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ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

新型インフルエンザ: 誰にワクチンを優先的に接種するのか?

2009年08月21日 | 新型インフルエンザ

夏にもかかわらず新型インフルエンザの感染者数が急増しています。これから秋~冬にかけて、新型インフルエンザの大流行が心配されている中で、新型ワクチンワクチンの不足が心配されています。

日本でワクチンが広く出回るのは11~12月になりそうですが、このころ新型インフルは流行の最中だと考えられ、予防には間に合わない可能性があります。

初期段階では限られた量しかワクチンが利用できない可能性があり、誰にワクチンを優先的に接種するかが問題になっています。

新型インフルエンザ: 国内感染 1週間で推計6万人

****** 毎日新聞、2009年8月20日

新型インフル 妊婦や若年層の接種が争点に

ワクチン順位

 国内で新型インフルエンザワクチンの接種を巡る議論が始まった。海外でも重症化のリスクが高い人や医療関係者に優先的に接種する方向で議論が進んでいるが、国内では新型の重症化のリスクが高いとされる妊婦や、若年層への接種が議論の争点になりそうだ。

 世界保健機関(WHO)が7月に出した勧告では、新型のワクチンについて「必要な医療体制を維持するため」として、優先順位の筆頭に医療従事者を挙げた。その上で妊婦や慢性的な持病がある生後6カ月以上の人などを考慮するよう提案した。しかし、国内で安全性に対するデータの蓄積が不十分だとして、国は妊婦に季節性インフルエンザのワクチン接種を勧奨していない。また、若年層については、季節性ではあまりみられない入院例が相次いでいるため、「ワクチンで発症数を抑えなければ、現場の医療機関がパンクする」との懸念が出されている。しかし若年層を接種対象に含めれば必要なワクチンの量が大幅に増えるため、輸入の是非も含めて確保策が議論になる。

 一方、米疾病対策センター(CDC)は「初期段階では限られた量しかワクチンが利用できない可能性がある」として妊婦▽6カ月未満の乳児の同居者▽患者と接する医療従事者▽6カ月~4歳の小児▽5~18歳までの慢性の持病を持つ小児--の優先接種を勧告した。さらに65歳以上の高齢者は新型の感染リスクが若者より低いとして、「若年者への供給が満たされたときに65歳以上に提供すべきだ」と指摘している。

 この他、独や韓国は警察、消防、救急隊員も対象者に挙げた。【江口一】

(毎日新聞、2009年8月20日)

****** 時事通信、2009年8月20日

ワクチン優先順位、来月にも決定

医師や患者団体が議論-厚労省

 厚生労働省は20日、医師や患者団体関係者による「新型インフルエンザワクチンに関する意見交換会」を開き、ワクチン接種の優先順位について議論を始めた。政府対策本部の専門家諮問委員会などにも意見を求め、来月にも優先順位を決める見通し。接種は10月以降になるとみられている。

 出席者は「死亡者を減らすことが目的」として、呼吸器疾患や糖尿病などの持病がある重症化リスクが高い人を優先すべきとの意見でおおむね一致。感染者の治療に当たる医師や看護師を優先すべきとの声も相次いだ。 

(時事通信、2009年8月20日)

****** J-CASTニュース、2009年8月20日

新型インフルワクチン不足 

大流行の時期に間に合わず?

 これから秋冬にかけて、新型インフルエンザの大流行が心配されている中で、ワクチン不足が心配されている。日本で広く出回るのは11~12月になりそうだが、このころ新型インフルは流行の最中だと考えられ、予防には間に合いそうにない。さらに、ワクチンの数が足りないとなると今度は、誰にワクチンを接種するかも問題になってきた。

ワクチンの数が足りず、接種の優先順位が問題に

 新型インフルエンザの国内感染者が2009年7月に入り、急増した。中高生の集団感染が続々と報告され、3人の死者も確認された。舛添要一厚労相は8月19日の記者会見で、国立感染症センターがまとめた資料をひきあいに、インフルエンザは本格的な流行期に入ったことを話した。

 舛添厚労相はさらに、インフルエンザ対策として、症状の重症化を防ぐ効果が期待されるワクチンを、「5300万人分を用意したい」とした。しかし、国内で年内に製造できるのは1400万~1700万本。輸入によって2000万本を確保することも打ち出しているが、それでも「5300万人分」には届かない。

 もっとも、ワクチンに関しては当初、2500万本が生産可能と試算していたが、ウィルスの増殖能力が予想よりも低かった。そのため、7月3日の記者会見で、年内生産量を1400万~1700万本に下方修正した経緯がある。

 ワクチンの数が現実的に足りないとなると今度は、誰にワクチンを接種するかも問題となる。厚労省では8月20日、意見交換会を開き、ワクチン接種の優先順位について検討した。意見交換会に出席した専門家らの間では、医療従事者や持病のある人、妊婦、幼児への優先を求める声が多かったという。

 これに対して、新型インフルエンザに詳しい、けいゆう病院(神奈川県横浜市)の菅谷憲夫小児科部長は、「(ワクチンは)世界的にいっても十分な数は間に合わないだろう」と指摘する。メーカーの生産能力の上限もあるが、安全性や有効性において万能というわけではない。頼りすぎるのもよくないだろう、とする。輸入するにしても、世界中で必要としているため、日本だけが買うわけにもいかない事情もある。

 くわえて、ワクチンが増産され、日本で広く出回るのは11~12月になりそうだ、とする。その頃には、新型インフルエンザは流行の最中だと考えられ、予防には少し遅い。

「タミフルは十分な量がある。不足の心配はない」

 しかし、インフルエンザの際に処方される、抗ウィルス薬タミフルには十分な備蓄がある。厚労省の結核感染症課によると、国と自治体のタミフルなどの備蓄量、流通量をあわせると、8月現在では4900万人分がある。国では、国民の45%(5700~5800万人分)を目標に準備を進めており、メーカー側にもさらなる協力依頼を要請しているという。

 そのため、菅谷部長も、「タミフルには十分な量が備蓄されている。不足する心配はない」と話す。秋から冬にかけて流行すると見られている新型インフルエンザでは、日本の場合、2500万人~3800万人と見積もられており、備蓄分を勘案すれば十分というわけだ。

 インフルエンザの感染が疑われた場合、「きちんと治療を受けましょう」と菅谷部長は呼びかける。一部では「弱毒型」とも伝えられているが、これは症状が軽いというわけではないと指摘する。そのため、決して油断はできない。菅谷部長は、健康な成人でも症状が重くなるケースも報告されているため、感染の際は、きちんとした治療を受けることが重要だと繰り返した。

(J-CASTニュース、2009年8月20日)

****** 毎日新聞、2009年8月20日

新型インフルエンザ:「本格流行」 

重症化防止が焦点 

持病持ち、妊婦は要注意

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厚労省喚起

 国内の新型インフルエンザ発生が広がり、糖尿病などの持病を持つ死亡例や重症例の報告が相次いだ。一方で、入院例では健康な人や未成年などの患者が大半を占めることが改めて確認され、厚生労働省は「誰もが重症化のリスクを持つ」と警戒する。

 「重症化防止に焦点を置いて対策を進めないといけない」。19日夕に会見した厚生労働省の中嶋建介・感染症情報管理室長は強調した。新型インフルエンザ患者が増え、死亡例や重症例の報告が相次いでいるからだ。

 国内で19日までに報告された死亡例は、腎不全で透析をしていたり、血液のがんを患うなど持病を持つ患者だった。世界保健機関も糖尿病、心臓疾患などの持病を持つ人や、妊婦を重症化のリスクが高いと指摘している。感染を防ぐ免疫力が落ちているからだ。

 国内に予備群を含め、2210万人いると推測されている糖尿病患者の場合、血糖値が高くなるにつれ、免疫をつかさどる血液中の白血球の増殖能力が落ちる。堀田饒(にぎし)・中部労災病院長は「糖尿病患者は血糖値が高いほど、感染症に対する抵抗力が落ちる。予備群も高齢だったり、腎臓病を併発すると感染症にかかりやすく重症化しやすい」と注意を呼びかける。

 また、国内で透析を受けている患者は約26万人。透析を受けているような腎不全の患者は毒素が排出されにくいので、免疫機能が影響を受け、体内でウイルスや細菌に対抗する「抗体」を作り出す能力が落ちる。菱田明・浜松医科大教授(腎臓内科)は「インフルエンザが流行していても、患者は透析をやめられない。手洗いなどの感染予防を徹底し、発症の疑いがあれば早期治療を受ける必要がある」と指摘する。

 妊婦は、胎児に対して拒絶反応を起こさないよう免疫力が低下するのでリスクが高くなる。日本産科婦人科学会は、妊娠中や授乳中の女性への呼びかけで、38度以上の発熱などインフルエンザのような症状があれば、かかりつけ産婦人科医を直接訪れるのではなく、地域の一般病院にあらかじめ電話をしてなるべく早期に受診するよう訴えている。

症状ある人、感染防止を--厚労相

 国内で新型インフルエンザのために入院した患者の8割近くが未成年だったり、6割は持病を持っていない健康な人だった。厚労省は「健康な若者の重症化は海外でも報告されており、国内でも今後も起こりうる」として、医療機関に注意を促す方針だ。

 舛添要一厚生労働相は19日、感染者が急増すると医療機関が重症患者に対応できなくなる恐れもあるとして、患者数のピーク値を抑えることが重要だと指摘。症状が出た人に対し、マスク着用、外出の自粛、人にせきやくしゃみをかけない「せきエチケットの徹底」を呼びかけた。【江口一、永山悦子、河内敏康】

マスクやうがい薬、対応急ぐ関連業界

 新型インフルエンザの「本格的流行」を受け、対策用品を製造、販売する関連業界も対応を急いでいる。

 全国でドラッグチェーンを展開するコクミン(大阪市)では、新型インフルエンザによる日本初の死亡が確認された15日以降、マスクの販売が急増した。

 「下火だった6~7月から一転。国内感染が拡大した5月ほど爆発的ではないが、ほとんど売れない例年の8月と比べると数倍の売れ行き」という。全国約900店舗を展開するマツモトキヨシも、一部店舗でマスクやハンドソープ、うがい薬などを集めた「ウイルス対策コーナー」を開設した。5月はマスクなど関連商品の品切れが相次いだが「今回は流行が予想される秋に備え、大量仕入れをしており、品切れの心配はない」(コクミン)としている。

 一方、製薬会社やマスクメーカーは、品薄に陥った5月以降、フル生産を続けている。立体型マスクを販売するユニ・チャームは、土日や盆休み返上で工場を24時間操業、前年比3倍の生産態勢を取る。大正製薬は6月、マスクと手指消毒用ハンドジェルが品薄になったため、製造委託先に増産を要請。8月上旬までに今冬分の在庫を確保した。だが「予測できない需要が発生した場合、品不足になる恐れもある」(大正製薬)ため、増産態勢は解除しないという。

 治療薬「タミフル」をスイスのロシュグループから輸入する中外製薬は、政府備蓄用として1~6月に500万人分を調達。さらに7~9月に830万人分を追加供給する。

 都道府県にも11年度末までに1330万人分を順次届けるが、前倒し要求が出ており「輸入から出荷までの期日短縮に努力する」としている。【坂井隆之、窪田淳、和田憲二】

都市圏で目立つ集団感染

 厚生労働省が新型インフルエンザの集団感染数を都道府県から報告を受け始めた7月20日から今月16日までの約1カ月で、全国の集団感染の累計は1734件に上っている。都道府県別では、沖縄が217件と突出して多く、都市圏の大阪184件、東京160件が目立っている。

 同省は、学校や社会福祉施設などで7日以内に2人以上の疑い例が出た場合などに集団感染として報告するよう求めている。沖縄で多い理由ははっきりしないが、同省は「熱帯に近いところでは、季節を問わず流行する傾向がある」と説明する。人口密集地に多い傾向はあるが、当初患者数が多く報告された兵庫が比較的に少ないなど、地域によってばらつきがある。【清水健二】

(毎日新聞、2009年8月20日)

****** NHKニュース、2009年8月21日

厚労省 医療態勢を全国調査へ

新型インフルエンザが本格的な流行に入ったとみられることから、厚生労働省は、全国の都道府県を対象に、人工呼吸器の配備状況など、重症患者の増加に備えた医療態勢を調査することになりました。

厚生労働省によりますと、今月9日までの1週間に医療機関を受診した新型インフルエンザの患者は全国で6万人に上ると推計され、本格的な流行に入ったとみられるということです。先週末から今週にかけては、沖縄県と神戸市、それに名古屋市で、新型インフルエンザの感染者が死亡したほか、重症になる患者も相次いでいます。このため厚生労働省は、感染がさらに広がれば、今後、重症の患者が増えるおそれもあるとして、全国の都道府県を対象に、医療態勢の実態調査を行うことになりました。調査では、各都道府県にある人工呼吸器の台数や治療にあたる医師の態勢、それに重症患者を受け入れる集中治療室のベッド数などについて調べる方針です。また万一、患者が急増して人工呼吸器や病院のベッドが足りなくなった場合の対応方法についても確認したいとしています。厚生労働省は、来週にも調査を始めて現状を把握したうえで、医療態勢の強化を進めることにしています。

(NHKニュース、2009年8月21日)

****** NHKニュース、2009年8月21日

治療薬の供給整備や開発急ぐ

新型インフルエンザが本格的な流行に入ったとみられるなか、製薬会社は、治療薬の供給体制を整えるとともに、国産の新しい治療薬の来年度中の販売を目指して開発を急ぐ方針です。

今回の新型インフルエンザには「タミフル」と「リレンザ」という海外メーカーが開発した2種類の治療薬が効くとされ、政府や都道府県が備蓄を進めています。このうち、「タミフル」の日本での販売を行っている「中外製薬」は、政府の備蓄用として、すでに1850万人分の供給を済ませていますが、さらに、来月までに830万人分を追加で供給する計画です。また、「リレンザ」を製造販売するイギリスの製薬会社「グラクソ・スミスクライン」の日本法人は、ことしの医療機関向けの供給量を去年の実績の340万人分よりも大幅に増やす方針です。一方、インフルエンザの治療薬は2種類に限られていることから、国産の新しい治療薬の開発が急がれており、「第一三共」と「塩野義製薬」はすでに最終段階の臨床試験を終え、国の承認を得たあと、来年度中の日本での販売を目指す方針です。このように製薬各社は新型インフルエンザが大流行する事態に備えて、治療薬の供給体制の整備や開発を急ぐことにしています。

(NHKニュース、2009年8月21日)

******NHKニュース、2009年8月20日

マスクの売れ行き 再び急増

新型インフルエンザが本格的な流行に入ったとみられるなか、スーパーやドラッグストアなどでは感染を防ごうとマスクなどを買い求める人が再び急増しています。

千葉県・船橋市にある大手スーパーでは先週後半からマスクやうがい薬などを買い求める人が急増していることから、今週に入り、専用の売り場を設けました。例年、夏場はマスクの販売が伸びませんが、ここにきて去年の5倍から6倍の売れ行きになっているということです。マスクを買いに来た主婦は「新型インフルエンザのことはしばらく忘れていたが、最近、問題になっているのでマスクを買い足そうと思います。小さな子どもがいるのでとても心配です」と話していました。ことし5月に日本でも新型インフルエンザの感染が確認された際には、全国的にスーパーやドラッグストアなどの店頭でマスクが品切れとなるケースが相次ぎました。イトーヨーカ堂船橋店の三浦健太郎マネジャーは「先週からマスクを店頭に並べると客が次々と買っていくのですぐになくなってしまう。仕入れが非常に難しいのでサイズがそろいにくく、今後子ども用などは足りなくなることも考えられる」と話していました。一方、マスクメーカー各社はことし5月に、新型インフルエンザが流行した際に店頭で商品がなくなる事態が起きたことから、生産設備などを増強し、十分な供給体制を整えたとしています。

(NHKニュース、2009年8月20日)


新型インフルエンザ: 国内感染 1週間で推計6万人

2009年08月20日 | 新型インフルエンザ

妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対しての新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応Q&A (一般の方対象) 、日本産科婦人科学会

新型インフルエンザ(H1N1)感染妊婦に関する最新情報、日本産科婦人科学会

****** 朝日新聞、2009年8月19日

厚労相、新型インフル「流行本格化」 

対策実践呼びかけ

Tky200908190332_3  新型インフルエンザの感染者が全国的に急増している情勢を受け、舛添厚生労働相は19日午前、記者会見し、「本格的な流行が始まったと考えていい」と話した。そのうえで、このまま感染が拡大すれば医療機関で重症者対応ができなくなるとして、「感染の拡大防止には一人ひとりが対策を実践することにつきる」と呼びかけた。同日には名古屋市の80代女性が新型インフルエンザで亡くなり、国内の死者は3人となった。

 舛添氏は、流行の本格化は秋以降としていた従来の予想に反し、真夏でも感染が拡大していることについて、「私も予想できなかったことだ」と説明。「夏休み中なのに増えている。9月になって学校が再開されると感染が急激に拡大する危険性があると思う」と述べ、医療機関の負担増大に懸念を表明した。

 また、「病原性が低いということで、皆さんも忘れてしまっている」と「国民全体の慢心」が感染拡大の原因にもなっていると指摘した。舛添氏は「新しいウイルスへの警戒を解いてはいけない。感染は自分が止める、という気持ちが大事だ」と話し、手洗いやうがいの励行などを呼びかけた。

 新型インフルでは、慢性呼吸器疾患や慢性心疾患などの基礎疾患がある患者や、妊婦、乳幼児が感染すると重症化する危険性が高いとされる。舛添氏はこうした人たちに対して、「早期の受診、治療を心がけて欲しい」と語った。厚労省は今後、重症化した事例の概要を説明した症例集を作成し、各地の医療機関に配布する予定。

 国立感染症研究所によると、全国約5千カ所の医療機関からの報告では、最新の1週間(8月3~9日)に受診した1医療機関あたりの患者数は0.99人で、流行開始の目安の「1人」に限りなく近づいた。地域別では沖縄が20.36と突出しているほか、奈良1.85、大阪1.80などとなっている。この1週間に医療機関を受診した全国の患者数は6万人と推計されている。 【野瀬輝彦】

(朝日新聞、2009年8月19日)

****** 読売新聞、2009年8月19日

新型インフル「本格流行」へ

厚労相、感染拡大で緊急表明

 舛添厚生労働相は19日、感染の拡大が続き、死者が相次ぐ新型インフルエンザについて、緊急の記者会見を開き、「本格的な流行が既に始まったと考えていい」と語り、秋以降に懸念される大流行に備えた感染予防の徹底を呼びかけた。

 国立感染症研究所のまとめによると、3~9日に全国約5000医療機関から報告されたインフルエンザ患者数は1医療機関あたり平均0・99人と、流行入りの指標となる「1医療機関あたり1人」に迫る勢い。ほとんどが新型インフルエンザ患者とみられ、学校の夏休みが明けると、感染者が急増する可能性が高い。

 舛添厚労相は「ここまで拡大することは予想していなかった」と述べたうえで、今春の発生時に比べて国民の関心が低下したとの懸念を表明。「見えないリスク、新しいウイルスへの警戒を解いてはいけない」と訴えた。国民に対し、症状が出た場合のマスク着用など、感染拡大防止への協力も求めた。

 重症患者や死亡者が増えると、医療機関の混乱も予想されるため、重症例の症例集を作り医療機関に配布することを明らかにした。感染予防に効果が期待されるワクチンについては、5300万人分を準備する意向を改めて強調。優先接種の対象者を早急に検討する方針を示した。

(読売新聞、2009年8月19日)

****** 読売新聞、2009年8月19日

秋以降大流行の兆し、患者推計6万人

 新型インフルエンザの感染が流行期のように拡大し秋以降に懸念される大流行の兆しがすでに見られることが18日、国立感染症研究所の調査で分かった。

 9日までの1週間で、全国約5000の医療機関の平均インフルエンザ患者数は、流行指標となる「1人」に相当する0・99人。全国推計6万人とされる患者のほとんどが新型の感染者とみられる。

 感染研によると、夏場のインフルエンザの流行は、調査を開始した1987年以来、例がない。5000医療機関を3~9日に受診した患者数は4630人で、前週(7月27日~8月2日)の2655人(1医療機関あたり0・56人)の約1・7倍に上った。

 都道府県別にみると、流行入りしたのは6都府県で、15日に死者が出た沖縄が突出しており、1医療機関当たり20・36人。次いで奈良(1・85人)、大阪(1・80人)、東京(1・68人)、長崎(1・50人)、長野(1・44人)の順。

(読売新聞、2009年8月19日)

****** 毎日新聞、2009年8月19日

新型インフルエンザ:「本格流行」 

厚労相、感染防止呼び掛け

 新型インフルエンザの国内感染拡大を受けて、舛添要一厚生労働相は19日、緊急に記者会見し、「国民の一人一人が、感染は自分が止めるという気持ちをもって、今後の流行期を乗り越えていけるよう協力をお願いしたい」と、感染防止対策の徹底を訴えた。

 国内のインフルエンザ患者数は7月後半から増加傾向に転じ、今月3~9日の定点医療機関からの報告が1施設当たり0・99と、流行の水準である「1」に近付いている。

 舛添厚労相は「夏場にここまで広がるのは予想できなかった」と述べ、「第1波の本格的な流行が既に始まっていると考えてよく、学校が再開されると、さらに感染が急激に拡大する恐れがある」との認識を示した。

 医療機関の負担が増して重症患者への対応に支障が出ないように、感染の拡大を遅らせ、急激な患者数増加を抑制する必要性を強調。特にせきなどの症状がある場合のマスク着用や外出自粛など、他人に感染させない対策を徹底するよう求めた。【清水健二】

(毎日新聞、2009年8月19日)

****** NHKニュース、2009年8月19日

国内感染 1週間で推計6万人

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新型インフルエンザは、国内の患者数が8月9日までの1週間だけで6万人に達したと推計され、通常の季節性のインフルエンザの指標では、ほぼ全国的な流行に入ったことになります。

全国のおよそ4800の医療機関から国立感染症研究所に報告されるインフルエンザの患者の数は、今月9日までの1週間に4630人と、前の週と比べておよそ2000人増えました。国立感染症研究所によりますと、報告されている患者のほとんどが新型インフルエンザとみられ、これをもとに全国の医療機関を受診した新型インフルエンザの患者を推計すると、この1週間だけで6万人になるということです。この調査では、1つの医療機関あたりの平均の患者数が1人を超えると、全国的な流行に入ったとされますが、今回の報告では0.99人とほぼ全国的な流行に達していることがわかりました。医療機関あたりの平均の患者数を都道府県別にみてみますと、先週、国内で初めて死者が出た沖縄県が最も多く20.36人、次いで奈良県の1.85人、大阪府の1.80人、東京都の1.68人、長崎県の1.50人、長野県の1.44人、三重県の0.99人などとなっています。

(NHKニュース、2009年8月19日)

****** 産経新聞、2009年8月19日

新型インフル 夏なのに患者急増、

傾向と対策は?

 全国で患者が急増している新型インフルエンザ。通常のインフルエンザは1~2月に流行のピークを迎え、夏には患者が少なくなる。ところが、新型についてはほとんどの人が免疫を持っていない上、感染力が強く、真夏に入ってからも感染が止まらない。夏休みが終わり、子供たちが学校の集団生活に戻る9月以降に感染が急激に拡大する恐れがあり、厚労省は警戒を強めている。新型インフルの「傾向と対策」は…。

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 【Q】最近になって死者が相次いでいるのはなぜ?

 【A】国立感染症研究所の推計では、9日までの1週間で約6万人がインフルエンザに感染している。今後、新型の感染地域が広がれば、それに伴って、感染者が増え、死亡する人も増加するとみられる。ただ、季節性インフルでも毎年約1千万人が感染し、約1万人が死亡するといわれており、致死率は0・1%。ウイルスそのものの毒性が強まったわけではないとの見方が主流で、必要以上に怖がる必要はない。

 【Q】感染した場合、どのような人が重症化するリスクが高いの?

 【A】糖尿病、ぜんそく、人工透析を受けている患者など持病のある人や、妊婦、乳幼児については新型に感染すると重症化の恐れがあると医療関係者は警戒していた。新型で亡くなった3人も心臓や肺、腎臓に持病があった。持病があると重症化しやすいのは、病気を防ぐ免疫力が落ちるためだ。6歳以下の乳幼児はインフルエンザ脳症の合併症を発症することがあるため注意が必要だ。

 【Q】感染を予防するワクチンの供給体制はどうなっているの?

