ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

青森県の産科医不足対策

2007年01月20日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

最近の一連の報道記事を読んでみると、青森県の産科事情も相当に厳しい状況にあることがよくわかります。

報道によれば、同県の産科医数、分娩施設数がここ数年で激減している上に、残り少なくなってしまった現役産科医の約4割が60歳代以上!とのことです。

その年齢構成から、多くの産科医が今後数年以内に次々と現役を引退していき、産科医数が今後ますます激減してゆくことも十分に予想されます。

『目前にまで迫ってきた産科絶滅の危機を、いかにして回避するのか?』という緊急避難的な応急処置(短期的対策)を講ずると同時に、『将来的にいかにして産科医を増やし育てていくのか?』という10年後・20年後を見据えた中・長期的対策を同時並行的に実行してゆく必要があると思います。

参考:青森県内30市町村で産科医不在

****** 東奥日報、2007年1月20日

妊婦らの宿泊施設確保へ/青森県

 県は来年度、中核病院に通う妊産婦や小児患者、家族らが宿泊する施設の確保実現に本腰を入れる。民間やNPO(民間非営利団体)の活用も含め、患者や家族の経済的・心理的な負担を軽減する宿泊施設実現へ検討を進める方針だ。

 十九日開かれた県議会環境厚生常任委員会で、県医療薬務課が、施設確保に向けた調査経費の予算化を検討していることを明らかにした。

 県は、深刻な産科医不足を受けて、地域の産科医を中核病院に集め、効率的な医療を提供する方針。医師集約化に合わせ、病院に隣接する宿泊施設を確保したい構えで、構想では、妊婦が出産や健診前に宿泊するほか、小児患者や看護する家族が滞在できるようにする。

(東奥日報、2007年1月20日)

****** 毎日新聞、2007年1月19日

青森県、待遇改善など3項目を柱に 産科医不足対策のたたき台

 深刻な産科医不足状況を改善しようと、県は基本指針「産科医療提供体制の将来ビジョン」(仮称)の07年度中の策定を目指し、指針内容の検討作業に着手した。青森市で県内医療機関の専門家による初の検討会が開かれ、県から「安全安心な出産環境の整備」など3項目を柱とする指針案のたたき台が明らかにされた。

 国の調査では、04年末の県内産科医数は94人。人口10万人あたり6・47人しか産科医がおらず、全国ワースト4位の状況だった。産科医の高齢化に伴い、今後さらに減ることも予想されている。

 この現状を踏まえ、県は検討会で(1)安心安全な出産環境の整備(2)将来にわたる産科医療体制の維持と充実(3)住民不安の軽減----を軸とする指針案のたたき台を提示。さらに、産科医の勤務環境や、女性医師の出産環境の整備などを進める方針を示した。

 これに対し、弘前大医学部などの医療機関側からは、ほとんど休日がない産科医の過酷な勤務状況が報告され、「妊婦の安全・安心のためにも出産施設の集約化は避けられない」との意見が相次いだ。また、産科医の確保のためにも、病院が女性産科医の出産支援策を充実させるべきだとの意見も出た。【村松洋】

(毎日新聞、2007年1月19日)

****** デーリー東北新聞、2007年1月15日

青森県内の深刻な産科医不足で議論本格化

 青森県は県内の産科医療体制を考える検討委員会を十一日に設置し、本年度内に「将来ビジョン」を策定するための作業を開始した。限られた医師数を活用し、安全で安心な出産環境を再構築する方針だ。そこで焦点となってくるのが、医療施設の重点化と医師の集約化。産科医の過重勤務を軽減するために、大学医学部が医師を再配置するなど既に一部では進んでいるが、これから本格的な議論が始まる。だが、公立病院を運営する各市町村や地域住民の理解など、クリアしなければならない課題は多い。
 
 ■22年前から57人減

 産科医不足の要因として挙げられるのは、過酷な勤務状況や医療訴訟の多さなどから、医学生が敬遠する傾向にあることだ。

 二〇〇四年に国が実施した調査によると、県内の産科医数は九十四人。一九八二年の百五十一人から五十七人減少した。全体の医師数は、千八百二人から二千三百八十一人と五百七十九人増加しているのに対し、産科医の激減は著しい。

 これに伴い、出産できる医療機関も減少。最近では、〇五年四月から十和田市立中央病院と公立野辺地病院、〇六年一月には公立七戸病院の産科医が不在となった。民間も出産ができる医療機関は多くはない。〇六年十月現在、県内では十三の公立病院と二十五の民間医療機関が出産に対応している。

 また、医師の高齢化問題にも直面している。婦人科医も含めた県臨床産婦人科医会の年齢構成をみると、六十代以上の医師は37%。二十、三十代の医師は計18%と半減。関係者からは「これからも徐々に減っていく。まさに“時限爆弾”だ」と危惧(きぐ)する。

 ■集約化は可能か?

