写真を始めてずっと、制作した立体像の陰影を、それをさらにより生きるように陰影を与えていた。なので、陰影を排除しようとい思いついた時に躊躇したのは当然である。蒙古兵と無学祖元の『臨剣の頌』を制作しながらつくづく思った。寒山拾得や蝦蟇仙人にも陰影を与えようとは思わないけれど。陰影のない石塚式ピクトリアリズムは、ガッツ石松の幻の右くらい〝滅多に出ない“スペシャルな手法とすべきかもしれない。 蒙古軍が南宋に浸入した時、温州の能仁寺にて坐禅する無学祖元が蒙古兵に剣を向けられるが、平然と「臨剣の頌」(りんけんのじゅ)という漢詩を詠む。すると感銘を受けた兵は去ったという。後に北条時宗にこわれて来日し、円覚寺の開山となる。
