スパニッシュ・オデッセイ

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巨大メロの話

2020-10-13 17:07:28 | トリビア
 コスタリカの伝説に巨大メロの話がある。場所はカリブ海の港町、リモン(Limón「レモン」の意)の埠頭である。現在は大型船も停泊できる立派な港である。
  
 さて、メロ(mero)というのはスズキ科の魚である。mero(女性形 mera)という形容詞もあるが、これは英語 mere (単なる)に対応する語であり、魚とは関係がない。巨大メロだから、単なるメロ(mero mero)ではないことは確かであるが。
 メロは正式にはマジェランアイナメというそうで、銀ムツとも呼ばれていた。確かに白身の高級魚である。成魚は全長1メートルを超えるらしい(ウィキペディア「マジェランアイナメ」)。確かに大きいが、物語には全長6メートルとか9メートルと書かれている。いくら何でもこんなに大きくはないだろう。逃がした魚は大きいというので、だんだん大きくなっていったのだろう。
 
 ネットで調べてみると、確かに巨大メロはいる。上の写真で見ると、全長は2メートル以上あるとしても、3メートルまでは届くまい。この2,3倍となると、化け物である。物語の中では、化け物メロの上で作業していても気がつかなかったとある。
 ところで、巨大メロの体の色は rocillo とあったが、こんな言葉は小学館『西和中辞典』には載っていない。-illo は縮小辞の一つでもあるので、縮小辞のつかない形として rozo という語が想定されるが、見つからない。rozar (こする)という動詞があったが、こちらも関係なさそうである。
 上の写真を見ると、体はピンクがかっている。そうすると、rocillo は rosillo の間違いではないかと気がついた。これなら、辞書に載っている。「ピンク色の」という意味だが、この意味では rosado が一般的である。
 ラテンアメリカでは[θ]音が[s]音になる。ci も si もどちらも[si]と発音されるので、十分教育を受けていないとつづりを間違えやすい。
 ちなみに、日本語でも、英語の th で表される無声音 [θ] はサ行音の子音[s]または[ʃ]になるので、ラテンアメリカのスペインと同じ現象が起きている。
  [θ]音を持たない言語で、[θ]音がいつも[s]音で代替されるかというと、必ずしもそうではない。インド英語やフィリピン英語では[t]音で代替されていたように思う。意外なところでは[f]音で代替しても結構通じるようである。日本人英語の“I think”が“I sink”になると本場では通用しないだろうが、"I fink”のように発音しても結構通じるらしい。 [θ]音では上の歯が舌に当たっているのに対して、[f]音は上の歯が下唇に当たっているので、似たような音として捉えられるのであろう。

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