りゅーとライフ

(MiddleTown Dreams)「りゅーとぴあ」と「ビッグスワン」をフランチャイズに新潟生活を楽しんでいます。

橘木俊昭×浜矩子著 成熟ニッポン、もう経済成長はいらない。「灘高の半分が医学部志望。ニッポン、もうダ

2012-01-07 10:09:31 | 

Sei

  お正月、橘木俊昭×浜矩子氏の対談の本「成熟ニッポン、もう経済成長はいらない。それでも豊かになれる新しい生き方」を読む。橘木さんは格差論の第一人者で、かなり前からフォローしているのだが、本書は対談本ということもあって、正直言って、内容が薄く、「まぁ、立ち読みでも良かったかな…。」というのが正直な感想。

   それでも読みどころは少ないながらもあって、「現在の日本は人材面で偏在がある…。」という部分はなかなか興味深かった。

 地方進学校の医学部志向が急激に強まっているという報道は、かなり前から目についていたが、本書の中で「現在、灘高の半分が医学部志望。」という橘木氏(橘木氏は灘高から小樽商大という経歴)の指摘には、「実質、私立のトップ高である灘高でさえも、医学部指向がここまで…。」と改めてショックを受けた次第。

 実際、灘高では、従来、東大や京大などの工学部、理学部を目指していた理系トップ層の受験生が、地元の国立医学部狙いに急激にシフトしていると言う。
 ご存知のとおり、灘高は西の雄として、東大進学者数を首都圏の開成高校などと争っていた訳であるが、近年、国立医学部を目指す生徒が急増、結果的に東大理工系(理Ⅰ、理Ⅱ)の合格者が激減していると言う。

 まぁ、地方に住んでる人間の目から見ると、地方(関西圏を含む)の秀才がこぞって国立大学医学部を狙うと言うのは現状では無理もない…と言うのは正直な感想だ。

 まず、地方では医者という職業の圧倒的に魅力的(少なくとも見える)と言うことがある。
 実際、地方に住んでいると「医者」と言うのは特別な職業、少なくとも、そう一般に思われても仕方がない状況が現実にはある。まず経済的な点で医者は圧倒的な高所得という側面がある。大部分の県の高額納税者の上位には、会社経営者とともにずらりと医師が並ぶのが現状だ。まぁ、その多くはある程度のリスクをおかして成功した開業医(経営者)な訳であるが、経済的に恵まれないと言われる勤務医であっても、40歳を過ぎれば、地方レベルでは断トツの高給取り…ということになる。
 高所得のサラリーマンが多い東京圏なら、果たして、医者になることは、その激務の対価としてペイするのか?…と疑問符が付くのだろうが、高額所得者が極めて少ない地方では医者の経済的アドバンテージは圧倒的で、医者=お金持ちと思われているのが実態だ。(勤務医の激務ぶりは確かに問題で、ペイしているかは個人的には疑問だけど…。)

 それに加え、社会的プレステージ(?)という点でも地方では医者は断トツの存在である。東大を初めとして高学歴者が多い東京圏に比べて、相対的に地方での高学歴者は少ない訳で、そんな中で医学部卒業の学歴は地方では、ほぼ最高のものだし、医療訴訟などで医者の威信が落ちているといっても、まだまだ医者の社会的プレステージは高いのが実情だ。

 とりあえず入学し国家試験に受かれば、まず医者になれ、少なくとも経済的な安定を手に入れられる…となれば「医学部」人気が高まるのは当然だろう。リーマンショック後、他の職業がより不安定を増している現在、医学部人気は高まりこそすれ、衰えることはないのではないだろうか。

 しかし、語弊を恐れずに言えば、単なる地方進学校であればともかく、灘高のような日本の将来を担う人材を育成するべき超トップ進学校でここまで医学部指向が強いという現状はいささか異常というか、人材の有効配分という面で歪んだ構造なのではないだろうか?
 
