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Kinema DENBEY since January 1. 2007

☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

希望の灯り

2020年05月06日 17時19分55秒 | 洋画2018年

 ◇希望の灯り(2018年 ドイツ 125分)

 原題/In den Gängen

 監督/トーマス・ステューバー 音楽/ミレナ・フェスマン

 出演/フランツ・ロゴフスキ ザンドラ・ヒュラー アンドレアス・ロイポルト

 

 ◇クレメンス・マイヤー『通路にて』

 1989年、ライプチヒ。

 ベルリンの壁が崩壊してすぐの東ドイツはまだまだ貧乏と混乱でごったがえしてて、そこのスーパーマーケットの在庫管理係の物語とかって、まったく地味で社会の底辺みたいにおもわれそうだけど、いやそのとおり、働いている人間たちは過去にいろいろと抱えてる。

 でもそこにだって物語はあるわけで、これはこれで面白かった。

 ちなみに『バビロン、ベルリン』の上級警部を演じたペーター・クルトが死んじゃう上司を演じてるんだけど、好い役だったわ。


ビール・ストリートの恋人たち

2020年05月04日 00時07分36秒 | 洋画2018年

 ◇ビール・ストリートの恋人たち(2018年 アメリカ 119分)

 原題/If Beale Street Could Talk

 監督・脚本/バリー・ジェンキンス 音楽/ニコラス・ブリテル

 出演/コールマン・ドミンゴ レジーナ・キング マイケル・ビーチ デイヴ・フランコ

 

 ◇ジェームズ・ボールドウィン『ビール・ストリートに口あらば』

 強姦罪で逮捕された夫の無実を証明しようと妊婦の妻が必死になっていく話だけれども、あまりにも救いがないのはアメリカの黒人問題がもはや引き戻せないところにまで来てるってことなのかな。

 佳境、刑務所で小さな息子が差し入れのパンを食べるときにお祈りしてからといい、パパをお守りくださいというところは健気だったね。

 


誰もがそれを知っている

2020年05月02日 18時22分40秒 | 洋画2018年

 ◇誰もがそれを知っている(2018年 スペイン、フランス、イタリア 132分)

 原題/Todos lo saben

 監督・脚本/アスガル・ファルハーディー 音楽/ハビエル・リモン

 出演/ハビエル・バルデム ペネロペ・クルス バルバラ・レニー インマ・クエスタ

 

 ◇カタルーニャの誘拐詐欺

 娘カーラ・カンプラが誘拐されるまでがまだるっこしい。

 ていうか、前の少女の誘拐事件を関係あるように見せつけることで事件を複雑化させようとしているのだけれども、実はほんとにくだらない金稼ぎのための身内による誘拐という展開は、あまりにも肩透かしを食らわされて、ちょっとなあ。


東方の記憶

2020年04月29日 19時02分14秒 | 洋画2018年

 ▽東方の記憶(2018年 フィンランド 86分)

 原題/Eastern Memories

 監督/ニクラス・クルストルム マルティ・カルティネン

 

 ▽グスタフ・ラムステッド(Gustaf John Ramstedt)の足跡

 言語学者にして初代駐日公使グスタフ・ヨーン・ラムステッド(Gustaf John Ramstedt、1873- 1950)の回顧録を、現在の旅行なんだか出張なんだかよくわからない映像にかぶせているだけで、ここまでつまらないドキュメンタリーも珍しい。

 ところが、ラブホテルのインタビューも入れたベッドの上のただれた雰囲気のシュミーズの女のカットと首筋と乳首を吸ってる男の顔のよく見えない正上位のカットとやはり男の顔のよく見えない騎上位のカットだけは、妙なリアリズムがあって突出してよかったけどね。

 これはいったいどういうことなんだ。


タリーと私の秘密の時間

2020年04月24日 00時10分50秒 | 洋画2018年

 ☆タリーと私の秘密の時間(2018年 アメリカ 95分)

 原題/Tully

 監督/ジェイソン・ライトマン 音楽/ロブ・サイモンセン

 出演/シャーリーズ・セロン マッケンジー・デイヴィス ロン・リビングストン

 

 ☆タリーは何者?

 ジェイソン・ライトマンは「親になったことで強制的に成長しなければならない女性を描いているんだ」と。ほう、そうなのか。

 人魚のフラッシュがインサートされてきたときに、あ~羊水の記憶なのかな~とおもったらなんかちがってた。でも過去の幻影ていうか見立てであることはまちがいないよね。

 テセウスの船の話をするのはちょっと唐突な感じはするけど。けど、耳の中の線毛細胞だけは再生しないってほんとなのかしら?

