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コスタリカ再訪(99)カレンダーの月齢表示

2016-08-30 17:07:03 | コスタリカ
 中華料理屋でもらったカレンダーをよく見ると、月齢表示がある。

 【2016年10月。毎月、空白部分に月齢が表示される。】
 コスタリカで太陰暦が使用されたという話は聞いたことがないが、農業や漁業には月齢は欠かせない。コスタリカはかつては農業国であった。また、沿岸部では漁業も行われている。中央高原の都市生活者には月齢表示は不要かと思われるが、まだまだ農業も重要な産業である。また、イースター(pascua)は「春分の日以降の最初の満月の次の月曜日」と決められているので、教会関係者には必要である。イースターは毎年、日が違うが、一般庶民はイースターの日の決め方はよく知らないらしい。女房殿もカトリックではあるが、知らなかった。
 さて、月齢表示だが、毎日の月齢は表示されない。表示されるのは次の4つだけである。
 新月(luna nueva)、上弦(cuarto creciente)、満月(luna llena)、下弦(cuarto menguante)
 「新月」と「満月」はスペイン語でも全く同じ言い方である。
 「上弦」は 「cuarto + creciente」で、creciente は動詞 crecer (成長する)の形容詞形である。現在分詞は creciendo で、このイタリア語形は crescendo で(ただし、イタリア語では現在分詞ではなく、ジェルンディオという)、日本語にも音楽用語「クレッシェンド」(だんだん強く)として取り入れられている。スペイン語にも取り入れられているが、発音はスペイン語風に「クレセンド」に変わっている。ちなみに、crecer の関連語に英語の increase (増加する)がある。increase の反意語が decrease で、これに対応するイタリア語の動詞 decrescere のジェルンディオが decrescendo (デクレッシェンド、「だんだん弱く」)である。
 スペイン語 creciente に対応するフランス語は croissant (クロワッサン)で、日本でもおなじみのパンの名前にもなっている。これは動詞 croitre(成長する)の現在分詞形である。
 creciente の前についている cuarto は cuatro の序数で「4番目の」が第一義であるが、「4分の1」、「部屋」などの意味にもなる。この場合は、「4分の1」の意味で使われているのだが、上弦も下弦も半月で「4分の1」ではない。これは、月の姿ではなく、月の満ち欠けの周期の「4分の1」ということである。
 「下弦」は creciente (成長する)の反意語の menguar (減少する)の形容詞形、menguante が使われている。
 「上弦」も「下弦」も正確には cuarto をつけなければならないが、面倒なので、creciente, menguante だけでも通じる。creciente は「成長する」という意味なので、新月から満月までの間は広義には creciente で、同様に満月から新月の間は menguante のはずであるが、まあ、硬いことは言わない。
 が、硬いことが好きな人には次のことを言っておく。
 手元の辞書には、luna creciente の項目に「上弦の月」の他に「新月から満月までの月」という意味も掲載されていた。
 ところで、パンのクロワッサンは三日月形なので、こう呼ばれるのだが、「上弦の月」と「三日月」は違うはずである。「上弦」の方は「七日月」と言ってもいいぐらいで、「三日月」とは四日分違う。
 手元のスペイン語辞書の creciente の訳語に「上弦の月」、「半月」というのはあったが、「三日月」はなかった。「クロワッサン」という訳語もない。ただ、「イースト、パン種」という訳語はある。
 「クロワッサン」はスペイン語では cuerno というが、本来の意味は「(動物の)ツノ」である。
 しかしながら、“poner los cuernos”というと、「クロワッサンを置く」という意味ではなく、「女房を寝取られる」という意味に取られることがあるので注意が必要である(詳しくは「ツノが生える」の項をごらんいただきたい)。
 フランス語の croissant についていえば、手元にある50年以上前のフランス語の辞書の croissant の主な訳語はこうである。
 「成長する」、「三日月」、「上弦」、「新月旗、トルコ国旗」、「三日月形のパン」(今なら、「クロワッサン」と書かれることだろう)。
 中華料理屋のカレンダーの月の絵を見ると、「上弦の月」が「三日月」風に描かれている。月が人の顔になっているので、デザイン的に三日月風になるのもいたし方のないところであろう。

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