龍の尾亭<survivalではなくlive>版

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『デザインド・リアリティ 半径300㍍の文化心理学』を読んでいたら

2013年01月07日 00時15分11秒 | インポート
『デザインド・リアリティ 半径300㍍の文化心理学』有元典文・岡部大介(北樹出版)

を読んでいたら、とつぜんユクスキュルの「環世界」概念と、スピノザの表象知(イマギナチオ)についての言及があって、ビックリした。

私たちは現実で(物自体)ではなく、デザインされた文化=環境を受け止め、その中で生きている、

という考え方から人間の心理を捉え直そうとする「文化心理学」の本です。
面白い。

ちょっと皮肉に聞こえてしまうかもしれないけれど、福島県は大震災と原発事故によって外部から「デザイン」された「現実」を生き始めています。

今までは精神が物質や肉体をコントロールするというデカルト的二元論の、この本でいう
「中枢コントロール」
の考え方が支配的でした。

けれど、今はスピノザ的な
「世界コントロール」
の考え方で、つまりは社会的文化的にデザインされた「環世界」において、私たちは欲望したり悲しんだり喜んだりしているのであり、私たちが世界を認識するということは、自分が自由かつ主体的に全てをコントロールしているという「夢」をみるのではなく、むしろどのような「可能性条件」の中で「主体」は必然を生きているのか、から考えていかねばならない……。

そういう視点で書かれたこの本は、非常に示唆的に感じられます。

スピノザの「エチカ」=哲学を参照しつつ、福島に住みながら「共に生きる理(ことわり)」を考えて行きたい、ということの意味の大きな側面の一つも、ここにあります。

なぜって、「世界」を知ることはいつだって、人間の知性にとってかけがえのない大きな喜び、であるはずですもの。