 しかし、シャーリーズ・セロンはさすがだな。この人は自分の美貌を否定したいのか、それともよほど自信があるのかのどちらかなんだろうけど。

 ま、それはともかく、3人目が生まれ、2人目の息子は教師から「知恵遅れの多動性の癇癪持ち」とかって烙印をおされたりしてれば、鬱が高じて分裂症になっちゃいそうになるのもわからないではないかな。


存在のない子供たち

2020年04月18日 00時19分56秒 | 洋画2018年

 ☆存在のない子供たち(2018年 レバノン 126分)

 原題/کفرناحوم

 監督・出演/ナディーン・ラバキー 音楽/ハーレド・ムザンナル

 出演/ゼイン・アル・ラフィーア ヨルダノス・シフェラウ ファーディー・カーメル・ユーセフ

 

 ☆ベイルートに棲む子供

 身につまされるというか、こういう現実はつらいね。

 エチオピアからベイルートに移民してくるというのもなかなか切実な展開なんだけど、それでも職がなく、貧困の生活から抜け出すことのできずにいるヨルダノス・シフェラウと知り合うことがつらい中での唯一の光明という皮肉が、たしかに演劇的ではあるけれど、物語を大きくうねらせる。

 いや、エチオピア移民の一歳のがんきんちょもだけど、まあこの子の場合は無意識の演技だから。なんといっても、主人公を演じたゼイン・アル・ラフィーアがうまい。ラストカットの身分証明書の写真を撮るときの笑顔もいいし。


幸福なラザロ

2020年04月15日 00時18分31秒 | 洋画2018年

 ◇幸福なラザロ(2018年 イタリア、スイス、フランス、ドイツ 127分)

 原題/Lazzaro Felic 英題/Happy as Lazzaro

 監督・脚本/アリーチェ・ロルヴァケル 音楽/ピエロ・クリチッティ

 出演/アドリアーノ・タルディオロ アニェーゼ・グラツィアーニ アルバ・ロルヴァケル

 

 ◇インヴィオラータ村

 実際に起こった詐欺事件を基にしているっていう触れ込みなんだけど、でもその事件がどんな事件だったのかはわからない。なんだか中途半端な感じを受ける。とはいえ、謳い文句に文句をつけたところで仕方がない。

 で、小作解放の後も騙して小作をさせられてた煙草農園の人々は解放されて社会に出たもののかえって惨めな暮らしを強いられるという皮肉はよくわかる。

 アリーチェ・ロルヴァケルが描きたかったラザロが、キリスト教圏ではどんな存在になるのかはわからないけれど、小作たちのために動き、教会から音楽を連れ出し、パチンコを武器にしたわけではないものの、銀行に嘆願に行き、殴り殺され、狼に憑依ってまでしても、小作らと共にあろうとするのはやっぱり聖人の証なのかしらね?


エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ

2020年04月14日 13時07分18秒 | 洋画2018年

 ◇エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ(2018年 アメリカ 98分)

 原題/Eighth Grade

 監督・脚本/ボー・バーナム 音楽/アンナ・メレディス

 出演/エルシー・フィッシャー エミリー・ロビンソン キャサリン・オリヴィエ

 

 ◇学年で最も無口だったで賞

 離婚した父親の頼りなさが効いてる。

 とはいえ、動画に映っているときは可愛いんだけど、実物は肌も汚いし二重顎だし猫背で脂肪が余っててすべてがでかいという、容姿については劣等感の塊みたいな子ってことがまもなくわかる。それからが本題で、劣等感に苛まれている女の子の物語が語られ始めるんだけど、いやまったく、これだけ役に似合った子をよく見つけてくるもんだ。

 こういう子を主役にできるアメリカは、ほんと、大したもんだよね。


ザ・アウトロー

2020年04月06日 01時36分40秒 | 洋画2018年

 ▽ザ・アウトロー(2018年 アメリカ 140分)

 原題/Den of Thieves

 監督・脚本/クリスチャン・グーデカスト 音楽/クリフ・マルティネス

 出演/ジェラルド・バトラー ライアン・カヴァノー ドーン・オリヴィエリ

 

 ▽元アメリカ海兵隊特殊作戦コマンド

 そいつらのしでかした現金輸送車強奪と銀行襲撃をあばいていくカリフォルニア州の刑事の話だけど、いや、まじな話、見ているのが堪え切れなくなったわ。裏切らせた犬との連絡をストリッパーに取らせるのはいいとして、それを知った家族との離婚話とか、どうでもいいし。


小さな独裁者

2019年10月08日 19時50分29秒 | 洋画2018年

 △小さな独裁者(2018年 ドイツ 119分)

 原題/Der Hauptmann

 監督・脚本/ロベルト・シュヴェンケ 音楽/マルティン・トートシャロウ

 出演/マックス・フーバッヒャー フレデリック・ラウ ミラン・ペシェル ワルデマー・コブス

 