 十一日、県が青森市内で開いた将来ビジョンの策定検討委員会(会長・水沼英樹弘前大医学部産婦人科学講座教授)の初会合では、出産環境を整備し直すため、来年度から医療施設の重点化や医師の集約化の具体的な検討を開始することにも言及した。

 小児科と産科医の医療資源の集約は、必要があれば緊急避難的な対策として各都道府県が検討することとなっている。だが、委員からは「各自治体に対し、県の指導力をどこまで発揮できるのか」と、果たして踏み込んだ議論に至るのか、不安視する声も聞こえる。

 水沼会長は「集約化は住民にとっては不安や不便になるかもしれないが、安全なお産を担保しなければならない」とした上で、「住民の理解を得て進めなければならない」と訴える。

 ■住民支援策も急務

 将来ビジョンは集約化のほかに、医療機関の連携見直しや女性医師の就労支援、助産師の活用、産科医を志望する学生の増加策など、今後実施すべき対策を洗い出す。

 一方、医療施設が遠くなることでの住民負担を軽減するために、待機宿泊施設や助産師外来などの必要性についても市町村と連携して検討するとしている。

 取材に対し佐川誠人県医療薬務課長は「現状では集約はやむを得ない。個人的には五人以上の複数配置が望ましい」と説明。「集約して産科医がいなくなった地域の住民に対しても、行政として責任を持ってフォローしたい」と、強調した。

(デーリー東北新聞、2007年1月15日)

****** 朝日新聞、2007年1月12日

産科医不足 県がビジョン作り

■検討会初会合で案提示

 深刻な産科医不足を克服するための県の基本的な指針となる「産科医療提供体制の将来ビジョン」づくりが始まった。青森市内で11日開かれた大学や病院関係者らでつくる検討会の初会合の場で、県がビジョンの大まかな案を示した。

 県は新年度以降、具体的な対応策をまとめる考えで、ビジョンはその基本的な指針となる。

 11日に提示された案では、(1)現在ある医療資源の中で安心安全な出産環境を整備すること(2)将来にわたって産科医療の提供体制を維持し充実すること(3)住民の不安や不便を軽くすること――の三つを課題の柱と位置づけている。

 これを基に、短期的対策として勤務時間や休み、手当の改善で医師の勤務環境を改善することや、女性医師が出産や産休を経ても続けて働ける環境づくり、産科医の代わりに助産師が妊婦の検診や保健指導をする助産師外来の検討などを挙げている。

 この日出席した委員からは、「県の総合周産期母子医療センターですら医師を募集しても集まらない」と医師確保の厳しさを訴える意見や、「産科医の集約化とともに小児科医の集約化も必要だ」といった具体的対策への意見が出された。

 県などによると、産科医療体制がぜい弱なのは、大学から自治体病院に派遣されている産科医の集約や引き揚げが進んで医師1人当たりの負担が増加、その結果、退職や開業する医師が相次ぎ、さらに医師不足を招く悪循環が起きているからだ。82年に県内に151人いた産婦人科医は、04年には94人まで減っている。

(朝日新聞、2007年1月12日)

****** 東奥日報、青森、2007年1月12日

県内産科医高齢化 4割が60代以上

 県内の産婦人科医のうち六十代以上が全体の約四割を占め、高齢化が進んでいることが十一日、青森市で開かれた産科医療提供体制のあり方に関する検討会(会長・水沼英樹弘大教授)で報告された。産科勤務医の月間の勤務時間は二百-三百時間に達し、中には「休日がない」医師もいるなど、過酷な労働環境が浮き彫りとなっている。今後、“産科離れ”が加速する恐れもあり、県は「産科医療提供体制の将来ビジョン(素案)」を策定し、産科医の集約化、勤務医の待遇改善、助産師活用などを提案した。

 弘大産婦人科学講座の報告によると、県の臨床産婦人科医会には百三十九人が所属。そのうち六十代以上が五十二人(六十代十七人、七十代二十一人、八十代十四人)で全体の37%。一方、二十-三十代は二十五人(二十代八人、三十代十七人)と全体の18%にとどまっていた。

 また県内の十五医療機関、産婦人科医五十二人から回答を得たアンケート結果によると、産科勤務医の月間勤務時間は二百時間から三百時間。当直回数(宅直含む)は、おおむね月間八日から二十一日に上る。休日調査では、週一回の休日が53%(八病院)で、二週間に一日は33%(五病院)、13%(二病院)が「休日がない」と答えた。

 「職場を変える」「開業する」など、現状を抜け出したい-とする産科医は約半数に達した。

 産科医の高齢化について、弘大産婦人科学講座は「産科志望者が大幅に増えない限り、現状のままでは自然減少が続く」と指摘。委員からは「高齢化した医師が、お産にかかわらなくなるという事態も」「産科医は“絶滅危惧(きぐ)種”ではなく、“絶滅種”になりかねない」という意見が出された。

(東奥日報、青森、2007年1月12日)

****** 河北新報、2007年01月12日

お産を安心安全に 青森県、将来像策定へ検討会

 青森県は産科医療提供体制の将来ビジョン策定を目指し、医療関係者による検討会の初会合を11日、青森市の青森国際ホテルで開いた。安心して安全なお産ができる環境整備をテーマに話し合い、小児科と産科の集約化の必要性についても検討する。

