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マチ弁が暇なときに,情報提供等行います。(兵庫県川西市の弁護士井上伸のブログです。)

司法試験予備試験と今後の大学生の司法試験等に対する考え方のあり方

2011年10月16日 | ①司法試験について
先日10月13日に司法試験予備試験の論文試験の合格発表があったようです。

予備試験は,新司法試験(私が受けていた旧司法試験が今年からなくなったので,この表現は適切ではないかもしれませんが,旧司法試験と区別するためあえてそういう表現を使います。)の受験資格を得るための試験です。

新司法試験の受験資格は,原則として,法科大学院の卒業したこと(受験回数が3回未満,法科大学院卒業後5年以内)ですが,予備試験の合格は法科大学院卒業と同じ効果を与えるものです。

そして,予備試験自体の受験資格は,原則として,
制限がありません。だれでも受けることができます。

つまり,旧司法試験のように,大学の卒業資格,大学の一般教養の一定以上の単位の取得,司法試験一次試験の合格,など一定の一般教養資格も何らないということです(新司法試験受験回数や法科大学院の卒業年によっては一部制限される場合があるので,ご注意を)。

というと,どういうことかというと,大学生や大学卒業者でなくても,受けることができるということです。

実際にはなかなか困難ですが,理屈上は,高校に行っていない人が,大検を取っていなくても受けることができるわけです。

試験は,旧司法試験同様,短答式試験⇒論文試験⇒口述試験とあります(各試験を合格すれば次の試験に進める)。

受験科目は次のとおりです。
①短答式試験
 法律基本科目(憲法,行政法,民法,商法,民事訴訟法,刑法及び刑事訴訟法)
 一般教養科目(人文科学,社会科学,自然科学及び英語)
②論文式試験
 法律基本科目(憲法,行政法,民法,商法,民事訴訟法,刑法及び刑事訴訟法)
 一般教養科目(人文科学,社会科学及び自然科学)
 法律実務基礎科目(民事訴訟実務,刑事訴訟実務及び法曹倫理)
③口述試験
 論文式試験の法律実務基礎科目と同様

まあ,法科大学院の既習者コースの受験科目とほとんどかぶるのではないでしょうか。

今年の受験状況は,
出願者 8971人
短答式試験受験者 6477人
短答式試験合格者 1339人
論文試験合格者 123人
でした。

ちなみに,今年の新司法試験は
出願者 11891人
受験者 11686人
合格者 2063人
でした。

このことから何が言えるかというと,これからの時代,本気で法曹を目指すのであれば,志望大学に合格した者は,高校卒業前でも,直ちに,予備試験の受験勉強を始め,大学1年生の5月から予備試験を受けるべきである。
1年生のときにはさすがに受からないでしょうが,本番の雰囲気がわかるし,本気で受けるのは2年生からでもいいでしょう。
うまく4年生までに合格すれば,法科大学院に行かずに,いきなり新司法試験を受けられることになります。
そして,これだけ狭き門を通り抜けたものは,おそらくすぐに新司法試験も合格する可能性が高いでしょうから,うまくいけば人より2年以上早く,司法修習生になることができます。

大学卒業資格も要らないので,中学生・高校生から受けても良いと思われるかもしれませんが,予備試験に受からなかったときのことを考え,一応大学に行って,4年生までに予備試験に合格しない場合のすべり止めとして,大学4年時に法科大学院の受験をすべきです(司法試験と大学受験と二兎追うのはリスクが高いので,大学受験勉強に専念すべき)。
おそらく,予備試験の受験科目と法科大学院の受験科目はかぶるので,問題は少ないでしょう。
しかし,大学4年生で予備試験に不合格になったら,予備試験にこだわり続けると,受験が長引く可能性があるので,大学卒業後就職しながら受験を続けるのでなければ,法科大学院に行くべきでしょう。法科大学院の卒業自体はそれほど難しくないですから,2年くらい我慢した方がいいと私は考えます(あくまで私個人の見解です。)。

要するに,大学在学中は,法科大学院の受験をすべり止めにして,予備試験を受けるということです。

私は,司法試験受験を長くやっていましたが,はっきり言って,長い受験生活は人生にとって得るものは少なかったです。これはできるだけ短い方がいいです。
大学時代ならではの人生経験(大学時代の人間関係,遊び,勉強,読書,人脈など)については,大学4年間で十分ですし,それ以上の人生経験は社会人になって得た方がいいです(というものの,何も得なかったわけではないですが)。
私が受験が長引いたのは,大学4年間を受験以外のことばかりしていたこと,司法試験は超難しくなかなか受からないので,急いでやらなくてもいいと甘く考えていたからです。

