DJみならいのモデルガンブログ

20年近くだらだらと書いています。モデルガン、自転車などの記録。

マルシン M1910:旧HW

2008-05-24 23:43:00 | _ その他モデルガン
・マルシン FN M1910 旧HWモデル

 一口にヘビーウェイトと括っても、表面に研磨を加えたエクセレント(EXHW)であるやもしれないこの個体は、再販分が手に入っても種類を断定することが難しい。HW樹脂らしからぬ全体のしっとりした光沢が主な理由である。つや消しの黒に塗装されていたり、WAのカーボンブラックのように金属的な質感であったりするのが通常だが、これはそのどちらにも該当せず、樹脂的な、もっと言えばABSに似た外観である。しかし、冷ややかな触感やグレーの成型色は、金属粉の混入したHW樹脂の成分を紛れもなく証明しており、少なくともABS製でないことに疑う余地は無い。

 実銃よりも丸みを帯びて小ぶりな印象であるマルシン製の造型は崩れることなく保たれ、金属パーツの染め落ちはあっても本体に大きな欠損は見当たらない。光沢を放っているのは、これまでに触れられる機会が多くあった所為ではないかと推測している。HW樹脂はABSと比較して粘りが少なく衝撃に弱いが、表面硬度はそれなりに高いので擦れに強い利点を持っており、故意に摩擦を起こし金属風に仕上げる応用が利く。鏡面とはいかないが、近くの物が曖昧でも映りこむ姿は興味深く、フレームに残ったパーティングラインの雑な消し跡とヒケが惜しい。刻印はメタルフィニッシュとほぼ同じで、フレーム右面前部にSPGマークの追加があるだけだ。

 よく観察すると、スライドには磨かれた部分と曇った部分の斑があり、フレームも艶が出ているのは側面のみである。さらに、本体後部「サブフレーム」のみブルーイング処理を受けフレームに接着されており、所有する個体に限って思ったより細かい箇所へ手が加えられているようだ。また「サブフレーム」は実銃において本来存在せず、これに関しては外観のリアリティを維持すべく内部へ隠匿したコクサイ製に軍配が上がる。亜鉛合金製のパーツは崩壊を起こしておらず、耐久性が著しく低下した時期の製品ではなさそうである。排莢作動の要であるエキストラクターは磁石に反応し、鉄であることを示している。


 ずんぐりとした印象はグリップに起因すると思われる。まずグリップパネルの4分の1ほどを占めるFNのロゴマークがチェッカリングの面積を侵食。加えて、縁取り誇張されたスクリューがグリップを視覚的に中間で分断し、実寸より短く見える錯覚を起こしているのではないだろうか。さらに、下部において見られる三角形に近い影は、単に蒲鉾状でないグリップパネルの多面的な造型によるものであり、この三角形の底辺から頂点を結ぶ「高さ」の分だけ視野に陰影を落とす効果が与えられる。このように多くの情報を詰め込まれた結果がいわゆる女性的なシルエットの完成である。グリップパネルの恩恵により厚みは適度であるが、実際に握って気づく小指の遊びを解消する為、絶版のターゲットカスタム(レプリカ扱いだったかな?)のみマグバンパーが装着されていた。

 エジェクションメ[トを覗くとスライドが意外に肉厚であることに着目できる。実銃はどうか定かでないが、材質の違いから一般的に実銃の方が薄い、というよりむしろ機種を問わずトイガンの樹脂壁が厚く設計されていると言われており、僅かな差が印象に大きな影響を与えている。今回の再販に際して、発火を楽しまれる方面よりABS製も出さんかいなという声も聞かれ、ユーザーとメーカーがもぐら叩きに陥っているイメージを描いた。両方出せば文句も出ないだろうが、不良在庫は販売側にとって避けたい事情である。M1910は元が薄い小型のオートであり比較的破損しやすい反面、小さな体で動かすPFCのブローバックが生む迫力も人気の秘密。しかしながら再販物は材質を問わずダミーカート仕様で、バンバンを楽しむにはあと一歩。紹介しているHWモデルのバレルはABS樹脂製であるが、今後は同じ機種でありながら材質によって付加価値が変動するのだろうか。

 書くことが少なくなってきたので余談。撮影の小物として使用したのは『SMALL ARMS PROFILE 2』というB5版20ページほどの小冊子であり、30年以上前のイギリスにおいてシリーズが10冊以上発行されたようだ。お国柄か第1弾はウェブリー拳銃の紹介である。何気なしに購入したのだが、後から聞くと予約を入れておいた人物がいたらしく、少し申し訳ない気持ちに。中古との出会いは一期一会などと言うが・・・。この『2』はJ.M.ブローニングが設計した拳銃全般の特集が組まれており、FNHPの固定ストック付き試作型や金属製と思われるフォールディングストックの写真など興味深い。今までにこの冊子の他種を見たことが無いので収集は困難だろうが、そもそも詳細が分からないのでお持ちの方がいらっしゃればご教授願いたい。根気良く残りを探して読みたいものである。