が好きなら、どうして浮気を続けてきたの!?
なぜ、やめなかったの!?


でも、それは光源氏自身、どうする事も出来なかったのです。

源氏物語の魅力その12

2010-08-07 11:43:01 | 源氏物語
今回は、私が源氏物語に登場する人物の中で、とくに書きたかった二人の女性を取り上げたいと思います。
一人は、光源氏が長年、連れ添った妻、紫の上と、あと一人は光源氏が長年、浮気を続けてきた不倫のお相手、朧月夜という女性です。
この源氏物語が書かれてから千年の月日が経つのですが、長年、この物語に登場する数ある女性の中で、紫の上の人気が一番高く、その地位は決して揺るがなかったそうです。

光源氏が、紫の上と初めて出会った時、彼女はまだ十歳くらいで、髪は扇を開いたように肩まであり、山吹色の着物を着て、ほかの女の子よりも、一際美しいお顔をしていました。
だけど、どうした訳か泣き腫らしたみたいに目が真っ赤なのです。
心配して、そばにいた尼君が「どうしたの。けんかなさったの。」と、声をかけますと、「ううん、すずめの子を犬君(女の子の名前)が逃がしちゃったの。伏籠の中に私、ちゃんと入れておいたのに。」と、淋しそうにつぶやくのです。

この最初の出会いで、光源氏は紫の上のかわいらしい魅力に引き込まれてしまうのです。
だけど、当時、光源氏が二十歳前とは言え、十歳くらいの女の子に関心を示すなんて、ロリコンそのものじゃないですか!?
しかも、若紫は光源氏の義理の母親にして初恋の人、藤壷の女御の姪にあたる女の子だったのです。ちなみに光源氏は藤壷とあろう事か肉体関係を持ち、 子供まで作っています。

実は、この紫の上が、私は一番好きな女性なのです。
私には、紫の上が、女性の悲しみを一身に背負って生きているように思え、かわいらしく従順で、光源氏を心から愛している点が、たまらなく好きなのです。
その私の思いは、世の多くの女性達にも通ずるものがあったみたいで、紫の上は長い間不動の人気を築き上げてきたのです。
ところが、源氏物語を研究している人の話によると、この二十数年間の僅かな間に、不倫を楽しむ朧月夜に人気を奪われ、紫の上の人気凋落は増すばかりだと言うのです。
一体、この二十数年の僅かな間に女性達に何が起こったのでしょう?
それまでの女性達はたとえ仕事を一生懸命やっても重要なポストを与えられず、結婚を機に仕事を辞める女性が多かったそうです。
しかし、1980年代初頭に男女雇用機会均等法が施行され、女性の地位向上と社会進出が著しくなり、自分に自信を持つ女性が増えてきたそうです。
加えて、週刊誌等マスコミによる性の情報が氾濫し、一人の男性に尽くす貞操観念が薄らいできたのが、通常言われている朧月夜人気の理由らしいです。
そう言われてみると、女性の社会進出と、不倫のそれぞれを成し遂げて大人気を博した芸能人の名を、私は思い出すことが出来ます。

その人の名は松田聖子!

彼女は、郷ひろみに憧れて芸能界入りして恋人にまでなったのですが、郷ひろみに芸能界引退を引き換えにプロポーズされたのを断ったという有名なエピソードがあるのです。
そして、歌をやめないでいいと言った神田正輝と結婚し、働く女性の救世主的存在になったのです。
しかも、そればかりでなく、私はマスコミの捏造だと信じて疑わないのですが、彼女は結婚していたにも関わらず、次々に男性と浮名を流し、不倫する女性達の心強い味方でもあったのです。

