徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

今シーズン解禁か? 待望の「スギ花粉舌下免疫療法」

2013年12月08日 07時01分18秒 | 小児科診療
 近年、アレルギー学会ではスギ花粉症に対する「舌下免疫療法」がトピックス。
 これはアレルギー疾患(主に花粉症/アレルギー性鼻炎)の治療法で、舌の下にアレルゲンエキスを含んで体に吸収させ免疫寛容状態を誘導する(一言で云うと体を慣れさせてアレルギーを克服する)方法です。
 薬物療法は内服中だけ症状を抑える「対症療法」にとどまりますが、免疫療法は「根治療法」、つまり薬がいらなくなることも期待できる画期的治療法です。

 実は免疫療法は従来から行われてきました。
 皮下注射による減感作療法(現在は「皮下免疫療法」と呼びます)というものがそれで、一定の有効率はあるものの頻回の通院とアナフィラキシー・ショックなど重い副作用のリスクがあるため、普及は今ひとつでした。
 このたび登場した「舌下免疫療法」は重篤な副作用が激減し、自宅でできるので頻回の通院も不要とよいことずくめ。
 ヨーロッパでは既に行われており、米国ではまだ認可されていないという状況の中、日本では先月シダトレン®(鳥居薬品)が承認され、いよいよ今シーズン解禁されそうです。

薬剤なしで花粉シーズンを乗り切れる? 舌下免疫療法が来春導入へ
 大久保公裕氏が日本アレルギー学会・会長講演で臨床試験を総括
2013年12月4日:MTPro
 スギ花粉症の根治も期待できる舌下免疫療法(SLIT)は,来年の春ごろには保険適用が認可される見通しである。第63回日本アレルギー学会秋季学術大会(11月28~30日,東京都)の会長を務めた日本医科大学大学院頭頸部感覚器科学分野教授の大久保公裕氏は会長講演で国内の臨床試験を総括。適応は12歳以上で,抗原特異性が高い小児期から開始すべきだとし,「SLITを2年間継続することにより,薬剤なしで飛散シーズンを乗り切れる可能性がより高くなる」と述べた。


私が得た情報から要点をまとめますと・・・
メリット
有効率は約7~8割(1割は症状が無くなり、5割は症状が半分くらいに軽くなり、2割は症状が軽くなり、残り2割は変わらない)。
・注射ではないので痛くない!
・皮下免疫療法は週1回~隔週(~月1回)通院する必要があるが、舌下免疫療法では月1回で済む。


注意点
・この治療法には講習会を受けた医師のみが処方できるというルールがある。アレルギー専門医以外でも可能。
・対象年齢は12歳以上。
・認可されてから1年間は2週間処方が上限、2年目からは1ヶ月処方が可能になる。
・花粉の飛ぶ季節以外でも毎日、最低2年間(できれば3年以上)行わなければ十分な効果は期待できない。
・希望しても使用できない「禁忌例」が存在する。

などなど。

 2年間以上毎日治療しても30%の人には効果がないことを知っておいてください(「金返せ!」なんて言わないで)。でも、重症の花粉症患者で治療しても日常生活がつらい人には福音であることは間違いありません。

例に漏れず私自身も花粉症であり、この治療法を受けてみたくて楽しみにしてきました。
処方するためには講習を受ける必要があると知り、2013年11月30日の日本アレルギー学会で行われた講習会へ参加したところ・・・説明を聞く中で私自身か禁忌事項に当てはまることを知り、愕然(涙)。

<参考になるHP>
花粉症の根治もある「舌下免疫療法」からiPS細胞で注目の再生医療までを全網羅 ここまで治る!“超”先端医療
(2013年1月7日:ダイヤモンドオンライン)
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30例目の先天性風疹症候群が発生

2013年12月07日 16時01分12秒 | 小児科診療
 風疹問題は終わっていません;

先天性風疹症の赤ちゃん30人に(2013年12月6日:NHK)
 風疹の流行の影響で、赤ちゃんに障害が出る症例が全国で相次ぐなか、新たに1人の赤ちゃんが、「先天性風疹症候群」と診断され、去年からの流行で障害が出た赤ちゃんは、全国で30人に上りました。
 風疹は、妊娠中の母親が感染すると、赤ちゃんの心臓や目、耳などに障害が出る「先天性風疹症候群」になるおそれがあり、ことしの春から夏にかけて、風疹の流行がピークとなったことから、この冬にかけて生まれる赤ちゃんへの影響が心配されています。
 こうしたなか、先週、神奈川県で、新たに1人の赤ちゃんが「先天性風疹症候群」と診断されたと医療機関から報告があり、去年から続く流行で、「先天性風疹症候群」と診断された赤ちゃんは全国で30人に上りました。
 国立感染症研究所などによりますと、都道府県別では、東京が12人と最も多く、大阪が5人、埼玉が3人などとなっていて、少なくとも母親のうち14人は、予防接種を受けていなかったということです。
 国立成育医療研究センターの久保隆彦医師は、「30人という数字を国は深刻に受け止めるべきだ。妊娠を希望する女性だけでなく、流行の中心となった20代から40代の男性が予防接種を受けるように対策を取らなければ、今後また流行を繰り返すことになりかねない」と指摘しています。


