きみをのみ おもひねにねし ゆめなれば わがこころから みつるなりけり
君をのみ 思ひ寝に寝し 夢なれば わが心から 見つるなりけり
凡河内躬恒
あなたのことだけを思って寝て見た夢なので、私の深い思いであなたのことを夢見ることができたのであるよ。
0569 でもご紹介しましたが、夢に人が出てくるのは、その人が自分のことを思ってくれているから、というのが当時の捉え方。それを踏まえると、この歌には「あなたが私のことを思ってくれているからではなく、あなたを思いながら寝た私自身の心ゆえに見た夢なのだろうなぁ」という嘆きが含まれていることがわかります。単に、愛しい人の夢が見られてうれしいという詠歌ではないのですね。