漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0608

2021-06-29 19:37:49 | 古今和歌集

きみをのみ おもひねにねし ゆめなれば わがこころから みつるなりけり

君をのみ 思ひ寝に寝し 夢なれば わが心から 見つるなりけり

 

凡河内躬恒

 

 あなたのことだけを思って寝て見た夢なので、私の深い思いであなたのことを夢見ることができたのであるよ。

 0569 でもご紹介しましたが、夢に人が出てくるのは、その人が自分のことを思ってくれているから、というのが当時の捉え方。それを踏まえると、この歌には「あなたが私のことを思ってくれているからではなく、あなたを思いながら寝た私自身の心ゆえに見た夢なのだろうなぁ」という嘆きが含まれていることがわかります。単に、愛しい人の夢が見られてうれしいという詠歌ではないのですね。