また私に朧月夜の魅力について、こんな事を言った女性がいます。
私が以前、メールで親しくしていた童話作家の女性は、紫の上を、たしかに幼い頃は可愛いけど、光源氏の意のままに操られ、たった一人の男性に縛られるなんて、つまらない。それに比べれば、朧月夜は光源氏の兄、朱雀帝にも愛され、自由奔放に不倫を楽しみ、生き生きと人生を楽しんでいる感じがして、朧月夜の方が好きだと昂然と放ったのです。
その文章を読んで私は、この女性が愛情を束縛と捕らえているとしか感じられず、結婚はしていたようでしたけど、ご主人を本気で愛した事はないんだろうなと思いました。

今の世の中、朧月夜が好きな女性には、彼女みたいに、愛情を束縛としか感じられず、ただ一人の男性に愛情を捧げるのを嫌がる女性が多いのでしょうか?
でも源氏物語を読むと、不倫を楽しんでいたはずの朧月夜でさえも、最後は出家して、あれほど好きだった光源氏の元を離れて行くのです。
朧月夜が、いよいよ出家するという日に、光源氏は未練がましく追いかけて、こんな言葉を朧月夜に言うのです。
世をお捨てになっても、毎日の回向の時には、まず第一に私の事を祈って下さるでしょうと、しみじみ思っております。

それに対し、朧月夜は、こう突き放すのです。
回向はすべての人のためにするものですから、どうしてあなたの分も祈らない事がありましょう。

この朧月夜の言葉を、かっこいいと受け取る向きもあるかも知れませんが、私はそうは思いません。
たしかに朧月夜は光源氏に愛されたかも知れませんが、不倫を楽しんでいたのかは疑問なのです。
当時は一分夫多妻制なので、光源氏は朧月夜と結婚出来たにもかかわらず、ただ肉体関係ばかりを求められ、結婚させてもらえず、彼女自身、セックスの奴隷になって、光源氏となかなか別れる事が出来なかった。
そうして、光源氏との関係が二十数年間続き、四十代を過ぎて、はっと気がついた。
朧月夜が、光源氏にかけた言葉は、光源氏への愛情が薄らいできた事もあるかも知れませんが、実は自分自身の性欲に決着をつけたくて発した言葉のようにも思えてならないのです。
ただ一人の男性に愛情のすべてを注ぐのを女の幸せと感じた紫の上。
その一方で、不倫を楽しみ、女性の自立の代弁者の如く受け取られている朧月夜。
私は、この相反する二人を源氏物語に登場させる事で、作者の紫式部は女性の生き方や愛情の持つ意味について、深く考えてほしいと読者に提示したかったのではないかと思われてならないのです。

源氏物語の魅力その11 六条御息所

2010-08-03 06:36:02 | 源氏物語
随分、長い間、お休みしていました。
久しぶりに、源氏物語のお話です。
今回、私が書くのは六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)という女性についてです。
この女性は、源氏物語の中ではかなり異質な存在で、光源氏の愛情を十分に受けられない事から嫉妬の虜となり、生き霊になって、光源氏の愛する女性を、次々に呪い殺してしまうのです。

