ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

「院内助産院」を開設 南和歌山医療センター (紀伊民報)

2006年12月03日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

どの分娩取り扱い施設であっても、分娩経過中の母児の急変は一定の確率で必ず発生します。分娩経過中に、母児の状況に異変が発生した場合は、分単位の迅速な医学的対応を要する場合が少なくありません。ですから、助産師と産科医のコラボレーションが非常に大切だと思います。

正常分娩の専門家である助産師の役割は、産科医と緊密に連携し、分娩経過が順調のうちは自然の経過に任せ、分娩経過中に何か異常が発生したら、素早くそれを察知して、なるべく早く産科医の管理に委ねて、母児の命を守るように最大限の努力をすることであるはずです。異常の第一発見者は、常に、妊婦に寄り添っている助産師です。ですから、助産師の役割は非常に重要で、これからも今まで以上に大活躍していただきたいと思っています。

しかし、妊婦に異常が発生しても、素早く反応して産科医の管理に移行させることができない助産師は最悪だと思います。危ないので、そういう助産師とは絶対に一緒に仕事はしたくありません。

また、「院内助産院」と言っても、病院内に産科医は存在してなくて、『何か少しでも異常が発生した場合には、必ず他の病院の産科に母体搬送しなければならない』ということであれば、その助産所が病院内に存在している意味は全くない気もします。

参考:南和歌山医療センター:「院内助産所」を開設、年内には妊婦受け入れへ(毎日新聞、2006年9月13日

****** 紀伊民報、2006年11月27日

「院内助産院」を開設 南和歌山医療センター(和歌山)

 田辺市たきない町の南和歌山医療センターは12月1日から、助産師が出産を扱う「院内助産院」を県内で初めて開設する。同センターでは助産師が出産前後や更年期の介護を担当する助産師外来も開いており、妊婦検診から出産、育児相談まで継続して母子を支援していく。全国で産科医が不足している中、医師不足を補う効果が期待されている。
 助産師は、看護師が半年以上の教育を受けて受験できる国家資格。看護師ではできない妊婦の内診や出産の介助、へその緒の切断ができる。
 開設する院内助産院では、助産師7人が交代で勤務し対応する。助産師が妊婦の検診を行い、正常な状態で出産できる場合には、妊婦の分娩(ぶんべん)を助ける。院内助産院で分娩するには妊娠中に3回以上の医師の診察が必要で、同センターの非常勤医師が担当する。
 紀南病院(同市新庄町)の産婦人科医が嘱託医を務める。出産時には電話で医師に情報を連絡するとともに、帝王切開が必要になるなど、状況が変わった場合は同院に搬送する。また、検診時に妊娠中毒症など、正常な出産が難しいと推測される場合は、同院が診察する。
 出産費用は、入院日数など個人によって異なるものの、市内の病院などとほぼ同等。5日間の入院で約32万円。
 出立加代子看護師長(42)は「それぞれの妊婦が『自分らしい出産』をできるように、時間をかけて支援していきたい。出産だけでなく、女性の生活を支えられるよう育児などの相談にも応じていく」と話している。
 同センターは、医師の派遣元となる徳島大学が産科医の派遣を見直したことから医師数が減り、8月末で分娩の取り扱いを休止した。10月以降は同センターに常勤医師を置いていない。これを受けて、紀南病院は医師数を3人から5人体制にし、機能を集中させている。
 同センターでの出産件数は2005年度で358件あった。このうち308人は正常出産で、帝王切開など異常出産は50件だった。

(紀伊民報、2006年11月27日)

****** 産経新聞、2006年12月2日

院内助産院を開院 地域の医師不足に対応 南和歌山医療センター  

 田辺市たきない町の国立病院機構南和歌山医療センターは1日、助産師が常駐し、妊娠から分娩(ぶんべん)、産後までのケアを行う「院内助産院」を開設した。全国で産科医が不足しているなか、医師不足を助産師の働きで補うことによって地域のニーズに応える。

 同センターでは、10月から産婦人科医の常勤体制がなくなり、非常勤の医師が週2回のペースで訪れ診察。出産については助産師が相談に応じる助産師外来を設置していた。今回の院内助産院の開設によって、産婦人科医の不在を補う体制が整うことになる。

 院内助産院では7人の助産師が妊娠検診や分娩期の診断、正常分娩の介助などを行う。また産婦人科医師の診療が必要な場合には、地域で産婦人科の拠点病院となっている同市内の紀南病院と連携して対応する。

 出産費用は市内の病院などとほぼ同額で、5日間の入院で約32万円となる。

(産経新聞、2006年12月2日)