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ダンスとか。

枇杷系 「ダンスの発明 vol.9」

2005-07-29 | ダンスとか
西落合・BIWAKEIスタジオ。
(予定されていた加藤奈緒子『バロック vol.1』は体調不良により上演中止)
▼有田美香子 『所々マダラ i』
今までそれほど多く見ていないので、彼女の特徴がどうもつかめていなかったのだけれども、今日のパフォーマンスは明快で、目の奥までスッと入ってきた。足の裏の接地面をおかしな風にズラして、外の縁だけで歩いたりする冒頭からして面白い。中央手前にある、ピンク色の点が集ってできた円に絡み、跨ぎ越しては戻ったりする場面、あるいは仰向けになって四肢を動かす場面など、これといって小綺麗に整理されているわけではない動きがしっかりした強いフォルムを伴っていてダイナミックである。ただわからないのは、どの動きも反復によって体をリズムにノせる方向へ向かう(最初の一回は作為だが二回目から直ちにリズムが入る。やや強引とも見えるほど急速に)にも関わらず、持続に関してはやけに淡白であるところだ。作為からリズムへとできるだけ素早く乗り移ろうとしているように見えるのに、すぐにリズムは遮断される。その意図が最後までつかめなかったというのが正直な感想。作品としては、微かなノイズやピアノ曲などが素っ気なくかかる程度で、イメージにほとんど寄りかかっていないのが潔くて良かった。終盤ではやや陰鬱なトランペットと打ち込みの音楽(ジョン・ハッセル?)が入って、床に横座りになり、上体を横にズラしては膝下を横にズラして(つまり股関節を回転させては膝関節を回転させて)体の向きを変えていく。ここでもまた、回る関節の動きが柔らかいリズムを帯びて、どちらかといえば露骨なまでのダンスになる。面白い。こういうことに驚きを得たい。でもここもやはり曲がさっさと終わってしまい、物足りないまま終了。約35分。
▼山本彩野/オカザキ恭和 『Holes』
上手中央で山本が腹部に仕込んだ風船を膨らませていき、下手奥でオカザキが白い球体とともに佇んでいる。青白い照明に照らされたオカザキの頭部が、白い球体に呼応している。するとやはりアンバーの光の中で、膨み行く風船の対応物を探してしまう。強いていうならば山本の臀部、あるいはうずくまる背中。妊婦の腹部の内容物が、オカザキにあってはすでに体外にあるかのような、不条理なイマジネーションがかき立てられる。やがてオカザキが中央に仁王立ちになって、強い白色光を浴びながら両手をゆっくり持ち上げていく。何ということはないが奇妙なインパクトのある場面。後半では、二人で同時に行う二種類の動きが面白かった。床に這いつくばる動き、あるいは仰向けに寝た姿勢で両肩を使いシコシコ移動していく動き。ここでは山本の体が、見かけからは想像できないほど骨太に力強く動くので驚いた。低い姿勢のまま、バネを利かせて狭い空間を大きくつかまえる。もう一つは、立ったまま首を後ろに仰け反らせてヨタヨタと歩く動き。「舞踏」的な誇張は何ら含まれていない。足を動かさざるを得なくなる瞬間を待っているようでいて、それが苦行じみるほどには追い詰めない。かといってギャグに逃げるでもない。有田の作品にも共通するこの淡白さ、(語弊を恐れずにいうなら)「無感動」ぶりに、何か深く共感する。約20分。
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