
地区防除協議会が運営する防除へりが会社の前に飛んできたので
2階の窓からパチリ。
共同防除の4回目、穂が傾いてきたこの時期に散布する
農薬はカメムシ対策のスタークルです。
とどめの意味で今回の殺虫剤散布なのでしょうが、
今月初めに出穂している品種だったら、
すでに3週間が経過しているので、
カメムシによる被害はある程度確定している時期でもあります。
実際は出穂のタイミングで今月初めに3回目の防除はおこなっていますが。
現在の共同防除は防除協議会に委託して、一部のスタッフが
無人ヘリを操縦して農薬を散布してくれます。
この方式に転換して20年は経過しました。
それ以前はと言うと、田んぼの耕作者つまりわれわれ生産者が
村単位(生産組合と言う組織)で集まっては、
大型ダスターや背負い式の動力散布機を使って
自ら粉剤を散布していました。
粉剤だから風のない早朝や夕方が狙い目です。
朝5時にはもう散布が始まっていました。
時には粉まみれになりながら、粉塵マスクを着けているとはいえ
真夏の朝晩と辛い過酷な作業でした。
中には体調を崩してリタイヤする人もいました。
風や雨降りは中止。
したがって共同防除の日程が迫ってくると
天気予報を眺めつつ憂鬱な気分になったものです。
村の田んぼおよそ70町歩を網羅するのですから、
朝だけではおわりません。
夕方3時ごろにはまた集合して再開します。
これが夏にやはり4回はあるのです。
だからなるべく早く終わらせたい。
いきおいある程度風が出てきて、
散布した粉剤が瞬時に風下に飛んで行こうがお構いなし。
いわばやっつけ仕事のように兎に角振り終ればいい、
という状況も毎年のようにありました。
この共同防除は実際のところ、病気や虫が発生する前の
予防的措置です。これが疑問でした。
農薬は病気や虫が発生して必要に迫られたら散布すれば良いのではないか?
この考えが私たちが減農薬米や無農薬米(現在ではこの言葉は使えません)に
取り組むきっかけになりました。
ところがこの頃大半の農家は農薬散布至上主義的感覚に洗脳されていて、
「農薬を散布しないといもち病が発生する」
と公然と批判の対象になりました。
太ももの創業者佐藤と加藤の2名は、農薬を使わない米作りを始めるにあたって
「カモを脱走させない」
「病気の発生源にならない」
と決めて取り組みはじめたと言います。
現在は防除を無人ヘリ散布に委託するのをやめて、
ドローンなどを使って農薬散布を行う個人や組織も増えてきました。
ここでは必要に応じて、という選択が可能になります。
コスト削減にもつながります。
長年続いた共同農薬散布が米の増産、品質向上に果たした役割は
確かににあったと思われます。
しかしササニシキ単作だった時代はとうの昔、
多新種が混在する現在の圃場で、年間計画として一斉に同じ日程で
散布してしまうのはいかがなものか。いや共同だからそれはある程度
しょうがないというジレンマもあることでしょう。
ともかく熱いさなか、炎天下の下、
人影が消えた田んぼをひたすら移動しながらヘリを飛ばす
スタッフの皆さんはたいへんご苦労様です。
厳しい暑さが続く長い夏、
日照りか豪雨かという極端な気象災害。
防除しているとはいえ年々酷くなる印象のカメムシ被害。
気象のフェーズが変わってきて、年々新たなリスクが高まっています。
この先、耕作者がどんどん減少して行く状況で、
共同防除はどう展開してゆくのでしょうか。