DJみならいのモデルガンブログ

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スズキ ワルサーPPK(過去記事リメイク)

2024-08-03 18:50:01 | ・スズキ ワルサーPPK

 2024年5月、マルゼンからワルサーPPKのガスブローバックガンが発売されました。1990年発売のポイントのガスブロはとうの昔に絶版となり(メーカーも無くなり...)、長らくレプリカ(マルシン製・1988年発売)の固定ガスしか無かったエアガン市場に、30余年ぶりの新製品が加わったのでした。

 少し前には、2009年にマルシン、2010年にCAWがPPKのモデルガンを続けて送り出し、それまでPPK/sのフレームをカットしてPPKにカスタムしていた数多のマニアが涙を流しながら予約したという逸話もあります(大嘘)

 このようにワルサーPPKは、人気がありながらも選択肢の乏しい時期が続いた銃なのですが、その歴史は古く、初のモデルアップは1964年発売のMGCの金属モデルガンに遡ります。このモデルガンは、MGCの神保社長の「実弾は使えない。”オモチャではないが実銃でもない” 手にはぴったり、安全で魅力的だ。」(『MGCをつくった男』12頁より)という考えの元、実銃より小さくデザインされていましたが、アメリカでモデルガンを販売する会社であるRMI(Replica Models, Inc.)の社長から実寸大のPPKを要望されたため、1967年に新規金型の第2号PPKが生まれました。

 第2号は発売当時のチラシで「ニューPPK実寸大」と謳われましたが、あくまで 実寸大 であり、MGCで最もリアルサイズに近いのは1970年発売の第3号PPK Waffen SS と言われています。これらは一般的?にPPKⅠ~Ⅲと呼ばれており、これは1982年発行のMGCの機関紙「ビジェール」に登場する呼称が由来であると思われます。

 前置きが長すぎますが(苦笑)、PPKの話はMGCを避けて通ることができません。なぜなら、紹介するスズキのPPKも、MGCのコピーの1つとされているからです。

 やっと本題の過去記事はこちら↓

https://blog.goo.ne.jp/downstairs4/e/c62cf06a42c820cc1af8e23ac71f8a4d

 1965年、MGCがモデルガン購入の際に住民票の提出を求めたことをきっかけに業界は分裂し、それまでMGC製品を販売してきた商店側がMGCに競合する製品を独自に生産、販売するようになります。PPKのコピーも、結果的にはコモダ、スズキ、ホンリュー、マルゴー、マルシン製があるとされ、1974年には、紙火薬によるブローバックを実現したCMC製が誕生します。MGC製はⅠ~Ⅲ型全てがスライドアクション(または設計者の名前から タニオ・アクション)と呼ばれる疑似ブローバックでしたが、CMCは22口径のPPKかPPの実銃資料を参考に、リアル志向でありながら当時流行のブローバックも可能な、撃てるモデルガンを開発。MGCやそのコピーとは一線を画すコンセプトで人気を博しました。

 1977年のモデルガン規制によりCMC製は販売を終えますが、MGCのコピー群のいくつかは生き残り、スズキのPPKも現代に流通しているというわけです。

 さて、管理人はスズキのPPKを2008年頃の大阪ショットショーで買いました。確か15,000円しましたが、今の中古相場は完品で2万円ほど。同一品と言って差し支えないマルシン製であれば、3万円まで高騰することがあるようです。

 外箱は銀色の紙箱で、側面には規制をクリアした証であるsmGマークのステッカーが貼られています。上蓋の左下にあるPBSSとは プロデュースド・バイ・鈴木・製作所 の略号です。

 本体はプラスチックのグリップを除いて全て金属であり、銃刀法に従って金色のめっきが掛かったうえ、銃口は完全閉塞されています。スライドにはワルサーバナーが入っていますが、製造時期によるのか無刻印の個体もあるようです。04-80の刻印は製造年月の1980年4月、フレームの KS10769 は製造番号のようなものと考えられます。

 セフティレバーとマガジンキャッチはライブ。ハンマーは可動しますがコックポジションでの固定はできず、機能的にもダミーになります。

 発火方式は平玉火薬を使ったスライドアクションです。これはトリガーを引く力でスライドが後退し、ばねで元に戻る際にカートが前に押し出され、カート先端に詰めた平玉火薬が前撃針に触れて発火する仕組みです。エキストラクターはスライドにネジ留め固定、エジェクターはマガジンリップの上部がその機能を兼ねており、実銃の構造とは異なります。スライドアクションは1964年のPPKⅠが採用し、PPKⅢでは安全性を強化したチャンバーレス構造になるのですが、1969年発売のマルゴー製PPと、設計者を同じとするCMCのPPKを除いては、全ての金属PPKがスライドアクションを採用していました。この理由について、ライターのレトロ新見氏は後年、以下のように分析しています。

 「タニオ・アクションのPPKがかくも多くのメーカーで作られたのはやはり映画「007」シリーズの影響が大きいのだろう。スクリーンではじき出される空ケースを再現するには当時のブローバックの完成度はあまりにも低かった。そこでトリガーを引くだけでOKのタニオ・アクションが流行することになったのだろう。」(月刊Gun1998年2月号 モデルガン・アンタッチャブル)

 分解については、マガジンを外してトリガーガードを下げる実銃と同じ手順を再現しています。

 先述した1965年の業界分裂時に、反MGC側である日本高級玩具小売組合(NKG)のパーツ鋳造を受け持ったメーカーの1つが、現在のマルシンである丸真ダイカストでした。スズキこと鈴木製作所も、おそらくNKG側のパーツ鋳造メーカーの1つであり、いつからか自社製品を販売するようになったと考えられます。

 スズキのPPKは、コモダ、マルシン製と共通点が多く、プラモデルガンのベレッタM92SBやワルサーPPK/s、コルトガバメント等、現在のマルシン製品のいくつかはスズキの金型が元になったと言われています。モデルガンメーカーとしてのスズキの活動は1980年代のエアガンブームとともに縮小するのですが、その折に、NKGの中で交流のあったマルシンにスズキの金型等が渡ったのではないでしょうか。

 今PPKを買うなら間違いなくマルゼンがお勧めですし、モデルガンならマルシンが手に入りやすいと思います。スズキのPPKは重さくらいしか長所がなくなってしまいましたが、史料的価値の高いモデルガンであることは確かです。

 

参考

・月刊Gun1991年8月号 モデルガン・アンタッチャブル ACT42 MGC・ワルサーPPK

・月刊Gun1998年2月号 モデルガン・アンタッチャブル ACT107 スズキ・ワルサーPPK

・月刊Gun2010年12月号 モデルガン名鑑 Vol.99 MGC NEW WALTHER PPK

・神保勉『MGCをつくった男』(2010年)

・ホビージャパンMOOK702 モデルガンクラシックス(2016年) CMC ワルサー Mod PPK



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