 議長には、弘前大医学部産科婦人科学講座の水沼英樹教授が選ばれた。委員からは「少子化対策の視点が必要だ」「産婦人科医の高齢化が進んでおり、医師減少を念頭にビジョンを作るべきだ」「搬送体制の充実が欠かせない」などの意見が出た。

 検討会では、同講座の横山良仁講師が産婦人科の病院勤務医に対するアンケート結果を報告した。将来ビジョンに盛り込むため、県が同講座に委託して行った調査研究の一環。

 横山講師は、6割以上の医師が自分の仕事量を過重だと感じている現状を紹介、「産科医を増やす前に、現役を辞めさせない方策が必要だ」と指摘した。

 さらに、必要な対策として(1)医師の報酬や待遇の改善(2)研修機会の確保(3)女性医師への出産育児支援―を挙げた。

 検討会は3月に素案をまとめ、県民の意見を募集する。将来ビジョンの策定は2007年度初めを予定している。

(河北新報、2007年01月12日)

****** 陸奥新報、2007年1月12日

産科医療提供体制の在り方で県の検討会

年度内に将来ビジョン策定

 本県の産科医療提供体制の在り方に関する第1回の検討会が11日、青森市内で開かれた。今年度内に産科医療提供体制整備の基本的な考えや今後の対応策などをまとめた将来ビジョンを策定、ビジョンに盛り込まれた個別課題は来年度、県周産期医療協議会で検討する。また産科・小児科医の集約化・重点化についても今後検討する予定だ。

 将来ビジョンは本県の現状を踏まえ、限られた資源の中で安心・安全な出産環境の整備を図るため、基本的な方向性を示すもの。現状と課題、短期・中長期的な対策を盛り込みまとめる。

 検討会は弘大医学部、県医師会、県総合周産期母子医療センターなど関係者13人で構成され、同日は事務局のビジョン構成案を基に意見を出し合った。2月末までに委員の意見を集約して素案を作成、3月に開く第2回検討会で決める。

 会議では現状把握のため、県が弘大医学部産婦人科学講座に委託し、昨秋に実施した調査研究の中間報告が発表された。17の公的・私的病院と産婦人科医52人にアンケートを行った結果、全体の52・9%が当直が「やや過重・非常に過重」とし、仕事量も64・7%が「やや過重・非常に過重」と受け止めながら勤務していることが分かった。

 逆に女性医師に対する支援策がしっかりしている病院勤務の医師からは少数ながら「当直が少ない」「休日は十分」という回答もあり、中間報告は「今後ますます増える女性医師への支援策確立が重要」としている。

 また待遇や休暇、収入については5―6割が十分ではないと感じており、全体の44%は職場を変えたり、開業や他科へ変わるなど環境変化を求めている。調査では、現在の施設勤務医を確保するためには「仕事量に見合った報酬を支払うことが第一」と考察している。

(陸奥新報、2007年1月12日)

****** 東奥日報、2006年1月6日

県の産科医集約構想に賛否の声

 県内の産科医不足対策として、県が打ち出した産科医を中核病院などに集約する方針に賛否の声が上がっている。医療関係者は「過重労働が軽減され、チーム医療でハイリスク症例に対応できる」と集約化をおおむね歓迎するが、妊婦や出産したばかりの女性は「やっぱり地元の病院で安心してお産したい。長時間の通院は心配」と不安を隠せずにいる。

 県は来年度スタート予定の「出産環境整備特別対策事業」で、大学、医師会、住民らの意見を踏まえた「産科集約ビジョン」を二カ年で策定する考えだ。集約ビジョンは自治体病院の産科医を中核病院などに三-四人体制で集め、医師の負担軽減と高度医療提供を目指すが、一方で集約により産科医不在の病院が新たに発生する懸念もある。

 ある自治体病院の産科医は「現状では産科医を増員することは難しい。安全性を追求し、重症例に対応するためには産科をセンター化し、医師と妊婦を集約するしかないのではないか」と語る。弘前大学医学部産科婦人科学講座の水沼英樹教授は「労働環境の過酷さからこのままでは勤務医はみな辞めてしまう。集約には総論賛成。だが病院直結のバスを運行させるなど住民の利便性確保も必要。いかに住民理解を得られるかが重要だ」と提言した。

 一方、地元から産科医がいなくなるかもしれないという住民の不安は大きい。三月に出産を控えた十和田市の主婦(28)は「近くの開業医で出産予定だが遠くは八戸市まで通院している人もいると聞く。この時期は大変そう。地元で安心して産みたい」と語る。また、昨年十二月末に出産したばかりの三沢市の会社員(31)は切迫早産で出産までの三カ月間入院した。「普通分娩(ぶんべん)できたのは地元の病院で安心して過ごせたおかげ。むしろ出産できる病院を増やしてほしい」と訴える。

 県医療薬務課は「二十四時間いつでも対応できる産科拠点が必要。その安心を確保するためにも避けて通れない」と集約の意義を強調する。医師集約について行政と住民の認識に大きな溝がある中、住民の不安をいかに払しょくするかがビジョン策定の鍵になる。

(東奥日報、2006年1月6日)