 【A】国内のワクチンメーカー4社が現在、製造にあたっているが、市場投入は10月以降になる見通し。9月に大規模な流行となった場合、ワクチンの供給が間に合わない。厚労省は製造のための時間を稼ぐため、感染拡大防止策を徹底し、少しでも流行の時期を遅らせようとしている。

 厚労省は5300万人分のワクチンが必要との見解を示しているが、4社が12月末までに製造できるのは1400万~1700万人分。来年2月まで生産し続けた場合でも3千万人分が限界とされている。このため、不足した分は海外からの輸入も検討している。

 【Q】新型の流行は今後どうなるの?

 【A】9月に学校が再開されてから、流行のピークを迎えることが考えられる。通常、インフルエンザウイルスは湿度や高温に弱いとされるが、新型は夏にも感染が拡大しており、流行規模がどの程度にまで達するのかは不明だ。

 【Q】新型の予防策は?

 【A】手洗い、うがいの徹底だ。ウイルス感染の可能性があるドアノブやつり革などを触った後も手洗いをする習慣を家族ぐるみで身につけることが重要。部屋が乾燥している場合は湿度を50~60%ぐらいに加湿すると感染しにくくなる。

 少しでも咳(せき)が出る人はマスクを着用し、咳エチケットを心がけたい。マスクを着けていないときに咳が出はじめたら、人のいない方を向き、タオルやティッシュなどで口を覆って咳をする。間に合わず、手で口を覆って咳をした場合は、すぐに手を洗う。

 【Q】院内感染を防ぐ対策は? 

 【A】厚労省は医療機関に対し、熱のある患者と一般の患者の入り口を分けたり、待合室を分けるなどの措置を呼びかけている。医療従事者はマスクや手袋をして患者の治療にあたることになっている。通院患者や見舞客もマスクをするなど注意が必要だ。

(産経新聞、2009年8月19日)


新型インフルエンザ 全医療機関で診療 厚生労働省が運用指針改定

2009年06月20日 | 新型インフルエンザ

新型インフルエンザが秋以降に急速に感染拡大することは避けられないとの判断から、厚生労働省は新型インフルエンザ対策の運用指針を大幅に改定しました。今後は、対策の重点が重症者に対する医療体制の維持にシフトされます。この厚生労働省の発表を受けて、当院でも緊急の感染症対策委員会が召集され、強制的に入院措置がとられていた新型インフルエンザの患者さんは直ちに退院となり、発熱外来も廃止されました。また、軽症者に対しては原則としてPCR検査を実施しないことになったので、季節性インフルエンザと新型インフルエンザとを区別することができなくなり、今後は両者を同様に取り扱っていくことになります。

秋以降の新型インフルエンザの第2派で、感染者数が大幅に増えることが専門家の間でも確実視されています。それに加えて、秋以降には例年通り、通常の季節性インフルエンザの感染者数も急増します。新型インフルエンザと季節性インフルエンザとを症状から区別することはできませんから、軽症者に関しては同じ扱いとせざるを得ません。毎年の季節性インフルエンザでも多いときには1万人以上の死亡者数となっていますから、新型インフルエンザの感染者が急増する秋以降には例年以上の死亡者数となる可能性も否定できません。従って、今後の新型インフルエンザ対策としては、重症化した患者さんにいかに適切に対応していくのか?が最も重要となります。運用指針は、今後も状況に合わせて随時見直していく必要があります。

****** 読売新聞、2009年6月19日

新型インフル、全医療機関で診療

…厚労省が運用指針改定

 新型インフルエンザの今後の流行に備え、厚生労働省は19日、医療や検疫、休校などに関する運用指針を改定した。

 舛添厚労相が閣議後の記者会見で発表した。

 患者がほとんどいない地域と、増加している地域との二つに分けていた対策を一本化し、原則として、すべての医療機関で患者を診療するとしている。

 指針では、感染の拡大状況から「患者をゼロにするのは困難」と指摘。主な対策として〈1〉患者の自宅療養〈2〉患者発生時の休校〈3〉集団感染を重視した監視・検疫体制――などを掲げた。

 現在多くの地域で入院させている軽症患者は原則、自宅療養に変更。持病がある患者は悪化しやすいため、軽症でも入院が必要かどうか医師が判断する。重症化しやすい妊婦や幼児、高齢者も同様の対応とした。

 季節性インフルエンザと同様、原則として全医療機関で診療する。ただし、発熱者の待機場所や診療時間を、他の受診者と分けるほか、都道府県は、透析病院や産院など発熱者を診療しない病院を指定できることとした。

 患者全数を把握していた従来の厳重な監視体制は廃止。その代わり、流行の端緒を早期につかむため、学校などの集団感染に着目した新たな監視体制を敷く。

 旅行者に対する検疫体制は、症状がある場合も隔離せず帰宅させ、同一グループ内で複数の感染があった場合のみ検査するなど大幅に緩和する。

(読売新聞、2009年6月19日)

****** 読売新聞、長野、2009年6月20日

軽症患者は自宅療養

新型インフル感染確認、9人に

 厚生労働省が、新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)対応の運用指針を大幅に変更したことを受け、県は19日、軽症患者は自宅療養とすることなどを決めた。一方、18日深夜から19日にかけて、新たに5人の感染が確認され、県内での患者確認は計9人となった。

 厚労省の改定指針では、新型インフルエンザの患者も全医療機関で診療することになった。しかし、医療機関への周知に時間がかかるため、県は当面、電話での相談受け付けと、医療機関の紹介を継続する。

 新型インフルエンザの遺伝子検査については、〈1〉集団感染が疑われる〈2〉重篤な症状の患者――以外の場合は、原則として行わないことにした。

 一方、長野市保健所は、すでに感染が確認された女性と、米ハワイへの旅行で同行していた同市内の25歳の女性2人の感染を確認。県は、下高井郡内の実家に帰省していた東京都内に住む男子大学生(18)と、一緒に帰ってきた千曲市の男性(19)の感染を確認。13日にハワイから帰国した飯田市の女性(26)の感染も確認した。

 また、飯田市は19日、休園・休校措置について、予定通り、保育園と幼稚園は20日まで、三穂小は21日までで解除すると発表した。

(読売新聞、長野、2009年6月20日)

****** 産経新聞、2009年6月19日

新型インフル「季節性」並みに対応策緩和 

厚労省が新指針

 新型インフルエンザ対策の見直しを進めていた厚生労働省は19日、医療体制や空港の検疫体制を大幅に弾力化させ、通常の季節性対策に近づける新たな運用指針を発表した。ウイルスが「弱毒性」であることや、秋冬での感染の拡大が避けられないとの判断から、病床の確保など重症患者の救命を優先させる。同日から段階的に切り替えていく。

 運用指針は秋から冬にかけて、患者の大幅な増加が起こりうるとの立場から、患者数の急激な増加をできるだけ抑制し、感染の拡大時期を遅らせることを基本方針とした。急激な患者数の増加を抑えることで、医療機関の負担を軽減させ、重症者に対する医療体制の維持を図る。

 具体的には、患者発生が少ない「少数地域」と患者の急増が見られる「急増地域」に分けて実施している現在の対策区分を廃止。すべての地域で急増地域に近い対応がとられることになる。

 医療体制では、感染症指定医療機関での入院措置を原則としてやめ、自宅療養とする。入院が必要なケースでは、一般医療機関でも入院を可能とした。

 診察も感染者と一般患者を分ける発熱外来に限定せず、すべての医療機関で可能とした。その際、各医療機関は発熱患者と一般患者の待合室を分けるなどの対策をとる。感染者の把握も全数にこだわらず、集団感染など大規模な感染が発生している地域を優先して調べる。

 空港の検疫所での遺伝子診断「PCR」も原則中止。濃厚接触者の把握のため、空港の検疫で実施してきた「健康状態質問票」の配布もやめる。

 厚労省は今回の運用指針について、「秋の大流行も見据えた中長期的な指針」と説明。ただし、ウイルスの病原性が増した場合には、再度運用指針を見直すとしている。

 一方、新型インフルエンザのワクチンについても、7月中旬から製造を開始すると発表。約2500万人分が製造可能となる見通し。接種の優先順位は今後の検討課題だが、10月にも供給が可能となる。

(産経新聞、2009年6月19日)

****** 毎日新聞、2009年6月19日

新型インフル: 厚労相が新指針 

全医療機関で診察

 舛添要一厚生労働相は19日、新型インフルエンザの秋以降の流行「第2波」に備えた対策の新たな運用指針を公表した。今後、軽症者は自宅療養とし、原則的に全医療機関が新型患者を診察するなど、態勢は大きく切り替わる。また、季節性インフルエンザ用のワクチン製造を7月中旬で中断し、新型用の製造を始める方針を明らかにした。

 舛添厚労相は、現状を「国内で患者の大幅な増加が起こりうる秋冬に向けての準備期間」と説明。国内の感染の広がりの見通しについては「予想がつかない。今後は原則として遺伝子検査はやらないので、正確に1人まで数えるのは不可能」と述べ、「警戒を怠ることなく、正しい情報に基づいて冷静な対応をお願いしたい」と呼び掛けた。

 一方、厚労省によると、季節性用のワクチンは7月中旬の製造中断までに、国内メーカー4社で昨年の約8割にあたる約4000万人分を確保できる見通し。新型用は年内いっぱい作り続ければ約2500万人分を確保でき、10月から順次、接種が可能になるという。接種対象者は、厚労省が専門家の意見を聴いたうえで考え方を示す。【清水健二、奥山智己】

 ◇運用指針の要旨

 厚生労働省が19日発表した新型インフルエンザ対策の運用指針の要旨は次の通り。

 ■地域における対応

(1)患者と濃厚接触者への対応

 患者は原則として自宅で療養する。基礎疾患がある患者は軽症でも抗インフルエンザ薬を投与し入院を考慮。濃厚接触者には外出自粛などを求め、発熱などがあった場合は保健所への連絡を求める。基礎疾患がある濃厚接触者で感染が強く疑われる場合は、医師の判断で抗インフルエンザ薬を予防投与する。

(2)医療体制

 発熱外来だけでなく原則として全医療機関で患者を診察する。発熱患者と他の患者の待機場所や診療時間を分けるなど注意を払う。重症者の入院は、感染症指定医療機関以外でも受け入れる。都道府県は地域の実情に応じ病床を確保する。

(3)学校・保育施設など

 患者が発生した場合、都道府県などは必要に応じ臨時休業を要請。感染拡大防止に必要と判断した場合は、患者が発生していない施設を含め広域での臨時休業を要請できる。

 ■サーベイランスの着実な実施

(1)感染拡大の早期探知

 保健所は全患者(疑い例含む)を把握するのではなく、大規模な流行となる可能性のある学校などの集団について重点的に把握。地方衛生研究所は、これらの疑い患者の一部の検体の検査を実施し、新型と確定すれば医師が保健所に届け出る。

(2)重症化やウイルスの変化の監視

 入院した重症患者の数を把握。病原体定点医療機関から患者の検体の提出を受け、地方衛生研究所と国立感染症研究所で病原性や薬剤耐性などウイルスの変化を監視する。結果は対応に反映させる。

 ■検疫

 全入国者に健康カード配布などで注意を呼びかけ、発症した場合の医療機関受診を求める。検疫で判明した有症者は原則、遺伝子検査をせず、マスクを着用し可能な限り公共交通機関を使わず帰宅(自宅療養)させる。

(毎日新聞、2009年6月19日)


全地域で原則、自宅療養へ 重症化防止にシフト 厚労省、国内対応見直し 新型インフルエンザ

2009年06月18日 | 新型インフルエンザ

現時点では、日本国内のほとんどの地域において、新型インフルエンザに感染していると判明した場合、軽症者でも強制的に入院措置がとられています。しかし、この厚生労働省の方針に対して、専門家の間でその意義を疑問視する意見が当初より多くあがっていて、近日中に方針の見直し案が正式決定されるようです。見直し案では「軽症者は原則として自宅療養」となり、重症化防止に対策の重点がシフトされます。また、発熱外来のある医療機関のみで受診が可能とする現在の対応を見直し、「原則としてすべての一般医療機関で診療を行う」ことになるようです。

****** 共同通信、2009年6月17日

全地域で原則、自宅療養へ 重症化防止にシフト 

厚労省、国内対応見直し 新型インフルエンザ

 新型インフルエンザをめぐる国内対応の見直し案づくりを進めている厚生労働省は16日、軽症の感染者については全地域で原則、自宅療養とし、入院措置をとらない方針を固めた。感染の広がり度合いに応じた現行の地域分類を廃止し、重症患者やぜんそくなど重症化につながる疾患を持つ人への感染防止対策にシフトする。専門家の意見を聞いた上で、週内にも正式決定する。

 現行の国内対応は、地域を(1)感染者発生が少数(2)急速に患者数が増加-に2分類。(2)の地域では軽症者のみ自宅療養としているが、(1)の地域では症状にかかわらず入院措置をとるよう都道府県に求めている。

 見直し案ではこうした地域分類をやめるとともに、軽症患者は原則、自宅療養に切り替える。入院措置はとらず、感染拡大の恐れがある場合に入院させることが可能とするほか、重症化につながる基礎疾患のある患者は初期症状が軽症でも入院を考慮するよう促すとしている。

 また発熱症状がある人の治療について、現行は(1)の地域では発熱外来を設置する医療機関に限定しているが、見直し案では「原則としてすべての一般医療機関で診療を行う」とし、感染者の待合場所や診察時間を一般の患者と分けるよう促す。

 このほか、想定される重症患者の発生数に応じた病床を確保するよう都道府県に求めることも検討しているが、正確な予測が可能かどうかが課題となりそうだ。

 入院措置は感染症法に基づくもので、同法は新型インフルエンザ感染者について「都道府県知事は、まん延を防止するため必要があると認めるときは、患者に入院を勧告することができ、勧告に従わない場合は入院させることができる」と規定している。

(共同通信、2009年6月17日)

****** TBSニュース、2009年6月17日

新型インフル、軽症者は原則自宅療養

 新型インフルエンザの国内対応の見直しを検討している厚生労働省は、軽症の感染者については全ての地域で原則自宅療養とし、入院措置は取らない方針を固めました。感染者が少ない地域で新型インフルエンザの患者が発生した場合、現在、厚労省は症状に関わらず入院措置をとるよう都道府県に求めています。しかし、新型インフルエンザが季節性のインフルエンザと危険度が変わらないことから、厚労省は感染者について重症化の恐れがある人以外は「原則自宅療養とする」など、国内の対応を見直す方針を固めました。また、発熱症状のある人の治療についても「一般の医療機関で診察を行う」とし、発熱外来のある医療機関のみで受診が可能とする現在の対応を見直す方針です。厚労省専門家の意見を聞いた上で、今週中にも見直し案を正式に決定することにしています。

(TBSニュース、2009年6月17日)

****** 南信州新聞、2009年6月16日

飯田市で新型インフル2人が感染

 県は13日に飯田市内の事務職の女性(27)、15日に同市内の会社員男性(42)それぞれで、新型インフルエンザの感染を確認したと発表した。男性は13日午後に同市内で市職員労働組合などが開いた保育関連イベントの「2009保育フェア」に、14日朝に同市立三穂小学校の地域学校行事に参加していたため、同市は市内の公立、私立のすべての保育所、幼稚園、認可外保育施設を16日から20日まで、三穂小を16日から21日まで臨時休業することを決めた。

 感染者2人の接触は確認されておらず、別ルートの感染と見られる。いずれも感染症指定医療機関の飯田市立病院に入院しているが、16日正午現在、容態は安定しているという。

 県内での発生を受け、県庁と飯田、伊那の両保健福祉事務所は24時間体制で電話相談窓口を開設。県は県民に対し、手洗いやうがいの徹底、混み合った場所でのマスクの着用など「個人予防策」の実施を求めている。

 飯田保健福祉事務所には16日、正午現在で約300件の電話相談があった。半数ほどが保育フェス参加者からだったというが「深刻と思われる事例はない」(関係者)としている。

 15日夕に感染が確認された男性は今月9-12日に東京都と神奈川県内に滞在し、12日中に飯田市の自宅に帰宅。14日夕に38・4度の発熱があり、市内の医療機関で簡易検査を受けた結果、A型ウイルスの陽性が確認された。同日夜に市立病院を受診。再度の簡易検査は陰性だったが、県環境保全研究所の遺伝子検査で、15日午後4時15分に新型インフルの感染が分かった。

 男性は市立病院に入院しており、同日夜現在の体温は36・8度。せきの症状はあるが、容態は安定しているという。家族4人はタミフルの予防内服を行っており、発熱などの症状は出ていない。

 一方、県内初の感染が確認された女性は1日から9日までハワイに滞在し、10日午後7時ごろに飯田市内の自宅に帰宅。11日夜に39・2度の発熱があり、13日に飯田保健福祉事務所の相談窓口に電話で連絡し、診療所を経て飯田市立病院を受診した。簡易検査でA型陽性だったため、県環境保全研究所で遺伝子検査を実施。13日午後10時半に新型インフルの感染が確認された。入院後の容態は安定しており、15日午前までに熱は36・6度に下がっている。

 女性の発症24時間前から入院までの濃厚接触者は、家族や親せき計6人と職場の同僚20人。飯田保健福祉事務所の保健師らが健康観察を続けているが、発熱などの症状は出ていない。家族と親せきはタミフルの予防内服をしたという。同所は外出の自粛を求めている。

 県内の感染確認により、県は当面の間、県庁と飯田、伊那の両保健福祉事務所の電話相談を24時間体制で行う。

(南信州新聞、2009年6月16日)

****** 毎日新聞、長野、2009年6月16日

新型インフルエンザ:県内感染を初確認 

2人目も飯田在住

 県は14日、米国ハワイから帰国した飯田市在住の事務員の女性(27)が新型インフルエンザに感染したと発表した。県内の感染確認は初めて。熱や頭痛などの症状があり、同市立病院に入院。容体は安定し、家族や同僚に症状は出ていないという。女性は1-9日にハワイへ旅行していた。県は濃厚接触者26人の健康観察を行っている。さらに同じ飯田市で15日、県内2人目の感染者も確認された。同市内の会社員の男性(42)で、同病院に入院し、容体は安定している。女性と明らかな接触があったことは確認されていないという。【竹内良和、福田智沙、小田中大】

 県健康づくり支援課によると、女性は9日にハワイから成田空港に到着し、他県を経由してバスと電車で10日に自宅に戻った。11日夜に39・2度の発熱があり、13日に飯田保健福祉事務所に電話で相談。県環境保全研究所の遺伝子検査で感染が確認された。女性は11、12両日に市内の職場へマイカーで出勤したが、窓口業務ではないという。感染がハワイか帰国後かは不明。15日朝には熱は36・6度まで下がったという。

 15日時点で、濃厚接触者に該当する女性の家族・親族と職場の同僚の計26人には予防的にタミフルが処方され、現時点で感染の疑いはないという。県は26人に外出自粛を要請、健康観察も行う。同課の小林良清課長(医師)は「患者への偏見や住所の割り出しは控えてほしい」と強調した。

 一方、同課によると、2人目の感染者の男性は9-12日に東京都と神奈川県に滞在。14日に38・4度の発熱があり、市内の診療所を受診した。簡易検査で陽性とされたため、診察した医師が飯田保健福祉事務所に相談。同日夜の再検査でいったん陰性とされたが、15日に同研究所の遺伝子検査で感染が確認された。

 熱はその後、36・8度まで下がった。

 県は14日に村井仁知事らが緊急の対策幹事会議を開催し、学校、保育施設の臨時休業やイベントの自粛などはしないことを報告。電話相談を拡充し、県健康づくり支援課と飯田保健福祉事務所は相談を24時間受け付ける。

 また日本より罹患(りかん)率が高い38カ国・地域へ渡航歴があり症状が出た人から相談があれば、発熱外来を紹介する。

市長「冷静な対応を」 福祉施設・小中学校、

予防措置の徹底確認--飯田市

 27歳の女性ら2人が新型インフルエンザに感染したことが確認された飯田市では、県の発表前の13日夜から、県下伊那地方事務所や市などの関係機関で担当職員が招集され、対応に追われた。県飯田保健福祉事務所では、10人の保健師が濃厚接触者の健康状態を調べるなど、感染拡大の恐れについても確認作業を進めた。

 同市は14日朝、対策会議を開催。牧野光朗市長は「市民の皆さんには冷静な対応をお願いしたい」と述べた。市内の福祉施設や小中学校などでのマスクの着用といった予防措置の徹底を確認。ただ女性の親族や勤め先などで接触した人は判明しており、感染拡大の恐れは少ないとして保育園、小中学校の休校措置は取らず、市内で行われるイベントなども予定通りとした。【仲村隆】

(毎日新聞、長野、2009年6月16日)

****** 信濃毎日新聞、2009年6月16日

飯田市が緊急保育実施へ 新型インフルで休園・休校

 県内2人目となる新型インフルエンザ感染者が飯田市で確認されたことを受けて16日、感染拡大防止のため同市内の全保育園、幼稚園計43園と、市立三穂小学校での臨時休園・休校が始まった。市によると、対象となる子どもの数は約3700人。同市に隣接する下伊那郡高森町、喬木村もこの日、全保育園(高森町5園、喬木村3園)の休園を始めた。両町村の園児計約700人が対象になる。

 休園・休校は、感染が確認された同市の会社員男性(42)が、13日に市内の飯田文化会館に約1160人が集まった「2009保育フェア」と、14日朝に三穂小で行われた資源回収に参加していたことを受けた措置。県が市などに要請していた。高森町、喬木村は、保育士らが同フェアに参加していたため、自主的に対応を決めた。

 休園・休校の時期は、飯田市内の全保育園、幼稚園と喬木村の保育園が20日まで、三穂小が21日まで。高森町の保育園は17日までを予定している。同市の私立保育園、幼稚園のうち、同フェアに参加した園児、保育士らが1人もいないと今後確認された園については、休園の解除も検討していく。

 また、両親とも医療従事者や教員のケースなど「保護者がどうしても仕事を休めない場合」に対応するため、同市は17日から、緊急保育を松尾東保育園で始める。対象はほかに、母子、父子家庭で仕事を休むと雇用などに著しい不利益がある場合などを想定。前日午後5時までに、現在在籍する園に申し込む。

 牧野光朗市長は16日午前に記者会見し、市民に「重ねて冷静な対応をお願いしたい。新型インフルエンザにおびえることなく、侮らないで冷静な対応を」と呼び掛けた。

 県によると、会社員男性の感染が判明した15日夕以降、県飯田保健福祉事務所(保健所)には、16日午前10時半までに約300件の電話相談が寄せられた。このうち半分が、男性が参加していた「保育フェア」に足を運んだ保護者からの相談という。男性の家族4人には予防のため15日から、治療薬タミフルを投与している。

(信濃毎日新聞、2009年6月16日)

****** 信濃毎日新聞、2009年6月16日

「仕事休めない」一斉休園に共働き家庭困惑

 「仕事を休めない」「子どもの預け先は」-。県内2人目の新型インフルエンザ感染者が確認され、16日から保育園、幼稚園などが一斉臨時休園になった飯田市。目立った混乱は見られなかったものの、共働きの家庭などからは、今後の生活への影響を不安がる声も聞かれた。

 各園は市の休園措置が決まった15日深夜から、それぞれ家庭に電話やメールで連絡。ただ、上郷西保育園には16日午前8時10分ころ、30代の母親が女児を連れて登園。園長から休園を告げられると、「すぐに職場に連絡しないと」と困惑した表情を浮かべた。園児数200人以上の松尾保育園にも、メールに気付かなかった1組が登園した。

 同市白山町の自営業女性(33)は、感染者が参加した13日の「2009保育フェア」に園児の長男(3)を連れていった。事前に用意しておいたマスクを16日から着用し「実家が近くにないので仕事は夫にお願いし、私は息子の相手」。一方、同所の自営業女性(60)は、息子から孫3人を預かった。孫の女児(6)は「おばあちゃんに会えてうれしいけれど、保育園の友達に会えないのが残念」。

