とんねるずイズム「男男-2」というタイトルで以前アップした記事を、改題・加筆修正して再掲します。
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最近、バディもの、あるいはあたらしい用語である「ブロマンス」ものへの関心が高まっています。日本でも、男性ふたりのコンビを主人公にした映画やドラマが、ここ2、3年たてつづけにつくられています。
歴史的に見て日本では、映画よりドラマのバディもののほうが成功する率が高い(近年最大のヒットは「相棒」)ので、最近映画でもバディものがふえているのは、ちょっとあたらしい傾向といえるかもしれません。
ただ、バディものをつくったり観たりするときに、もしも「1人ではお客をよべないから2人出してるんだろうなあ」という見方をしてしまうと、バディもの本来のありかたから大きくはずれてしまうことになる。
本来のバディものにおいては、これはまったく逆。むしろ「強い1人同士を組ませてもっと強い2人にする」というのが基本的な考え方なのです。
たとえば、近年ヒットしたバディ映画といえば、ガイ・リッチー監督の『シャーロック・ホームズ』シリーズがありました。ホームズをロバート・ダウニーJr. が、ワトソンをジュード・ロウが演じた。ふたりの俳優の相性、そこから醸し出される色気、といった諸々の要素がまさに伝統的バディ映画を踏襲していて、高い人気を呼びました。
特に、ワトソン役を美男子俳優のジュード・ロウが演じたことが大きかった。ホームズものの慣習からいうと、ワトソン役には落ちついた年配の役者や個性派俳優(ありていにいえば三枚目)が演じるのが通例。これを超イケメン男優が演じたことによって、ホームズ譚が潜在的にもつバディ的要素が際立ったわけです。

この映画のキャスティングをするとき、果たしてプロデューサーはこう言ったでしょうか、「ダウニーJr. ひとりじゃ弱いなあ。ジュード・ロウでもくっつけとくか」と?
そんなはずはありません。
それぞれひとりでも客を呼べる立派な「一枚看板」である。そんなふたりがまさかのコンビを組む。そこに強力なパワーが生まれるわけです。「1人じゃ弱いから2人」なんかでは決してない。2人でなくてはならない理由が、ちゃんとあるのです。
つまり、本来バディものというのは「強いスター」がいてこそ成立するのです。
おなじシャーロック・ホームズ系列で、2010年からBBCが制作しているドラマ「シャーロック」は、新時代のバディものとして世界中に旋風を巻き起こしています。

舞台を現代におきかえたため、フラットシェアするシャーロックとジョンがしょっちゅうゲイカップルだと誤解されるという、まさにニューエイジ・バディの要素をふんだんにちりばめてある。そのような関係が「ブロマンス」ということばであらわされることもしばしばです。
じつは、ブロマンスとバディものというのは、かぎりなく重なるようでいて、微妙にちがうジャンルでもある---というのが、わたしの持論です。これについては長くなりそうなので、もうすこしかんがえをまとめてから、後日あらためて書きます。
とりあえずこちらの記事をご参照ください→とんねるずイズム5「男男-1」
さて、バディ映画が突出して多いのがアメリカです。
英文のウィキペディア記事Buddy filmがこのジャンルに関してなかなかよくまとまった解説をしています。
「バディ映画の歴史 History of the genre」の項を見ていくと、実に1930年代からこのジャンルがはじまったことが記されている。以下、ここであげられている作品を参考にしつつ、私見を述べていくことにしましょう。
バディ映画の先駆者は、30年代に大人気だったコンビ芸人、ローレル&ハーディ(極楽コンビ)でした。

コンビ芸人そのものは、はるか昔から存在した。あらゆる芸能、寄席、サーカスなどでコンビは活躍していたわけですが、映画において最初に成功したのはローレル&ハーディだった。つまり彼らこそ、バディ映画の元祖だったと言えるのです。
40~50年代にかけても、ひきつづきコメディアンのコンビたちがバディ映画を一手に引きうけていました。アボット&コステロ(凸凹コンビ)、クロスビー&ホープ(腰抜けコンビ)、マーティン&ルイス(底抜けコンビ)などです。
60年代に入り、スタジオシステムが崩壊して、パワフルなコンビ芸人がいなくなると、アメリカン・ニューシネマを担う俳優たちによって新しいバディ映画が作られるようになりました。
『明日に向かって撃て』(ニューマンxレッドフォード)、『真夜中のカーボーイ』(ホフマンxボイト)、『スケアクロウ』(ハックマンxパチーノ)など、70年代にかけてシリアスで悲劇的なバディ映画の名作が次々に誕生します(そこにベトナム戦争の影が落ちていたことは言うまでもありません)。

80年代に入ると、ふたたびバディ・コメディが復活。
『48時間』、『大逆転』、『大災難P.T.A』、『ブルース・ブラザース』等々、主にサタデー・ナイト・ライブ出身のコメディアンたちががんばった。80sキッズの聖典『バック・トゥ・ザ・フューチャー』トリロジーもマーティとドクのバディものと言っていいでしょう。
また刑事アクションのバディ映画も大量に作られるようになりました。ウィキでは『リーサル・ウェポン』となぜか『ダイ・ハード』を挙げていますが、個人的には、刑事もの+ロード・ムービー+バディものの合わせ技『ミッドナイト・ラン』(88)が傑作だったと思います。

