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ダンスとか。

NOA Dance

2006-02-17 | ダンスとか
NY, Joyce SoHo.
10月に Reveb Festival で見た『Epilogue』という作品が気になった振付家のカンパニー。2004年から2006年の作品を六本見ることができた。
▼Nelly van Bommel, Vagabundo
男女10人が全員出ずっぱりで、カジュアルに会話したり何となく立っていたり、という状況から複数のデュオやトリオが同時多発的に展開され、『Epilogue』に一番近い作品。音楽はボサノヴァ。ムーヴメント自体に新鮮さはないが、コンポジションは面白い。カップルが次々に組み替わったり、ロバート・アルトマンの映画のようだ。これだけ人を出しておいて出ハケを一切しないというところに、振付家は自分への課題を設定しているのだろうか。思ってみれば出ハケというのは人の存在/不在を意のままに操作するということであり、足すことも引くこともできない一定の体積から成っている個々の身体の存立要件とは対照的に、ひどく恣意的な操作であるといえる。だからこの出ハケを禁じるということは、舞台上の身体の総体を一まとまりの「身体」として定義し直すということでもあり、ダンス的には興味深い主題になり得るようにも思える。トリオが三組でユニゾンをする場面で、余った一人が舞台の周囲をウロウロしていたり、途中でどこかのトリオに無理矢理割り込んだりする場面などは、まさに「余剰」が「放浪する(Vagabundo)」状態なのだ。このことを頭においてもう一度見たらもっと色々見えて来るかもしれない。8分。
▼Nelly van Bommel, Dumbala
12月に見た『Pongas Triste』に似た感じの女性トリオ作品。音楽は合唱曲。床を含む、鋭い動きを、ひたすらタイミングを合わせながらユニゾンで行う。2分半。
▼Nelly van Bommel, Excerpts from Hebrew Tales
短い抜粋を二篇。『Sabra(イスラエル人)』は上半身裸の男が袖から出てきて、靴下の脇に小さいイスラエル国旗をなびかせながら左右の袖の間を行き来して踊る。必死さがおマヌケに見えるというパターンだが、作品の主題はよくわからない。『Yemenite(イェメン人)』は素朴な民族衣装のような格好をした男女のデュオで、民族舞踊風の腕の振りでグルグル歩き回ったりする。
▼Nelly van Bommel, Sonnet I
五人のダンサーが、フード付きの白いジャケットに手袋、マフラーという冬の格好でアクロバティックにひとしきり踊り、舞台前面に並ぶと正面から光が当たって、疲れからかクラクラ倒れてしまう。倒れては起き上がり、また倒れる。黒沢美香の『ララ』のような「他人のスキを突く」面白さが中心にあるわけではないが、とりあえず「自然な転倒」を装おうとするだけで、自ずと他人(他のダンサーや観客)のスキを突こうとする結果になるのだということを発見した。しかし、では『ララ』との違いは何か。『ララ』では、ここで行われているような「自然な転倒」の偽装が、音楽的なリズムとともにエスカレートし、ある時点で偽装から「偽装する」という(単なる)遊戯に転化してしまう。つまり装われた「自然さ」の人為性が(ダンサー同士の、そしてダンサーと観客の間での)「ゲームの規則」になる。ヴァン・ボメルの『Sonnet I』は、ただ「自然な転倒」というミメーシスを規則正しく持続することによって、「転倒すること」の滑稽さを律儀に7分間見せるのだが、黒沢の『ララ』において「自然な転倒」はあくまでも「自然な転倒という偽装」として扱われ、ダンスのためのフレーズと化してしまうのだ。舞台の上に自然はないのだと割り切ってしまい、それでいてなおも自然を取り戻そうとする時にダンスという道が選択されるのだろう。これに比べるとヴァン・ボメルは演劇的ミメーシスの水準に留まり、「自然さ」と「人為性」とその区別を大人しくなぞっているといわざるを得ない。
▼Nelly van Bommel, Java Steps
ギターとパーカッション(タブラとジャンベ?)の奏者が舞台に上がり、ダンスは女性のソロ。長い巻きスカートで、インドネシア舞踊風の動きを織り交ぜながら即興をする。ジャワ舞踊特有の、ポッピングのような停止や、ラーマーヤナで出てくる、腰の位置を変えずに片側の太腿をグッと上に持ち上げる動きなどが前半に現れた。脇を締めて両腕を縦にシェイクするような動きは何なのだろうか。あまり体の利くダンサーではなく、即興としての面白味は薄いが、この振付家の民族舞踊に対する無節操なまでの関心の持ち方は興味深い。モダンダンスの中に民族舞踊の語彙を引用するだけでなく、作品の構成(ミュージシャンと即興ソロ)においても非モダンダンス的なことを試みている。6分。
▼Nelly van Bommel, Pax Aeterna
ヴィヴァルディやグルック、ヘンデルのアリアなどを使った群舞中心の作品。荒々しいパートナリングのリフトなど、動きの平凡さばかりが目立った。15分。
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