 同市正永町の共働きの会社員男性(39)は、夫婦で対応を話し合い、園児の長女(5)を2日間ほど実家に預け、後は夫婦で分担して育児に当たることにした。それでも「休むのなら妻に休んでもらう形になるだろう。会社にも迷惑を掛けるし、家計にも響く」と悩みを漏らした。

 飯田中央保育園の塩沢鎮子園長(55)は「『首になるので仕事を休めない』と言う母親もいる」と申し訳なさそうに話した。

 唯一の臨時休校措置となった同市三穂小学校は、保護者らの問い合わせもなく、落ち着いているという。

(信濃毎日新聞、2009年6月16日)


長野県内初の新型インフルエンザ感染の確認

2009年06月14日 | 新型インフルエンザ

新型インフルエンザは、当初のメキシコ、米国、カナダからヨーロッパや日本、さらにオーストラリアなど冬季にさしかかった南半球を含む多数の国に拡大し、WHOは新型インフルエンザの警戒度を世界的大流行(パンデミック)を示す「フェーズ6」へ引き上げました。日本での感染が初めて確認されてからすでに1カ月が経過して、全国各地で感染確認の報道が続いていますから、身近なところで感染が確認されるようになるのも時間の問題だろうと考えてました。人類と新型インフルエンザとの戦いは今後も延々と続きます。多くの専門家が、近い将来、日本でも新型インフルエンザの大規模な感染拡大が必ず起きることを予想しています。健康被害を最小限にくい止めるために、最新情報の入手に努め、事態の変化に冷静に対応していく必要があると思います。

新型インフルエンザ、WHO フェーズ6に引き上げを宣言

****** 信濃毎日新聞、2009年6月14日

県内初の新型インフル確認 飯田の27歳女性

 県は13日深夜、飯田市の日本人事務職女性(27)が新型インフルエンザに感染したと確認した。県環境保全研究所(長野市)の詳細(PCR)検査で感染が判明した。県内での感染確認は初めて。

 県によると、女性は今月1~9日、旅行で米国ハワイに滞在。10日夜に飯田市の自宅に帰った後、11日午後7時ごろに39・2度の発熱があったため、13日、県飯田保健福祉事務所(保健所)に電話相談し、同市内の診療所を受診。簡易検査でA型陽性反応が出たため、感染症指定医療機関の飯田市立病院の発熱外来で診察を受け、ここでも簡易検査でA型陽性反応が出た。検体は県環境保全研究所に送られ、同日午後10時半、感染を確認した。

 女性は同病院に入院。13日夜現在、体温37・4度で、頭痛、鼻汁の症状があるが、容体は安定しているという。

 女性は成田空港から電車、バスを使って帰宅した。11、12日には飯田市内の職場に出勤したという。旅行には女性の家族1人が同行したが症状は出ておらず、職場の同僚などにも今のところ症状が出ている人はいないという。

 県は14日午前0時から記者会見。小林良清・健康づくり支援課長は「患者が家族や職場の人以外に感染を広げる可能性は少なく、県民に直ちに感染が広がることは想定しにくい」とし、現時点で行事や外出の自粛要請、学校の臨時休校などの対応は検討していないと説明した。

 県は14日朝、新型インフルエンザ対策本部幹事会議を開き、今後の対応を協議する。県庁や県内10カ所の保健福祉事務所に設けた電話相談の受付時間を拡大する方向で検討している。飯田市も同日朝、対策本部会議を開く。

 国内の新型インフルエンザの感染者は13日、ほかに千葉県、東京都、横浜市、名古屋市、大阪府、京都府、福岡県、福岡市、鹿児島市で新たに確認され、計594人になった。

新型インフル 飯田市は慌ただしく情報収集

 「ただちに感染が広がる事態は想定しにくい」。13日深夜に県内で初めて新型インフルエンザ感染者が確認され、14日午前0時から県庁で記者会見した県幹部は、県民に冷静な対応を呼び掛けた。感染者の女性(27)が生活する飯田市では、県飯田保健福祉事務所(保健所)や市役所本庁に職員らが次々と集まり、情報収集や電話連絡、打ち合わせなどに慌ただしく動いた。

 県庁では、桑島昭文・衛生部長と小林良清・健康づくり支援課長が会見し、感染した女性の症状などを淡々と説明。急速な感染拡大は想定しにくいとし、手洗いの徹底や人込みを避けるといった個人での予防策を引き続き行うよう県民に呼び掛けた。

 小林課長は「感染の可能性がある人には、われわれが連絡し調査する。今回の患者を特別視したり、どこの人かを探ったりすることは控えてほしい」とも念押しした。

 飯田市追手町の県飯田合同庁舎は13日夜、1階の飯田保健所と3階の下伊那地方事務所に明かりがともり、それぞれ佐々木隆一郎所長、岩崎弘所長が出て、職員が県庁や市役所などと電話連絡に追われた。日付が変わって県庁で発表があると、職員もやや落ち着いた表情に。感染者の行動や接触者の詳しい調査を始めているといい、対応を続けた。

 同市大久保町の市役所本庁。市長公室などがある2階に幹部職員らが集まり、上村地区などでの懇談会を終えた牧野光朗市長も13日午後10時ごろ、市長公室へ。県から感染確認の連絡を受けて協議を重ね、14日朝から対策本部会議を開くことを決めた。

 市危機管理・交通安全対策室は「現段階では県からの情報や指示に基づいて、会議で具体的対応を決めたい」。職員の間では「長丁場の対応か」などと短い言葉が交わされていた。

(信濃毎日新聞、2009年6月14日)

****** 信濃毎日新聞、2009年6月15日

新型インフル「感染広がる状況にない」と県対策本部

 米国ハワイから帰国した飯田市の日本人女性(27)が13日に県内で初めて新型インフルエンザ感染者と確認されたことについて、県は15日、女性と「濃厚に接触した」と確認したのは同日午前現在で家族と親せきの計6人で、いずれもインフルエンザのような症状は出ていないと発表した。14日には、県庁で県新型インフルエンザ対策本部の幹事会議を開催。「現時点では感染が広がるような状況にない」として、地域に対し、学校の休校や外出、集会などの自粛要請は行わないことを確認した。

 県健康づくり支援課によると、感染症指定医療機関の飯田市立病院に入院している女性は13日から治療薬タミフルを服用。15日午前8時半現在で熱は36・6度に下がり、頭痛やのどの痛みはあるが症状は落ち着いているという。厚労省の通知に基づき、女性は発症から7日後の18日まで入院。この間にウイルス検査を2回行い、いずれも結果が陰性なら退院できるという。

 女性と濃厚に接触したと確認した6人には予防のためタミフルを投与。県飯田保健福祉事務所(保健所)は女性の同僚約20人に症状の有無などの聞き取り調査を行い、一部にはタミフルも処方しているが、同課によるといずれもインフルエンザのような症状は出ていないという。

 14日の幹事会議で村井知事は「今回の新型インフルエンザは毒性がそれほど高くないことが分かっている。不要な社会的混乱を避け、正確な情報に基づく的を射た対応が大切だ」と指示した。

 一方、飯田市の幹部職員らでつくる市新型インフルエンザ対策本部は14日、市役所で本部員会議を開いた。患者と濃厚に接触した人が限られ、県が「地域の中で感染が拡大する状況にはない」としていることから、イベントや行事は予定通り実施すると確認。保育園、幼稚園、小中学校も休校などの措置は取らず、15日も平常通りだった。

 県は当面の間、県庁と県飯田保健所の電話相談を24時間態勢に拡大。ほかの9カ所の県保健所と長野市保健所は従来通りの対応とし、県保健所は午前8時半~午後5時15分、長野市保健所は午前8時半~午後7時に電話相談を受け付ける。同課によると14日(15日午前8時半までの集計)は、前日の3倍の221件の相談が寄せられた。

飯田市民は冷静な受け止め マスク姿まばら

 県内初の新型インフルエンザ感染者が確認されて初の平日となった15日、飯田市役所では職員にマスクを着用する姿は見られず、落ち着いた様子だった。14日には一時、市内の店でマスクの売れ行きが普段より増えたが、休日の大型店などでもマスク姿はまばらで、冷静な受け止めが目立った。

 市内のドラッグストアでは14日、店頭に並べた7枚入りマスク10箱とアルコール消毒液5本ほどが午前中に売り切れた。ただ、その後は問い合わせも夕方までに数件にとどまった。別のドラッグストアは、チェーン本部の指示で同日からマスク着用で接客。売れ行きも前日までより増えたが、「(国内発生が確認された)5月に比べると落ち着いている」(店長)という。

 市内の大型店を同日訪れた同市上郷飯沼の自営業女性(40)は、国内感染が広がる中、小学1年生の娘に手洗いなどを徹底させているというが、「学校で流行すればマスクも考えるが、過剰に反応するつもりもない」。同市丸山小学校PTAの資源回収でも、保護者らはいつもと変わらぬ様子で作業に汗を流した。

 一方、首都圏などと結ぶ高速バスを運行する信南交通(飯田市)は14日の社内会議で、マスク着用はこれまで通り運転手らの判断に任せることを確認した。

(信濃毎日新聞、2009年6月15日)

****** 信濃毎日新聞・社説、2009年6月14日

インフル1カ月 秋冬への備えを急げ

 人が地球規模で移動する現代は、ウイルスもたやすく国境を越える。新型の豚インフルエンザの発生が認定されてから、わずか1カ月半で、感染者は2万7千人を突破した。世界保健機関(WHO)は、世界的大流行(パンデミック)を宣言している。

 日本で感染が確認されてから、まもなくひと月になる。感染は20都道府県以上、570人超に広がっている。集団感染も相次ぎ、終息の気配は見えない。

 新型ウイルスの病原性はいまのところ高くない。感染者の多くが軽症で回復している。当初患者が集中した大阪と兵庫も、落ち着きを取り戻した。

<貴重なデータ生かして>

 世界は強毒性鳥インフルエンザに備えてきた。政府の対策も強毒性の想定だった。実態に即して、柔軟に修正していきたい。

 冬を迎えた南半球で感染が急拡大していることに、注意が要る。北半球も、いまの流行がおさまっても、今秋以降に第2波がやってくるだろう。

 過去の大流行では、第2波、第3波で深刻な被害が出た。秋冬を見越した備えが肝要になる。

 ウイルスの分析や臨床データの集積が進みつつある。情報を各国で共有して、対策に生かしたい。

 主な症状は、38度以上の高熱とせき、のどの痛み、頭痛やだるさなど。通常の季節性インフルエンザとよく似ている。

 違いもある。患者は高齢者よりも10代などの若い世代に多い。健康な若者でも重症になるケースがある。基礎疾患のある人や妊娠中の女性もリスクが高い。

 潜伏期間は7日間程度。ポイントは、症状が出る前から感染性を持つことだ。本人も周囲も気づかないうちに感染が広がりやすい。

<重症者を確実に救う>

 こんな予想が立つ。秋以降、新型が季節性に取って代わるのか、あるいは、新型と季節性が同時に流行するか。いずれにしても、インフルエンザの患者が多数、発生するだろう。

 政府の計画では、新型に感染した可能性のある人は、感染症指定医療機関の「発熱外来」を受診する。だが、患者が急増すれば発熱外来はパンクする。兵庫と大阪で証明済みだ。

 地域の医療態勢を柔軟に組み直したい。軽症の患者は、季節性インフルエンザと同様に一般の医療機関が診るのが現実的だ。同時に、重症者に対応できる入院設備の整った治療拠点を確保しておく。つまりは、通常のインフルエンザ対策の拡充である。

 すでに仙台市が取り組んでいる。内科、小児科を中心に300を超える医療機関が、軽症者を診療する準備を進めている。

 開業医も含めて、医師らが二次感染した場合の手厚い補償が欠かせない。医療機関と自治体の連携の強化、夜間診療などの協力態勢も求められる。

 自治体は危機管理能力を磨いておきたい。流行が始まると、臨時休校、保育や介護サービスの維持、高齢者世帯の支援など、市民生活に直結する判断を迫られる。事前にできるだけシミュレーションをしておきたい。

 政府は医療態勢の充実に、いっそう力を注いでもらいたい。

 若年層に感染者が多く出る可能性がある。医師不足が深刻な小児医療への支援が必要だ。ワクチンの開発と備蓄も急がれる。

 気がかりなのは、一部に感染者を過剰に避けたり、非難、中傷する風潮があることだ。

 感染症は、だれもがかかる可能性がある。感染しても社会から排除されることなく、安心して最善の治療を受けられる環境が保障されること。これが対策の基本であることを確認しておきたい。

<「試行錯誤」も糧に>

 99年に施行された感染症予防法は、前文に過去のハンセン病やエイズの問題を挙げ、「感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かす」とある。感染症の流行を防ぐ措置は「必要な最小限度のものでなければならない」と、条文に定めている。

 新型インフルエンザ対策も、常にこの規定に照らして検証されるべきだ。行政は過剰な規制をしていないか。いたずらに不安をあおる面はないだろうか。

 情報提供のあり方についてはメディアの役割も大きい。自戒も込めて、検証していきたい。

 未知のウイルスへの恐怖心は、だれの心にもある。それが増幅されて社会が冷静さを失うことがないよう、不安をコントロールするすべを身につけたい。

 この先、ウイルスが病原性を増す可能性もある。強毒性鳥インフルエンザの脅威も、去ったわけではない。

 数年がかりの長期戦である。山あり谷ありは覚悟のうえ、試行錯誤も将来への貴重な糧になる-。そんな心構えで、新型インフルエンザとのつきあい方を探り、社会で共有していきたい。

(信濃毎日新聞・社説、2009年6月14日)

****** NHKニュース、2009年6月13日

WHO ワクチンの製造急ぐ

新型インフルエンザの警戒レベルを世界的な大流行=パンデミックの宣言を意味する最も高い「フェーズ6」に引き上げたWHO=世界保健機関は、各国政府とも協力して、新型インフルエンザ向けのワクチンの製造を急ぐことにしています。

WHOのチャン事務局長は、日本時間の12日に行った会見で、「まもなく季節性インフルエンザのワクチンの生産が終了し、新型向けのワクチンの生産に集中することになる」と述べ、新型インフルエンザ向けのワクチンの製造を急ぐ考えを示しました。そのうえで、チャン事務局長は、安全で有効なワクチンの承認手続きが迅速に進むよう、WHOとしても各国政府と協力して取り組んでいく方針を強調しました。新型インフルエンザ向けのワクチンをめぐっては、スイスの大手製薬会社が、12日、細胞工学を使った新たな手法でワクチンの開発に成功したと発表するなど、各国の製薬会社が研究開発を急いでいます。ただ、そのほとんどは先進国の製薬会社で、十分な資本や技術を持たない発展途上国にワクチンが行き渡らないのではないかと懸念する見方もあり、ワクチンは、製造だけでなく、いかに普及させるかも大きな課題となっています。

(NHKニュース、2009年6月13日)

****** 共同通信、2009年6月13日

日本で半年以内の大規模感染確実  押谷東北大教授が警告

 世界保健機関(WHO)で感染症対策を担当した押谷仁東北大教授は13日、都内で講演し「日本で半年以内に新型インフルエンザの大規模な感染拡大が必ず起きる。地域によっては、早ければ数週間以内にも起きる」と警告した。

 国内の現状について押谷教授は「患者間の疫学的なつながりがなく感染源が特定されないケースが出ており、明らかに感染拡大が続いている。隔離や自宅待機を恐れて名乗り出ていない人もいるとみられ、感染源が特定されず地域社会に広がっている」と指摘。

 予想されるシナリオとして「南半球や東南アジアで一気に大流行する可能性がある。そうなると日本への感染者の流入をまったく止められなくなり、冬まで局地的流行が続くことも考えられる」との見方を示した。

 押谷教授は「重症化する患者に対する医療態勢の整備が課題で、各地域で真剣に考えなければならない」と述べた。

(共同通信、2009年6月13日)


新型インフルエンザ、WHO フェーズ6に引き上げを宣言

2009年06月12日 | 新型インフルエンザ

世界保健機関(WHO)は、新型インフルエンザの警戒度を、世界的大流行(パンデミック)を示す「フェーズ6」へ引き上げることを決めました。世界が20世紀以降に経験するパンデミックは今回で4度目で、過去には世界中で死者が100万~4000万人という大きな犠牲者が出ました。今回のパンデミックは、約100万人が死亡した1968年の「香港風邪」以来、41年ぶりとなります。

WHOはパンデミックの場合、流行の第2波までに世界人口の3分の1が感染すると予測しています。この割合を当てはめると、国内では約4000万人が感染する計算となります。

ワクチンは既に主要国保健当局と世界の主要メーカーが開発の準備に入っており、7月にも生産が始まり今秋には本格的に流通する見通しです。それまでは感染者の早期発見と、重症者に対する抗ウイルス剤投与が対策の中心となります。

****** NHKニュース、2009年6月12日

WHO フェーズ6に引き上げ

新型インフルエンザをめぐってWHO=世界保健機関のチャン事務局長は11日、緊急の記者会見を行い、南半球を含めた世界的な感染の広がりを受けて、警戒レベルを今の「フェーズ5」から世界的な大流行=パンデミックの宣言を意味する最も高い「フェーズ6」に引き上げると宣言しました。

日本時間の午前1時すぎから始まった緊急の記者会見の冒頭、WHOのチャン事務局長は「世界では今、新型インフルエンザのパンデミックが始まろうとしている」と述べ、警戒レベルを最も高い「フェーズ6」に引き上げると宣言しました。その理由として、チャン事務局長は、アメリカや日本などの北半球に続いて、冬を迎えた南半球でもオーストラリアなどで急速に感染が広がっていること。症状が軽いことから検査を受けない感染者もいて、実際には把握されている以上に世界的な感染が広がっているおそれがあることなどをあげています。その一方、チャン事務局長は過剰な反応が起きることに懸念を示し、国境を閉鎖したり国際的な人や物の往来を制限したりしないよう、各国に適切な対応を呼びかけました。さらにチャン事務局長は、医療体制が整っていない発展途上国で、感染が深刻になることが懸念されるとして、こうした国々への支援が必要だと強調しました。最後に、チャン事務局長は「わたしたちすべてがこの事態に向き合わなければならない。いっしょになって乗り越えていこう」と述べて、国際社会が一丸となって新型インフルエンザの危機に対応していくことを求めました。

(NHKニュース、2009年6月12日)

****** 東京新聞、2009年6月12日

新型インフル世界的大流行を宣言 

警戒水準「6」に引き上げ

 【ジュネーブ11日共同】世界保健機関(WHO)のチャン事務局長は11日、記者会見し、新型インフルエンザの警戒水準(フェーズ)を広域流行を意味する現行の「5」から最高の「6」に引き上げ、世界的大流行(パンデミック)を宣言した。インフルエンザの世界的大流行は、約100万人が死亡した1968年の「香港風邪」以来、41年ぶり。

 事務局長は、今回はウイルスの病原性が低く、「重度」より軽く「軽微」より重い「中」程度だとの認識を示した。今後も感染が拡大するとの見通しを示す一方で「重症者や死者が突然急増することは予想しない」と表明。各国に国境閉鎖や旅行制限など過剰な反応をしないよう呼び掛けた。

 新型インフルエンザは当初のメキシコ、米国から欧州や日本、さらにオーストラリアなど冬季にさしかかった南半球を含む多数の国に拡大。オーストラリアは10日の主要感染国による会議で、同国ビクトリア州で北米などへの渡航者と無関係な人の間で感染が続く「地域社会レベルの持続感染」の発生を認め、大流行宣言を出す条件は出そろった。

 WHO当局者によると、宣言に伴い、新型インフルエンザがもたらす感染者の健康被害について3段階の新たな評価基準を設定。チャン事務局長は新型インフルエンザに有効なワクチンについて「メーカーができるだけ早く製造できるよう支援していく」と言明した。

 記者会見に先立ち、専門家による緊急委員会の電話会合が開かれ、チャン事務局長に対し引き上げを勧告。事務局長は各国外交団に警戒水準引き上げを通知した。

 ワクチンは既に主要国保健当局と世界の主要メーカーが開発の準備に入っており、7月にも生産が始まり今秋には本格的に流通する見通し。それまでは感染者の早期発見と、重症者に対する抗ウイルス剤投与が対策の中心となる。

(東京新聞、2009年6月12日)

****** 東京新聞、2009年6月12日

世界的大流行「3年続く」 

WHO医務官が見通し

 【ジュネーブ12日共同】世界保健機関(WHO)が11日に宣言した新型インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)について、WHOの進藤奈邦子医務官は同日、記者会見し「今後3年間はパンデミック状態が続く」と述べ、警戒水準(フェーズ)が最高位の「6」に長期間据え置かれるとの見通しを明らかにした。

 医務官は「今後は(冬を迎える)南半球の動向を注視する必要がある」とした上で「感染者は米国など北半球でも増加し、新型ウイルスが衰える気配はない」と安易な終息ムードを戒めた。

 フェーズ6の期間中、世界の多くの人が新型ウイルスに感染して免疫を獲得したり、ワクチンで感染被害を抑え込むことなどにより、患者数は徐々に減少。新型ウイルスはその後、通常の季節性インフルエンザウイルスと同じ扱いになるという。

 また、進藤医務官はこれから季節性インフルエンザの流行期に入る南半球について「季節性と新型の双方が同時に流行する可能性がある」と指摘。さらに、双方のウイルスが交雑し、抗ウイルス剤、タミフルに対する耐性を持った新型ウイルスが発生する危険性があるとの懸念も示した。

(東京新聞、2009年6月12日)  

****** 朝日新聞、2009年6月12日

WHO、パンデミック宣言 

新型インフル「フェーズ6」

 世界保健機関(WHO)は11日、新型の豚インフルエンザの警戒レベルを現行のフェーズ5から、世界的大流行(パンデミック)を意味する最高度のフェーズ6に上げることを宣言した。インフルエンザシーズンを迎えつつある南半球に感染が及んだことが決め手となった。大流行は「香港風邪」以来、41年ぶりとなる。

 WHOのマーガレット・チャン事務局長は11日午後6時(日本時間12日午前1時)過ぎに記者会見し、大流行を正式に宣言。「感染の拡大を止めることはできない」と述べた。今回の新型を「2009インフルエンザ」と名付けたことも明らかにした。

 厚生労働省の担当者は11日、この決定に先立ち、大流行が宣言された場合の対応について、「これまでの(政府の)方針に沿って、感染拡大防止に努める」とし、現状では国内対策の警戒レベル引き上げは考えていないことを明らかにした。

 ただ、WHOが宣言したことで、国によっては移動や集会の制限などを検討する可能性があり、市民生活や世界経済などに影響が出かねない。

 このためWHOは過剰反応を戒めており、「渡航・貿易制限や国境閉鎖はすべきではない」と改めて求めている。

 WHOの基準では、感染が広がっている米州地域以外の1カ国で「地域社会レベルの人から人への持続的感染」が確認されれば、フェーズ6の要件が満たされる。

 冬を迎えた南半球では6月に入り、感染の拡大が著しい。11日現在で豪州は1307人、10日現在で南米チリは1694人の感染者が確認されている。特に、感染者が1千人を超えた豪州ビクトリア州で、人から人への持続的感染が確認されたことが、今回の大きな決定要因となった。

 WHOが確認した世界の感染者は10日朝現在で75カ国・地域の2万7737人。大半は軽症で済んでいるが、死者は141人になっている。

 WHOは、今回の新型インフルの「重症度」は「中等度」であると評価した。「軽度」としなかったのは、「今回、死亡、重症化した人の大半は、30~50代だったことなどを考慮に入れた」(チャン事務局長)という。

 各国政府に対し、状況に応じて、感染拡大防止から、医薬品以外の対処法を含めた感染症状の緩和策にシフトさせていくべきだと求めている。

 WHOは、医療態勢や医薬品が十分でないアフリカなどの途上国で今後、感染の影響がどのように出るか懸念、これまでに抗ウイルス薬やワクチンメーカーと途上国への提供について議論してきた。

 「季節性インフルエンザワクチンの製造は間もなく終了し、今後数カ月の間に新型インフルワクチンを可能な限り多く供給ができるような製造態勢を取ることができるようになるだろう」としている。

 人類は20世紀にインフルエンザの世界的大流行を3度経験した。今回は21世紀初の大流行となる。【大岩ゆり、編集委員・浅井文和、ジュネーブ=飯竹恒一】

(朝日新聞、2009年6月12日)

