先週編集者と飲んだ時、次は江戸川乱歩ですか?といったが、そんな挑発に乗るわけにはいかないが、それには理由がある。私の最初の出版『乱歩 夜の夢こそまこと』(パロル舎)は残念ながら出版社の倒産で絶版になってしまったが、その時の編集者と今回の『貝の穴に河童の居る事』の編集者Sは実は同一である。乱歩の時は、ちょうど校正を終えたあたりでパラパラメクリながら“何思いっきりやってんだという感じですね”といっていたが、今回鏡花作品を終えてみて、今乱歩に再チャレンジすれば違った物ができる、おそらく彼もそう思っていることであろう。 Sは鏡花や柳田國男に対してあまり関心がないが、乱歩にしてもそうであった。撮影許可をとって乱歩邸で撮影した時、感激している私のそばで“親戚の叔父さんの家にきたような顔をしている”と当時書いた覚えがある。 今まで作家を作品の主人公に描いてきたが、その縛りを解けば自由になることは、今回鏡花を登場させずに描いたことでも明らかになった。乱歩に椅子の中に潜んでもらうことはできても『芋虫』になってもらうわけにはいかない。 ところで昨日編集者Sが次は◯◯◯◯はどうかなア、と芝居がかった調子でいったのは乱歩ではなかった。それだったら乱歩がいいよ。昨年のように私にいわせるつもりなのかどうなのか。
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