徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

当院が「イソジンうがい薬」を処方しない理由

2020年08月12日 07時31分18秒 | 小児科診療
先日(2020.8.4)の大阪府知事の発言「イソジンうがい薬がウイルス陽性率を減らした」という「ウソのようなホントの話」に日本中が振り回されました。

正しい知識を持つ医療者は「また余計なことを言い出して・・・」とあきれ顔をしています。
イソジンという消毒薬が新型コロナウイルスに有効なのは事実です。
でも、「消毒可能=うがい薬有効」と単純に言えない医学的理由があるのです。

当院ではもう10年以上前からイソジンうがい薬は処方していません。
その理由は、
・口の中には「口腔常在細菌叢」という腸内細菌叢と似たような“悪さしない善玉菌”が陣取っており、外から入ってきた悪玉菌につけいる隙を与えないことで感染から守っている、
・イソジンは悪玉菌のみならず善玉菌をも一網打尽でやっつけてしまう、
・すると、見張り番がいなくなる分、かえって悪玉菌が侵入しやすくなる、
等々・・・感染対策としてイソジンうがいをすると逆効果になるリスクがあるのですね。

昔、イソジンうがい薬と水うがいのどちらがインフルエンザ予防に効果があるかという研究があり、なんと水うがいに軍配が上がりました。

というわけで、当院ではイソジンうがい薬は採用しておらず、のどの炎症をやわらげる成分のうがい薬を処方しています。
人間は病原体(細菌やウイルス)と共存しています。オール・オア・ナッシングではなく、うまくつき合っていく必要があるのです。

関連学会も声明を出しましたね(⇩)。
無効であるばかりか、ヨウ素を必要以上に摂取することによる健康への悪影響にも言及しています。

ヨウ素系うがい薬の頻回使用に注意勧告
日本甲状腺学会、日本内分泌学会、日本内分泌外科学会
 ヨウ素系うがい薬による新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の重症化予防効果は、現時点で認められていない。それだけでなく、ヨウ素系うがい薬を頻回に用いることで、むしろ必要量以上のヨウ素が体内に吸収される可能性がある。日本甲状腺学会、日本内分泌学会、日本内分泌外科学会は合同で、「新型コロナウイルス感染症へのヨウ素系うがい薬の使用についての見解」(以下、見解)を8月7日に発表。内分泌の観点からヨウ素系うがい薬への注意を促している。
ヨウ素の1日摂取量上限は3mg
 一般市民にSARS-CoV-2感染予防法としてヨウ素系うがい薬が注目されたのは、大阪府の吉村洋文知事の発言(8月4日)に端を発する。これを受け、ヨウ素系うがい薬の購入を求める人たちが薬局やドラッグストアに殺到したのは承知の通りである。
 見解では、「ヨウ素系うがい薬による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する有効性を科学的に評価できる論文はなく、現時点で重症化予防などの効果は明らかでない」と指摘した。
 さらに、生命維持に必須の甲状腺ホルモン原材料であるヨウ素を必要量以上に摂取した場合、甲状腺機能に異常を来すことがあると指摘している。見解によると、ヨウ素系うがい薬には7%のポビドンヨードが含まれており、15~30倍に希釈後の1回量に含まれるヨウ素は14~28mg。口腔、咽頭粘膜から体内に吸収される量は不明だが「日常で食品から摂取する量よりもかなり多いヨウ素が吸収される可能性がある」という。
 なお、わが国におけるヨウ素摂取量の上限は1日当たり3mgとされており、一時的であれば超過しても問題はないが、長期に及ぶと甲状腺機能を維持する上で好ましくない。
 そのため、ヨウ素系うがい薬を使用する際の注意として
①口腔内で数秒間うがいし、飲み込まない
②甲状腺機能異常を来さない使用頻度および期間は明らかでなく、5~6日間で口内炎などの症状が改善しない場合は中止する
③甲状腺疾患患者または既往例は、使用前に医師・薬剤師に相談する―を挙げた。
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