この六条御息所は、どんな女性なのかと言いますと、早世した東宮の元妃で、身分、家柄、教養、美貌、どれをとっても申し分がなく、とてもプライドの高い女性なのです。
この二人が初めて出会った時、御息所は24歳、光源氏は17歳の若さでした。
この御息所が、7歳年上というのも、かなり重要なポイントで、年下の男性に誘惑されて、からだを許してしまった事が、彼女のプライドを傷つける一因になっているのです。
しかも、御息所は、からだを許してからも、常に品格を重んじて、光源氏に気安く声をかけさせない雰囲気を持っているのです。
御息所の不幸は、まさにこのプライドの高さにあったと言っても過言ではないと思います。
そんな気位の高い御息所に、光源氏は一緒にいても心が休まらず、次第に心が離れ、足が遠のいていくのです。
しかし、一旦光源氏を好きになり、からだまで許した六条御息所は、冷たくなった光源氏を恨むのではなく、自分よりすべてにおいて劣った光源氏の愛したほかの女性達に嫉妬の矛先を向けてしまうのです。
だけど、彼女自身、嫉妬の炎を燃やすのは恥ずべき事だと思って、かなり悩むのです。
そうして悩みあぐね、眠れぬ夜を過ごすうちに、魂がひとりでに抜け出し、生き霊となって、光源氏の愛する女性のもとに飛んでいき、従順で可憐な夕顔を呪い殺してしまうのです。
そして、次に光源氏の正妻の葵の上の命までも奪おうとするのです。
六条御息所は、自分の魂が病床にある葵の上のもとに飛んでいき、殴ったり、髪の毛を引きづり廻す夢を見ます。
夢から覚めた彼女はなんて恐ろしい夢をと、恐れおののき、自分の身内にひそむ暗い情念に涙するのです。
御息所の魂が生き霊になって呪い殺してしまうのは、たしかに恐ろしいのですけど、でも当の御息所自身、悩んでいるんですよね。
それを思うと、趣味教養智恵分別のすべてにわたって、寸分の隙もない、品格のある女性が、ほかの自分よりも劣った女性に負けた時の悔しさや悲しみは、インテリ女性の悲しい一面を見るような気にならざるを得ません。
例えば、普通、男性はたとえ美人であっても、自分よりも賢い女性は却下する傾向にあると思うのです。
可愛くて、ちょっと頭が足りなさそうで、自分の言う事を素直に聞きそうな女性の方が、美人でプライドがあって賢い女性よりも絶対モテますよね。
あれは、インテリ女性からすると、かなり悔しいんじゃないですか?
頭の悪い女性の方がモテるというのは。(笑)
そういう意味で、六条御息所という女性は、インテリ女性のプライドや、心の奥底にひそむ暗い情念、苦悩を白日のもとにさらしてくれて、私にとって、源氏物語の中で、とても気になる女性の一人なのです。


お知らせ
源氏物語のアーカイブを設けましたので、以前書いた文章が気になる方は、どうぞお読み下さいませ。

源氏物語の魅力、その10

2009-12-18 17:08:56 | 源氏物語
前回、私が藤壷を好きな理由として、5歳年下の義理の息子、光源氏と道ならぬ恋に落ちて、子供まで身ごもってしまった、その切なさにあると書きましたが、それだけではありません。
それまでは、か弱いイメージが付きまとう藤壷なのですが、子供を産んだ途端がらりと変わります。
藤壷の夫の桐壷帝、つまり光源氏の父親は天皇に当たる身分で、その妻が不義の子を産んだとあっては敵対する相手に恰好のスキャンダルを与える事になってしまいます。
そこで、藤壷は不義の子である事を隠し、光源氏を遠ざけ、我が子に汚点がつかないよう強い母として生きるようになります。
競争の激しい後宮で、気の強い宿敵と対等に渡り合ったりもするのです。
まさに、「女は弱し、されど母は強し」の言葉通りの生き方をするのです。
この藤壷の生き方。
私も二人の息子を持つ母親として、ぜひ藤壷を見習いたいものです。

それにしても、子供って成長するに連れ、子育ても難しくなってきますよね~。
今、うちの息子は二人とも中学生なのですが、ちょっと反抗するようになってきて・・・
でも、これは子供から大人に成長する自立心の現れだと思いますので、適度に距離を置いて、出来るだけ子供を信頼して任せようと思います。

だけど、子供の成長が楽しみな反面、淋しい思いにとらわれる事もしばしばありまして・・・

小学生の頃みたいに、また一緒にお風呂に入ってくれないかな~(笑)
 
 
 
 
 
 

源氏物語の魅力、その9

2009-12-14 09:05:09 | 源氏物語
源氏物語には、光源氏に愛される女性達が多数登場します。
純情可憐な女性
良妻賢母型の女性
世間知らずで控えめな女性
嫉妬深い女性
明るく自由奔放な女性