****** 読売新聞、2009年6月12日

新型インフル、「フェーズ6」引き上げを宣言

…WHO

 【ジュネーブ=平本秀樹】世界保健機関(WHO)のマーガレット・チャン事務局長は11日夕(日本時間12日未明)、記者会見を開き、新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の警戒水準を世界的大流行(パンデミック)を意味する最高の「フェーズ6」へ引き上げると宣言した。

 同日開催の専門家による緊急委員会が、南半球での急速な感染拡大を踏まえ、「世界的大流行の要件が満たされた」と結論づけたことを受け、決断した。

 新型インフルエンザの世界的大流行は死者100万人に及んだとされる1968年の「香港風邪」以来41年ぶりとなる。

 チャン事務局長は、感染者の大半の症状が軽いことを指摘し、「国境閉鎖や国際的な人・モノの移動制限措置を取るべきでない」と述べ、各国に冷静な対応を求めた。また、世界各地にウイルスが広がってしまっているため、患者隔離など「封じ込め策」より、早期治療を軸とする感染拡大の「軽減策」に重点を移すよう訴えた。

 メキシコ、米国を起点に4月以後、急速に広がったウイルスは、WHOによると11日までに74か国・地域に拡散し、感染者は2万8000人以上に達する。感染者の増大は、冬に入った南半球で顕著で、豪州では毎日100人のペースで増え、1200人を超した。

 WHOの警戒水準は地理的な広がりを尺度に定められており、フェーズ6は、世界の2地域で人から人への持続的感染が起きていることが条件。北米に加え豪州でも人から人への持続的感染が確認されたため、フェーズ6への引き上げが避けられなくなった。

 警戒水準は各国の対策を左右するだけに、引き上げに際しては、ウイルスの地理的な広がりだけでなく、病原性の強弱を表す新たな尺度の必要性が認識された。WHOは「重症」「中度」「軽症」の3段階の尺度を検討しており、今回は「中度」としている。

 チャン事務局長は、また、ワクチンメーカーに対し、季節性インフルエンザ用ワクチン製造が完了した後、新型用ワクチンをフル稼働で生産するよう求めた。

 WHOは新型インフルエンザの警戒水準を4月29日にフェーズ5に引き上げた。5月初め、英国やスペインでも感染者が増大し、フェーズ6への引き上げが本格的に検討されたが、世界的大流行を宣言することによる経済的、社会的影響への懸念から、欧州諸国のほか日本や中国が反対したため、引き上げは見送られていた。

(読売新聞、2009年6月12日)

****** 毎日新聞、2009年6月12日

新型インフル:警戒度6「世界的大流行」宣言

…WHO

 【ジュネーブ澤田克己】世界保健機関(WHO)のマーガレット・チャン事務局長は11日夕(日本時間12日未明)、新型インフルエンザの警戒度を現行の「フェーズ5」から、世界的大流行(パンデミック)を意味する「6」へ引き上げると発表した。インフルエンザのパンデミック発生は、世界中で約100万人が死亡した1968年の香港風邪以来41年ぶり。

41年ぶり「大流行」

 チャン事務局長は会見で「感染の状況はフェーズ6の条件を満たしている」と話し「今後の感染の拡大は避けられない」とした。同日開いた専門家による緊急委員会や、前日までの各国との協議を総合的に判断してフェーズ6を宣言した模様だ。

 ただ、現段階ではウイルスは大きな変異を起こしておらず、特に治療の必要がない程度の軽症患者が多い。事務局長は「(新型インフルエンザは)重症度からみると世界的に中等度となっていると言える」とし「国境封鎖や旅行・貿易の制限はしないよう」呼び掛けた。

 現行規定に基づくフェーズ6引き上げの条件は、世界の複数地域で「地域社会レベルの持続的感染が起きている」ことだ。メキシコと米国に加え、日本や英国などで感染が拡大したうえ、これから冬に向かう南半球のオーストラリアで感染が1200人以上と急拡大していることを重視したとみられる。

 WHOは5月の総会時、パンデミック宣言がもたらす社会的混乱を恐れる日本や英国などからの反発を受けて、基準見直しを表明していたが、その後、軌道修正を図っていた。

 WHOは4月24日、メキシコで豚インフルエンザ感染を疑われる死者が多数出ていると発表。「フェーズ3」だった警戒度は、同月27日に新型インフルエンザ発生を意味する「4」、29日にパンデミックが目前に迫っていると警告する「5」へと引き上げられていた。WHOによると感染者は世界で2万7737人、死者は141人にのぼっている。

(毎日新聞、2009年6月12日)

****** 毎日新聞、2009年6月12日

新型インフル:解説 警戒度「6」に

…「第2波」に備えを

 世界保健機関(WHO)は、新型インフルエンザの警戒度を、世界的大流行(パンデミック)を示す「フェーズ6」へ引き上げることを決めた。国内での対策に大きな変更はないが、秋以降に懸念される流行の「第2波」に備え、患者の早期治療や重症化を防ぐ準備が必要だ。

 世界が20世紀以降に経験するパンデミックは今回で4度目。過去には世界中で死者が100万~4000万人という大きな犠牲者が出た。だが、WHOのチャン事務局長は今回の新型発生後、「我々はかつてない準備ができている」と述べた。世界はこの病気に関する知識と、一定の医療態勢を整えている。これらをいかに生かせるかが問われている。

 WHOはパンデミックの場合、流行の第2波までに世界人口の3分の1が感染すると予測している。この割合を当てはめると、国内では約4000万人という計算だ。

 新型は、感染したことに気が付かないケースもあるなど、多くの人で症状が軽い特徴がある。その一方で、高齢者が死亡する季節性と異なり、糖尿病などの基礎疾患がある人や妊婦のほか、健康な成人でも重症化し、死亡する例が出ている。国内でも感染者数が増えれば、一定数の重症者、死者が出ることも避けられない。政府は被害軽減のため、バランスの取れた対策をとらねばならない。医療関係者の協力を得ながら、早期発見、治療の態勢を整え、年内に2500万人分の製造が見込まれるワクチンについて有効な接種方針を明確に示すことが求められている。【関東晋慈】

(毎日新聞、2009年6月12日)

****** 毎日新聞、2009年6月12日

渡航歴に関係なく遺伝子検査実施を…厚労省

 厚生労働省は10日付で、都道府県などに新型インフルエンザの監視強化を求める通知を出した。全国約500カ所の「病原体定点医療機関」を受診したインフルエンザ患者▽学校、家族、集会参加者などから集団で発生したインフルエンザ患者--などは、渡航歴などに関係なく遺伝子検査を原則実施するよう求めている。

 これまでは、感染が広がっている地域に行ったり、感染者と接触した可能性があるとして保健所に届け出があった「疑い例」に限られていた。【清水健二】

(毎日新聞、2009年6月12日)


新型インフル 国内発生前、82人に症状 東京新聞調査 検疫すり抜け感染

2009年05月30日 | 新型インフルエンザ

コメント(私見):

今回の新型インフルエンザA(H1N1)は弱毒性であり、症状は通常の季節性インフルエンザに似ており、自然治癒するケースがほとんどで、重症化する例はそれほど多くはないことが分かってきました。

今回の新型インフルエンザも、過去の全ての新型インフルエンザの場合と同様に、数年以内にほとんど全ての国民が感染し、その後は通常の季節性インフルエンザの一つとして定着し、十年~数十年間は流行を繰り返すと見込まれます(日本感染症学会緊急提言)。

強毒性新型インフルエンザの流行であれば、国内で最悪64万人の死者が出る可能性があり、その健康被害は非常に甚大となることが予想されるため、国を挙げて厳戒態勢で臨む必要があります。人類とウイルスとの戦いは、人類が存続する限り、これからも果てしなく続きます。犠牲者は必ず出ます。我々は、正確な情報を集めて、万全の準備を整え、健康被害を最小限に食い止めるように落ち着いて行動するしかありません。

今回の国を挙げての大掛かりな水際対策に対しては、厚生労働省・現役検疫官などの専門家からもその効果を疑問視する声が上がっています。

<厚生労働省現役検疫官・木村盛世さん>
「あなたのおうちにゴキブリが1匹発生しました。地方自治体全体があなたの家に行ってゴキブリ発見のために戦うというくらい無駄な検査」

<東京大学医科学研究所・上昌広准教授>
「オバマ大統領が最初に言った言葉は『すでに馬は逃げ出しているのにそれから柵をしても意味が無い』。実態はどんどん入ってきている。国民に大きな誤解を与えてしまった」

新型インフルエンザ: 対処方針改定 事実上「新行動計画」

新型インフルエンザは、いずれ数年後に季節性インフルエンザとなって誰でも罹患しうる病気です (日本感染症学会・緊急提言より)

新型インフル:「水際対策だけで食い止め不可能」WHO

新型インフルエンザで今行われている封じ込め対策は有効なのか?

****** 東京新聞、2009年5月30日

新型インフル 国内発生前、82人に症状 本紙調査 検疫すり抜け感染

 今月十六日に初めて新型インフルエンザの国内発生が確認されたが、その前日までに計八十二人が新型ウイルスによる発熱などの症状を訴えていたことが二十九日、東京新聞の調べで分かった。政府は水際対策に注力していたが、検疫をすり抜け、感染が拡大していたことになる。 

 本紙は二十九日までに厚生労働省に報告された約三百六十人の感染者について、発熱やせきなどの症状が出た日を独自に分析。その結果、九日に兵庫県西宮市や宝塚市などの高校生五人が症状を訴え始め、十日は神戸市など七人、十三日には大阪市や大阪府吹田市など十二人の高校生らに拡大。十五日は三十二人に急増して合計八十二人に。十六日に神戸市で第一例が確認された時点では、発症者は百四人に達していた。

 政府はメキシコや米国などで感染拡大していたことを受け、四月二十五日から成田、関西、中部の三空港に大規模な検疫チームを配置。カナダを含む三カ国からの到着便について徹底的な検疫を実施してきた。

 九日にはカナダから米国経由で帰国した大阪府の男子高校生ら三人が機内検疫などで感染が確認された。

 検疫については、潜伏期で症状の出ていない場合にはほとんど効果がないといった限界が当初から指摘されていた。二十八日の参院予算委員会では、参考人として呼ばれた厚労省の現役医系技官の木村もりよ氏が検疫偏重により、国内対策がおろそかになる問題を批判。まさにその指摘通りの事態が進行していたことになる。

(東京新聞、2009年5月30日)

****** 毎日新聞、2009年5月29日

新型インフル:上陸早かった? 

関西で4月下旬発生か

 国立感染症研究所(感染研)は29日、関西で最初に新型インフルエンザの感染が確認された5月16日より2週間以上前の4月28日ごろ、すでに神戸市、大阪府内で患者が発生していた可能性があるとの見方を示した。また、ウイルスの遺伝子情報を解読する製品評価技術基盤機構と感染研は29日、兵庫県と大阪府で採取した新型の遺伝子を解析した結果、メキシコや米南部での最初の流行と、4月下旬の米東部とカナダでの流行の間に変異して発生したウイルスであることが判明したと発表した。

 感染研は、今年1月から新型の発生を監視するため、全国の薬局のインフルエンザ治療薬の処方状況を例年と比較している。

 感染研感染症情報センターの大日(おおくさ)康史主任研究官によると、例年はシーズン前半に新型と同じA型インフルエンザが流行し、後半から春先までB型インフルエンザが流行する傾向がある。しかし今年は、神戸市と大阪市周辺地域で4月中旬から下旬にB型の流行が終息。その後の4月28日、神戸市中央区の薬局で治療薬(タミフル、リレンザ)の処方が例年を上回って急増し、流行レベルに達した。大阪府内でも5月1日に池田、枚方市、13日に池田市で同様の状態になった。

 同様の現象は茨木市内の高校に通う生徒の感染が確認された翌日の18日に池田、枚方、茨木の3市で起きたほか、京都市右京区に住む専門学校生が発症した20日とその前日にも同区で見られた。このため、感染研は4月末から5月初めの流行も新型だった可能性があるとみている。

 一方、同機構によると、韓国で4月末に確認されたメキシコからの帰国患者から採取された遺伝子と似ており、同機構は「メキシコから直接流入した可能性もある」とみている。

 大日主任研究官は「大阪、神戸の処方せん数の急増は季節性とは違うという印象だ。流行初期にすでに国内に何らかの形で新型ウイルスが入っていた可能性はある」と話す。【関東晋慈、山田大輔】

◇新型インフルエンザ関連の主なできごと

4月下旬 メキシコや米国で新型インフルエンザ患者や死者が明らかに

28日 WHOが警戒レベルをフェーズ4に引き上げ(日本時間)。日本政府が新型発生を宣言

同日 薬局サーベイランスシステムが神戸市中央区でインフルエンザの流行を検知

5月1日 同システムが大阪市周辺でも流行を検知

9日 成田の検疫でカナダから帰国した大阪府の高校生らの感染確認

16日 海外渡航歴のない神戸市の高校生の感染確認

    初の国内感染

17日 渡航歴のない大阪府の高校生らの感染確認

(毎日新聞、2009年5月29日)

****** m3.com医療維新、2009年5月29日

新型インフルエンザ 

「国内初の2次感染」確定の1週間前から流行開始

神戸の積極的疫学調査の中間報告:

5月29日感染研会見

橋本佳子(m3.com編集長)

 国立感染症研究所感染症情報センター長の岡部信彦氏が5月29日の会見(メディア情報交換会)で、神戸市を中心に実施した積極的疫学調査の中間報告をした。

 神戸で渡航歴などがない「国内初の2次感染」の患者が確定されたのは5月16日だが、発症日で見ると、兵庫県内で5月9日、神戸市では同10日から新型インフルエンザが発生していたことが分かった。その後、14日から患者が急増し、16日がピークだった。16日は土曜日であり、18日の月曜日から兵庫県下では小・中・高等学校で学校閉鎖が行われた。「学校閉鎖以降、患者数は減っている。地域での流行を抑えるには、一定の効果があったのではないか」(岡部氏)。

 インフルエンザ患者全体に占める新型インフルエンザの割合は、5月15日から23日までの間で見ると、15歳から17歳までの世代では約60%と高かったが、他の世代では10%以下にとどまった。

 もっとも、神戸市での最初の感染者はまだ同定できず、神戸市、さらには兵庫県内でどんな形で感染が広がったのかは調査・分析を継続中だという。また大阪での感染との関係も現時点では分からないという。

 また患者と2m以内で会話するなどの濃厚接触者は、5月16日から5月19日までで2728人(うち患者は65人)だった。すべてに予防投薬などが検討されたものの、実際に予防投薬を実施したのは患者の家族のみだった。

 潜伏期間は1-4日、中央値は2日

 臨床面を見ると、感染源および最終接触日が特定できる患者を基に潜伏期間を推定したところ、1-4日(中央値2日)という暫定値となった。ただし、今回の調査では、5日以上の潜伏期間については2次感染との区別が付かず、把握はできなかった。

 迅速診断キットが陽性だったのは、PCR陽性の22人(対象者は不明)では7人にすぎない。陽性率は発症から検査までに期間によって大きく異なり、発症当日0%(キット陽性は3人中0人)、1日38%(13人中5人)、2日67%(3人中2人)、4日0%(2人中0人)、5日0%(1人中0人)。

 入院患者は計49人。新型インフルエンザの場合、重症度にかかわらず感染拡大防止の観点から措置入院とされたが、入院時の臨床上は38℃以上の高熱が約90%、60-80%に倦怠感・熱感・咳・咽頭痛、約半数に鼻汁・鼻閉・頭痛、約10%に嘔吐・下痢、7%に結膜炎がそれぞれ見られた。

 入院患者の血液生化学検査の結果は、
白血球数(3200-11400/μL、中央値5100/μL)、
CRP(0-9.2mg/dL、中央値1.2 mg/dL)、
GOT(12-64 IU/dL、中央値17 IU/dL)、
GPT(7-168 IU/dL、中央値11.5 IU/dL)、
BUN(6-15mg/dL、中央値10mg/dL)、
クレアチニン(0.53-0.98mg/dL、0.76mg/dL)
で、いずれもほぼ基準値の範囲内。「CRPが基準値よりもやや高めだが、意味のある数値ではない。検査値から特別言えることはない」(岡部氏)。

(m3.com医療維新、2009年5月29日)

****** 毎日新聞、2009年5月29日

新型インフルエンザ:厚労省職員が機内検疫批判--参院予算委

 28日の参院予算委員会に参考人として出席した厚生労働省職員が、新型インフルエンザ対策で行われた旅客機の機内検疫を「パフォーマンス」と批判する一幕があった。

 「厚生労働省崩壊」という著書がある羽田空港検疫官の木村もりよ氏で、民主党の鈴木寛氏の要請で出席した。木村氏は「マスク、ガウンをつけて検疫官が飛び回る姿は国民にパフォーマンス的な共感を呼ぶ。利用されたのではないかと疑っている」と述べた。機内検疫は22日に終了した。

 厚労省の塚原太郎大臣官房参事官は28日の会見で「機内検疫を始めた4月下旬時点でウイルスの病毒性は不明で、メキシコでも相当数の患者が亡くなっていた。検疫の実施は適切だった」と反論した。【田中成之】

(毎日新聞、2009年5月29日)

****** 読売新聞、2009年5月28日

神戸の新型インフル、初確認の高校生より2日早く2人発症

 神戸市は28日、市が検査した102人の新型インフルエンザ患者のうち、最初に感染が確認された県立神戸高校の男子高校生が発症したとみられる11日より2日前の9日に、2人が発熱などを訴えていたことを明らかにした。

 男子高校生は11日に悪寒を訴えていた。この高校生より早い発症を確認したのは初めてで、市は今後、感染ルートの究明につなげたいとしている。

(読売新聞、2009年5月28日)

****** 毎日放送、2009年5月28日

「水際対策の効果はあったか!?」

神戸で初めて新型インフルエンザへの感染が確認されて以来、国内の感染者数は365人(5月28日現在)にのぼり、いまだ感染ルートもわかっていません。

果たして国をあげての大掛かりな水際対策は何だったのか。

その効果を問い直す声が出始めています。


<厚生労働省現役検疫官・木村盛世さん>
「十分な情報の見直しが行われないまま、検疫偏重が行われたのではないか」

28日、行われた参議院予算委員会で新型インフルエンザに対する日本の検疫体制を痛烈に批判する女性。

厚生労働省の現役検疫官です。

木村さんは今回の感染が問題となる直前の今年3月、「厚生労働省崩壊」という本の中で、すでに検疫の無意味さを批判していました。

<厚生労働省現役検疫官・木村盛世さん>
「あなたのおうちにゴキブリが1匹発生しました。地方自治体全体があなたの家に行ってゴキブリ発見のために戦うというくらい無駄な検査」

先月28日、国はメキシコ、アメリカ、カナダ便の機内検疫を始め、水際対策の強化を打ち出しました。

<舛添要一厚労相>
「ウイルスの国内侵入を阻止するため、水際作戦の徹底をはかる」

そして今月8日、成田空港で感染が確認されます。

<舛添要一厚労相>
「やはり水際で止めたことは確か」

しかし、そのおよそ1週間後。

ついに国内初の感染者が見つかりました。

<神戸市の会見、5月16日午前1時>
「患者は神戸市在住の10代後半の男性」

続いて大阪でも…

<関西大倉高校の校長会見、5月16日>
「生徒の命に対する責任を痛感しております」

水際対策の一方で、国内では渡航歴のない高校生の間で感染が広がっていたのです。

<舛添要一厚労相>
「ある意味、水際対策は時間かせぎ」

果たして水際対策は有効だったのでしょうか?


<水際対策への疑問(1)サーモグラフィー>

北米からのすべての便は検疫官が機内に入り、乗客の体温をチェック、熱のある患者にはインフルエンザの簡易検査を行ってきました。

<乗客>
「赤外線をおでこにやって大丈夫です、みたいな」
「体調に対するアンケート」

国は空港内の検疫所にもサーモグラフィーを設置して、すべての乗客の体温をチェックしていましたが、ニューズウイークはこれを厳しく批判します。

<ニューズウイークの記事より>
「サーモグラフィーに頼るな。インフルエンザはまったく熱がない状態から感染力をもつのだから」

WHOも出入国時の検疫は、「感染拡大を防ぐ効果はない」としています。

ウイルスが入ってから症状が出るまでの潜伏期間が、最長で1週間もあるといわれているのです。

<厚生労働省現役検疫官・木村盛世さん>
「潜伏期間に空港の検疫を通ってしまったら、症状が無いから一般人と同じ、絶対にわからない」


<水際対策への疑問(2)簡易検査>

機内検疫に使われたのは、ウイルス感染を短時間で判断する簡易キットです。

<中村積方医師>
「鼻腔から採取します」

患者の鼻などから採取した検体をキットに入れて、A型ウイルスに感染していれば「A」のところにマーカーが出るのですが、この検査には限界があります。

<中村積方医師>
「症状が出てきても、熱が出て数時間では陽性になることは少ない。時間がたってこないとウイルス量が増えない」

実際、東京で初めて確認された2人の女子高校生は、機内の簡易検査では陰性。

また、神戸市の調査結果では、初期に感染が確認された43人のうち、簡易検査で陽性反応が出たのは23例。

半分近くが検査をすり抜けていました。

<厚生労働省現役検疫官・木村盛世さん>
「行動計画を作ったのは霞が関にいる医系技官といって、医師免許を持ってる官僚集団なんですね。その人たちの知識が足りなかったんでしょうね」

実は政府は当初、新型インフルエンザ感染を調べる対象を海外渡航歴がある人などに限定していました。

水際対策で新型ウイルスが上陸していないと考えたためですが、国内初の感染者となる神戸の高校生を診察した医師は、早い段階で「国の作ったシナリオ」を疑っていました。

<初感染の神戸高校生を診察した医師>
「インフルエンザは潜伏期間がある。心ない人がちゃんと申告しない可能性もある、水際をすり抜けている可能性がある」

役人の頭脳ではなく、現場の勘で感染を見抜くことができたのです。

<初感染の神戸高校生を診察した医師>
「メキシコでインフルエンザが言われだしたのは3月中旬。もう少し前からあったはず。アメリカと日本はビジネスを通じて行ったり来たりの状態。その時点でウイルスは入っていた


東京大学の上准教授は5月上旬のインフルエンザの患者数に注目しています。

去年より今年は患者数が大幅に増えていて、これらがすべて従来の季節性インフルエンザだけだったのか疑問が残るというのです。

<東京大学医科学研究所・上昌広准教授>
「オバマ大統領が最初に言った言葉は『すでに馬は逃げ出しているのにそれから柵をしても意味が無い』。実態はどんどん入ってきている。国民に大きな誤解を与えてしまった」

第一線で指揮にあたった神戸市の桜井局長は、検疫について2つの側面があったと話します。

<神戸市保健福祉局・桜井誠一局長>
「ひとつは私どもが準備をする時間を与えていただいた、これは大きく評価できる点。一方で強毒性の対応のような情報が流れていた、そのギャップはあった」

結局、政府は22日で機内検疫を終了しました。


<記者リポート>
「アメリカ・サンフランシスコからの直行便が到着しました。以前のようなものものしい検疫は、もう行われていません」

<帰国者>
「もっと時間がかかると覚悟して帰国したが、スムーズに終わった」
「アメリカではあまり盛り上がっていないが、日本はだいぶ盛り上がっているみたいで怖いです」

<関空検疫所・高橋仁課長補佐>
(Q.水際検疫は有効だった?)
「我々は有効であるからやるのではなく、国の考え、方針に従って淡々とやった。それだけしか言うことができない。有効かどうだったかは、我々が言える部分ではない」

国も徐々に、検疫に頼ったインフルエンザ対策の問題点を認識し始めています。

<舛添要一厚労相、参議院予算委員会・5月28日>
「国内の感染者の発見が遅れたことについて、水際に目が向いていたことがある。もうひとつ、学級閉鎖の定点観測をもっと強化しないといけない。これは反省なんですが」

義務教育ではない高校の学級閉鎖の状況をチェックしていれば、もっと早い段階で感染に気付いたかもしれません。

このように国は今後、対策を検証して、秋からの第二波に備える考えです。

毎日放送、2009年5月28日

****** スポーツ報知、2009年5月29日

機内検疫は政府のパフォーマンス…厚労相面前で職員痛烈批判

 新型インフルエンザ対策などを集中審議した28日の参院予算委で、参考人で出席した厚労省職員の検疫官が、舛添要一厚労相(60)の目の前で、国際空港に到着した帰国便に行った機内検疫について「(政府の)パフォーマンス」と痛烈に批判した。