 △エムスラントの処刑人

 こと、ナチス・ドイツの空軍兵ヴィリー・ヘロルトの実話らしいんだけど、不愉快な映画だった。

 打ち棄てられた軍用車輛から空軍の将官の制服を盗み出して将校になりすまして逃げようとするのはわかる。それが勘違いされて将校に成りすませるとわかり、これが徐々に昂じてヒットラーの特別命令を受けたヘロルト戦闘団なる詐称集団を組織していくという過程はよくわかるし、興味も持てる。

 でも、それからがいけない。

 好い気分にはとてもなれない。

 収容所に入り込んで指揮権を剥奪されるまでの狂乱は気持ちが悪くなるくらい無軌道で残虐だ。実際にあったことだから描きたくなるのもわかるし、このヘロルトという、のちに逮捕されて裁判にかけられ処刑される運命をたどってゆく元脱走兵については同情の余地もないし、それを糾弾して後世に知らしめようとする姿勢もわかるんだけどね。

 そういえば『影の軍隊』でもそうだったけど、捕虜を走らせておいて背後から撃ち殺すというのはナチスの常套的な処刑方法だったのかしらね。処刑をゲーム化するというのは事実だったから際立った残酷さだな。


ドント・ウォーリー

2019年10月04日 22時39分19秒 | 洋画2018年

 ◇ドント・ウォーリー(2018年 アメリカ 113分)

 原題/Don't Worry, He Won't Get Far on Foot

 監督・脚本/ガス・ヴァン・サント 音楽/ダニー・エルフマン

 出演/ホアキン・フェニックス ジョナ・ヒル ルーニー・マーラ ジャック・ブラック

 

 ◇自分を許せない人生

 ホアキン・フェニックス、見事に太ったわ。大した役作りだよね。

 ま、その根性はまず讃えて、筋立ての作りはさすがだ。

 ドキュメント・タッチで撮られた挿話を順不同のように並べながらも、アル中と交通事故による半身不随から他人を赦し、当事者つまりべろべろに酔っぱらいながら運転していた友人を赦し、そして助手席に乗り込んでいっさい止められなかった自分を最後に赦すという精神的な復活を遂げていく過程がばらばらながら上手に組まれてた。

 ただ、その中で、子供たちと真剣に戯れることができるようになったひとこま風刺画家の半生が見えてくるという最初と最後の括り方はよくわかるけれども、ちょいと単調かな。

 それとルーニー・マーラーがあまり入り込んでこない介護ボランティアのスチュワーデスなんだけど、こういう地味な役をよくやったなとはおもいながらも、彼女がやらなかったら埋もれちゃうな、ともおもった。


パリ、嘘つきな恋

2019年10月03日 23時32分48秒 | 洋画2018年

 ◇パリ、嘘つきな恋(2018年 フランス 108分)

 原題/Tout le monde debout

 監督・脚本・主演/フランク・デュボスク 音楽/シルバイン・ゴールドベルグ

 出演/アレクサンドラ・ラミー  エルザ・ジルベルスタイン ジェラール・ダルモン

 

 ◇障害者になりすますと際どさ

 エスプリの利いたフランス人でないと撮れないような差別ぎりぎりの崖っぷち映画だとおもって観てたけど、日本では撮れないだろうな。

 危なっかしいっていうか危ういっていうか、とにかく物語の際どさにはらはらしながら観ちゃったけど、とくに、パラリンピックをめざすいろんな人達に、競技の線引きはどうなってるんだとひとつひとつの例をあげて訊いていく件りは、たしかにそうで僕も訊きたいとおもってしまった。映画の中では明確に答えてはくれなかったけどね。

 ただまあ、余裕の笑顔を崩さないようにしているアレクサンドラ・ラミーの妹役キャロライン・アングラードのセクシーなことといったらないが、それはさておき、エルザ・ジルベルスタインの「しなくてもいいのにどうしてもしちゃうんだな的告白」にいたるまでの彼女の献身は、どうやら東西を問わない世の男の願望みたいなものなんだろう、たぶん。


僕たちのラストステージ

2019年10月02日 23時58分38秒 | 洋画2018年

 ◎僕たちのラストステージ(2018年 アメリカ、イギリス、カナダ 98分)

 原題/Stan & Ollie

 監督/ジョン・S・ベアード 音楽/ロルフ・ケント

 出演/スティーヴ・クーガン ジョン・C・ライリー シャーリー・ヘンダーソン ダニー・ヒューストン

 

