とんねるず主義+

クラシック喜劇研究家/バディ映画愛好家/ライターの いいをじゅんこのブログ 

ドリームガールズ

2007年02月28日 12時51分06秒 | 世界的電影
『ドリームガールズ』
(Dreamgirls ビル・コンドン監督 2006 アメリカ)


ジェニファー・ハドソンのアカデミー助演女優賞受賞を受けて、おくればせながら観てきました。

<あらすじ>
1962年。3人娘のR&Bグループ「ドリーメッツ」は、タレントオ-ディションに出場し拍手喝采を得るも優勝を逃す。それを見ていたカ-ティス(ジェイミー・フォックス)は、ドリーメッツをスカウト。ソウル歌手ジミー・アーリー(エディ・マーフィ)のバックコーラスグループ「ザ・ドリームス」として売り出す。しかしひとつだけ条件があった。リードボーカルをエフィ(ジェニファー・ハドソン)からディ-ナ(ビヨンセ・ノウルズ)に変えるというのだ。エフィはカ-ティスの恋人でもあったが・・・


トム・アイン原作のブロードウェイミュージカルの映画化、だそうです。

ミュージカルが少々苦手なわたし(たぶん、本物のブロードウェイを観たことがないからだと思う)ですが、ミュージカル映画は大好き。

大好きだけど、『ドリームガールズ』に関しては「まあまあの出来」という印象です。

いちばん盛り上がったのはオープニングじゃないかな?アマチュアコンテストの場面で、次々に登場するR&Bやソウルシンガーたち、熱狂する観客、舞台裏のかけひきなどをテンポよく見せていく。ステージの華やかさ、バンドがツアーを回る過程、と、歯切れ良く場面をつないでゆくのが、とてもかっこよかった。

しかし中盤あたりでドラマパートが始まると、それが急にスローダウンしてしまう。残念です。

ミュージカルナンバーは、一流の歌手たち(エディ・マーフィ、ジェイミー・フォックスも含め)が歌っているのだから、良くないわけはありません。ただ、ほとんど途切れなく熱唱につぐ熱唱になると、観客としては少々疲れてしまうんだなあ。

ステージで歌うシーンと、普通の会話を歌で見せるシーンと、両方ともみっちりあるので、メリハリがないんですよね。後者はいらなかったんじゃないかな、とわたしは思ったけれど・・・ミュージカル音痴だからそう感じるのかな?

映画のミュージカルだからこその良さって、あると思うんですよ。たとえば『ブルース・ブラザーズ』で、ジェイクとエルウッドがガチッと手錠をはめられ、次のショットではもう刑務所の中で「ジェイル・ハウス・ロック」を歌っている、というような。

そういうミュージカル映画ならではのマジックが、『ドリームガールズ』では見られなかった気がします。監督のビル・コンドンは『シカゴ』の脚本を書いた人なんだけどなあ。


そうはいっても、やはりマイケル・ジャクソン、マドンナ、プリンスで育った世代としては、モータウンミュージックの発祥、R&Bに始まり現代のラップ、ヒップホップへと続く音楽史をかいまみれたのは、エキサイティングでした。プロデューサーのカ-ティスが自動車販売業というのも、いかにもデトロイト(Motor City)らしい。

1960-70年代にはガンガン人の曲をパクってたというのもおもしろかったです(ジミー・アーリーの曲を白人歌手がパクって歌う場面は、いかにもアホっぽくて笑ってしまった)。


音楽はともかく、役者がいまいち。ビヨンセはまったく演技ダメだし、ジェニファー・ハドソンは良かったが演技者としてはこれからがスタートかな、という感じ(歌は超絶的にすばらしかったけれど)。ジェイミー・フォックスもやや硬い。

演技のできるダニー・グローバー、エディ・マーフィは出番が少ない。ローレル役のアニカ・ノニ・ローズはトニー賞も受賞しているブロードウェイ俳優だそうで、とても良かったですが、これまた大きな役ではない。と、いうわけで、ドラマパートでも深みが足りなかった憾みがあります。

だからこそ、というべきなのか、とにかくエディ・マーフィがすばらしかった。
そもそも、この役にエディ・マーフィをキャスティングしたことがエライと思う。

子供のように無邪気で、チャーミングで、クレージーで、セクシーで。でも音楽に関しては、常に時代の先をいっている。ジェームズ・ブラウンをモデルにしたとも言われるこの役(映画の中で彼がJBについて話すセリフもある)を、エディ・マーフィは完璧に演じていました。

っていうか、華があるのよね~やっぱ!
彼が登場すると、画面がぱあーっと明るくなる。

90年代以降、エディ・マーフィの映画スターとしてのキャリアは迷路に入っていましたが、『ドリームガールズ』の演技によって、今後ぜひ新境地を開いてほしいものです。

プロフィールを見たら、彼、まだ45才なのね!大昔からショウビズにいるような気がしてたけど・・・。サタデーナイトライブでは「ビル・マーレイと並んでもっとも才能あるタレント」と言われていました。

SNL出演当時(なんと20才の若さだった)の彼のコミックは、挑発的でちょっと怖いくらいだったけど、彼が80年代に出演した数々のヒット映画とともに、やはりわたしたちにはなじみの深いコメディアンですね。

アカデミー賞のセレモニーでは、受賞を逃した途端会場を出てしまったそうです。それだけこの役にかける思いが強かったのでしょうか。なあに、まだ若いんだから。応援してるよ、エディ!


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