DJみならいのモデルガンブログ

20年近くだらだらと書いています。モデルガン、自転車などの記録。

KSC M92エリートⅠA ハードキック

2024-08-24 18:59:01 | ・KSC エリートⅠA

 今回はKSCのガスブローバックガン、M92エリート1Aを紹介します。この「1A」の部分はローマ数字のⅠとアルファベットのAなのですが、読みがワンエーなのかアイエーなのかは難しいところです(苦笑) KSCのWebサイトでは1A、実銃を特集した月刊Gun2003年10月号の記事のタイトルも1Aと、どちらもアラビア数字が使われています。

 実銃は2002年の米国ショットショーで発表され...という記述が色々なサイトで見られますが、外国のフォーラムでは2001年時点で登場していたという情報もあります。ショットショーでのお披露目後、日本ではKSCとウェスタンアームズ(WA)が立て続けに製品化しました。両社の発売年は巨大掲示板のログをヒントに2002年と推測しています。WAのほうは12月14日発売という書き込みがあり、実際に買った人のレポートも上がっているほか、WAより先にKSCが発売していたことも読み取れました。

 管理人は最近になってネットで捨て値のジャンクを買いました。システム7の発売によってこちらは旧型になってしまったため、中古相場は完品でも5,000~6,000円ほどです。届いた現物はロッキングブロックが割れており、ブリーチブロックのアームとシャーシの一部も壊れていました。組み立て方を間違えたのでしょうか?

 KSCは公式サイトから純正パーツが注文できる稀有なメーカーでして、小さいパーツは条件をクリアしていれば軽量配送を選んで送料を抑えることができます。ただし、一旦は通常の送料で決済し、オンラインストアのポイントで差額が返金される仕組みなので、オンラインストアを使わないユーザーは軽量配送の恩恵が受けられません。いくつかショップも訪ねましたが、どこもオンラインのほうが良いですよとやんわり断られてしまいました。 

 こうなると自分で直すしかないわけで、ロッキングブロックは100均の瞬間接着剤で圧着、ブリーチのアームもスライドと接着して復活させました。修理代はゼロです(笑)

 外箱はブルー調の蓋にスチロール箱という一般的なものです。蓋は他と共通なのか、正面と短辺に1Aを示すシルバーのステッカーが貼ってあります。付属品はマニュアル、BBローダー、ホップ調整レンチに加え、小さい六角レンチが入っていました。この六角はセフティレバーの右側を固定するイモネジに合うのですが、やや手に入りにくいサイズなので、初めから付属しているのはポイントが高いです。

 外観を見ていきます。スライドとフレームはマットブラック仕上げのABS樹脂。パーティングラインはトリガーガード裏まで綺麗に処理されています。バレルはシルバーのめっきが掛かっており、こちらもパーティングラインは普段は見えないロッキングブロックの裏にしか残っていません。

 露出している金属パーツはピン類を除き、フロント/リアサイト、セフティレバー、トリガー、トリガーバー、ハンマー、テイクダウンラッチ、スライドストップ、マガジンキャッチです。リコイルスプリングガイドは実銃に倣って樹脂製。ブリーチピン、ファイヤリングピンブロック、エキストラクターはスライドと一体成型のモールドです。マガジン外装はプレス成型されたスチール、バンパーは軟質素材の別パーツを接着しているようです。 

 スライドにはモデル名などの文字がプリントされていますが、左側の M.I.S.T. Armory Inc. ADVANCED SERIES -A- はKSCのアレンジであり、ベレッタとライセンス契約を結んでいるWAは BERETTA U.S.A. CORP. ACKK., MD USA と、ベレッタの名前が入っています。WAはグリップパネルにもベレッタのロゴマークが入るのに対し、KSCのグリップには何も入っていません。フレーム左側のシリアルナンバーはエリート1A共通のようですが、エリート、エリート2、バーテックとは異なります。

 握ってみると、ずっしりした重さと、M92系らしからぬ細身のグリップの感触が伝わります。マガジン込みの本体重量は実測757グラム、マガジンは単体で273グラムありました。グリップヘビーさは許容範囲だと思ったのですが、シューターのマック堺さんは、動画の中で「グリップ部分が重く、フロント部分はちょっと軽い」、本体重量についても「どちらかと言えばちょっと軽め」とレビューされており、管理人とは評価が割れています(苦笑) 