その女性達の中には思わず憧れずにはいられない人物もいますが、自分と同じような面を持っていて、ハラハラドキドキしながらストーリーを追っていく女性もいます。
ここでは、そうした女性達について書いてみたいと思います。

まず、私が書きたい女性の筆頭は光源氏の義理の母親、藤壷です。
藤壷は、光源氏の亡き母親の後に父が再婚した女性なのですが、光源氏はこの義理の母親に恋心を抱いてしまうのです。
しかし、この藤壷は、義理の母親と言っても、光源氏と五歳しか離れていなくて、しかも亡くなった実の母親に瓜二つなのです。
その藤壷に、光源氏は母親の面影を求め、次第に好きになっていくのです。
だけど、この時光源氏はすでに結婚していて、セックスの経験もあり、藤壷をただ好きなのではなく、身体まで求めてしまうのです。
最初に光源氏と藤壷が体の関係になったのは、藤壷のお付きの女房にはかられて、レイプ同然で光源氏に体を奪われたからなのですが、それから藤壷も光源氏が忘れられなくなり、ここから藤壷の苦悩が始まるのです。
好きになってはいけない義理の息子が好きになり体の関係にまでなってしまった。
このままではいけないと思いながらも、藤壷は光源氏の誘いを断り切れないのです。
藤壷の気持ちを考えれば、年下の男性に好かれるのはとても嬉しい事なのではないでしょうか?
しかも、その相手が美貌の誉れ高い光源氏と来れば、なおさらの事。
私だって、5歳も年下の男性に言い寄られたら、私もまだまだ捨てたものじゃないわと言って大喜びする事でしょう。(笑)
だけど、自分が結婚していて、その相手が義理の息子であるところに藤壷の苦悩があるのです。
しかし、その藤壷の気持ちを知ってか知らずか、光源氏は何度も迫って来て、ついに藤壷は抗しきれなくなり、からだを何度も許してしまうのです。
この藤壷の辛い胸のうちを思うと、私は切なくて哀しくてたまりません。

そうして、藤壷は光源氏に抱かれたあげく、赤ちゃんまで身ごもってしまうのです。

藤壷の置かれた立場と、光源氏を愛するがゆえの辛い胸のうちを察すると、私は女性の弱さや、愛情とは何かを思わずにはいられないのです。

源氏物語の魅力、その8

2009-12-04 07:27:29 | 源氏物語
今日はちょっと本筋から離れます。(笑)


前回、光源氏は夜中にお姫様の寝室に忍び込み、いきなり体を奪うと書いたのですが、書いてる私自身びっくりしちゃいました。(笑)

お姫様って大変!

相手が光源氏みたいにいい男だったとしても恐いし、ずいぶん乱暴な手段ですよね~
ましてや、暗がりで、どんな男性なのか分からない訳ですから。

もし私がそんな事されたら?

冗談じゃないわよ!
(笑)

ただ、この時代の男性は、体を手に入れた後は通い婚という形で妻にし、最後まで面倒を見て、その辺のケジメはあったみたいなんですけど・・・
ところで、これって、あれに似てるなぁと思われた方いらっしゃいません?
もしかしたら経験のある方もなかにはいらっしゃるのでは?

その、あれとは、まさしく夜ばいです。(笑)

そういう風習が昔あったと、私は聞いた事があります。

もちろん、私は夜ばいをされた経験はありませんよ。(笑)
痴漢に遭った事はありますけど。
つい先日も、油断した隙にさわられてしまいました。(笑)
でも、昔の恋愛は体と同時に始まったような気がしますね。

最初はただの知り合いから始まり、いつの間にか恋愛感情が芽生え、やがて体まで欲しくなる。

これが、私達の考える普通のSexへ至る行動パターンだと思いますが、年頃になると性欲も芽生えてくる訳で、昔は性欲にとても正直で、恋人が欲しいイコールSexという捉え方だったのではないでしょうか?
それは男性に限らず女性も同じだったと思います。