 参考人に呼ばれた同省医系技官で検疫官の木村盛世氏は、新型対策が機内検疫などの「水際対策」に偏り過ぎた点を指摘し「毎日毎日、空港でマスクをつけて検疫官が飛び回る姿は国民にパフォーマンス的な共感を呼ぶので、利用されたのではないかと疑っている」と述べた。帰国便への一律の機内検疫は22日で縮小態勢になったが、木村氏は「現場としては大して変わっていない。今もかなりの負担を強いられている」と不満感を示した。

 現役の検疫官に突き上げを食らった形の舛添氏は「本年度は検疫官を10人増やした。相当努力しているつもり」と釈明。「労働条件が変わっていないことは今後の課題としたい」と述べるにとどまった。

(スポーツ報知、2009年5月29日)

****** J-CASTニュース、2009年5月29日

「検疫はパフォーマンス」 言い過ぎか正論か

 「マスクやガウンをつけ飛び回っている姿は、非常にパフォーマンス的な共感を呼ぶので利用されたのではないか」

  新型インフルエンザの感染が沈静化しつつあるが、政府の水際対策に対し現役の検疫官からこんな批判が飛び出した。

   「水際で、というのは当たり前のことだと思う。ただすり抜けるケースもあるので……」(司会のみの)と番組が取り上げた。

   批判したのは木村盛世検疫官(厚生労働医系技官)。5月28日の参院予算委員会で開かれた新型インフルエンザについての集中審議に参考人として出席し、次のように述べた。

   「N95マスクをつけてガウンをつけて飛び回っている姿は非常に国民に対しパフォーマンス的共感を呼ぶ。そういうことで利用されたのではないかと疑っています」

   さらに現在の検疫体制縮小についても「現場としては今もたいして変わっていない。かなりの負担を強いられている状況です」と、不満をにじませた発言を。

   さて、この批判をどう受け取るべきか、国立感染症研究所の森兼啓太主任研究官は……

   「空港検疫は全く無駄ではない。しかし、成田で患者が見つかり、そちらに目が向いてしまったということは事実。それで国内の態勢がワンテンポ遅れてしまった」

   スタジオでは浅野史郎(前宮城県知事)が「水際対策がパフォーマンスだった、わざとやったというのは違うかなと思う。ただ、国内態勢が薄くなったという批判は正論。水際でストップというのはもともとムリで、入ってきた後の国内態勢を重視しなければ……」と。

   吉川美代子(TBS解説委員)も「来るべきもっと大変な時代に万全の態勢を組めるようにすればいい。そのための試練としてはとてもよかった」。共鳴したみのが「吉川さんと同じ」。

   検疫官も水際で食い止めようと必死だったのだろう。が、上手の手から水が漏れた。その挫折感で疲労ドッと出たのかも……

(J-CASTニュース、2009年5月29日)

****** 共同通信、2009年5月28日

インフル水際対策を羽田の検疫官批判

 28日の参院予算委員会で、羽田空港の現役検疫官で厚生労働省医系技官の木村盛世氏が参考人出席した。木村氏は新型インフルエンザ対策で当初、水際対策が重視されたことに関して「マスクやガウンを着け検疫官が飛び回る姿はパフォーマンス的な共感を呼ぶので、利用されたのではないかと疑っている」と批判した。

 木村氏は水際対策の問題点として、国内で患者が発生した場合の対応が遅れがちになると指摘。さらに議論や情報収集が不十分なままインフルエンザ対策の行動計画が策定されたと強調、検疫態勢の縮小後も「人的にかなりの負担を強いられている」と訴えた。

 舛添要一厚労相は「本年度は検疫官を10人増やした。相当努力しているつもりだ」と釈明した。

 民主党の鈴木寛氏が「現場の声を聞くべきだ」と、感染症対策の問題点を指摘した著書も発表している木村氏らの出席を要請。25日の予算委では「政府を代表する立場ではない」と与党が拒否し一時紛糾した。

(共同通信、2009年5月28日)

****** 読売新聞、2009年5月28日

「機内検疫はパフォーマンス」検疫官、参院予算委で批判

 午前の参院予算委員会で新型インフルエンザ対策などに関する集中審議が行われ、参考人として出席した厚生労働省職員で羽田空港の検疫官、木村盛世氏が米本土などからの旅客便を対象に一律に行った機内検疫を「(政府の)パフォーマンス」などと批判した。

 木村氏は、政府の当初対策が機内検疫による「水際対策」に偏りすぎたとし、「マスクをつけて検疫官が飛び回っている姿は国民にパフォーマンス的な共感を呼ぶ。そういうことに利用されたのではないかと疑っている」と述べた。さらに、「厚労省の医系技官の中で、十分な議論や情報収集がされないまま検疫偏重になったと思う」と強調した。

 一律の機内検疫は政府の新たな「基本的対処方針」で22日に終了したが、木村氏は「現場としては大して変わっていない。今もかなりの労力をかけて検疫を行っている」と指摘した。

 木村氏は民主党の要請で参考人に呼ばれ、同党の鈴木寛氏の質問に答えた。

(読売新聞、2009年5月28日)

****** CBニュース、2009年5月28日

「検疫偏重」で議論―参院予算委

 5月28日の参院予算委員会で、新型インフルエンザ対策などに関する集中審議が行われ、参考人として出席した国立感染症研究所・感染症情報センターの森兼啓太主任研究官と、羽田空港で検疫に当たっている木村盛世・厚生労働医系技官がそれぞれ、当初の対策が「検疫偏重」だったとの批判に対する見解を示した。共に鈴木寛氏(民主)の質問に答えた。

 森兼主任研究官は「検疫は、有症状者を見つけることに関しては当然ながら有効」とする一方、「それに要する人手と、お金、時間、手間、そういったところのバランスというところではないか」とした。実際の対応については、成田空港の「水際対策」で日本最初の感染者が4人確認された際に、「皆さん、わたしも含めてそちらの方に目が向いてしまって、国内の態勢がワンテンポ遅れた」と指摘。「これは大きな教訓として、第2波以降に備えるべきだと思う。国内の対策も水際対策も、両方とも大事」と強調した。

 検疫縮小のタイミングについては、「国内例が見つかって最初(の16日)から48時間ぐらいで150人ぐらいの患者が検知された。国内でも既に流行しているということが分かった。この時点で国内の検疫体制を速やかに縮小すべきだったと思う」と述べた。これに関しては、19日に舛添要一厚労相に機内検疫をやめて有症状者のスクリーニングに切り替えるよう提言したといい、3日後の22日に対処方針を改めて機内検疫を中止したことについて、「こういったスピード感を持った対策は非常に良かった」と評価した。

 一方、木村厚生労働医系技官は「現場としては(検疫態勢は)大して変わっていない。今もかなりの労力をかけて検疫を行っている最中。そういう意味では人的にもかなりの負担を強いられている状況」と説明。「検疫偏重」となった理由として、「毎日毎日、マスクを着けて検疫官が飛び回っている姿は、国民に対してアイキャッチ。パフォーマンス的な共感を呼ぶ。そういうことで利用されたのではないか」「検疫では国が主体となる検疫法に基づいて動くが、国内に入ると感染症法で、地方自治体の主導になる。感染症法という“国内お任せ”をある意味、想定外とした厚労省の考え方があったのではないか」「医系技官の中で、十分な議論がされないまま、十分な情報の見直し、収集がされないまま、このような検疫偏重が起こったのではないか」の3点を挙げた。

(CBニュース、2009年5月28日)

****** 日テレニュース、2009年5月28日

参考人招致の検疫官、水際対策に疑問呈す

 28日の参議院予算委員会に、新型インフルエンザの空港検疫に携わった東京検疫所・木村もりよ検疫官が参考人として出席し、「水際対策がパフォーマンスに利用されたのではないか」と疑問を呈した。

 木村検疫官は「毎日毎日、テレビで、主に成田空港で、N95マスクをつけ、あるいはガウンをつけて検疫官が飛び回っている姿は、国民に対してのアイキャッチというか、非常にパフォーマンス的な共感を呼ぶ。そういうことで利用されたのではないかと疑っている。水際対策に偏ると、国内に入ってからのことがおろそかになると思う」と述べた。

 一方、国立感染症研究所・森兼啓太主任研究官は「検疫は有症状者を見つけること、これに関しては当然ながら有効」と述べている。

(日テレニュース、2009年5月28日)


新型インフルエンザ: 対処方針改定 事実上「新行動計画」

2009年05月24日 | 新型インフルエンザ

新型インフルエンザに対する従来の行動計画は、強毒性の鳥インフルエンザウイルスを前提に作られたものでした。強毒性の新型インフルエンザであれば、国内で最悪64万人の死者が出る可能性があり、その健康被害は非常に甚大となることが予想されるため、国を挙げて厳戒態勢で臨む必要があります。

しかし、今回の新型インフルエンザA(H1N1)は弱毒性であり、症状は通常の季節性インフルエンザに似ており、自然治癒するケースがほとんどで、重症化する例はそれほど多くはないことが分かってきました。そのため、実態に合わなくなってきた今回の新型インフルエンザに対する政府の対処方針が改定されました。

また、世界保健機関(WHO)も今回の新型インフルエンザに対する治療指針を公表しました。慢性疾患合併例や妊婦などの重症化しやすい患者への抗インフルエンザウイルス薬の早期投与を勧めています。

新型インフルエンザに関するQ&A

厚生労働省:新型インフルエンザ対策本部による平成21年5月22日の「基本的対処方針」に関するQ&A

新型インフルエンザは、いずれ数年後に季節性インフルエンザとなって誰でも罹患しうる病気です (日本感染症学会・緊急提言より)

**** 毎日新聞、2009年5月23日大阪朝刊

新型インフル、対処方針改定 

事実上「新行動計画」

 感染の拡大が続く新型インフルエンザに、新たな対策が示された。政府対策本部が22日改定した基本的対処方針は事実上、強毒性のウイルスを前提に作られた従来の行動計画に代わり、今回の新型ウイルスの特性や感染の実態を踏まえた「新行動計画」の意味を持つ。国は自治体の対応に幅広い選択を認める一方、季節性インフルエンザ以上の警戒も求めたが、新方針で社会の混乱を抑えつつ、感染拡大防止を図ることはできるのか。

 ◇独自運用の自治体追認

 「これまで鳥インフルエンザ想定の行動計画に引っ張られ、自治体で混乱もあった。基本的には行動計画にこだわらなくていいと、きちっと書かせてもらった」。内閣官房の担当官は、“脱行動計画”とも言える新たな対処方針の意義を強調した。

 神戸市で国内初の感染者が確認された16日以降、政府や厚生労働省は「弾力的で柔軟な対応を取る」と繰り返してきた。国内で最悪64万人の死者を想定した行動計画が、明らかに実態に合わなかったためだ。対策本部は同日、行動計画の第2段階(国内発生早期)に移行した際、当面の対策として「確認事項」を示した。第2段階の対策の項目の一部を抜き出した内容で、休校措置の対象を限定することも可能にするなど、社会への影響を小さくしようとした。しかし、神戸市や大阪府はこの枠を超え、軽症者の自宅療養など第3段階の「まん延期」に相当する対策を始めた。東京都や川崎市も、感染者が出ても学校の一斉休校などはせず、第2段階で求められた対策でも社会的影響の大きな部分は実施しなかった。新たな対処方針は、行動計画に縛られず独自の運用を始めている自治体の対策を追認したと言える。

 行動計画がなくなったわけではなく、厚労省の担当者は「第3段階への移行は、国際社会へ与えるインパクトなども考慮して判断することになるだろう」と語る。だが、対処方針には、発生初期からまん延の段階までの対応が盛り込まれ、第3段階に入っても使える内容となっており、自治体にとっては対策を大幅に変える必要はない。事実上、新たな行動計画として機能することになる。4月末の発生宣言から、政府が行動計画にとらわれない対応策を打ち出すまで約1カ月かかった。舛添要一厚労相は22日の閣議後会見で、これまでの対応の適切さを強調した。「新型っていうのは(性質が)分からないんです。最初から分かれば苦労はない」【清水健二、内橋寿明】

 ◇糖尿病やぜんそく、重症化防止に力点

 糖尿病やぜんそくなどの慢性疾患のある人が感染すると、重症化する恐れがあるため、政府は重症化防止を対策の柱に位置づける。新たな運用指針で、患者急増地域では(1)慢性疾患を持つ感染者の優先的な入院治療(2)軽症者の家族を持つ慢性疾患者への治療薬の予防投与(3)一般医療機関での慢性疾患者への感染防止--を求めた。

 国内では、これまで死亡や重症化の例はない。だが米国では入院患者の70%にぜんそくなどの慢性疾患や妊娠がみられた。

 米疾病対策センター(CDC)によると、入院した247人のうちカリフォルニア州の30人を分析した結果、▽肺の慢性疾患▽心臓の慢性疾患▽肥満などがあり、5人は妊娠していた。20%は集中治療室でのケアが必要で、13%は人工呼吸器が必要だった。妊婦では症状が急激に悪くなる例もあり、妊娠で肺の動きが抑えられることなどが考えられる。早産もあった。

 押谷仁・東北大教授(ウイルス学)は「重症化例が多発した場合の医療体制を今から考えておく必要がある。特に救急医療や産科医療が維持できなくなっている地域では緊急課題だ」と指摘。国立感染症研究所の岡部信彦・感染症情報センター長は「慢性疾患のある人は大流行前に、症状を管理するため薬などをきちんと用意しておいてほしい」と話す。【関東晋慈、北米総局】

 ◇季節性とは一線「より警戒」は継続

 新型インフルエンザについて、舛添厚労相はこれまで「季節性インフルエンザと変わらない」と説明することが多かったが、22日の記者会見では「まったく同じではない」と言い回しを変えた。新たな対処方針は学校の休校などで自治体に季節性インフルと同様の対応を認めたが、治療や入院、遺伝子検査などでは特別な態勢を続けるよう求めており、重要な部分で一線を画す。

 なぜ新型はより警戒が必要なのか。厚労省は(1)免疫やワクチンがなく感染が広がりやすい(2)糖尿病やぜんそくなど慢性疾患があると重症化しやすい(3)変異して毒性が変わる可能性がある--を挙げるが別の理由としては感染症法の規定がある。

 感染症法は昨年5月の改正で、警戒度が最も低い「第5類」に分類されるインフルエンザと区別して「新型インフルエンザ等感染症」の規定を追加した。感染が疑われる患者の入院や接触者の外出自粛要請は同法に基づく措置だ。厚労省は「毒性にかかわらず、国民に免疫がないことが『新型』指定の条件なので、今回のインフルエンザを季節性とみなすことはできない」と説明する。

 しかし、日本では毎年冬を中心に1500万人前後が季節性インフルにかかり、Aソ連型やA香港型は、遺伝子検査をしなければ新型と区別できない。膨大な患者が発熱外来に押し寄せれば検査も追いつかない。厚労省は「季節性の流行期には、対応を見直す必要がある」と認める。

 実際、多数の感染者が出た大阪では今ですら、新型が疑われる患者だけを抜き出して対応することが難しくなりつつある。発熱相談センターや保健所の電話がつながらず、多くの人が一般の診療所などを訪れているためだ。これを受け高槻市医師会は18日、会員の一般医療機関に、季節性だけでなく新型の疑いがある人も診察するよう文書で要請した。高橋徳副会長は「発熱センターに連絡するよう押し戻せば、たらい回しになる。感染予防をしながら一般診療所などでも診察するしかない」と話す。【渋江千春、清水健二】

(毎日新聞、2009年5月23日大阪朝刊)

****** 毎日新聞・社説、2009年5月23日

新型方針改定 重症化防ぐ手だても

 新型インフルエンザは「恐れ過ぎず、侮らず」という姿勢が、ますます重要になってきた。政府の方針改定に基づき新たに公表された指針の運用にあたっても、そのバランスを忘れないようにすることが大事だ。

 新たな指針では、検疫を縮小し、国内対策に重点を置くことにした。インフルエンザの性質からも、国内で感染が拡大している状況からも、それが妥当な方向だ。地域の状況に応じて柔軟に対策を分けることも、現実的な対応だろう。

 多くの人が軽症で治ることを念頭におけば、感染が拡大している地域で軽症者に自宅療養を勧めることも理にかなっている。学校や保育所などの休業も、効果が期待できる範囲がおのずとあるだろう。

 ただ、ウイルスの病原性が低いからといって、「季節性インフルエンザとまったく同じ対応でだいじょうぶ」と気を緩めるのは早計だ。

 症状が軽くても、これは多くの人が免疫を持たない新型ウイルスである。感染者が増えれば、結果的に重症者も増えるだろう。最終的にどの程度の健康被害が出るか、まだ予測できない部分がある。

 米国のデータでは、高齢者は発病する人も重症化する人も少ない。一方で、入院患者の3割が5~18歳の若者、4割が19~49歳の成人だという。ぜんそくなどの持病のある人や妊婦に加え、健康な人の中にも重症化する人たちがいる。

 この傾向が続くと、日本でも若者や成人に重症者が出るようになる恐れがある。数カ月先まで見越して、重症者の治療体制も今から考えておいた方がいい。

 妊婦を守る対策も重要だ。インフルエンザが疑われる妊婦を感染者が集まる発熱外来に誘導するのではなく、臨床症状に応じて抗ウイルス剤を処方できるよう、医療現場で工夫してほしい。

 侮らないという点で、個人の感染拡大防止策も大事だ。こまめな手洗いはもちろん、せきやくしゃみは手で覆わず、ティッシュなどで覆うことが大切だ。手に付着したウイルスを机やドアノブなどに付けないためだ。症状があったら、学校や会社を休むのも基本だ。

 新型対策の基本方針については、官房長官や厚生労働相らがそれぞれ発言しているだけではない。政府の対策本部には専門家諮問委員会が助言しているが、厚労相はこれとは別に、国内対策について専門家から意見を聞いている。

 多様な意見を聞くことや、迅速な情報提供はもちろん重要だが、政府としての系統立てた意思決定と統一的なメッセージも大事だ。その両方が備わってこそ、国民の信頼感にもつながるのではないだろうか。

(毎日新聞・社説、2009年5月23日)

**** m3.com医療維新、2009年5月22日

新型インフルエンザ

「地域分け」は患者数で一律に線引きできず

政府が新方針、

「医療体制などに応じて柔軟に対応すべき」
と感染研・岡部氏

橋本佳子(m3.com編集長)

 政府の新型インフルエンザ対策本部(本部長:麻生太郎首相)は5月22日、新型インフルエンザ対策について、「基本的対処方針」と「医療の確保、検疫、学校・保育施設等の臨時休業の要請等に関する運営指針」をまとめた(首相官邸のホームページ)

 これまでは政府が定めた「新型インフルエンザ対策行動計画」に基づき、一律な対応を求めてきたが、感染者・患者数に応じて、(1)感染の初期、患者発生が少数であり、感染拡大防止に努める地域、(2)急速な患者数の増加が見られ、重症化の防止に重点を置くべき地域、という2つの地域に分けて対策を講じることが特徴だ。

 ただし、政府の運営指針には、(1)と(2)の基準は明示されておらず、「厚生労働省と相談の上、都道府県、保健所設置市等が判断する」と記載されているのみ。この点について、国立感染症研究所感染症情報センター長の岡部信彦氏(新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員会委員)は、5月22日午後の会見(メディア情報交換会)で、「流行の初期か、まん延地域かの区別は、『感染者が何人以上』などと全国一律に線引きすることはできない。各地域のキャパシティーに応じて柔軟に対応すべき」との見解を示した。「キャパシティー」とは、積極的疫学調査の体制、PCR検査の体制、感染症指定医療機関の数・病床数などだ。

 神戸市などの実態を踏まえ、政府が対応

 政府の「新型インフルエンザ対策行動計画」によれば、現在は第2段階(国内発生早期)。この段階では、積極的疫学調査(患者の行動・臨床情報などの調査と、患者と接触した人の追跡調査)の実施、患者の感染症指定医療機関への措置入院、発熱外来での診察実施など、感染拡大防止のために厳しい対応が求められる。

 しかし、兵庫県や大阪府などでは患者数の増加で事実上、これらの対策が不可能になり、例えば神戸市では既に5月18日から軽症者については自宅静養とするほか、20日から発熱外来以外での患者の診察を始めている。政府の新たな方針は、こうした現状を踏まえ、地域によって柔軟に対応できるようにしたもの。

 (1)の「感染の初期」における医療面での対策は行動計画の第2段階とほぼ同じ。

 (2)の「感染拡大・まん延期」の対策の基本的考え方として岡部氏は、「季節性インフルエンザへの対応、プラスアルファを求めたということ。必ずしも“重装備”を求めているわけではないが、新型インフルエンザの場合は未知の部分もあるため注意は必要」と説明。

 対策としてはまず患者の重症化防止に重点を置く必要性を強調、一方で軽症者については自宅静養を求めている。

 その上で、「対応可能な一般の医療機関においても、発熱外来の機能を果たすとともに、患者の直接受診も可能とする」としている。「発熱外来と言っても、陰圧テントなどを持つ厳重な発熱外来ではなく、求めているのは発熱外来の『機能』。つまり新型インフルエンザ疑いの患者とそれ以外の患者を、スペースあるいは診察時間などで分けるなど、運用面で工夫できる医療機関で対応してほしいということ」(岡部氏)。

 さらに、PCR検査での確定診断は必ずしも必要とはしないとし、患者との接触が強く疑われる人などを優先的に検査すべきだとしている。「患者数が少ないときには、感染拡大の状況などを把握のために正確な患者数を調べることが必要だが、ある程度以上多くなると検査体制のキャパシティーを超える。かつ今回の新型インフルエンザは軽症患者が多いこともあり、新型インフルエンザか季節性かを判断しても治療には相違はない」と岡部氏は述べ、(1)から(2)の段階への移行に伴い、検査体制も季節性インフルエンザの体制に基本的には切り替わるとした。

 こうした運用指針に合わせて、新型インフルエンザの症例定義も改定されている(PDF)

 そのほか、運営方針では、水際対策についても、機内検疫は原則廃止とし、明らかに機内に有症者がいる場合に限るなど、見直しを行っている。

(m3.com医療維新、2009年5月22日)

**** 読売新聞、2009年5月24日2時14分

新型インフル、妊婦などに薬の早期投与を…WHO治療指針

 【ジュネーブ=高田真之】世界保健機関(WHO)は22日、新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の治療指針を公表した。妊婦などの重症化しやすい患者への抗インフルエンザウイルス薬の早期投与を勧めている。

 WHOには20日現在、41か国から1万人を超える感染者の報告がある。治療指針は、このうち大半を占めるメキシコ、米国、カナダの症例を中心に解析した。

 感染者の約73%は30歳未満。

 症状は、通常の季節性インフルエンザに似ており、自然治癒するケースがほとんどだった。入院が必要になったのは、米国やカナダで約2~5%、メキシコで6%。米国の入院患者とメキシコでの死者の約半数は、ぜんそくや糖尿病などの慢性疾患があったり、妊娠中だったりして、重症化しやすい状態だった。

 指針では、こうした患者の重症化を防ぐため、タミフルやリレンザを早期に投与することを勧めている。

(読売新聞、2009年5月24日2時14分)

**** 読売新聞、2009年5月24日

新型インフル、WHOが治療指針

 【ジュネーブ=高田真之】世界保健機関(WHO)は22日、新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の治療指針を公表した。妊婦などの重症化しやすい患者への抗インフルエンザウイルス薬の早期投与を勧めている。

 WHOには20日現在、41か国から1万人を超える感染者の報告がある。治療指針は、このうち大半を占めるメキシコ、米国、カナダの症例を中心に解析した。

 感染者の約73%は30歳未満。症状は、通常の季節性インフルエンザに似ており、自然治癒するケースがほとんどだった。入院が必要になったのは、米国やカナダで約2~5%、メキシコで6%。米国の入院患者とメキシコでの死者の約半数は、ぜんそくや糖尿病などの慢性疾患があったり、妊娠中だったりして、重症化しやすい状態だった。

