B型肝炎といわれても・・・?
これはウイルス感染症の一つですが、水ぼうそうやおたふくかぜ、インフルエンザとくらべると馴染みのない病気ですね。
小さなお子さんをお持ちのご家族はご存知のことと思われますが、このウイルス感染症を予防するワクチンが2016年10月に定期接種化し、2016年8月以降に生まれた子どもはもれなく接種することになりました。
ただ、病気を知っている町の小児科医の立場からすると、それ以前に生まれた子どもにも、たとえ有料(任意接種)でもぜひ接種していただきたいワクチンであることを強調したく、この文章を書いています。
B型肝炎は知らない間に感染し、症状が出ないことが多い感染症です。
咳や飛沫ではなく、体液や血液を介して感染するため、知らない間にうつるのです。密かに性行為でもうつります。
そしてやっかいなことに、このウイルスが一旦体の中に入るとヒトの体はそれを排除することができません。
慢性感染では肝細胞の中に潜伏し、じわじわと体をむしばみ、数十年かけて肝硬変、肝癌のリスクを抱えることになります。
一過性の感染でも、将来ガンを患って免疫抑制剤を使用する際に休眠状態のウイルスが再活性化して劇症肝炎を起こすことがあります。いずれも命に関わる病気です。
繰り返しますが、B型肝炎を予防できるワクチンが存在します。肝癌を予防するため、元祖“抗がんワクチン”でもあります。
従来日本では1986年から母子感染(=垂直感染)をターゲットに予防措置(ワクチン+免疫グロブリン)がされてきました。それはほぼ成功したのですが、母子感染以外の水平感染(家族や他人から感染)の問題が残りました。
近年問題になってきたのが父親からの感染です。母子感染予防事業を開始する頃には、いわゆる“イクメン”がまだほとんどいなくて、父親と子どもの接触は乏しくリスクと考えられていなかったという社会環境もあったようです。
それを解消すべく、2016年にすべての子どもを対象に広げて定期接種となったわけです(ユニバーサル・ワクチネーション)。
B型肝炎ワクチンは年齢が若いほど免疫の付きがよく、成人前に3回接種を済ませるとほぼ100%有効です。一方で、40歳以降では有効率が70%まで落ちてしまいます。
ですから、成人前にワクチンを済ませておくことをお勧めします。とくに将来、医療関係の仕事を考えている方は必須です。
より詳しく知りたい方はこちらをお読みいただき、お子さんの命を生涯にわたって守ることのできるワクチンの接種をご検討ください。