90年代以降、ハリウッドのバディ映画はやや小粒なものが多くなりました。大ヒットしたのは『ウェインズ・ワールド』くらいでしょうか。
ベン・スティラー(『スタスキー&ハッチ』)やオーウェン・ウィルソン(『シャンハイ・ヌーン』)らフラット・パックと呼ばれる喜劇俳優たちがなんとかふんばって牙城を守ってくれてはいる。が、レベルは下がっていると言わざるを得ません(そこにブロマンス映画という新ジャンルのつけいる隙もあったのかも)。
変則的に生まれた傑作としては、女性のバディもの『テルマ&ルイーズ』がありました。

90年代後半から00年代にかけて新たなバディ映画の地平を切りひらいたのは、なんといっても映画監督のケヴィン・スミスです。
デビュー作『クラークス』から彼が一貫して撮ってきたのは、オタク男ふたりの友情物語。その中から、新時代のラブ・ストーリー『チェイシング・エイミー』、マット・デイモンとベン・アフレックの唯一のバディもの『ドグマ』、オタクドタバタナンセンス喜劇『ジェイ&サイレント・ボブ帝国の逆襲』などの傑作が生まれ、若者から圧倒的な支持を受けています。

ハリウッドが元気がないぶん、がんばったのが香港映画でしょう。
おそらく90年代にチョウ・ユンファ、トニー・レオン、アンディ・ラウ、レスリー・チャン、チャウ・シンチーといったスーパースターたちが誕生したことと無関係ではない。『インファナル・アフェア』などは、まったく新しい視点で描いた一種のバディ映画だと言ってもいいんじゃないでしょうか。おそらく00年代以降の韓国映画にも同じようなことがいえるんじゃないかと思います。

こうしてあらためて書いてみると、バディ映画の世界ってやっぱり奥が深い!
歴史と作品をまとめるだけで一冊本が書けそうです(ぜひ書きたい!)。
結局、バディものとは何なのか?
わたしなりにまとめてみると、こんな感じ。
一、バディものとは、ふたりの、同じくらい人気も磁力もある「強いスター」が共演しなくてはならない。
一、バディものとは、ふたりの男がはじめから、あるいは最後には、無二の親友とならなくてはいけない。
一、バディものとは、メインプロットに女性キャラを介在させてはならない。女性はいるんだかいないんだかわからないくらいな無個性なキャラでなくてはならない。
一、バディものとは、ふたりの男が生きるか死ぬかの危機を共に闘い抜くシビアな物語でなくてはならない。喜劇か悲劇かは関係ない。
一、バディものには、男の色気がなくてはならない。イケメンであることは絶対の条件ではない。くたびれたオッサンふたりであっても、ふたりの間に強力な絆が築かれていることがほのめかされさえすれば、観客は色気を感じるものなのである。
一、バディものは、女性客だけをターゲットにしてはならない。バディものにグッと来るのは実は女性より男性客のほうである。
いかがでしょう。ガチなバディ映画の視点から、過去の名作や最近のヒット作を見直してみませんか?
とても楽しく読ませていただきました。ありがとうございます(^・^)
バディものと聞いてすぐ出てくる映画は、メン・インブラックですかねー。
あとはバディじゃないけど、MI:4でのトム・クルーズとジェレミー・レナーあたりの、関係とかやりとりも面白かったです。なんか高い所から飛び降りる前にジェレミーが深呼吸したり変な体操したり(笑)ギリギリの状況下での、男たちが共有しているドタバタと緊張感を、ハタで観ていて楽しいというか(笑)
トムはイケメンですが、ジェレミーはそんなでもない(失礼)でも、この人すごい色気あんなーと、映画観てるいちに感じたのは、本人だけじゃない、周りの役者や設定、仲間との絆も、関係していたのでしょうね。
バディもの楽しいな!
シャーロックは、ブロマンス半分、バディ半分ってかんじかな?
ピンク研究1話のラストなんか、はあ?あんたたちそれデートって言うんだよ~?というかんじだったしね…(笑)
関係ありませんが、馬に詳しい人の話だと、(冗談でもなんでもなくまじめに語ったらしいですが)ベネディクトはトーカイテーオーと類似点が多く(顔立ちだけでなく、体の線なども含めて)、馬としては相当な美形らしです。
ここで注目したいのは、「馬としては」ってとこね。
人間なんですけどねー
『メン・イン・ブラック』、なるほどね~!
もうちょっと色気があればカンペキ(笑)
コメディであっても、コンビがギリギリのところで命を助け合うシビアさがあると
良いバディ映画と言えると思います。
そういう意味で「シャーロック」はもう近年まれに見る完璧すぎるバディものなんですよね。
>ベネディクトはトーカイテーオーと類似点が多く
そ、そうなんですか?(笑)
これはいったいどなたが仰ったんでしょう?興味ある~
いや、馬に詳しい人でベネディクトを語るって誰なんだろーと思って・・・
さっそくトーカイテイオーについて調べてみようっと(笑)
カワウソだったり馬だったり、ほんまにもう・・・(笑)
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=d-dDfG4GZAE
英語よくわからない!
スネイプ先生笑えるwww
アランとヒュー・グラントを演じてるということです。
いまリンク先は著作権上の問題で残念ながら見れないようですね。
本編放映後にどこかでアップされないか、待ちましょう・・・
ベネディクトのアラン・リックマンものまねはくりそつですなあ(笑)
ヒュー・グラントがいまいちわかりにくいけど・・・
わたしも聞き取りできません^^;