 指針では、こうした患者の重症化を防ぐため、タミフルやリレンザを早期に投与することを勧めている。

(読売新聞、2009年5月24日)

**** NHKニュース、2009年5月23日7時7分

WHO 感染患者治療の手引き

WHO=世界保健機関は、これまでに明らかになった新型インフルエンザの患者のデータを基に初めて治療の手引きをまとめ、慢性の病気がある人や妊娠中の女性など、重症になるおそれのある人には、早めにタミフルなどの抗ウイルス薬を与えることが有効であるなどとしています。

WHOは、今月20日までにメキシコで確認された新型インフルエンザの患者、3700人余りのデータを分析しました。それによりますと、死亡したのは全体の2%に当たる74人で、そのうちの半数近くは、ぜんそくや糖尿病など慢性の病気がある人や妊娠中の女性でした。また、メキシコでは、重症になった人の多くは肺炎から呼吸不全を起こしていて、アメリカに比べ、発症してから治療を受け始めるまでに長い時間がかかる傾向があったということです。WHOは、アメリカをはじめ世界各国のデータが数多く集まり、患者の症状の傾向が明らかになってきたとして、新型インフルエンザの治療の手引きを初めてまとめました。この中では、慢性の病気の人や妊娠中の女性など、重症になるおそれがある人には、早めにタミフルなどの抗ウイルス薬を与えることが有効であるとしています。その一方で、子どもが感染した場合、脳症になるおそれがあるとして、解熱剤の使用はできるだけ避けるよう求めています。WHOでは、今後も新たな情報が明らかになれば、手引きを随時見直していくことにしています。

(NHKニュース、2009年5月23日7時7分)

****** 読売新聞、2009年5月24日

簡易検査すり抜け3割 発症時期で差

…感染研など調査

 新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)かどうかの予備的な判定に多用されている簡易検査キットで、新型なのに「陰性」と誤判定される例が3割前後もあることが、国立感染症研究所(感染研)などの調査で明らかになった。発症からの時間経過によって体内のウイルス量が大きく変わるためで、量がピークになる発症翌日はほぼ問題ないが、発症当日、発症2日後の検査だと、4割前後がすり抜けていた。感染研は「陰性でも簡単に新型を否定すべきではない」と指摘。厚生労働省は時期を考慮して使うよう呼びかけている。

 キットは鼻の奥などから採取した粘液を試験紙にたらし、10~15分後の色の変化でA型(新型、香港型、ソ連型など)、B型のウイルスの有無がわかる。一般的にはキットでA陽性の時だけ、遺伝子検査(PCR検査)に回される。

 感染研によると、PCR検査で新型と確定した神戸市の患者43人のうち、20人(47%)は、キットでA陰性だった。大阪府の確定患者でも、23人中、7人(30%)がA陰性と誤判定。時期別に見ると、発症翌日は13%だが、発症当日と2日後は43%にのぼった。

 西神戸医療センター(神戸市)も独自に調査。確定患者29人中、7人(24%)が誤判定で、発症後24時間以内だと35%、24~48時間なら9%に減った。

 キットは20社以上が発売。どれも同様の特性がある。このため、発熱直後に新型を疑って医療機関に駆け込み、簡易検査が陰性でもあまり信頼できず、翌日に再検査するか、医師が症状などで判断することになる。

 厚労省新型インフルエンザ対策本部は「キットだけで判断は難しく、臨床医の判断に頼る所が大きい。迅速で確実な検出技術の開発が必要だ」としている。

(読売新聞、2009年5月24日)


新型インフルエンザは、いずれ数年後に季節性インフルエンザとなって誰でも罹患しうる病気です (日本感染

2009年05月22日 | 新型インフルエンザ

社団法人日本感染症学会緊急提言より引用

② 新型インフルエンザは、いずれ数年後に季節性インフルエンザとなって誰でも罹患しうる病気です

 今回のS-OIV(swine-origin influenza A H1N1)が出現・流行する以前のわが国では、来るべき新型インフルエンザでは高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)がいずれヒト-ヒト感染性を獲得して主役をなすという想定が支配的であったことや、数年前のSARSで被害が甚大であったことの影響から、どのようなものが出現しても新型インフルエンザは死亡率の高い感染症であり、可能な限り罹患を避けるべき疾患であると大多数の国民から思われてきました。しかし、過去のどの新型インフルエンザでも、出現して1~2年以内に25~50%、数年以内にはほぼ全ての国民が感染し、以後は通常の季節性インフルエンザになっていきます。現在流行している香港かぜもこのようにして季節性インフルエンザとなった歴史を持っており、今回のS-OIVもやがては新たなH1N1亜型のA型インフルエンザとして、10年から数十年間は流行を繰り返すと見込まれます。すなわち、今回の新型インフルエンザ(S-OIV)の罹患を避けることは難しいのです。例えば、1957年のアジアかぜ出現時、全国の保健所職員と家族を調査したところ、同年5月から7月の第1波で26%、9月から11月の第2波では30%が罹患したことが明らかにされています。アジアかぜの流行が始まってからわずか半年間に56%が罹患発病したのです。特に、小児では80~90%が罹患したことも分かっています。しかし、アジアかぜはその後通常の季節性インフルエンザとなり、1968年の香港かぜに代わるまで毎年流行しました。その香港かぜも最初は新型でしたが、今では季節性インフルエンザとなっています。

(以上、社団法人日本感染症学会緊急提言より引用)

****** 読売新聞、2009年5月21日

流行小規模でも油断禁物

…インフル対策、医師向けに緊急提言

 日本感染症学会は21日、医師や医療関係者向けに新型インフルエンザ対策の「緊急提言」を発表した。

 今後のまん延期に備え、各医療機関が準備を怠らないよう呼び掛けている。

 提言は8項目にまとめられ、「最初の流行が小規模に終わっても油断しない」「重症例は細菌性肺炎を併発しており、高齢者には肺炎球菌ワクチンの投与が有効」などと助言。このほか、「数年後に感染者は高齢者中心に移行する」「数年後にはほぼ全国民が感染し、季節性インフルエンザの一種となる」といった予測も盛り込んだ。 (読売新聞、2009年5月21日)

****** 毎日新聞、2009年5月22日

新型インフルエンザ:全医療機関で診察態勢必要

--感染症学会提言

 新型インフルエンザの発生を受けて日本感染症学会(理事長、岩本愛吉・東京大医科学研究所教授)は21日、国内の全医療機関が新型インフル患者の診察を行える態勢を取るよう求めた緊急提言を発表した。「まん延期には、通院患者からも新型インフルエンザの患者が多数出てくると予想され、診察を避けることはできない。すべての医療機関が対策を構築しないと、助かるべき多数の患者が助からない」と訴えている。

 提言では20世紀に起きた3度の新型インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)で、国内ではいずれも2回の流行があったと指摘。国内の死者はスペイン風邪(1918年発生)で48万人、アジア風邪(57年発生)、香港風邪(68年発生)で4万~7万人と明記した。【関東晋慈】 (毎日新聞、2009年5月22日)

**** m3.com医療維新、2009年5月21日

新型インフルエンザ 日本感染症学会が緊急提言

「全医療機関が対策を行うべき」「国のガイドランは水際撃退作戦を想定したもの」と指摘

 日本感染症学会は5月21日、「一般医療機関における新型インフルエンザへの対応について」と題する緊急提言をまとめた(提言はこちら)。

 提言ではまず新型インフルエンザの臨床的重症度について、季節性インフルエンザと同程度とされるものの、CDC(米疾病対策センター)の報告を引用し、「今回の新型インフルエンザは、現時点でも軽症であるとは言い切れない」としている。CDCの報告では、4月15日から5月17日までの間に、米国カリフォルニア州では5%以上が入院し、その5分の1(全体の1%)はICUでの治療が必要になったとしている(CDCのホームページはこちら)。

 ただし、新型インフルエンザを恐れる必要はなく、まん延期にはすべての医療機関が対応するよう求めた。新型インフルエンザの内外の流行状況を踏まえ、「N95マスクやゴ ーグルなどを使用する必要はなく、サージカルマスクと手洗いを原則した感染防止策で臨めば問題ない」とした。

 さらに、厚生労働省の新型インフルエンザ対策ガイドラインを問題視しているのも特徴だ。「ガイドラインは、高病原性鳥インフルエンザを想定した、かつ水際撃退作戦を想定 した行政機関向けのものであり、まん延期では一般医療機関における対応は当然異なってしかるべき」とした。医療機関が「検疫で行われているような防護服に代表される対策を目の当たりにして、われわれの病院では新型インフルエンザ対策は困難なので、対応しない」と受け止めることを懸念。また、発熱相談センターや発熱外来は、「水際対策としては有効だが、患者が多数発生すれば対応しきれない。流行の各段階に応じて対応を変える実際的な方策が必要」と指摘している。 (m3.com医療維新、2009年5月21日)

**** NHKニュース、2009年5月22日9時57分

政府 柔軟な対応へ

政府は新型インフルエンザ対策本部を開き、患者の発生状況に応じて地域を2つに分け、急速な患者数の増加が見られる地域では、症状が軽い人の自宅療養や一般の医療機関での診療を認めるなど柔軟な対応をとることになりました。

会議の冒頭、麻生総理大臣は「感染の状況は地域によって偏りがある。急激に感染者が増えた一部の地域では、医療機関の対応に困難が生じているとも聞いている。地方自治体が地域の実情に即した柔軟な対応をとれるようにすることが重要だ」と述べました。そして、会議では国内での感染の動向を踏まえた新たな対処方針を決めました。この中では、新型インフルエンザの患者の多くは、症状が軽いまま回復しているなど季節性のインフルエンザと類似する点が多い一方、糖尿病やぜんそくなどの慢性の疾患を抱えている人を中心に症状が重くなることがあると指摘しており、国民生活や経済への影響を最小限に抑えるため、地域の実情に応じた柔軟な対応が必要だとしています。そのうえで、▽情報収集や国民への迅速で的確な情報提供を行うとしているほか、▽患者が出ている地域の人たちに外出の自粛は要請しないものの人込みをなるべく避け、手洗いやうがい、込み合った場所でのマスクの着用などを呼びかけるとしています。さらに、▽コンサートなどの集会やスポーツ大会などについては、一律に自粛の要請はせず、主催者側に感染の広がりを考慮して開催の必要性を検討してもらうなどとしています。一方、舛添厚生労働大臣は、対処方針に基づく具体的な「運用指針」を決めました。それによりますと、「急速な患者数の増加が見られる地域」と「患者の発生が少ない地域」の2つに分け、大阪府や兵庫県のように、急速な増加が見られる地域では、症状が軽い人は自宅での療養を認めるとしています。また、患者の診療については、指定医療機関の「発熱外来」だけでなく、入り口や時間帯をわけるなど、ほかの患者に感染しないよう最大の注意を払ったうえで、一般の医療機関でも認めるとしています。さらに、学校や保育施設については、季節性のインフルエンザと同様、患者が多く出ているところでは、それぞれの施設の判断で臨時休業や学級閉鎖などの措置をとるとしています。一方、患者の発生が少ない地域では、感染拡大の防止に重点を置くためこれまでと同じように患者は入院させ、感染が疑われる人の診療も「発熱外来」で行うとしています。また、児童・生徒が感染した場合は市区町村の一部や全部、場合によってはその都道府県全体で学校を臨時休業するよう要請し、状況を見ながら1週間単位で対応を検討するとしています。このほか、空港などでの水際対策は、事前にインフルエンザの症状が出ている乗客がいるという通報があった場合は、状況に応じて機内検疫を行うものの、それ以外は健康状態の把握に重点を置いた検疫に切り替え、患者の周辺に座っていた人たちの停留措置も行わないとしています。 (NHKニュース、2009年5月22日9時57分)

**** 読売新聞、2009年5月22日14時11分

一律機内検疫は終了、休校措置も緩和

…政府が新方針

 政府は22日午前、首相官邸で新型インフルエンザ対策本部(本部長・麻生首相)の会合を開き、新たな「基本的対処方針」を正式に決めた。

 全国一律の対応から、感染拡大の度合いに応じて地域ごとに二つの分類で対応する方針に転換し、患者急増地域では一般病院での診療や学級閉鎖などクラス単位での対応を認めるなど従来の対策を緩和した。米本土などからの旅客便で一律に実施してきた機内検疫は終了する。

 新たな対処方針は、今後の対策の目標を、〈1〉国民生活や経済への影響を最小限に抑えつつ感染拡大を防止する〈2〉基礎疾患のある人などの感染・重篤化を防ぐ――の2点とし、詳細な対応策は厚生労働相が定めた「運用指針」に盛り込んだ。具体的には、患者が少数の地域では感染拡大防止に重点を置き、従来の対策を踏襲する。感染者は全員を感染症指定医療機関に入院させ、濃厚接触者にもタミフルなどを予防投与する。学校・保育施設などの休校要請は市区町村単位とする。

 これに対し、急激に患者が増えている地域では、重症者や基礎疾患を持つなど重症化の恐れのある患者の治療を優先する。十分な病床を確保するため、一般の医療機関でも診療などを認め、軽症者の自宅療養もできるとした。休校も効果が薄いとして、患者がいる学校・保育施設単位で設置者が判断するとし、学級閉鎖も認める。個別の自治体をどちらの地域に区分するかは、都道府県などが厚労省と協議し、判断する。

 水際対策は大幅に縮小する。メキシコ、米本土、カナダからの旅客便を対象に一律に行ってきた機内検疫は22日午前で終了し、原則として空港内検疫に切り替える。 (読売新聞、2009年5月22日14時11分)

**** 朝日新聞、2009年5月22日13時36分

新型インフルに地域区分、休校は各校判断 

政府が新指針

 政府は22日、新型インフルエンザ対策本部の会合を首相官邸で開き、国内での感染拡大を踏まえ、対処方針を改定した。症状が季節性インフルエンザと似ていることから対応を弾力化。発生地域を拡大状況に応じて二つに分け、患者の急増地域では学校単位で臨時休校できるようにする。一般病院での受診や軽症患者の自宅療養も認める。機内検疫は原則取りやめ、水際対策は縮小する。

 新しい対処方針によると、新型インフルエンザでは、糖尿病やぜんそくなど基礎疾患を持つ人を中心に、症状が重くなって死亡する例があることを指摘。今後、国民生活や経済への影響を抑えながら、特に基礎疾患を持つ人への感染防止に重点を置き、「地域の実情に応じて柔軟に対応する必要がある」と明記した。

 具体策は、厚生労働省の運用指針で定めた。発生地域を(1)患者発生が少なく、感染拡大防止に努めるべき地域(2)患者が急増し、重症化の防止に重点を置くべき地域――に区分し、(1)の地域はほぼ従来通りの方針で対応するが、(2)の地域は対応を大幅に緩和する。厚労省と相談のうえ、都道府県などがどちらの地域とするか判断する。

 (2)の地域で、学校・保育施設に患者が多数発生した場合は、通常の季節性インフルエンザと同様、県や市など設置者の判断で臨時休校・休業措置をとれるようにする。塩谷文部科学相は22日の閣議後の記者会見で、学級閉鎖も「実情に応じてありえる」と述べた。修学旅行については「自粛を求める状況ではない」とも語った。

 対策本部で麻生首相は「自治体が地域の実情に即した柔軟な対応をとれるようにすることが重要。ただ、今回の新型インフルエンザの特性から、対策の基本は感染拡大を防ぐこと、基礎疾患のある方々の重篤化を防ぐことであることは忘れてはならない」と述べた。

 舛添厚労相は22日の閣議後の記者会見で、「感染初期の段階と(患者が急増した)大阪、兵庫は違う。きめの細かい対応の違いを示した。現場からの情報が一番貴重で、それが判断基準になる」と述べた。

(朝日新聞、2009年5月22日13時36分)

**** 朝日新聞、2009年5月22日3時2分

新型インフル、57年以前生まれには免疫? 

CDC見解

 【ワシントン=勝田敏彦】新型の豚インフルエンザの感染者に若い人が多いのは、1957年より前に生まれた人の一部には免疫があるためらしい。そんな見方を、米疾病対策センター(CDC)インフルエンザ対策部門のジャーニガン副部長が20日、会見で明らかにした。

 同副部長によると、スペイン風邪の流行が始まった1918年以降、世界で流行していたのはH1N1型。アジア風邪の流行が始まった57年以降、H2N2型が流行するようになった。

 今回の新型ウイルスは、57年まで流行していたウイルスとはかなり異なるが、H1N1型。中高年の人の血清を調べたら、今回の新型に対しても何らかの防御反応性があることがわかったという。

 中高年の人に何らかの免疫があるとすれば、新型対応ワクチンが使用可能になった場合、若い人を中心に接種していく方法も考えられる。

 一方、18日付のCDC報告によると、カリフォルニア州で入院した30人のうち、19人に何らかの持病があった。慢性の肺や心臓の病気、糖尿病などが多かったが、肥満も4人いた。米紙ワシントン・ポストによると、CDCの担当者は肥満の人もワクチンの優先接種者の候補にすることを検討しているという。

(朝日新聞、2009年5月22日3時2分)


妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対しての新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応 Q&A

2009年05月21日 | 新型インフルエンザ

新型インフルエンザ:妊婦は合併症危険 「抗ウイルス薬を」

****** 共同通信、2009年5月19日

妊産婦のインフル対応公表 

日本産科婦人科学会

 日本産科婦人科学会は20日までに、妊産婦が新型インフルエンザに感染した場合の対応をQ&A方式でまとめ、厚生労働省のホームページで公表した。

 通常の季節性インフルエンザでは、妊婦が感染すると肺炎などを起こす可能性があり、重症化すると胎児にも影響があり得ることを紹介。新型についてはデータが不足しているものの、季節性と同様の影響が推定されるとしている。

 このため、感染した場合は医師と相談の上で、治療薬のタミフルやリレンザを服用することを推奨。2007年の米疾病対策センター(CDC)の指針によると、これらの薬には、妊婦や出生した赤ちゃんに対する副作用の報告がないと解説している。

 薬を服用しながらの授乳も問題はないが、赤ちゃんへの感染を避けるため、頻繁な手洗いやマスクの着用を勧めている。

http://www.mhlw.go.jp/

(共同通信、2009年5月19日)

****** 毎日新聞、2009年5月19日

新型インフルエンザ:「妊婦はタミフルを」 

産科医会が一転、服用推奨

 日本産婦人科医会は19日、会員の開業医らに対し、妊婦や授乳中の女性が新型インフルエンザに感染した場合、治療薬のタミフルやリレンザの使用を勧める通知を出した。季節性インフルエンザでは安全性が確立されていないとして慎重な使用を呼び掛けていたが、一歩踏み込んだ。

 米疾病対策センター(CDC)は新型に感染した妊婦が重症化する恐れがあると指摘。死亡例も報告されているとして、服用を推奨した。このため、医会も有益性が確認できる場合は治療薬の使用をためらうべきではないと判断した。【江口一】

(毎日新聞、2009年5月19日)

****** 日本産科婦人科学会、お知らせ

妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対しての
新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応
Q&A (一般の方対象)

Q1: 妊娠している人は一般の妊娠していない人に比べて新型インフルエンザに感染した場合、症状が重くなるのでしょうか?
A1: 妊娠した女性が季節性インフルエンザ(通常のインフルエンザ)に感染すると症状が重くなり肺炎などを引き起こすことがあります。 重症化するとお腹の中の赤ちゃんにも悪影響が出ることがあります。新型インフルエンザに関してはまだデータが不十分ですが季節性インフルエンザと同様であると推定されています。

Q2: 妊娠している婦人に38℃以上の発熱と鼻汁や鼻がつまった症状、のどの痛み、咳などの症状が出た場合、どのようにすればよいでしょうか?
A2: 発熱外来を開設している病院(地域の保健所に連絡することによりわかります)への受診を勧めます。

Q3: 妊娠した女性が新型インフルエンザ感染が確認された場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A3: 米国では妊娠している女性に対して抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の投与が勧められています。日本においても同様の処置を勧めています。医師と相談の上、抗インフルエンザ薬を使用するかどうか決めてください。

Q4: 妊娠した女性が新型インフルエンザ感染者と濃厚接触(ごく近くにいたり、閉ざされた部屋に同席した場合)した場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A4: 米国では抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の投与が勧められています。日本においても濃厚接触した妊婦に説明同意を得た上で、それらの予防投与が勧められています。

Q5: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)はお腹の中の赤ちゃんに大きな異常を引き起こすことはないのでしょうか?
A5: 2007年の米国疾病予防局ガイドラインには「抗インフルエンザ薬を投与された妊婦および出生した赤ちゃんに有害な副作用(有害事象)の報告はない」との記載があります。

Q6: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の予防投与(インフルエンザ発症前)と治療投与(インフルエンザ発症後)で投与量や投与期間に違いがあるのでしょうか?
A6: 米国疾病予防局の推奨(http://www.cdc.gov/h1n1flu/recommendations.htm)では以下のようになっていますので、日本でも同様な投与方法が推奨されています。
1.タミフルの場合
予防投与:75mg錠1日1錠(計75mg)、
治療のための投与:75mg錠1日2回(計150mg)5日間
なお、日本の2008年Drugs in Japanによれば、治療には上記量を5日間投与、予防には上記量を7日~10日間投与となっています。
2.リレンザの場合
予防投与:10mgを1日1回吸入(計10mg)、
治療のための投与:10mgを1日2回吸入(計20mg)
なお、日本の2008年Drugs in Japanによれば、治療には上記量を5日間吸入、予防には上記量を10日間吸入となっています。

Q7: 予防投与の場合、予防効果はどの程度持続するのでしょうか?
A7: タミフル、リレンザともに2008年Drugs in Japanによれば、これらを連続して服用している期間のみ予防効果ありとされています。

Q8: 予防投与した場合、健康保険は適応されるのでしょうか?
A8: 予防投与は原則として自己負担となりますが、自治体の判断で自己負担分が公費負担となる場合があります。

Q9: 抗ウィルス剤を服用しながら授乳することは可能でしょうか?
A9: 母乳自体による新型インフルエンザ感染の可能性は現在のところ知られていません。季節性インフルエンザでは母乳感染は極めてまれです。授乳期に抗ウィルス薬を使用する場合は、担当の医師と相談の上授乳を続けるかどうか決めてください。なお米国疾病予防局の推奨では抗ウィルス剤を服用しながら、赤ちゃんに授乳することは可能であるとされています。同時に赤ちゃんへの感染リスクを最小限にするため頻繁に手洗いしたりマスクをつけるなどの処置を必要とします。
 母児分離を行なうべきとの勧告は今のところなされていません。

平成21年5月19日

                   社団法人 日本産科婦人科学会

日本産科婦人科学会、お知らせ

****** 日本産婦人科医会、お知らせ

妊婦・授乳婦の新型インフルエンザに対する
タミフルとリレンザの使用について

         社団法人日本産婦人科医会
                  会 長 寺 尾 俊 彦

日本産婦人科医会支部長 殿
日本産婦人科医会会員 各位

 すでに、報道等でご存知の通り、兵庫県、大阪府域において新型インフルエンザの流行の兆しが見られており、妊産婦への感染事例も時間の問題であると思います。現時点では、厚労省のホームページに公表されている新型インフルエンザ対策ガイドラインに従って、冷静に行動していただきたいと思いますが、妊産婦に対しても同様な対応でお願いいたします。

 現在、本邦では抗インフルエンザウイルス薬としてタミフルとリレンザが2001 年2 月から保険適応になり、A 型B 型両方に、初期に効果があるとされています。

 これら薬剤の妊婦、産婦、授乳婦等への投与について、薬剤添付文書には、妊婦や、授乳婦に対する安全性が確立していないとの理由で、
(1) 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人に投与する場合には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
(2) 授乳婦に投与する場合には授乳を避けさせること。
とされています。
 しかし、実際に感染している妊婦や授乳婦を診る臨床の現場では、具体的な対策が必要になります。

 そこで、以下のような実際の対応をお願いいたします。

1. 妊婦や授乳婦が発熱症状で産婦人科を受診してきた時、鑑別診断として、腎盂炎や虫垂炎等のほかに、上気道症状を認めた場合は、インフルエンザの可能性を疑い、地域の保健所に設置されている発熱相談センターと相談したうえで、発熱外来を紹介して、新型インフルエンザに関する診断検査を依頼して下さい。

