農村ライフ 日々是好日

山形・庄内平野でお米を作る太ももの会広報部長の農村日記

気配のコミュニケーション

2011-04-09 23:59:16 | 映画
映画を撮り続けて50周年を迎える山田洋次監督。
監督が選んだ日本映画の傑作100本が、
NHKBSシネマで順次放映されます。
(最初は家族篇50本)

BSシネマ 山田洋次監督が選んだ日本の名作100本~家族編~

その中には、私が若い頃観て好きだった作品もいくつか含まれていました。

「泥の河」1981 小栗康平監督
「家族ゲーム」1983 森田芳光監督
「ウホッホ探検隊」1986 根岸吉太郎監督
「異人たちとの夏」1988 大林宣彦監督
などなど。

「異人たちとの夏」は原作が山田太一で、
映画化されてすぐ山形市のフォーラムまで観に行きました。

生まれ育った浅草で男(風間杜夫)が出会ったのは、
小さい頃に亡くなったはずの両親(片岡鶴太郎、秋吉久美子)でした。
懐かしさと安らぎを求めて男は両親の元へ通いますが・・・

選に入ったコメントを求められて、
それに対する大林監督のお話が興味深かったので再現してみます。

「人は必ず誰でも死にますけれども、
誰かがその人のことを覚えている限り、
まだこの世にいるんですね。

たとえば僕が目を開いてみても、
父も母ももう死んでいませんけれども、
目を閉じるとね、ここに(頭の背後左右)
父と母がちゃんと生きているんですよね。

そういう気配の中に僕たちは生きているわけでね。

映画というものは、映像だからといって、
目で見えるものだけを撮っていくだけでは映画にならないんです。

映画というのは、目を閉じて、目に見えない後ろに在る
気配を写し撮っていく、これが映画なんですよ。

日本人のコミュニケーションは気配なんですよ。

ヨーロッパ人は石の穴の中で暮らしてきましたからね、
「我思う故に我有り」なんて哲学は生みますが、孤独なんですよ。

日本人は木と紙の家に暮らしているから、
どんな大きな家でもみんなの気配が感じられるんですよね。

だから多くを喋らなくても、いちいち「アイラブユー」なんて言わなくても
そういう人の願いや祈りが伝わってくる。

そういうコミュニケーションの中で育っているから、
実は死んでいる人と付き合うことの上手な文化を持っているんですよ、日本人は」


大林監督らしい言い回しなのですが、
とても心に染み入るお話しです。
「誰かがその人を覚えている限り、その人はまだこの世にいる」
亡くなった人を思い、その気配を偲ぶことが供養であり、
生きている人の気配から、お互いを思いやることが修養なのでしょうか。


山田洋次監督が選んだ日本の名作100本
明日は「鉄道員(ぽっぽや)」(1999 降旗康男監督)です。
NHK BSプレミアム
毎週日曜日 22:00~