先天性風しん症候群(CRS)の報告(NIID 国立感染症研究所)
★「保育士の予防接種歴及び抗体価確認を行うことの重要性」風疹をなくそうの会『hand in hand』共同代表 西村麻依子(MRIC by 医療ガバナンス学会:2013年12月6日)
 ・・・自分の経験をもとに、子どもに関わる職種の風疹対策の不備を訴えています。


 国が無策である限り、犠牲者(先天性風疹症候群として生まれた赤ちゃん)は増え続けることでしょう。
 何をすべきかは書き尽くした感があるので、過去ログをどうぞ;

(2013年11月08日)26例目の先天性風疹症候群が発生
(2013年10月31日)22例目の先天性風疹症候群が発生
(2013年10月11日)20例目(19+2-1)の先天性風疹症候群が発生
(2013年09月21日)19人目の先天性風疹症候群
(2013年09月05日)18人目の先天性風疹症候群
(2013年08月29日)17人目の先天性風疹症候群
(2013年08月01日)14人目の先天性風疹症候群
(2013年04月26日)風疹流行止まらず・・・10人目の犠牲者(先天性風疹症候群)
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国際学習到達度調査(PISA)の上位をアジアが独占。

2013年12月05日 06時44分41秒 | 日記
 先日、OECDの国際学習到達度調査(Programme for International Student Assessment, PISA)の結果が発表されました。
 え、聞いたことがない?

国際学力テスト(PISA)、日本「学力向上」順位上げる
(The Huffington Post 2013年12月05日)
経済協力開発機構(OECD)は12月3日、世界65カ国・地域の15歳約51万人を対象に2012年に実施した国際学習到達度調査(PISA)の結果を公表した。日本の平均点は「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の全3分野で2000年の調査開始以降で最も高く、順位も前回を上回った。2003年の調査で順位が急落した「PISAショック」をきっかけに、「脱ゆとり教育」へ転換したことが功を奏したとみられる。
PISAは2000年から3年ごとに行われ、今回が5回目。「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の3分野で、15歳の生徒がそれまでに身につけた知識や技能を実生活で生かす能力を測る。OECD加盟国の受験者平均が500点になるように換算される。
日本では191校約6400人が受験。その結果、平均点は「読解力」が538点(前回520点)で4位(前回8位)。「数学的リテラシー」は539点(529点)で7位(9位)、「科学的リテラシー」は547点(539点)で4位(5位)といずれも上昇した。習熟度レベルをみると、上位層の割合が減少し、上位層の割合が増加している。


 上の記事の図表(リンク先・・・国を選択すると表示が変わる)は画期的ですね。
 今回の結果を示す表を産経新聞より拝借;



 一目瞭然ですが、アジアが上位を独占しています。
 それも、上海や香港など国というより都市がトップ。
 国単位で見ると日本はいい線行ってますね。

 ヨーロッパ諸国はショックを受けていることでしょう。
 ちなみに、今までの順位経過図もどうぞ(産経新聞より);



OECD:PISAの公式サイト(データが公開されています)

 欧米の中で優等生だったフィンランドは落ちる一方。
 日本の論調はおおむね「2003年ショック(順位がガタ落ちした)を教訓にゆとり教育を見直した成果」というものです。
 一方、世界の反応は・・・NHK-BSのワールドニュースによると、ヨーロッパ各国首脳は「アジアの学習法には学ぶべきものがある」と口を揃えてコメントしていました。

 アジアの学習法とは?
 ニュース番組の中で「韓国式学習法(韓国式教育)」と表現したその実態は、学校の授業終了後も放課後居残って宿題を仕上げ、帰宅後は塾に行くという勉強三昧の日々・・・1日13時間勉強に費やすそうです。
 これを見せられたフランスの子どもたちは「他に何にもできないじゃないか」「家族と過ごす時間は?」「こんな生活したくない」と驚きあきれる始末。
 事実、韓国学習法を取り入れている国々や都市では子どものうつ病なども増えているそうです。

 なんだかなあ。

 韓国の子どもたちが心配です。
 以前、韓流アイドルの危うさをブログに書いたことがありました。
「少女時代」考
 韓国全体がこんな雰囲気に飲み込まれているようですね。
 努力を強いられるつらい生活をしていると、人間は他罰的になりがちです。
 韓国の反日感情はその歪みが形になったものの一つのような気がします。
 家族関係・対人関係の充実よりも、学力が優先される社会・・・そのような中で鍛え上げられたエリート達が社会を動かすのは危険極まりないと言わざるを得ません。


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