2. 発熱外来で、新型インフルエンザの診断が確定したら、妊婦や授乳婦に対して抗インフルエンザウイルス薬の処方を躊躇しないことです。

3. 妊婦は、インフルエンザに感染すると重篤化することがあるので、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合には、抗インフルエンザウイルス薬の使用をためらうべきではありません。

4. 授乳婦は、乳汁を介した新生児に対する副作用のエビデンスの報告はないので、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合には、抗インフルエンザウイルス薬の使用をためらうべきではありません。

5. 米国CDC(疾病対策センター)は抗インフルエンザウイルス薬の使用を妊婦や授乳婦に勧めています。

6. 従って、本邦においても妊婦や授乳婦の患者に説明同意を得た上で、タミフルまたはリレンザの投与をお勧めいたします。

参考資料:

妊婦への抗インフルエンザ薬投与に関してCDCからの報告

妊娠中の女性の新型インフルエンザ対策として、アメリカのCDC=疾病対策センターは、治療には抗ウイルス薬が有効だとしたうえで、感染の疑いがある人と接した場合にも抗ウイルス薬を予防的に服用することが必要だとする報告をまとめています。

アメリカのCDC=疾病対策センターの報告によると、「アメリカ国内で新型インフルエンザウイルスに感染したか、感染の疑いがある妊娠中の女性は今月10 日の時点で20 人に上り、3 人が入院した。このうち、喘息などを患っていた33 歳の女性は、抗ウイルス薬による治療を受けないでいたところ、容態が悪化し、赤ちゃんを出産したが、およそ2 週間後に女性は死亡した」とあり、このことから、CDCは、妊娠中の女性は、通常のインフルエンザと同様に新型のインフルエンザでも重症になるおそれがあり、喘息などの病気がある場合には、特にリスクが高いとしています。

CDC による抗ウイルス薬の勧め:
CDCは、妊娠中の女性に対する抗ウイルス薬 の効果や副作用について、情報は少ないが、新型のウイルスに感染したか、感染の疑いがある場合には、症状が出てから48 時間以内に抗ウイルス薬の投与を始め、5 日間続けるべきだとしています。さらに、感染の疑いがある人と接した場合にも、10 日間予防的に服用するべきだとしています。

日本産婦人科医会、お知らせ


新型インフルエンザ 国内対策切り替えに向けて検討を開始 厚生労働省

2009年05月20日 | 新型インフルエンザ

コメント(私見):

新型インフルエンザA(H1N1)の国内の感染確認者数は増え続けてます。

感染拡大が続く神戸市では、発熱外来がパンク状態となり、本日より一般の開業医でも治療を受け付けることになり、迅速診断キットでA型が確認されてもPCR検査は実施しないことになったそうです。

厚生労働省は、新型インフルエンザA(H1N1)の国内対策切り替えに向けて検討を始めており、近日中に感染症法上の扱いが季節性インフルエンザと同じ扱いとなる可能性もあるようです。

追記) 神戸市は新型インフルエンザの患者が急増しているので、独自の現実的対応として、新型インフルエンザと同じA型のウイルスが検出されてもPCR検査は実施しないと取り決めましたが、19時のNHKニュースによれば、迅速診断キットでインフルエンザA型が確認された患者については、できるだけ遺伝子検査を実施するように求める厚労省の方針が示されました。

**** NHKニュース、2009年5月20日19時15分

厚労省 遺伝子検査徹底求める

 神戸市や大阪府を中心に新型インフルエンザの感染が広がっていますが、厚生労働省は、感染が疑われるケースについては引き続きウイルスの遺伝子検査を徹底し、感染者の把握に最善を尽くすよう求めることにしています。

 厚生労働省新型インフルエンザ対策推進室の難波吉雄室長は、20日夕方の記者会見で「現在は感染の広がりや人数を把握すべき時期ととらえており、新型インフルエンザと同じA型のウイルスが検出された患者については、できるだけ遺伝子検査を行ってもらうのが国のスタンスだ」と述べ、引き続きウイルスの遺伝子検査を徹底するよう求めていく方針を示しました。そのうえで、難波室長は「感染症の指定病院ではない一般病院で感染の疑いがある患者が相次いだ場合など、検査態勢に課題があれば相談に応じたい」と述べ、国としても積極的に支援していく考えを示しました。

(NHKニュース、2009年5月20日19時15分)

****** 読売新聞、2009年5月20日

遺伝子検査の対象を限定、「まん延期」対応

…神戸市

 新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の感染拡大を受けて、神戸市は19日、感染が疑われる患者全員のウイルスの遺伝子検査を行うこれまでの方針を転換して、特定の医療機関だけで定点観測的に遺伝子検査を行うことを決め、近く国との協議に入る。

 同市では、新型インフルエンザの感染者が69人に達しており、「状況はすでに『まん延期』に近い」として、20日から、発熱外来以外の一般医療機関でも診療を始める。今後、感染が疑われる患者が増えた場合、全員のウイルスを検査することは、物理的にも不可能と判断した。新型インフルエンザは弱毒性とされ、症状も通常の季節性インフルエンザと類似していることも考慮した。

 同市は今後、特定の医療機関を受診した患者についてだけウイルスの遺伝子検査を行い、感染を確認する。全体の感染者数は、定点観測の結果から推定する。

 一方、大阪府は19日夜、「簡易検査だけでは感染しているかどうか確認できず、疫学調査が行えない」として感染が疑われる患者全員のウイルスの遺伝子検査を継続することを明らかにした。

 厚生労働省は、神戸市の方針転換は事実確認中としながらも、「手間を考えると、発熱者すべてでウイルスの遺伝子検査を行うのは現実的ではない。ただ、一律な検査をやめると、どれだけ感染が拡大しているのか把握できなくなる恐れがある」と話している。

(読売新聞、2009年5月20日)

**** FNNニュース、2009年5月20日11時54分

新型インフルエンザ 新たに神戸市の1,400の開業医でも治療を受け付け

 新型インフルエンザの感染拡大が続く神戸市では、発熱外来がパンク状態になっていて、20日から新たにおよそ1,400の開業医でも治療を受け付けることになった。

 感染拡大が続く神戸市では、新たに21人の感染が確認され、これで神戸市の感染確認者数は86人にのぼった。

 新たな感染確認の中には、25歳の医療従事者も含まれているが、神戸市では、20日から開業医も治療を行う、まん延期に沿った対応が始まっている。

 20日から新たに新型インフルエンザの治療にかかわるのは、神戸市内のおよそ1,400の開業医。

 これまで感染が疑われる患者は、発熱外来のある9つの病院での診療だったが、感染拡大でパンク状態になったことから、神戸市は19日、医師会に協力を要請していた。

 発熱患者は、発熱相談センターや病院にまず電話して、症状が軽いと判断されれば開業医で、一方、重症患者はこれまで通り、専門の9つの病院で治療を受けることになり、センターにはひっきりなしに電話がかかっている。

 また治療を行う開業医も、一般の患者への院内感染を防ぐために、簡易の発熱外来をつくって入り口を分けるなど、ギリギリの対応を取っている。

 開業医は「今は立ち上がらないといけないと思っています。必ず電話はしてもらわないといけない。さまざまな病気を持った高齢者も来られておるんで、そこに発熱で感染の疑いがある人が来られたら、これは大変なことになる」と語った。

 また神戸市では、これまで行っていたPCR検査を終了することにしていて、新型インフルエンザがまん延していることを前提にした現実的な対応が進められている。

(FNNニュース、2009年5月20日11時54分)

**** 毎日新聞、東京朝刊、2009年5月20日

新型インフルエンザ:「機内検疫、即時中止を」 

専門家、治療方針転換迫る

 新型インフルエンザの国内対策切り替えに向け、舛添要一厚生労働相は19日、感染症の専門家4人から意見聴取した。感染症法上の扱いを季節性インフルエンザと同じにすることや、機内検疫の即時中止など、根本的な方針転換を迫る声が相次いだ。

 4人は厚労相のアドバイザーの立場。新型インフルエンザ患者の治療にあたっている神戸大大学院の岩田健太郎教授は「軽症であれば、インフルエンザは自然に治る病気。重症度を無視して一律の医療サービスを提供するのは理にかなっていない」と、問題点を指摘。その上で「自然に治る病気に入れ込み、命にかかわる心筋梗塞(こうそく)などの治療がおざなりになるのは本末転倒だ」と訴えた。

 自治医大病院の森澤雄司・感染制御部長は「一日も早く感染症法上の『新型インフルエンザ』の類型指定から外して季節性と同じ扱いにし、行動計画を新しく作っていくことが必要」と指摘した。

 森兼啓太・国立感染症研究所主任研究官は、縮小される機内検疫について「国内で広がっている中では意味がない。医療現場に医師を戻すべきだ」と、機内検疫の即時中止を訴えた。【奥山智己】

(毎日新聞、東京朝刊、2009年5月20日)

**** FNNニュース、2009年5月20日0時19分

全国的にA型インフルエンザの感染例増加 

新型が潜在的に混じっていると指摘する声も

 新型インフルエンザの感染者増加を受け、対策の国内シフトが進んでいる。こうした中、全国的にA型インフルエンザの感染例が増加しており、新型が潜在的に混じっていることを指摘する声もある。

 舛添厚労相は「当然、国内にもうウイルスがまん延しているというのを想定していいですね」と述べた。

 感染拡大への懸念。こうした中、気になる現象が現れている。

 それは、季節性インフルエンザの流行。

 東京・江戸川区にある「みやのこどもクリニック」の宮野孝一院長は「5月は(インフルエンザ患者が)ほとんどいなかったはずです、去年は。先週が12~13人ですね、1週間に。新規のインフルエンザ」と話した。

 季節性インフルエンザの流行期間は、例年12月から4月ごろまでだが、2009年はなぜか、流行が長引いているという。

 宮野院長は「4月の上旬、中旬ごろから、徐々にまた増えてきているというのが現状で、ほとんどがA型というのが特徴です。非常に不気味な感じはします」と語った。

 新型インフルエンザと同じA型の流行。

 国立感染症研究所が全国5,000カ所の定点医療機関を対象に行っている集計でも、4月下旬の発生件数は、過去5年間の平均値を上回っている。

 これは、いったい何を意味するのか。

 東京医科大学の松本哲哉主任教授は「検査なしでは新型なのか、いわゆる季節性のものなのか、判別は難しいと。精密検査されてませんから、そういうことは確定はできませんけど、そういう人が中に紛れ込んでたとしても、それはもう全然おかしくない」と指摘した。

 当初、海外渡航歴のある患者に対して行われていた遺伝子レベルでの検査。

 一方、初めての国内感染は、渡航歴のない高校生を診察した開業医が、検体を兵庫・神戸市に提出したことで判明した。

 開業医が季節性インフルエンザと思って検体を提出しなければ、発見が遅れた可能性もある。

 松本主任教授は「新型インフルエンザが都内に現時点で持ち込まれている可能性は、かなり高いと思います。気づかないまま、やっぱり同じようなことが東京でも繰り返されるかもしれないし。今の時点でA型がもし出たとしたら、それはやはり積極的に疑って、検査をやられる方がいいと思いますよね」と語った。

 水面下でまん延しているかもしれない新型インフルエンザ。

 冷静かつ十分な注意が必要となる。

(FNNニュース、2009年5月20日0時19分)

**** NHKニュース、2009年5月20日12時23分

国内の感染確認 236人に

 国内で新型インフルエンザの感染が確認された人の数は、20日、新たに滋賀県で1人が確認され、大阪府と兵庫県、滋賀県であわせて236人になりました。

 新型インフルエンザの感染が確認された人は、20日、新たに滋賀県大津市で23歳の男性の感染が確認されたほか、兵庫県では、神戸市内の病院で事務作業を担当する職員など、あわせて21人の感染が新たに確認されました。また、大阪府内では、大阪市の中学校に通う1年生の男子生徒とその母親など、あわせて21人の感染が確認されました。これで、今月16日からこれまでに感染が確認された人は、兵庫県で132人、大阪府で99人、滋賀県で1人で、今月上旬に成田空港の検疫で確認された高校生など4人をあわせると、国内の感染者は236人になりました。このうち、兵庫県では、神戸市を中心に姫路市や北部の豊岡市、それに阪神地域などのあわせて16の市と町で、大阪府では、北部の高槻市や豊中市、大阪市、それに東部の八尾市など10の市と町で、滋賀県では、大津市で感染が確認されています。また、年代別では、幼児から60代の人まで幅広い年代に感染が広がっていますが、中でも高校生を中心に10代の感染者が圧倒的に多くなっています。

(NHKニュース、2009年5月20日12時23分)

**** NHKニュース、2009年5月20日13時9分

世界の感染確認 1万人余りに

 新型インフルエンザに感染した人は、20日、台湾で初めて1人の感染が確認されるなど世界全体で1万人余りとなり、死亡した人もメキシコで4人、アメリカで1人増えて、あわせて83人となっています。

 台湾の衛生当局は、20日午前、記者会見し、外国籍の52歳の男性1人が新型インフルエンザに感染していることが確認されたと発表しました。これにより、世界全体で新型インフルエンザに感染した人は日本を含む43の国と地域で、あわせて1万359人に上っています。また、感染によって死亡した人は19日、メキシコで、4人増えたほか、アメリカでも、ミズーリ州で男性1人の死亡が確認され、▽メキシコで74人▽アメリカで7人▽カナダとコスタリカでそれぞれ1人の、あわせて83人となっています。感染した人の数を国や地域ごとにみますと、▽アメリカで5469人▽メキシコで3734人、▽カナダで496人、▽日本で236人、▽イギリスで107人、▽スペインで103人、▽パナマで59人、▽フランスで16人、▽ドイツで14人、▽コロンビアで12人、▽コスタリカとチリで10人、▽イタリアとニュージーランドで9人、▽ブラジルで8人、▽イスラエルで7人、▽エルサルバドルで6人▽ベルギーで5人、▽韓国、中国で4人、▽香港、オランダ、スウェーデン、キューバ、グアテマラ、ペルーで3人、▽タイ、マレーシア、ノルウェー、フィンランド、ポーランド、トルコで2人、▽台湾、インド、オーストラリア、ポルトガル、スイス、オーストリア、アイルランド、デンマーク、ギリシャ、アルゼンチン、エクアドルでそれぞれ1人となっています。

(NHKニュース、2009年5月20日6時6分)

**** m3.com医療維新、2009年5月19日

「症例定義」の早急な見直しが必要

「感染症ではスピーディーな対応が重要」と強調:

5月19日感染研会見

橋本佳子(m3.com編集長)

 「症例定義を早急に見直すことが必要であり、現在、厚生労働省に提案している」。

 国立感染症研究所感染症情報センター長の岡部信彦氏は、5月19日午後3時から開かれた会見(メディア情報交換会)で、現状を踏まえた柔軟かつ迅速な対応の必要性を強調した。

 4月29日に定められた新型インフルエンザの「症例定義」(5月9日に追加の事務連絡)では、疑似症患者の条件の一つに、「まん延国への渡航歴」を含めている。岡部氏は厚労省への提案の内容は明らかにしなかったものの、「渡航歴を外すことについてはほぼ合意が得られている」としたほか、(1)神戸や大阪で行われている積極的疫学調査で得られたデータ(患者の感染ルートや臨床データなど)を加味する、(2)検査体制の見直し、の2点を見直しのポイントとして挙げた。

 現在、PCR法などで新型インフルエンザの確定診断を行っている。この「検査体制の見直し」とは、まん延地域などでは全例PCR法での検査を行わないという考えだ。迅速診断キットだけでは、A型陽性であっても、ソ連型、香港型、そして新型インフルエンザA(H1N1)のいずれに該当するかは区別できないが、「まん延期になれば、臨床的には区別する必要はない」(岡部氏)。

 国の新型インフルエンザ対策行動計画では、第1 段階(海外発生期)、第2段階(国内発生早期)、第3段階(感染拡大期/まん延期/回復期)、第4段階(小康期)に分かれている。現在の第2段階での対策には批判が出ており、見直しの余地があるものの、積極的疫学調査を行ったり、感染疑いのある患者を発熱外来に集約するなどの対策は、感染拡大を遅らせると同時に、「新型」のインフルエンザに関する知見を蓄積する時期に当たる。岡部氏のコメントは、まん延期では第2段階までの知見を基に対応することを意味するものでもある。

 ただし、岡部氏は、「季節性インフルエンザでも、1シーズンの死亡者は1万人以上に上る。また新型インフルエンザの場合、免疫がないために感染者数は多数になるため、死亡率は同じであっても、死亡者数の絶対数は多くなる」と釘を刺し、「季節性インフルエンザに近い病原性の新型インフルエンザ」であっても注意が必要だとした。

 さらに、「今の行政の対応は、アクションを切り替えるのに時間がかかっている。慎重さが求められるものの、感染症対策では早い判断が求められる」と岡部氏は述べ、日々刻々と変わる感染動向を踏まえた柔軟かつ迅速な対応の必要性を強調した。

 【記者団からの質問と岡部氏の回答】

質問:今日開催された舛添要一・厚生労働大臣とアドバイザリーボードとの話し合いでは、新型インフルエンザを感染症法上の2類感染症の指定から早く外すべきだという意見が出た。指定から外す基準は何か。
回答:結局、(感染拡大期→まん延期→回復期と3つに分かれている)第3段階のうち感染拡大期が一番決めにくい部分だと思う。まん延期に入ったら隔離入院などをしても意味がなく、隔離しないのであれば2類感染症の指定から外した方がいいというのが一つ。また、患者一人ひとりを追跡するのであれば、全員検査、登録などをすることになるが、何千人、何万人の患者について追跡するよりは、そのエネルギーを効率よく他に使った方がいい。したがって、制度として2類感染症でない方がいいだろう。また、今回のように感染拡大期のスピードが速ければ、早く外した方がいいだろう。
 ただし、2類感染症の指定から外す基準はない。したがって、一つは感染が広がっている、つまり患者の接触歴が追えない状態、そのほか感染が広がって隔離用ベッドが満床になった状態、保健所の職員が手一杯になった状態などが、見極めのポイントになる。ただ、ベッドが満床になった時点で外したのでは遅く、そのすぐ手前でやる必要がある。なかなかスピードのあるアクションが取れないのも一つの問題だと思う。
 また例えば、大阪で2類感染症の指定から外す段階になっても、他の地域で一例もいない地域で指定を外すことは監視の目が緩むことになり、気づいたら「インフルエンザだらけ」になるという問題があり、対応は自治体間で差が出てくることになる。しがたって、法律で一律にするのはどうか。

質問:積極的疫学調査を大阪などで今、実施する意味について。
回答:一つは現状を把握して、対策を立てる意味がある。もう一つは、データの蓄積などをせずに、「患者が増加したから、積極的疫学調査をやめる」となったら、ニューイングランド・ジャーナル・オブメディシン(NEJM)、ランセット(Lancet)などを引用して対応することになる。日本にこれだけの感染者がいるのに、情報を発しなかったら、「ただ大騒ぎして、やめました」となる。対策とは別に、科学的な検証が必要であり、その意味での積極的疫学的調査は必要。

(m3.com医療維新、2009年5月19日)


新型インフルエンザ: 政府の対策をより柔軟な内容に見直すことも検討 (舛添厚労相)

2009年05月19日 | 新型インフルエンザ

コメント(私見):

関西地域で新型インフルエンザ感染が多く確認されていますが、これは迅速診断キットでA型陽性の検体に対して積極的にPCR検査を実施し始めたからです。今までは迅速診断キットでA型陽性であっても、メキシコ、アメリカ、カナダなどへの渡航歴がなければ、通常の季節性インフルエンザとして扱われてました。今回は、たまたま神戸市内の開業の先生が迅速診断キットでA型陽性となった(海外渡航歴のない患者さんの)検体をPCR検査に提出したことを契機にして、新型インフルエンザが同地域ですでに蔓延していた事実が判明しました。

迅速診断キットでA型陽性の患者さんは、日本全国いたるところに大勢いらっしゃいますから、それらの検体をかたっぱしからPCR検査に提出すれば、もしかしたら、新型インフルエンザが蔓延している地域が関西地域以外でも判明するかもしれません。今後、新型インフルエンザが全国的に蔓延するような事態となった場合には、ウイルスの毒性や患者数などを勘案して、診療体制の変更を検討せざるを得ないかもしれません。

**** NHKニュース、2009年5月18日19時21分

厚労相“政府対策 見直しも”

 舛添厚生労働大臣は18日夕方、記者会見し、新型インフルエンザについて、政府の専門家諮問委員会から季節性のものと変わらないという報告があったことを受けて、政府の対策をより柔軟な内容に見直すことも検討したいという考えを示したうえで、国民に対し冷静に対応するよう呼びかけました。

 この中で、舛添厚生労働大臣は「政府の対策本部で、専門家諮問委員会から『今回の新型インフルエンザは感染力や病原性などからみて、季節性のものと変わらない』という報告があった。ただ、免疫がないため感染が拡大しやすく、糖尿病などの慢性疾患を持っている人は症状が重くなりやすいので、油断なく対策を進めていくことが重要だ」と述べました。そのうえで、舛添大臣は「政府として1週間の臨時休校の期間に専門家諮問委員会の評価を踏まえ対策の切り替えを検討していきたい。新型インフルエンザに即した新しい対処方針を作ることも選択肢の1つだ」と述べ、政府の対策をより柔軟な内容に見直すことも検討したいという考えを示しました。さらに、舛添大臣は「人的資源を検疫態勢に集中することから国内体制にシフトすることが必要だ。今週中に具体策を決めたい」と述べ、これまで重点を置いてきた水際対策を段階的に縮小する考えを示しました。そして、舛添大臣は「国民の生命と健康を守るため、あらゆる方策を尽くす。国民の皆さんは警戒を怠ることなく、冷静に対応してほしい」と呼びかけました。

(NHKニュース、2009年5月18日19時21分)

**** NHKニュース、2009年5月19日6時34分

検疫態勢 段階的縮小を検討

 新型インフルエンザの国内での感染が相次いでいることを受けて厚生労働省は、感染者の入国を防ぐために強化していた検疫態勢を段階的に縮小し、通常の態勢に戻すことを検討しています。

 厚生労働省は、WHO=世界保健機関が警戒レベルをフェーズ4に引き上げた先月28日以降、新型インフルエンザに感染した人の入国を防ぐために通常の2倍以上の態勢で検疫を強化してきました。具体的には、メキシコ・アメリカ本土・カナダからの到着便を対象に「機内検疫」を行う成田・関西・中部の3つの空港の検疫所に防衛省や国立病院機構などからあわせておよそ200人の応援の職員を派遣してきました。しかし、兵庫県や大阪府で海外への最近の渡航歴がない人の感染が相次いだことを受けて、厚生労働省は、国内での感染拡大の防止に重点を移す必要があるとして、検疫態勢を段階的に縮小し、通常の態勢に戻すことを検討しています。厚生労働省は、今週中にも関係省庁と協議して検疫での具体的な対応を決めることにしています。

(NHKニュース、2009年5月19日6時34分)

**** NHKニュース、2009年5月19日0時25分

感染者 国内で163人確認

 国内で確認された新型インフルエンザの感染者は、兵庫県姫路市に住む高校生1人の感染が新たに確認されこれまでに163人になりました。10代の感染者が多い一方で、5歳の幼児や50代や60代の人もいて、幅広い年代に感染が広がっています。

 都道府県別に見ますと、兵庫県が93人で神戸市の県立高校の生徒やその家族をはじめ、姫路市に住む高校生1人の感染が新たに確認され、神戸市以外の高校の生徒や豊岡市の会社員などにも感染が広がっています。また、大阪府では、茨木市にある私立高校の生徒や教員、大阪市や茨木市の高校の生徒など、感染者はあわせて66人となっています。このほか今月上旬に成田空港の検疫で見つかった4人を加えると、国内で確認された新型インフルエンザの感染者はあわせて163人になりました。年代別に見ますと、高校生を中心に10代の感染者が多い一方で、5歳の幼児や50代や60代の人もいて、幅広い年代に感染が広がっています。

(NHKニュース、2009年5月19日0時25分)

**** m3.com医療維新、2009年5月18日

国は水際対策の誤りを認めるべき

-厚労省検疫官・木村盛世氏に聞く

国が取るべき対策はシンプル、

医療機関は通常対応でも問題なし

木村盛世氏 筑波大学医学群卒業。米国ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院疫学部修士課程修了(MPH[;公衆衛生学修士号)。内科医として勤務後、米国CDC多施設研究プロジェクトコーディネーター、財団法人結核予防会、厚労省大臣官房統計情報部を経て、厚労省検疫官。専門は感染症疫学。

