シアワセな男（温泉礼賛）

仕事帰りの温泉がほぼ日課になっている男がいます。
家の風呂には週に１回くらいしか入らない。

まず体を洗って露天風呂へ。
温かい湯船に浸かってあー気持ちいい。
男は満足そうな表情でつぶやきます。
「あー、シアワセだー」

その後サウナに入って適度に汗を掻き、
水風呂に頭まで全身で浸かって火照った身体を鎮めます。

その後露天出て寝台に横になります。
これは雪が舞う真冬でも欠かしません。
そんな時ふっと意識が遠のくような恍惚感に襲われます。
そして再びつぶやきます。
「あー、シアワセだー」

洗い場で洗髪したあと、仕上げで内風呂に浸かります。
浴槽の縁を枕代わりに後頭部を載せ、
手足を伸ばして目をつむり、あおむけの身体を弛緩させます。
この時タオルを頭から額の方にずり下げて目隠しすると、
よりリラックスできます。

浴槽の縁の後頭部と浴槽の底に着いたかどうかのかかと、
お湯の中で感じるえも知れぬ浮遊感に、男は三たびつぶやきます。
「あー、シアワセだー」

シアワセな男は、とてもやさしい気持ちになるのでした。
シアワセなマンカインド。
これだから温泉は止められません。
温泉は身近でとても効果のある慰安です。

日本人に生まれて良かったなあ。
と男は今日もしみじみするのでありました。