 ◎極楽コンビ

 ことローレル&ハーディの晩年を描いたものなんだけど、残念なことに、ぼくはこのコンビを現役で観たことがない。

 というより、かれらの時代のコメディアンたちについて、ぼくはなにも知らない。実際、このふたりが映画になったからといってそれほど興味を掻き立てられたわけでもなかった。でも、映画は上手に作ってあった。

 いや、のっけから、ぶっ飛んだ。最初の10分近い長回しなんだけど、特撮を駆使してないとしたら、たいしたもんだ。

 それと、ハリウッドが実話を映画化するときに実在の人間に似せたキャスティングとメイクを徹底させるけど、この作品もそうだった。ていうか、ローレル&ハーディばかりか、その妻ふたりもよく似せてて、これも実にたいしたものだった。シャーリー・ヘンダーソンとニナ・アリアンダが妻たちを演じてたけど、ほんとうにこうだったんだろうなって感じだったわ。


バイス

2019年09月06日 00時21分31秒 | 洋画2018年

 ◎バイス(2018年 アメリカ 132分)

 原題 Vice

 監督・脚本/アダム・マッケイ 音楽/ニコラス・ブリテル

 出演/クリスチャン・ベール エイミー・アダムス サム・ロックウェル エディ・マーサン

 

 ◎史上最強にして最悪の副大統領

 実際、ディック・チェイニーはそんなふうに呼ばれていたらしい。

 まあ、この題名の「バイス」も掛詞になってるみたいだし、そういうところからして、この作品がブラックユーモアに満ちたものだってことは想像がつく。最後のタイトルもチェイニーの趣味のフライフィッシングのフライが出てくるんだけど、そこに心臓を模したものがあったり、ブッシュの誘いを優柔不断に受けながら自分の意のままにしていかにもしぶしぶ副大統領になるのを承諾したように見せかけたときもこのフライは上手にインサートされてた。

 ただ、ラスト、心臓の移植手術を受けて復活したチェイニーのインタビューの後、これでエンドロールかとおもいきや、また市民討論会がぶりかえしてこの後のアメリカを匂わすような展開になってるんだけど、これは蛇足だね。

 ま、それはさておき、特殊メイクは見事だった。役作りのために18㌔も太ったクリスチャン・ベールの相変わらずの役者魂には脱帽するけど、同時にメイクの妙は大したものだった。クリスチャン・ベールだけでなく、ブッシュをまぬけぶりを見事に演じてみせたサム・ロックウェルのメイクも実に大したものだった。エイミー・アダムズの小皺もそうだし、こういうところ、ハリウッドは徹底してるね。


運び屋

2019年09月03日 17時11分47秒 | 洋画2018年

 ◇運び屋(2018年 アメリカ 116分)

 原題 The Mule

 監督・主演/クリント・イーストウッド 音楽/アルトゥロ・サンドバル

 出演/ブラッドリー・クーパー ローレンス・フィッシュバーン ダイアン・ウィースト アンディ・ガルシア

 

 ◇The Sinaloa Cartel's 90-Year-Old Drug Mule

 2014年のニューヨーク・タイムズの記事は、そんなタイトルだったらしい。

 高評価なのは、イーストウッドへの賛辞を呈したということになるんだろう。

 主人公が頑固で偏屈でこだわりが強くて利かん気という設定は『グラン・トリノ』と同じっていうか、まあいつものイーストウッドなんだけれども、これまでと違うのは違法を犯しているかどうか、さらにそれを気づきながらもまだ続けてゆくという設定だ。これがどうにも腑に落ちない。

 イーストウッドは周りの誰が認めようとも、自分が違法を犯してしまうことに堪え切れないほどの嫌悪を抱き、そのくそったれにちかいような根性が最後に爆発するところがいいと、個人的にはおもってる。だから、このたびも前評判が良かったからなおさら、あ~これは最後には、この白いブツを運び続けた車でパトカーを先導あるいはわざと追跡させ、自分の命を懸けても麻薬カルテルを撲滅させるか、そこまで行かないながらも一発食らわしてくれるんだろうなって期待したんだけど、はずれた。

 被告人席に立ったイーストウッドの「ギルティ」っていう苦み走ったひと言だけだ。なんだかな~。

 たしかに、描かれてる麻薬密売組織は、この実際の運び屋に園芸家のエル・タタことレオ・シャープ爺さんがどうかしたところでびくともしなかったろうし、ここで嘘っぱちの展開をさせることに作り手は躊躇したかもしれないけれど、そこはそれ、映画なんだから、もう少し別な展開があってもいいんじゃないかっておもうんだけどね。

 でも、90歳の主人公の映画ってなかなかないし、そうしたところからすれば、たしかにイーストウッドは凄いとはおもうけどさ。それにひきかえ、アンディ・ガルシアの太ったことといったら、なんだか悲しくなったわ。