待ちに待った、日本小児科学会のインフルエンザ治療指針が公表されました。
■ 2019/2020 シーズンのインフルエンザ治療指針
まず、抗インフルエンザ薬の種類と適応年齢の一覧表を;
注意事項はこちら;
*)平成29年3月24日に公知申請により承認されたオセルタミビルの投与は生後2週以降の新生児が対象である。体重2500g未満の児または生後2週未満の新生児は使用経験が得られていないため、投与する場合は、下痢や嘔吐の消化器症状やそのほかの副作用症状の発現に十分注意する。原則、予防投与としてのオセルタミビルは推奨しない(海外でも予防投与については1歳未満で検討されていない)。ただし、必要と認めた場合に限り、インフォームドコンセントのもと予防投与(予防投与量:2mg/kgを1日1回、 10日間内服)を検討する。
**)就学期以降の小児・未成年者には、異常行動などの有害事象について注意を行った上で投与を考慮し、少なくとも発熱から2日間、保護者等は異常行動に伴って生じる転落等の重大事故に対する防止対策を講じること、について患者・家族に対し説明を行うことが必要である。平成30年日本医療研究開発機構(AMED)研究班の検討によりインフルエンザ罹患後の異常行動がオセルタミビル使用者に限った現象ではないと判 断し、全ての抗インフルエンザ薬の添付文書について副作用の項に「因果関係は不明であるものの、インフルエンザ罹患時には、転落等に至るおそれのある異常行動(急に走り出す、徘徊する等)があらわれることがある。」と追記している。
***)ラニナミビル懸濁液「イナビル吸入懸濁用160mgセット」が2019年6月に承認され、 使用可能となる見込みである。同薬の使用については当委員会では十分なデータを持 たず、現時点では検討中である。
昨年(2018年)、10代への使用が再開されたタミフルは、全年齢に推奨される薬になりました。
吸入剤(リレンザ®、イナビル®)は具体的な年齢は書かれておらず「吸入が出来ると判断された 場合に限る」という表現にとどまります。当院では小学生以上に推奨しています。
点滴剤のラピアクタ®(ペラミビル)は「内服・吸入剤の使用が困難なときに考慮する」とあり、第一選択になっていません。
さて、興味は「ゾフルーザ®」(バロキサビル)の扱いです。
解説は長文ですが、結論は以下の文章に簡潔にまとめられています。
同薬の使用経験に関する報告が少ない事や薬剤耐性ウイルスの出現が認められることから、当委員会では 12 歳未満の小児に対する同薬の積極的な投与を推奨しない。
使用は許可されているが、お勧めはしない・・・
これを読んで私は苦笑してしまいました。
予防接種における「積極的勧奨の停止」と同じスタンスに思えたからです。
例えば、現在問題になっている子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)。
定期接種として無料接種可能ですが、国(厚生労働省)はお勧めはしない・・・
この姿勢を、小児科医は非難してきました。
しかし今回、自ら同じような方針を発表するという行為に出たのです。
なんだかなあ・・・。
結局、日本感染症学会の提言も日本小児科学会の方針も、「現場の判断&自己責任でやってください」以上の情報は得られませんでした。
こんなに宙ぶらりんな方針しか出せないなら、認可する前にもっと十分な検討が必要だったのではないか、と批判されても仕方がありません。
ゾフルーザ®とHPVワクチンの認可に際して共通することは“見切り発車”的要素が見え隠れすることです。
ゾフルーザ®は発売前から耐性化が懸念される情報がありました。
講演会では「その傾向はあるが、臨床的に問題にならない」との説明を私を含めた全国の小児科医が聞いたはずです。
私は「大丈夫かなあ」と一抹の不安を覚えていました。
そして蓋を開けてみると、結局“耐性化問題”で振り回されるというありさま。
HPVワクチンも、その認可は“寝耳に水”的タイミングでした。
小児科医は長らく肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチン、B型肝炎ワクチン、水痘ワクチン、おたふくかぜワクチンの定期化を厚生労働省に申請していました。
しかしそれらに先んじて、いきなりHPVワクチンが定期接種になったのです。
まあ、ついでに肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンも定期接種化というオマケがありましたが。
多くの小児科医は「HPVワクチンって何?」と感じました。
つまり、接種を受ける子ども達だけでなく、接種を行う小児科医にも周知されていないワクチンでした。
それを一部の情報を元に認可してしまうなんて、うまくいくはずがありませんよね。
現状がそれを如実に表しています。
前項目で扱った、日本感染症学会の提言がHPにアップされました;
■ 日本感染症学会提言「~抗インフルエンザ薬の使用について~」(2019年10月24日)
