徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

アレルギーの病気があると、新型コロナワクチンは危険?

2021年01月26日 11時31分02秒 | 小児科診療
新型コロナワクチン接種後にアナフィラキシーの報告がある度に、
「アレルギーの病気のある人は要注意!」
とのコメントがテレビから流されています。

小児科医は「誤解を招く言い方をするなあ・・・」と困っています。

なぜって、医師の間では「アレルギーの病気 ≠ ワクチンが危険」であることは常識です。
正確には、「ワクチン成分にアレルギーのある人=ワクチンが危険」です。

アレルギーの病気には花粉症も含まれます。
日本国民の50%は花粉症の症状が出ますから、
単純に考えると国民の半分はワクチン接種が危険?
という理解になりかねません。

ふつうの会話で使われる“アレルギー”と医学用語の「アレルギー」は、
その意味で温度差があります。

医学用語の「アレルギー」は、「特定のアレルゲンに反応して症状が出る体質」を意味します。
例えば、食物アレルギーと一口に言っても、食べると何でも反応して症状が出る人はまずいません。
「特定の食材(アレルゲン)」、例えば卵や牛乳、そばや魚介類や果物などいろいろありますが、
人それぞれで反応する食材が異なります。
卵アレルギーの人が全員リンゴを食べて症状が出るわけではないのです。

なので、「アレルギーのある方は要注意」という表現は、不安をかき立てるだけで不適切です。
正確に「ワクチン成分にアレルギー反応が出たエピソードがある方は要注意」と言い換えていただきたい。

さて、具体的な話です。

ワクチン成分でアレルゲン(アレルギーを起こす物質)となり得るのは、ワクチン液の安定性や保存、効果増強目的などで添加されている化学物質が多いです。

今回の新型コロナワクチンでは以下の物質の可能性がすでに報告されています;
ポリエチレングリコール(別名:マクロゴール)
ポリソルベート
聞き慣れない単語ですね。

でも、医療関係者には馴染みのある化学物質です。
ポリエチレングリコールは、医師にとっては「便秘薬」として有名です。
「腸管洗浄薬」として以前から使用されてきましたが、
最近「モビコール」として発売され、多用されています。
当院通院中の便秘のお子さんでもこの薬を使っている人が数十人います。

また、ポリエチレングリコールは軟膏の基剤としても用いられ、
たくさんの種類の軟膏に使用されています。

医薬品以外でもいろいろな製品に使用されています。
例えば「化粧品」。
リンク先を見ると、たくさんの化粧品に含まれていることがわかります。

ぬり薬や化粧品が合わない、かぶれた経験のある方は、
ワクチン接種の際の問診・予診で申請する必要があります。

下に紹介する堀向Dr.の解説記事では、ポリエチレングリコールに似た「ポリソルベート」という物質も要注意であると挙げています。

それから、添加物ではなく、新型コロナワクチンそのものに反応する人もゼロではないと思われます。
新型コロナワクチン液が体に入るのは誰もが初めての経験ですから、これは予想不可能です。
ですから、アレルギー反応(とくにアナフィラキシー)が出ても対応できる体制を整えて、接種に臨む必要があります。
さらに、接種後はアレルギー反応が出ないかどうか、会場に30分は居残って様子を観察する必要があります。

もっとも、アナフィラキシー対策は従来のすべてのワクチンに共通するものであり、
現在接種を担当している医療機関はそれを遵守しているはずです。
予防接種後「すぐ帰っていいですよ」と言われるクリニックは危険です。


新型コロナのワクチンは、アレルギーの病気を持っていると接種できないの?
堀向健太 (小児科医)

□ 新型コロナワクチンは、アレルギーの病気があると接種できない?

・・・『コロナのワクチンって、アレルギーがあると打てないんですよね?私(患児の保護者さん)もアレルギーを持っているのですが、接種してはいけないんでしょうか?』という質問を受けることがあります。
 はたして、アレルギーの病気を持っていると、コロナのワクチンは接種できないのでしょうか?
決してそうではありませんので、その経緯を説明しましょう。

□ 『アレルギーの病気』は、決して少なくありません。

 例えば食物アレルギーは、全年齢を通して1~2%程度のひとが持つと考えられていますし、それこそ、国民病ともいえるスギ花粉症は、半数近くの成人がもつ時代になってきています。
 つまり、アレルギーがあると接種できないとなると、多くの方が接種できなくなってしまいます。しかし、コロナのワクチン接種における推奨は、『アレルギーの病気を持っている人が打てない』にはなっていません。

□ 『アレルギー疾患のある人への接種は見合わせ』は、すでに変更されている

 確かに、12月上旬に医療従事者2人にアナフィラキシーが認められたことから、重篤なアレルギーの病気を持っている方に対する新型コロナのワクチンの使用は、一時的に中止されていました。
 日本でもそれを受けた報道もありました。
しかし、それ以降の続報がほとんど報道されていないため、現在も『アレルギーのある人は接種できない』と思われている方もいらっしゃるようです。
 しかし、英国・北米で100万回以上接種された結果、2020年12月30日にその見解が修正されました。
 そこでは、重症のアレルギーがある(もしくはあった)としても、コロナのワクチンそのものに対するアレルギーや、その成分に対するアレルギーを起こしたことがない限りはワクチンの接種を妨げるものではないとされています。

 つまり、簡単にいうと、

1) 1回目のコロナのワクチンを接種してアナフィラキシーを起こした
2) アレルギーを起こしやすいと考えられている成分(下記)でアレルギーを起こしたことがある(1回目のワクチンで明らかになるケースが多いと思われます)

場合に、接種を控える必要性がでてくるということであり、アレルギーの病気を持っているひとがすべて控えないといけないわけではないということです。
 
□ コロナのワクチンに含まれる成分で、アレルギーを起こしやすいものは分かっている?
 今のところ、ファイザー/ビオンテック社のワクチンに含まれているポリエチレングリコール(polyethylene glycol; PEG)が、アナフィラキシーの原因のひとつとして推測されています。そして類似した(科学的には“交差した”と表現します)成分であるポリソルベートが注意するべき成分と考えられています。
 つまり、過去、新型コロナのワクチン接種でアナフィラキシーを起こした方、そしてポリエチレングリコールやポリソルベートにアレルギーがある方以外は、接種可能と考えられているということです。
 なお、ポリエチレングリコールは本来、安全性の高い成分であり、さまざまな医薬品にも含まれる成分です。

・・・

 2021/1/24現在、16歳未満への新型コロナのワクチンは接種できません。あくまで臨床試験が16歳以上で実施されていたからであり、必ずしも16歳未満だから危険という意味ではありません。

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