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明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



30年通った店の女将さんが24日に亡くなっていた。何も知らされなかったので見送ることも出来ず。 女将さんが熱中症で病院に運ばれたのをきっかけに休業の間、厨房担当の弟さんに、常連だけは来てもいいよ。ただ何もできないから、他の客は断って欲しい、といわれた。それはそうである。自分たちで栓を抜いて注いで片付け、カウンターを拭いて勘定を済ませ、くらいは出来るが、我々もただの客、他の客に店の人みたいな顔してとても対処できない。女将さんは我々の声を聴いていれば寂しくないだろう。と常連は通い続けた。 その頃、地元の『タウン誌深川』に店のことを連載させてもらった。“常連席にて陽が暮れる” 営業再開を信じ、多少のつなぎにでもなれば、という思いだったが、1年経つ頃、時折元気な様子を見せていた女将さんも、以前と同じような営業の再開は無理だな、名物の煮込みも止めてしまったし。それを近々再開するような顔をして連載を続けるのも心苦しく、連載終了を願い出た。我々は月水金土通っていたが、火木土の営業を再開をするというので最終回に読者に向け朗報があります、と火木土の再開を告知した。それを店に届けた翌日、月水金土の我々に対して出入り禁止の貼り紙が貼られた。晴天の霹靂とはこのことである。以来女将さんの様子を心配しながら常連は“落ち武者”となり、別の店でたまに顔を合わせるだけになっていた。そこに女将さんの訃報である。店は喪中休業の貼り紙もなく、どういう訳か何事もなかったかのように営業を続けている。

※2016年深川江戸資料館での朗読ライブ映像。
『人間椅子』
『白昼夢』
『屋根裏の散歩者』
ピアノ嶋津健一 朗読田中完

2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界』 youtubeより

『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載6回「夏目漱石の鼻」

HP

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