ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

奈良南部の病院、産科ゼロ 妊婦死亡、町立大淀も休診へ (産経新聞)

2006年12月22日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

いくら医学が発達しても、母体死亡、胎児死亡、新生児死亡、脳性麻痺などは、決してゼロにはできません。分娩時には、かなりの確率で、母児の命にかかわる予測不能の急変が起こりえます。

病院では、母児の救命のためにできる限りの医学的な対応をしますが、その結果が常に患者側の期待通りとなるとは限りません。それぞれの医療施設の人員・設備から、おのずと医療の限界があり、限界以上のものを望んでも無理なものは無理です。

たとえ理想には程遠い不十分な医療施設であろうとも、何も無いよりははるかにましだということに、世の中の人々が早く気付く必要があると思います。

このままでは、早晩、あたり一面、焼け野原になってしまって、いったんは何もなくなってしまいそうです。

自ブログの参考記事: 

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(勤務医 開業つれづれ日記)

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(東京日和@元勤務医の日々)

ペンの暴力 (ある内科医の嘆息)

大淀病院、分娩中止。マスコミを訴えろ!
(健康、病気なし、医者いらず)

****** 産経新聞、2006年12月22日

奈良南部の病院、産科ゼロ 妊婦死亡、町立大淀も休診へ

 今年8月、分娩(ぶんべん)中だった高崎美香さん(32)が脳内出血のため意識不明となり、19病院から転院を断られた後、搬送先の病院で死亡した問題が発生した奈良県大淀町の町立大淀病院で、来年4月1日から産科を休診することが22日、わかった。

 奈良県中南部では今年4月以降、県立五條病院(五條市)や済生会御所病院(御所市)が医師不足を理由に相次いで産科を休診。今回の大淀病院の休診で、南部地域の病院には一つも産科がなくなる状況になる。

 同病院は「助産師や看護師の確保が困難なため」としており、同日から病院内に休診の経緯について掲示。4月以降に出産予定の患者については、事情を説明した上で他院への転院措置を取るという。

 同病院は、看護師が常勤、非常勤合わせて約110人と不足。275病床のうち、事実上稼働しているのは165病床。また、医師は現在、常勤1人、非常勤2人の3人体制で、婦人科は継続するため、婦人科医師の数については今後、検討していくとしている。

 奈良県では、高度医療が必要と診断された妊婦の県外搬送率が16年で37・2%に達するなど、周産期医療に対する整備の遅れも指摘されている。

(産経新聞、2006年12月22日)

****** 読売新聞、2006年12月22日

妊婦転院死の奈良・大淀病院産婦人科、来春から休診

 19病院から転院を断られた末、搬送先の病院で死亡した妊婦(当時32歳)が入院していた奈良県大淀町立大淀病院が、来年4月から産婦人科を休診することがわかった。

 同病院は「医師や看護師の確保が難しく、十分な対応ができなくなったため」と説明している。

 同病院によると、現在の常勤の産科医は1人。通院中の妊婦の多くが、来年3月末までに出産予定のため、町と相談して、同月までは診療を続けることにした。再開のめどは立っていないという。22日に院内に事情を説明する張り紙を掲示した。

 県は「できるだけ早く大淀病院が診療を再開できるようサポートしたい」としている。

(読売新聞、2006年12月22日)

****** NHK大阪放送局、2006年12月22日

妊婦死亡 町立病院産科休診へ

今年8月、奈良県大淀町の病院で、妊婦の容体が急変し、ほかの病院に次々に受け入れを断られた末、大阪の病院で死亡した問題で、この奈良県の病院が来年3月いっぱいで出産の扱いを取りやめることになり、県南部で出産を扱う病院がなくなることになりました。

奈良県大淀町の町立大淀病院で、今年8月、高崎実香さん(当時32)が出産中に意識不明になり、ほかの19の病院に受け入れを断られて大阪の病院まで運ばれ、出産後に脳内出血で死亡しました。町立大淀病院では常勤の医師1人とほかの病院から派遣されている非常勤の医師2人の計3人で、年間150件ほどの出産を扱っていますが、関係者によりますと死亡した高崎さんの出産にあたっていた常勤の医師が産科の診療をやめる意向を示したということです。病院は、ほかに産科の常勤の医師を確保するめどが立たないことから、来年3月いっぱいで出産の扱いを取りやめ産科を休診にするということです。

この常勤の医師は、「産科のスタッフが少なく、肉体的に負担が大きい」と理由を説明しているということですが高崎さんの死亡がきっかけであることも関係者にほのめかしているということです。