 動作については、スライドの引きは滑らかで、ハンマーコックもモデルガンのような重めのテンションが味わえます。セフティを下げるとハーフコックの状態でもデコッキングされてハンマーが安全に落ちます。ファイヤリングピンはダミーながらバネでぴょこぴょこ動きますし、この辺りは初代M92FSからずっと省略されているWAよりリアルです。

 ホップアップは可変式で、付属のレンチをチャンバーにセットして調整します。ブローバックは20年前の製品ですし、現行品と比べるのは酷ですね。マック堺さんは「トリガープルがもうちょっと良かったらいいな」とも指摘されています。

 分解は、マガジンを外し、テイクダウンラッチを下げる実銃どおりの方法です。スライドの中からリコイルスプリング一式とバレルがごろっと出てくるのはモデルガンのようで楽しいです。

 管理人はMGCとマルシンのモデルガン、WAのM92FSも持っていましたが、M92系のトイガンはどれもよく出来ていると思います。このエリート1Aも旧型であることを差し引けば十分すぎる出来です。KSCとWAは一長一短ですから、自分の好みで決めて差し支えないでしょう。

 最後に、実銃がどういう位置づけにあるかを整理して終わりたいと思います。

 上はアメリカの弾薬の通販サイト「Lucky Gunner」が運営している「Lucky Gunner Lounge」の記事から借りた画像です。これによれば、M92FSのバリエーションとしてマニュアルセフティを持たないM92Gがあり、そこから1993年発表の強化型スライド採用モデル・ブリガーディアのスライドを載せたエリートが誕生。これに、2001年発表のストレートバックストラップと20mmのレイルドフレームを持つバーテックのフレームを組み合わせたのがエリート1Aのようです。したがって、エリート1Aはブリガーディアのバリエーションであり、ベースはM92FSでなくM92Gであると言えます。

 

参考

・Lucky Gunner Lounge Evolution of the Beretta 92 https://www.luckygunner.com/lounge/guide-beretta-92/

・マック堺-MachSakai KSC ベレッタ M92 エリート IA ガスブローバックマック堺のレビュー動画#427 https://youtu.be/gfq-hR21G6U?si=VFNAagjZjEt89ST0

 

管理人メモ

 写真はいつも自然光で撮っていますが、今回は練習を兼ねて室内灯でも撮ってみました。


スズキ ワルサーPPK(過去記事リメイク)

2024-08-03 18:50:01 | ・スズキ ワルサーPPK

 2024年5月、マルゼンからワルサーPPKのガスブローバックガンが発売されました。1990年発売のポイントのガスブロはとうの昔に絶版となり(メーカーも無くなり...)、長らくレプリカ(マルシン製・1988年発売)の固定ガスしか無かったエアガン市場に、30余年ぶりの新製品が加わったのでした。

 少し前には、2009年にマルシン、2010年にCAWがPPKのモデルガンを続けて送り出し、それまでPPK/sのフレームをカットしてPPKにカスタムしていた数多のマニアが涙を流しながら予約したという逸話もあります(大嘘)

 このようにワルサーPPKは、人気がありながらも選択肢の乏しい時期が続いた銃なのですが、その歴史は古く、初のモデルアップは1964年発売のMGCの金属モデルガンに遡ります。このモデルガンは、MGCの神保社長の「実弾は使えない。”オモチャではないが実銃でもない” 手にはぴったり、安全で魅力的だ。」(『MGCをつくった男』12頁より)という考えの元、実銃より小さくデザインされていましたが、アメリカでモデルガンを販売する会社であるRMI(Replica Models, Inc.)の社長から実寸大のPPKを要望されたため、1967年に新規金型の第2号PPKが生まれました。

 第2号は発売当時のチラシで「ニューPPK実寸大」と謳われましたが、あくまで 実寸大 であり、MGCで最もリアルサイズに近いのは1970年発売の第3号PPK Waffen SS と言われています。これらは一般的?にPPKⅠ~Ⅲと呼ばれており、これは1982年発行のMGCの機関紙「ビジェール」に登場する呼称が由来であると思われます。

 前置きが長すぎますが(苦笑)、PPKの話はMGCを避けて通ることができません。なぜなら、紹介するスズキのPPKも、MGCのコピーの1つとされているからです。

 やっと本題の過去記事はこちら↓

https://blog.goo.ne.jp/downstairs4/e/c62cf06a42c820cc1af8e23ac71f8a4d

 1965年、MGCがモデルガン購入の際に住民票の提出を求めたことをきっかけに業界は分裂し、それまでMGC製品を販売してきた商店側がMGCに競合する製品を独自に生産、販売するようになります。PPKのコピーも、結果的にはコモダ、スズキ、ホンリュー、マルゴー、マルシン製があるとされ、1974年には、紙火薬によるブローバックを実現したCMC製が誕生します。MGC製はⅠ~Ⅲ型全てがスライドアクション(または設計者の名前から タニオ・アクション)と呼ばれる疑似ブローバックでしたが、CMCは22口径のPPKかPPの実銃資料を参考に、リアル志向でありながら当時流行のブローバックも可能な、撃てるモデルガンを開発。MGCやそのコピーとは一線を画すコンセプトで人気を博しました。