しかし,受かってみると司法試験はそれほどは難しくなく(もちろん競争率が高いので,受験技術としては高度なものが要求されますが,法律の知識や思考力については実務に比べるとそれほどでもなく,初歩の初歩です。法律論が難しいと感じるのは勝手に難しく考えすぎて迷宮に迷い込んでいるだけなのです。),何年もやるべきものではありませんでした。
(競争率についても,記念受験している人もいれば,受かる実力もほとんどついていない状態で受けている人もいるので,実質的な競争率はそんなに高くないはずです。私が受けていた旧司法試験も,4~5万人が受け,短答式試験合格者約7000人,論文式試験合格者1500人でしたが,感覚的には,短答式で勝負になる人の実質競争率は2~3倍くらい,論文式でも2~3倍くらいだったと感じていました。)

以上の私の考え方がいいと思うのは,大学受験が終わってからすぐテンションが落ちる前に勉強を開始できることとです。
そもそも高校受験,大学受験と勉強で食べていこうと思った瞬間,勉強しないことを諦めるべきなのです。
私は勉強しない人生を送るということが諦めきれず,勉強をなるべくせず,楽をしていい成績を取ることばかり考えていました。確かに効率が良い勉強方法は考えるべきですが,それは勉強をしないために考えるのではなく,他のこと(趣味,交友関係,息抜き,恋愛など)をする時間を作るために考えるべきものでしょう。
結局,大学に行っても,社会人になっても,第一線で頑張るには(法曹以外のどの分野でも),勉強(受験教科に限らない。その時の目標に応じたもの)は一生続けなければなりませんし,他のこと(趣味,人づきあい,息抜き,恋愛等)も同時にしなければなりませんから。
他のことができないと,勉強だけの頭でっかちの人間となります。人との交渉が仕事の大半となる法曹をするには他のことをすることも大事なことだと思います。
もちろん,受験直前は他のことをする時間は当然に減らすべきでしょうが(笑)

受験は,情報の収集,傾向と対策の検討,勉強です。
そして,勉強は理解⇒暗記⇒演習です。暗記・演習は技術と反復です。
要は,受験は,①情報の収集(随時)⇒②傾向と対策の検討(随時修正)⇒③勉強計画の立案(随時修正),勉強方法の確立⇒④反復して,教科書,参考書を読み,問題集をやることです。

①~③をやってくれ,自分の使う時間を④だけに集中させてくれるのが塾,予備校です。
逆にいうと,良い予備校,講師は①~③についてきちんとわかるように説明でき(実際に説明するかどうかは別),具体的に実践できるところと言えます。
司法試験の場合には,論文の採点基準がわかりづらく,大学受験までのように予備校が進んでいるわけではないかもしれないですが,うまく予備校を使って,時間短縮を図るべきです。ただ,ある程度は自分でも①~③を真剣に検証した方がいいでしょうね。

大学在学中に予備試験,新司法試験に合格すると,以下のメリットがあります。
まず,法科大学院・卒業後の新司法試験の受験の時間・費用が浮きます。
うまく大学2,3年生で合格すると,大学を中退して,司法修習に行け,実質的に飛び級が日本でも可能になるかもしれません(ここは予想で書いているので,ご自分で間違いないかしっかり調べて下さい。)。
人生経験が足りないと思えば,大学卒業後,別の職業についても2年間は大した時間のロスになりません。

大学生の方,これから大学生になろうと言う方で,裁判官,検察官,弁護士などの法曹に興味のある方は,ぜひ,私の考えを参考にして頂ければ幸いです。



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2 コメント

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なるほど。 ()
2012-10-05 18:09:53
読んでいてとても考えさせられました。
自分は今2浪していて、いずれ法曹関係(検事.弁護士)の職業につけるかどうかがとても不安になっています。
ただ今回あなたのアドバイスを読んでみてやる気がたくさん出てきました。
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頑張ってください。 (NOBI)
2012-10-06 22:43:55
私が若者に頑張ってほしいと思った記事で,やる気がたくさん出たと言って頂いて,本当にうれしいです。

予備試験はおそらく今日本で一番難しい試験なので,大変でしょうが,頑張ってください。
2浪でも,普通に弁護士にはなれます(飛び級も不要)。司法試験さえ受かれば何にも問題はありません。検事でも弁護士になるよりは頑張ればなれます(ただ,検事は適性もあると思いますが。)。
勉強ばかりではなく,友だちや恋愛の時間も大切にしてくださいね。
あと,2浪だからと言って,卑屈になっちゃいけませんよ。
司法試験も9回受けた私も開き直ってます。頑張っていたら自信もつくし,結果が出れば,もっと自信がつき,そういう小さいことは気にならなくなるはずです。
私の司法修習の同期には,大学を中退したのに,裁判官(司法試験合格者の中で成績優秀な人しかなれません。まあ,彼らが成績がよいのは,弁護士になる人が彼らほど勉強時間を遣っていないというのもありますがね。)になれた人もいます。

人にやさしく,人をばかにせず,真面目に的確に努力していれば,運がよほど悪くない限り,報われるはずですので,諦めずに頑張ってください。
ただ,体だけは壊さないよう気をつけて下さいね。
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