奈良県内には出産を取り扱う病院が26ありますが、県北部に集中しており、これによって県南部で出産を扱う病院がなくなることになります。

(NHK大阪放送局、2006年12月22日)

****** 朝日新聞、2006年12月22日

奈良・大淀病院、分娩対応中止へ 県南部のお産の場消える

 奈良県大淀町の町立大淀病院で8月、重体になった妊婦(当時32)が計19病院に搬送の受け入れを断られた末、大阪府内の病院で死亡した問題で、同病院が来年3月で分娩(ぶんべん)の取り扱いを休止することがわかった。同病院の産婦人科にはこの妊婦を担当した常勤の男性医師(59)しかおらず、長年にわたる激務や妊婦死亡をめぐる対応で心労が重なったほか、別の産科医確保の見通しが立たないことなどが理由とみられる。

 県などによると、同病院は来年3月末で産科診療を休止し、その後は婦人科外来のみ続ける方針。スタッフの拡充を検討したが、県内の公立病院に産科医を派遣してきた奈良県立医大の医師不足などから、新たに医師が確保できず、分娩対応の継続ができないと判断した。病院側は同日、院長名で事情を説明する文書を張り出した。

 男性医師は県立医大から非常勤医師の応援を得ながら、年間150件以上のお産を扱っていた。宿直勤務は週3回以上で、妊婦が死亡した後、「ここで20年以上頑張ってきたが、精神的にも体力的にも限界」と周囲に漏らしていたという。

 県南部では、県立五條病院(五條市)が4月に産科医不足から分娩取り扱いを中止しており、大淀病院がお産を扱う唯一の病院だった。県幹部は「早急に県内の周産期医療のあり方を見直さねばならない」と話す。

(朝日新聞、2006年12月22日)

****** 毎日新聞、2006年12月22日

奈良・妊婦転送死亡:奈良南部、産科ゼロに 大淀病院、来春から休診

 今年8月、入院中の妊婦の高崎実香さん(当時32歳)=奈良県五條市=が転送先探しの難航の末、死亡する問題が起きた同県大淀町立大淀病院(原育史(やすひと)院長)が、来年4月から産科を休診することが分かった。県南部(五條市・吉野郡3町8村)で分べんができる医療施設はゼロになる。婦人科は継続する。病院側は「医師が辞めるわけではないが、十分な看護師、助産師を確保できず、リスクが大きいと判断した」と説明している。

 同病院が22日、休診を知らせる張り紙をした。21日夕に連絡を受けた県医務課の高橋渉課長は、「妊婦死亡の問題で医師に心労があるという話は聞いた。かかりつけの妊婦には、県立医大付属病院(同県橿原市)や民間クリニックを紹介する」と話した。【青木絵美、松本博子】

(毎日新聞、2006年12月22日)

****** 朝日放送、奈良、2006年12月22日

妊婦死亡の病院 看護師確保厳しく産科休診

今年8月、奈良県の町立大淀病院で、出産を迎えた妊婦が転院先を相次いで断られた末、死亡しましたが、その大淀病院が、来年春から、お産の取り扱いをやめることを決めました。奈良県南部から、お産ができる病院がなくなることになります。

大淀病院では、8月、高崎実香さん(当時32)が、初めてのお産の途中で意識不明となり、より高度な治療が可能な病院への転院が必要となりました。しかし、19の病院に次々と受け入れを断られ、その後死亡しました。産科医不足が問題となる中、大淀病院は、奈良県南部で唯一、常勤の医師1人と非常勤2人の体制でお産に対応してきましたが、看護師らの確保が厳しく、来年4月からお産の取り扱いをやめる決定をしました。病院の利用者は、「大変ですよね。私らは、もういいけど、これから結婚して子供産もうとする人は・・・」と話しています。病院側は、お産の取りやめについて、「診ている妊婦を他の病院に紹介するには、今がギリギリの時期。高崎さんが亡くなった問題が直接の原因ではない」としています。

(朝日放送、奈良、2006年12月22日)

****** FNNニュース、2006年12月22日

奈良・妊婦たらい回し死亡問題 妊婦が入院していた病院が産科を休診へ

8月、出産中に意識不明となった妊婦がおよそ20の病院で受け入れを断られた末、死亡した問題で、当初、妊婦が入院していた病院が2007年の3月で産科を休診することになった。

この病院は、奈良県大淀町立大淀病院で、病院は「助産師などの確保が難しくなり、リスクが大きくなるため」としている。この結果、奈良県南部で出産を扱う病院がなくなることになった。

一方、妊婦の遺族は、病院に対する刑事告訴や損害賠償請求の訴訟を検討している。

(FNNニュース、2006年12月22日)