■ 2019/2020 シーズンのインフルエンザ治療指針
まず、抗インフルエンザ薬の種類と適応年齢の一覧表を;
注意事項はこちら;
*)平成29年3月24日に公知申請により承認されたオセルタミビルの投与は生後2週以降の新生児が対象である。体重2500g未満の児または生後2週未満の新生児は使用経験が得られていないため、投与する場合は、下痢や嘔吐の消化器症状やそのほかの副作用症状の発現に十分注意する。原則、予防投与としてのオセルタミビルは推奨しない(海外でも予防投与については1歳未満で検討されていない)。ただし、必要と認めた場合に限り、インフォームドコンセントのもと予防投与(予防投与量:2mg/kgを1日1回、 10日間内服)を検討する。
**)就学期以降の小児・未成年者には、異常行動などの有害事象について注意を行った上で投与を考慮し、少なくとも発熱から2日間、保護者等は異常行動に伴って生じる転落等の重大事故に対する防止対策を講じること、について患者・家族に対し説明を行うことが必要である。平成30年日本医療研究開発機構(AMED)研究班の検討によりインフルエンザ罹患後の異常行動がオセルタミビル使用者に限った現象ではないと判 断し、全ての抗インフルエンザ薬の添付文書について副作用の項に「因果関係は不明であるものの、インフルエンザ罹患時には、転落等に至るおそれのある異常行動(急に走り出す、徘徊する等)があらわれることがある。」と追記している。
***)ラニナミビル懸濁液「イナビル吸入懸濁用160mgセット」が2019年6月に承認され、 使用可能となる見込みである。同薬の使用については当委員会では十分なデータを持 たず、現時点では検討中である。
昨年(2018年)、10代への使用が再開されたタミフルは、全年齢に推奨される薬になりました。
吸入剤(リレンザ®、イナビル®)は具体的な年齢は書かれておらず「吸入が出来ると判断された 場合に限る」という表現にとどまります。当院では小学生以上に推奨しています。
点滴剤のラピアクタ®(ペラミビル)は「内服・吸入剤の使用が困難なときに考慮する」とあり、第一選択になっていません。
さて、興味は「ゾフルーザ®」(バロキサビル)の扱いです。
解説は長文ですが、結論は以下の文章に簡潔にまとめられています。
同薬の使用経験に関する報告が少ない事や薬剤耐性ウイルスの出現が認められることから、当委員会では 12 歳未満の小児に対する同薬の積極的な投与を推奨しない。
使用は許可されているが、お勧めはしない・・・
これを読んで私は苦笑してしまいました。
予防接種における「積極的勧奨の停止」と同じスタンスに思えたからです。
例えば、現在問題になっている子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)。
定期接種として無料接種可能ですが、国(厚生労働省)はお勧めはしない・・・
この姿勢を、小児科医は非難してきました。
しかし今回、自ら同じような方針を発表するという行為に出たのです。
なんだかなあ・・・。
結局、日本感染症学会の提言も日本小児科学会の方針も、「現場の判断&自己責任でやってください」以上の情報は得られませんでした。
こんなに宙ぶらりんな方針しか出せないなら、認可する前にもっと十分な検討が必要だったのではないか、と批判されても仕方がありません。
ゾフルーザ®とHPVワクチンの認可に際して共通することは“見切り発車”的要素が見え隠れすることです。
ゾフルーザ®は発売前から耐性化が懸念される情報がありました。
講演会では「その傾向はあるが、臨床的に問題にならない」との説明を私を含めた全国の小児科医が聞いたはずです。
私は「大丈夫かなあ」と一抹の不安を覚えていました。
そして蓋を開けてみると、結局“耐性化問題”で振り回されるというありさま。
HPVワクチンも、その認可は“寝耳に水”的タイミングでした。
小児科医は長らく肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチン、B型肝炎ワクチン、水痘ワクチン、おたふくかぜワクチンの定期化を厚生労働省に申請していました。
しかしそれらに先んじて、いきなりHPVワクチンが定期接種になったのです。
まあ、ついでに肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンも定期接種化というオマケがありましたが。
多くの小児科医は「HPVワクチンって何?」と感じました。
つまり、接種を受ける子ども達だけでなく、接種を行う小児科医にも周知されていないワクチンでした。
それを一部の情報を元に認可してしまうなんて、うまくいくはずがありませんよね。
現状がそれを如実に表しています。
前項目で扱った、日本感染症学会の提言がHPにアップされました;
■ 日本感染症学会提言「~抗インフルエンザ薬の使用について~」(2019年10月24日)