昔、こんな話を聞いた事があります。

それは今から数十年前の事。
女性は年頃になると体をわざと露出したと言うんです。
例えば、夏になるとお庭で桶を使って行水をしたりとか。
もちろん、着衣は一切身につけないでですよ。
一方、男性はと言えば、垣根越しにそれを見て、気に入った娘だったら、その日の夜に娘の寝室に忍び込み抱いたと言うのです。
そして、結婚。
昔は、今と違って十五・六で結婚する女性が多くて、悠長に恋愛に時間をかけられなかったから、こんな事をしていたのかも知れませんね。

そういえば、いいなずけと言って、親があらかじめ決めた人と結婚する女性もいたらしいです。

私の好きな漫画家の大和和紀さんも「ハイカラさんが通る」で主人公の紅緒さんが金髪の少尉といいなずけという設定のお話を描いています。


瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても 末に逢はむとぞ思う


あ~また泣けてきた・・・・

知ってる人にしか分からない。(笑)

今は結婚という形態に捕われないで自由に恋愛出来ますが、女性が相手を選べない、こんな不遇な時代もあったのですね。

源氏物語の魅力、その7

2009-11-27 08:17:31 | 源氏物語
みなさんは、光源氏が沢山の女性にモテた事で、光源氏がどんな手口で女性を次々に自分のものにしていったのか、とても気になっていると思います。

類い稀なる美貌と、知性と優しさを兼ね備えた光源氏の女性の口説き方。

光源氏はどんな甘い言葉をささやくのでしょう。

ところが、驚くなかれ、光源氏は夜中にこっそり意中の女性の寝室に忍び込み、女性が驚き慌てふためく様を、半ば強引に体を奪ってしまうのが殆どなのです。


これ、はっきり言って、レイプじゃない?
光源氏、全然、優しくない!

普通、お付き合いって、おしゃべりから始まり、だんだん体の関係になると思うんですけど、光源氏の場合、いきなり体を奪ってしまうのです。

これは、現代に生きる女性にとって、かなりショックな方法です。

だけど、当時の貴族社会はそれが一般的だったようです。
と言いますのも、この頃の姫君達は女房と呼ばれるお付きの者達のお世話になり、お屋敷の奥深くに蟄居していたみたいですから。
そういう訳で、光源氏はやすやすと姫君と出会うチャンスはなかったのです。
だから、「あの姫君はとても美しいらしい」という人のウワサを頼りにするしかなく、光源氏は顔もよく分からないまま、女性と事に及んでいた事になります。
そこから、美人ばかりでなく、お婆ちゃんとやっちゃうみたいな本人には笑えない事まで起きてしまうのです。

そうして姫君達は、俗世間と隔絶した生活を送っていましたから、うぶで世間ズレしていなくて、男性に顔を見られるだけでも恥じらったと言います。

男性に顔を見られるだけでも恥じらった。

なんて、この頃のお姫様は純情でかわいらしかったのでしょう。

でも、だからこそ、光源氏に体を奪われても大声で助けを求める事は出来なかったのです。
だけど、この時、光源氏はプレイボーイらしく、「びっくりなさったでしょうが、前々からお慕いしておりました。決して出来心ではありません。信じて下さい。この機会を待ち望んでいた甲斐がありました」と言って、姫君の体を抱くのです。


そう言われた姫君は最初のうちこそ、びっくりするのですが、相手が光源氏と分かると、安心して体をまかせるのです。

それほど、光源氏の美貌・才気・地位・名声・財力・家柄すべてに於いて、ほかに並ぶものもないくらい素晴らしいと世間に知られていた事になります。

これでは百人の男性が束になっても敵いませんよね。

まさに、スーパーヒーローと言ったところですね~

でも、光源氏を褒めてばかりいると、なんだか男性読者が、私からだんだん離れていくような気がしますので、この辺でやめときます。(笑)