 1977年のモデルガン規制によりCMC製は販売を終えますが、MGCのコピー群のいくつかは生き残り、スズキのPPKも現代に流通しているというわけです。

 さて、管理人はスズキのPPKを2008年頃の大阪ショットショーで買いました。確か15,000円しましたが、今の中古相場は完品で2万円ほど。同一品と言って差し支えないマルシン製であれば、3万円まで高騰することがあるようです。

 外箱は銀色の紙箱で、側面には規制をクリアした証であるsmGマークのステッカーが貼られています。上蓋の左下にあるPBSSとは プロデュースド・バイ・鈴木・製作所 の略号です。

 本体はプラスチックのグリップを除いて全て金属であり、銃刀法に従って金色のめっきが掛かったうえ、銃口は完全閉塞されています。スライドにはワルサーバナーが入っていますが、製造時期によるのか無刻印の個体もあるようです。04-80の刻印は製造年月の1980年4月、フレームの KS10769 は製造番号のようなものと考えられます。

 セフティレバーとマガジンキャッチはライブ。ハンマーは可動しますがコックポジションでの固定はできず、機能的にもダミーになります。

 発火方式は平玉火薬を使ったスライドアクションです。これはトリガーを引く力でスライドが後退し、ばねで元に戻る際にカートが前に押し出され、カート先端に詰めた平玉火薬が前撃針に触れて発火する仕組みです。エキストラクターはスライドにネジ留め固定、エジェクターはマガジンリップの上部がその機能を兼ねており、実銃の構造とは異なります。スライドアクションは1964年のPPKⅠが採用し、PPKⅢでは安全性を強化したチャンバーレス構造になるのですが、1969年発売のマルゴー製PPと、設計者を同じとするCMCのPPKを除いては、全ての金属PPKがスライドアクションを採用していました。この理由について、ライターのレトロ新見氏は後年、以下のように分析しています。

 「タニオ・アクションのPPKがかくも多くのメーカーで作られたのはやはり映画「007」シリーズの影響が大きいのだろう。スクリーンではじき出される空ケースを再現するには当時のブローバックの完成度はあまりにも低かった。そこでトリガーを引くだけでOKのタニオ・アクションが流行することになったのだろう。」(月刊Gun1998年2月号 モデルガン・アンタッチャブル)

 分解については、マガジンを外してトリガーガードを下げる実銃と同じ手順を再現しています。

 先述した1965年の業界分裂時に、反MGC側である日本高級玩具小売組合(NKG)のパーツ鋳造を受け持ったメーカーの1つが、現在のマルシンである丸真ダイカストでした。スズキこと鈴木製作所も、おそらくNKG側のパーツ鋳造メーカーの1つであり、いつからか自社製品を販売するようになったと考えられます。

 スズキのPPKは、コモダ、マルシン製と共通点が多く、プラモデルガンのベレッタM92SBやワルサーPPK/s、コルトガバメント等、現在のマルシン製品のいくつかはスズキの金型が元になったと言われています。モデルガンメーカーとしてのスズキの活動は1980年代のエアガンブームとともに縮小するのですが、その折に、NKGの中で交流のあったマルシンにスズキの金型等が渡ったのではないでしょうか。

 今PPKを買うなら間違いなくマルゼンがお勧めですし、モデルガンならマルシンが手に入りやすいと思います。スズキのPPKは重さくらいしか長所がなくなってしまいましたが、史料的価値の高いモデルガンであることは確かです。

 

参考

・月刊Gun1991年8月号 モデルガン・アンタッチャブル ACT42 MGC・ワルサーPPK

・月刊Gun1998年2月号 モデルガン・アンタッチャブル ACT107 スズキ・ワルサーPPK

・月刊Gun2010年12月号 モデルガン名鑑 Vol.99 MGC NEW WALTHER PPK

・神保勉『MGCをつくった男』(2010年)

・ホビージャパンMOOK702 モデルガンクラシックス(2016年) CMC ワルサー Mod PPK