  昭和30年代、科学技術が輝いて見えた時代、京都大学の最難関学部は理学部、それに工学部の一部学科であったと言う。(今となっては信じがたい話だが…。)そのような優秀な人材がこれまでの日本の成長を支えてきたのは間違いないことだろう。

 医学部に有能な人材が行くことについては否定はしないが、リスク回避指向で医学部人気が絶頂、理工系に行く奴は経済的に恵まれない…という現状をもっと政府、産業界、教育界はもっと憂えるべきではないか…とエラソーに思ってしまった次第である。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ワタシは医学部の定員を今の1.5倍くらいまで増やし... (ホイトル)
2012-01-07 22:32:14
ワタシは医学部の定員を今の1.5倍くらいまで増やして、
医者の貴重価値を減らして
「医者にさえなれば食いっぱぐれはない」という現状を
改めてしまえばいいと思っています。
(ワタシの知る限り多くの医者はこの考えに反対しています)
いくら有能でもリスク回避指向で医学部に行くヤツなんか医者になっても仕方ないです。

あと、軽症疾患の薬は健康保険から外すのかいい。

乱暴かな、この意見(笑)
「紫頭おばはん」の本にお金払うなんて、もったい... (長い猫)
2012-01-08 01:06:03
「紫頭おばはん」の本にお金払うなんて、もったいない~www
日本がつぶれてもいいと思っている人の本など
ドブに捨てたほうがましですよ。

『「日本経済ダメ論」のウソ』三橋貴明&上念司はいかがでしょう?

新大医学部の学生に関して、特に新潟出身の学生は
非常に志が高いそうですよ。
一方、他県出身者は国語の配点に魅かれてくるだけの学生も
なかにはいる、とも聞きました。
新大は配点や、センター試験へウエイトを置いている
現状を再考すべきではないでしょうか?
ずいぶん人材を取り間違えている気がしますが。

医学部志望の子供さんは小さい頃から連日の
塾通いに堪えていますよね。
ほんとうによく勉強しているようです。
長年にわたる努力は、ステイタスや収入の高さで
報われて当然と思います。

灘高に関しては、お話によると
最近の生徒はなんだか人間がちっちゃいですね。
官僚や学者になって日本を動かそう、なんて人が
灘や開成に集まるのだと勘違いしていました。
ホイトルさん、コメントありがとうございました。 (りゅーと)
2012-01-08 15:24:23
ホイトルさん、コメントありがとうございました。

 いただいたご意見、全く同感です。
 
 少なくとも新潟県は医師養成機関が新大1校というのは人口規模が新潟県の1.2倍程度の北陸3県にちゃんと国立3校(私立を合わせると4校)あることを考えると、流石に少なすぎ…と思いますね。

 財政赤字が1000兆円超え…と問題になっていますが、現在、圧倒的に大きなウエイトを占めているのが年金と医療費の社会保障関係なので、チマチマしたところを減らしても、抜本解決に全然ならないんですよね。

 今年もよろしくお願いします。
 長い猫さん、コメントありがとうございました。... (りゅーと)
2012-01-08 15:33:14
 長い猫さん、コメントありがとうございました。確かに内容のない本でした。橘木さん目当てで買ったのですが、最近キレがないですね。

 医学部に入る(というか医者になる)能力・労力は大変なものがあると思いますが、本人の特性が問われる職業なので、学力が高いから医学部狙い(という周囲からのプレッシャー)という傾向は良くないと思いますね。

 この問題は長く理工系の人材を優遇してこなかったツケというか、歪みが大きいと思います。(理工系は大変な割に報われないというイメージが定着しているんじゃないでしょうか? 私は経済学部卒ですが、本当に大学の時、勉強しなかったなぁ…。)

 将来の進路の選択には経済的要因を外すことはできませんが、本当に優秀な人材は、やはり特性を活かして、大きく羽ばたいて欲しいですし、そのようなシステムを構築すべきではないでしょうか。

 これからもよろしくお願いします。

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