どっと屋Mの續・鼓腹撃壌

引き続き⋯フリーCG屋のショーモナイ日常(笑)

太陽の王子ホルスの大冒険、鑑賞

2017年10月18日 21時55分00秒 | アニメ
川越スカラ座さんにて!

こんなの見せられたら行かないワケにはいきませぬ p(`_´)q

ってことでやって参りました(^_^)

8月15日の「この世界の片隅に」舞台挨拶付き特別上映会以来なので、約2ヶ月ぶりとなります。

あの時は酷い土砂降りの雨で、スクリーン前に設置された洗面器のポタポタ音が良い味出してましたが(^_^;、今日は雨も降ってませんので心配なし!(*^o^*)

券売所前の立て看板も良い雰囲気です。

「ホルス」の他、ちょっと好きな「銀河鉄道の夜」もやってます。

座席は前から2列目テーブル席通路よりでベストポジション(^_^)


14時半、予告編なしで、すぐに上映開始。

35ミリのフィルム上映、デジタルでもリマスターでもない、色も褪せ、雨のような縦筋もあって、それがまたとても良い感じで...(*´д`*)

映写機のカタカタカタ...いう響きも隠し味になっていて、あぁ映画を観ているという醍醐味をタップリ味わえました(^_^)

「太陽の王子ホルスの大冒険」は、TV放送しちゃビデオ録画、LD・DVD・BDとリリースされては購入を重ねてきた作品ですがねぇ...

観る度に色んな想いが去来する作品なんです。

68(昭和43)年の作品だから、私は6歳で...当時ポスターを見た記憶はあるものの、幼すぎて観に行くことはなかった(^_^;

意識したのはちょうど10年後となる「アニメージュ」78(昭和53)年7月創刊号の特集記事を見てからだと思います。

この記事を見て、もう観たくて堪らず、情報誌「ぴあ」とかで情報漁っては文芸座とかのいわゆる名画座で、「パンダコパンダ」と併せて観たりしてました。

その後に出版された高畑勲さんによる「『ホルス』の映像表現」はバイブルで、久々に本棚から引っ張り出して、今日の行き帰りに読みました。

もちろん83(昭和58)年の初版で、しおりも当時のまんま!「映画化決定、84年春公開!風の谷のナウシカ」ってのが良いですね(^_^)


その中にとても印象的な一節があります。
当時「アニメーション」ということばは、高級な実験的な作品のみにつかわれていて、私たちのつくるものは全て「漫画映画」でした。低学年を主な対象にした明るく楽しいはずの「漫画映画」に、まだあまり知られていなかった中世ルネサンス風のひびきをとりいれる。それはいまからみればおかしいほどワクワクすることだったのです。

「中世ルネサンス風のひびき」というのは、劇中にリュート伴奏でヒルダが歌う曲を指しているのですが、あまりの高尚さ故に自ら「夢ではないだろうか」と驚いてしまったというエピソードですが、その瞬間こそ「映画になった」と確信されたのでしょうし、面白可笑しい漫画映画という枠から、現在に繋がる日本のアニメーションが誕生した瞬間だったんだろうなぁと...今改めて作品も観て、ジワ〜っとしてしまいました...。

今回の鑑賞で、これは青少年向きというか、大人が観るべき作品だなぁとも感じましたね。

勧善懲悪なヒーローものとして観ると肩透かしを食らいますし、悪魔・グルンワルドも大ボスとかラスボスという扱いにしていないんです。

それは人々の心に潜む、疑義・疑念・猜疑・疑心といった「疑」の付く文言を「悪魔」として象徴・具現化したもので、そのグルンワルド自身、絶えず落ち着かず周囲の事象をオドオドとして疑ってばかりいる...主人公・ホルスも、ヒロイン・ヒルダも終始グラグラと悩み葛藤をしている...(歪んどる...という意味で『この世界の片隅に』とも通底している気も)。

決してスッキリ爽快な展開はないんです。悪魔は倒され村に平和が訪れ、一応の決着はつけられるんですけどね。

若い頃は、大塚康生さんや宮崎駿さんが描き出すダイナミックなシーンに惹かれていましたが、大人になったからか、年取ったせいなのか(^_^;、高畑勲さんが目指したテーマと演出が響きました。

「『ホルス』の映像表現」巻末に収録された荻昌弘さんによる、公開当時の映画批評も(同時期に公開されていたディズニー作品『ジャングル・ブック』と比較しつつ)核心を見抜いていて良かったです。

本作は紛う事なき日本映画・アニメーションにおけるエポック的な名作です。

今回、川越スカラ座さんにて22日(日)まで上映されてますので、近隣の方は是非スクリーンで観ていただきたい作品です!