聞き手・橋本佳子(m3.com編集長)

 新型インフルエンザは、国内での2次感染例が相次いだことで、「水際対策」は奏功しなかったことが露呈した。国の対応は、「国内発生早期」に移ったが、この対策にも問題点があるという。現時点で行政および医療機関が取るべき対策について厚生労働省検疫官(東京空港検疫所支所・検疫医療専門職)で、医師の木村盛世氏に聞いた(2009年5月17日にインタビュー。

――国内で2次感染例が相次いだことをどう見ていますか。

 今回はたまたま開業医の先生が、迅速診断キットでA型陽性の患者のPCR検査を依頼して見付かったわけで、それ以外にもたくさん感染者はいると思います。実際、インフルエンザの定点観測では、今回2次感染が見られた中で、患者数がやや多かった地域もあると聞いています。こうした定点観測の動向把握に力を入れるべきだったのに、これまで国は「検疫オンリー」でやっていました。私は繰り返し言っていますが、インフルエンザの場合、水際対策は無理なのです。

 米国でも検査を始めたから、あれだけ患者数が増えているわけです。日本も同様に、検査を実施すれば、もっと新型インフルエンザの患者は見付かるでしょう。

――今までは、渡航歴がある、あるいは渡航歴のある人と濃厚接触した人などに限って、PCR検査を実施していた。それ以外のインフルエンザ様の患者でも、PCR検査を実施していれば、新型インフルエンザであった可能性があるわけですね。では現在、季節性のインフルエンザの流行もある中、今後はどんな体制にすべきなのでしょうか。国の新型インフルエンザ対策の第2段階、「国内発生早期」では、「感染の疑いのある例についてはすべて検査をする」となっています。しかし、迅速診断キットの在庫は十分とは言えません。衛生研究所も対応可能なのでしょうか。

 本来ならすべての疑い患者に検査すべきでしょうが、それは無駄ではないでしょうか。疫学的見地から言えば、本当は新しい疾患が出た場合には、サーベイランスを徹底したいところです。しかし、今の政府のパニック状態を考えるとサーベイランスだけに労力が費やされ実際の医療現場に手が回らないという状況を生むのではないでしょうか。今後はサーベイランスにお金と人をかけると、「感染者を発見したのはいいけれど、そのあとどうしたらよいか分からない」という状況にもなりかねません。

 感染症対策を考える上で基本になるのが結核対策ですが、結核の場合は発見率と治癒率を指標として見ます。両方を向上させることが一番いいのは確かですが、多くの国においては、「ヒトとカネ」がありませんから、実際には両方はできません。優先すべきは明らかで、治癒率の向上です。

 日本は結核患者も多い「感染症の発展途上国」。ですから、サーベイランスに命をかけても仕方がないと思います。物事の優先順位を決めることこそが、政策の役割でしょう。結核とインフルエンザを同じに考えることはできませんが、すべてできないのなら、何らかの対策を「捨てる勇気」が必要です。今回では、そもそも機能していないサーベイランスを徹底するのではなく医療機関対策を第一義とすべきです。

――では治療のあり方ですが、「国内発生早期」では、「発熱や咳などのインフルエンザ様症状が見られた場合には、まず発熱相談センターに相談の上、発熱外来を受診する」となっています。

 発熱外来で対応できるのでしょうか。それだけの予算が付いているわけでもありません。

 今、国がやることは、「新型インフルエンザ対策行動計画は間違っている」、少なくても今回の新型インフルエンザA(H1N1)には適用すべきではなかったと認めることではないでしょうか。また、H5N1型であっても、インフルエンザの「封じ込め」については難しいのではないでしょうか。

 咳エチケットを徹底して、発熱や咳がひどい時には学校や会社を休む、具合が悪かったら自宅で静養する、それでもどうしても具合が悪かったら、「ここの病院に行ってください」、こうしたことを国は繰り返し国民に訴えればいいだけです。今やるべき対策は非常にシンプルです。 

 また発熱外来も、3次救急、あるいは高次の医療を手がける地域の中核医療機関の場合、抗がん剤で治療中だったり、白血病など、免疫力が低下した患者さんが多いですから、こうした医療機関に設置を求めるのはやめた方がいいと思います。「発熱外来」は、地域と地元の医師会が話し合い、どこに設置すべきかを決めてほしいと思います。

――季節性インフルエンザと同じ対応では、問題があるのでしょうか。

 本来は同じで構わないと思います。ただ、社会的な問題になっている現状を踏まえると、「発熱外来」の設置は、国民の安心の意味でも必要なのだと思います。ですから、国は「何かあったら、発熱相談センター、発熱外来」へと、柔らかい口調で言えばいいだけのことだと思います。 

――発熱外来を持たない医療機関が対応しても問題はないと。

 問題はないと思います。これまで季節性のインフルエンザの診療を行ってきたわけです。しかも、今のH1N1型の場合、SARSのように重篤な肺炎を来す患者が続出するわけではありません。

 本当に、今回は弱毒型のH1N1型での模擬訓練だったと思います。検疫には意味がなかった、では国内対策として何をすればいいのか、ワクチンが完成した場合にどのように流通させ、誰に優先的に接種するのか、副反応の問題はいかに周知徹底するのか、発熱を来した場合にはどう対応すれば、いいのかなどを考えるいい機会にはなったのではないでしょうか。サーベイランスの機能も十分でないのでこれに関しても第二波までに十分議論すべき問題ですが。

(m3.com医療維新、2009年5月18日)

**** m3.com医療維新、2009年5月18日

疫学的リンクが切れたら通常の診療体制に

「地域別の対応が基本」を強調

:5月17日感染研会見

橋本佳子(m3.com編集長)

 国立感染症研究所感染症情報センター長の岡部信彦氏は、5月17日午後6時から開かれた会見(メディア情報交換会)で、5月16日に政府の新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員会がまとめた「基本的対策方針」について説明した。16日に神戸・大阪で国内での2次感染が確認されたことから、国の対策が「第2段階(国内発生早期)」に移行したのを踏まえ、「ゼロには抑えることはできないが、当面として感染拡大をさらに防ぐことが必要」と強調。

 その上で、「医療機関の対応としては、軽症・重症を問わず、すべて検査を行い、感染が強く疑われた場合には措置入院とする、となっている。ただし、どんな患者を措置入院の患者の対象とするかは地域によって異なり、全国一律の実施はできない。バラバラと関係ない地域で発生している場合、隔離入院は意味がない。一方、初めてある地域で発生した場合には、軽症か重症かを問わず、隔離入院の対象になるだろう。さらに、隔離入院のためのベッド数は限られており、現実には入院できない場合もある」と述べた。

 さらに「第3段階(まん延期)」の医療体制については、「すべての医療機関が、新型インフルエンザの治療に対応することになる。ただし、多くの患者が一般の医療機関に殺到した場合、それ以外の一般の患者が感染する可能性が高まる。地域の医療システムや人口などを勘案して、例えば医師会の休日診療センターが外来患者、軽症者を扱い、病院が重症者を診るなどの体制を考えてほしい」と説明、地域の実情に応じて体制を取る必要性を強調した。つまり、第3段階では患者数などを勘案して、新型インフルエンザの患者を重点的に診る拠点は作る必要があるものの、基本的には季節性インフルエンザの診療体制を取ることになる。

 この第3段階への移行は、「疫学的リンク」が切れた場合、つまり感染源の特定が不可能になり、地域で感染が拡大した場合に行う。この移行も、全国一律ではなく、都道府県単位が基本だ。「北海道から沖縄まですべて同一に、第3段階にスイッチするわけではない。したがって、地域の方にも、その地域の情報は自治体に聞いてほしい、ということを徹底する必要がある」(岡部氏)。

 また抗インフルエンザウイルス薬については、第2段階では濃厚接触者などに対して予防的に投与するものの、第3段階では治療薬としての使用を優先するため、予防投薬は基本的には行わないとした。

 【記者団からの質問と岡部氏の回答】

◆診療体制について

質問:第3段階の医療体制は、季節性インフルエンザの場合と基本的には同じだと考えていいのか。
回答:基本的には同じ。ただ患者が多数出た場合に、患者がバラバラに各病院を受診したのでは、スタッフが外来に取られてしまい、病棟の入院患者を診ることができなくなる。だから専門外来を設けるほか、例えば休日診療所などで患者をまとめて診る体制にし、地域の医師が交代で診療することなども考えられる。しかし、これは一つのアイデアであって、地域によっては体制は異なってくるだろう。

質問:第3段階への移行は、どんなタイミングで行うのか。
回答:地域によって異なる。一つは、疫学的リンクが切れた場合。また物理的な問題があり、軽症・重症患者すべてを措置入院させた場合、地域によって対応可能なベッド数が異なる。したがって、数で第3段階に移行する基準を「措置入院患者が20人以上、あるいは100人以上になった場合」などと一律に区切ることはできず、自治体の判断になる。

質問:神戸で最初に生徒を診察した医師に、厚労省は休診するように言ったそうだが。
回答:私は聞いていない。ただ、こうした場合の考え方についてはお話できる。休診する必要は全くないと思う。SARSの時は初期の段階では、休んだ方がいいだろうとなっていた。それは病気の状況も分からず、致死率(約10%)は高いと考えられたため。しかし、今回の場合は、その時の接触の程度にもよるが、通常の季節性インフルエンザとほぼ同じなのだから、休診するメリットは少ない。
 仮に患者を診察した先生から問い合わせがあれば、「休診する必要はない。ただし、まだ感染早期の段階なので、心配であれば予防投与を」と言う可能性はある。ただ、もう少し感染が拡大した場合には、「咳や発熱のある患者を診察する場合には、マスクなどで予防をする。マスクを付け忘れ、具合が悪くなったら早めに薬の服用を」とアドバイスする(予防投与は不要)。

◆診断・治療について

質問:第2段階では「軽症・重症を問わず、すべて検査を行い感染が強く疑われた例はすべて措置入院」とあるが、「検査」を行う対象は何か。「強く疑われた場合」の意味は。
回答:幸い、わが国では迅速診断キットが流通しているので、検査をしやすい状況にある。しかし、多数の検査が必要な事態、感染が拡大した段階では、もう検査はやらなくてもよく、ある程度、症状で判断することになる。つまり、すべての人にキットで検査をやる必要はない。これは季節性インフルエンザの場合と変わらない。
 しかし、今、感染がまだ拡大していない時期であれば、症状、それから疫学的リンク。今までは海外渡航暦だったが、今は「神戸で、大阪で」というのがキーワードになる。したがって、「すべての患者に検査をし」というのが、何らかの疑いがあったらPCR検査をするということ。しかし、衛生研究所や体制のキャパシティーの問題もあるのも事実。

質問:厚労省は今は渡航歴等を前提とする「症例定義」は変えないとしている。今の時点で、神戸、大阪以外で新型インフルエンザの発生をどう捉えるかが課題。季節性と同じ扱いとして考え、クラスターを捕まえ、アウトブレークサーベイランスで捉えていく。どこかの時点で症例定義を変えることはないのか。
回答:今のサーベイランスのシステムで神戸の発生は検知できず、そこから漏れた形になる。別の枠組み、臨床医あるいは衛生研究所の判断でPCR法を行い、陽性になった。今後、ほかの地域でも、今回のようなことはあり得ること。
 では今の症例定義を変えるかということになるが、今の段階で全国一律に、「発熱、呼吸障害を伴う患者で、すべて新型インフルエンザを疑うか」となるが、そこまでは行かないだろう。対象が広がりすぎることになり、実際上こうした患者にすべて検査を行うことは無理だろう。ただ、症例定義の変更は国とのやり取りになるが、このままというわけにはいかないだろう。
 問診の実際上としては、「まん延した国だけではく、まん延した地域(神戸、大阪)」に行ったかどうかを聞き、疑うことになるだろう。

質問:第3期になると、タミフルは予防投与をやめるなど、診療体制は大きく変わることになる。
回答:これは従来から決めていたこと。新型インフルエンザが季節性に近く、抗インフルエンザウイルス薬で治ると分かった場合、治療のために確保しておくことが必要。また第2段階では、濃厚接触者が特定でき、予防投与に意味があるから行うわけであり、(第3段階で)予防投薬を行うのであれば、感染が終息するまで投与することになる。
 なお、国が備蓄している抗インフルエンザウイルス薬は、指定感染医療機関など特定の施設に配布することになる。

◆流行状況について

質問:感染者が高校生ばかりなのはなぜか。その家族は発生していないのか。
回答:家族については確認中で何とも言えない。「高校生でなぜ多いのか」だが、個々人の免疫力などの問題ではなく、社会的に活動しており、集団生活もしている。感染のチャンスの問題ではないか、と思うが、あくまで推測であり、科学的なデータはない。

質問:子供などでは、感染者に対するいじめも起きかねない。どういう段階になった患者では、ウイルスを排出しないと言えるのか。
回答:ウイルス分離が確実な方法だが、数日あるいは数週間かかる。またPCR法ではすぐに結果が分かるが、これはウイルスではなく、遺伝子を見る検査である。幸い、成田で隔離された患者はPCR法で陰性になったからいいが、PCR法で陽性であること、その患者に感染力があることとは別の問題。
 これは私の個人的な意見で全体のコンセンサスが得られているわけではないが、季節性インフルエンザでの経験から言えば、熱を中心とした症状が出て2日くらい経ってくれば、ほとんどの場合、感染力がなくなってくる。ある程度、症状が消失していれば、常識的に考えてうつらないと言える。例えば、エボラ出血熱など致死率が高い疾患では厳密に感染力の有無を見極める必要があるが、今回の新型インフルエンザのような場合は臨床症状を優先して考えていいのではないか。

(m3.com医療維新、2009年5月18日)

**** 読売新聞、2009年5月19日3時9分

機内検疫を週内にも終了

…政府、感染拡大防止に重点

 政府は新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の国内感染の広がりを受け、これまで重視してきた水際対策から感染拡大防止に重点を移す方針だ。

 旅客便の機内検疫を週内にも終え、医療体制充実などを図ることにしている。同時に、弱毒性と見られることを踏まえ、高齢者や乳幼児、基礎疾患のある患者以外に自宅療養を認めることなどを盛り込んだ、より柔軟な対応策を新たにまとめる考えだ。

 舛添厚生労働相は18日、厚労省で緊急に記者会見し、「検疫に人的資源を集中することから、国内対策にシフトすることは必要だ」と述べた。現在はメキシコ、米本土、カナダからの旅客便で実施している機内検疫を週内にもやめる方針だ。

 厚労相はまた、「政府の専門家諮問委員会から『感染力、病原性等の性質から見て、(新型は)季節性インフルエンザと変わらないという評価が可能』と報告を受けた」と述べた。その上で、「新たなH1N1(新型インフルエンザ)を前提とした新しい対処方針に切り替えた方がいいのではないか」と語った。

 政府の行動計画は、国内発生早期の場合、感染者はすべて指定医療機関に入院すると定めている。新たな対応策には、こうしたケースでの自宅療養も認めるなど柔軟な対応を盛り込む予定で、今後1週間程度をめどにまとめる。

 政府のこうした対応は、地方自治体や企業が強く要請したためだ。政府はすでに強毒性の鳥インフルエンザを想定した行動計画を弾力的に運用し、「外出の自粛要請」「企業への業務縮小要請」などは見送っている。それでも、18日に厚労相を訪ねた大阪府の橋下徹知事が「国が方針を出してくれると自治体はやりやすい」と訴えるなど、政府により柔軟で具体的な対応を示すよう求める声が強い。

 麻生首相は18日、首相官邸で記者団に、「病気をお持ちの方は重篤化する確率は否定されていない。今の状況をきちんと見極めた上で柔軟に、適切に対応していく」と述べた。

(読売新聞、2009年5月19日3時9分)

**** 読売新聞、2009年5月19日3時8分

新型インフル国内感染者数163人に、休校4千校超す

 厚生労働省などによると、国内で確認された新型インフルエンザの感染者数は、大阪、兵庫両府県で増え続け、19日午前1時現在、成田空港の検疫で判明した4人を合わせ計163人となった。

 日本の感染者数は米国、メキシコ、カナダに次ぐ規模にふくれあがったが大半が軽症で回復に向かっている人も多いという。

 大阪府などによると、新たな感染者には、同府八尾市立南山本小の児童4人が含まれている。うち3人は、17日に感染がわかった6年女児と同じクラスで、同府が感染経路などを調べている。

 18日午前に感染が確認された神戸市の5歳男児は、兵庫県芦屋市の私立幼稚園に通っており、16日に発症。4~8日に男児の家族がグアム島旅行をし、家族が一時、体調を崩したという。

 大阪府教委は18日、感染拡大の推移を把握するため、府内の政令市を除く41市町村の全公立小・中学校と府立高校の児童・生徒、教職員の健康調査に乗り出した。中・高校の臨時休校期間が終わる24日まで毎日、各学校で発熱などの症状が出た人数を集約する。

 文部科学省によると、18日夕現在、大阪、兵庫両府県内の小中高校、幼稚園、大学などの休校は、要請中の私立を合わせ、計4043校に上った。

(読売新聞、2009年5月19日3時8分)

**** 読売新聞・社説、2009年5月19日

インフル拡大 過剰に恐れる必要はない

 新型インフルエンザの国内感染者が初めて確認されてわずか3日のうちに、大阪府と兵庫県で100人を超えた。

 先にウイルスが上陸した欧州での感染拡大を上回る勢いだ。すでに1000人規模で国内感染が広がっているのではないかと見る専門家もいる。

 世界保健機関(WHO)は日本の状況を踏まえ、国際的な警戒レベルを最高度の「フェーズ6」に引き上げる可能性がある。

 だが、あまり過剰に恐れることはやめよう。

 これほど短期間に多くの感染者を把握できたことは、日本の診断能力が高いことの反映でもある。そして、感染者の大多数は軽症にとどまっている。

 仮に、感染者の数が桁(けた)違いに増えていけば、肺炎を併発するなどして亡くなる人が出ることも、残念ながら避けられまい。

 しかし、従来の季節性インフルエンザも日本だけで毎年約1000万人が感染し、合併症などで約1万人が死亡している。これに対して、日本の社会は冷静に対処してきた。

 今のところ、「新型」の危険性は「季節性」とあまり変わらないというのが、専門家の一致した見解である。

 危険度の高いウイルスに変異する可能性に警戒を怠ってはならないが、現時点で脅威を過大視する必要はない。社会生活や経済機能への影響は、最小限にとどめるべきだろう。

 厚生労働省は、大阪府と兵庫県に中学、高校を休校とするよう要請した。感染者が高校生を中心に見つかっていることや、学校自体、感染が広がりやすい場所であることを考えれば必要な措置だ。

 ただ、休校対象に小学校や幼稚園・保育所を含めるかどうかは、自治体によって対応が分かれた。親の仕事が制約され、経済活動に影響することをどう評価するか判断が難しかったのだろう。

 どこまでの措置が妥当かについては、感染状況を見極めながら、柔軟に決めることが大切だ。

 大阪、兵庫では、感染者の急増によって医療体制がパンク寸前になっている。同様の状況が他の地域でも起こりうる。

 新型インフルエンザの感染が急拡大した地域では、全員を医療機関で治療することは難しい。軽症の人は自宅療養を原則とするというように、早い段階から治療ルールの転換を図る必要があろう。

 今後は国民一人ひとりの協力が不可欠となる。

(読売新聞・社説、2009年5月19日)


新型インフルエンザ 国内すでに1千人規模か

2009年05月17日 | 新型インフルエンザ

昨日、新型インフルエンザA(H1N1)の国内での人から人への感染が初めて確認されましたが、その後、続々と国内感染事例が報道されています。「日本国内の感染者数は、すでに1000人レベルを超えた可能性がある」と専門家(田代真人・国立感染症研究所・ウイルス研究センター長)が述べています。これから新型インフルエンザの国内感染者数が、千人→1万人→十万人→百万人と拡大していく過程で、現在の厳戒態勢を継続するのが次第に困難となってゆくと思われます。

新型インフルエンザ 国内発生を初めて確認

**** 読売新聞、2009年5月17日21時47分

新型インフル感染、国内すでに1千人規模か

…感染研センター長

 【ジュネーブ=金子亨、高田真之】国立感染症研究所の田代真人インフルエンザウイルス研究センター長は17日、滞在先のジュネーブで記者団に対し、日本国内で新型インフルエンザの感染が確認されたことについて、「(感染者数は)すでに1000人レベルを超えた可能性がある」と述べた。

 田代氏は、新型インフルエンザの警戒レベル引き上げの是非を世界保健機関(WHO)事務局長に提言する緊急委員会の委員。感染は北米地域で広く確認されており、レベルを現行の「フェーズ5」から世界的大流行(パンデミック)を意味する「6」に引き上げるには、北米以外で感染が継続していることが要件になる。

 田代氏は「(今後の日本の状況が)フェーズ6に引き上げる判断材料になる可能性があり、WHOは注視している」と指摘した。

(読売新聞、2009年5月17日21時47分)

**** 毎日新聞、2009年5月17日21時44分

新型インフル:「日本も地域社会へ拡大」

WHO電話会議で

 【ジュネーブ澤田克己】日本での新型インフルエンザ感染拡大を受けて、世界保健機関(WHO)は17日、日本の専門家などを交えた電話会議を開いて状況を検討した。会議に参加したWHO関係者は「日本では既に(ウイルスが地域社会に)出ていってしまっている可能性が高いのではないか」という見方を示した。

 WHOが「地域社会での感染拡大」を認定すれば、米州以外で初めてとなる。「世界の2地域以上で地域社会での感染拡大」が確認されると、新型インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)に備える警戒度を現在の「フェーズ5」から最高レベルである「6」へ引き上げる条件がそろうことになる。

 ただ、ケイジ・フクダ事務局長補代理ら幹部は「病気の重さとフェーズは無関係」と繰り返しており、警戒度引き上げに伴って新たな対策が取られるという状況にはない。インフルエンザ対策を担当するWHOの進藤奈邦子医務官は「5と6は単純に地理的な広がりだけの違い。WHO内部では、もうパンデミックが起きているという認識で行動している」と話している。

 警戒度引き上げを巡ってはこれまで、欧州諸国での感染拡大が引き金になると見られていた。特に、英国とメキシコでの感染拡大が注目されていたが、スペインは感染者のほとんどがメキシコ帰りで、英国もメキシコ旅行をした生徒が在籍する学校での感染拡大が多い。WHOは「両国とも感染源を特定できない地域社会レベルの流行とは言えない」(フクダ事務局長補代理)としてきた。

 ただ、日本の場合、大阪と神戸での感染拡大は今のところ海外渡航歴を持つ人との関連が見つかっておらず、英国、スペインとは状況が違いそうだ。WHO勤務経験のある日本人医師は「日本は欧州より人口密度が高く、インフルエンザが流行しやすい」と話しており、WHOはこうした点を重視して日本での感染拡大に警戒感を強めている模様だ。

(毎日新聞、2009年5月17日21時44分)

**** NHKニュース、2009年5月17日19時42分

専門家“週明け以降注意を”

大阪府や兵庫県で新型インフルエンザの感染者が相次いで報告されていることについて、新型インフルエンザ対策に詳しい久留米大学の加地正郎名誉教授は「今は関西だけだが、首都圏など、関西との間で人の行き来が激しい地域にも、今後感染が広がるおそれがあり、注意が必要だ。特に、この週末関西に行っていた人が、感染して症状が出ないまま東京などほかの地域に戻ると、週明けのあす以降、その地域で感染を広げることにもつながりかねない。高熱やせきなどインフルエンザのような症状が出た人は、学校や会社を休んで発熱相談センターに連絡するなど、適切な対応を取ることが大切だ。症状が軽いからといって会社や学校に行ったりすると、ウイルスを排出して感染を広げるおそれがあるし、薬を飲んで熱が下がっていてもウイルスを排出することがあるので、注意してほしい」と話しています。

(NHKニュース、2009年5月17日19時42分)

**** 朝日新聞、2009年5月18日1時37分

新型インフル感染者急増 国内患者、計96人に

 新型の豚インフルエンザの感染者は、兵庫県に続いて大阪府でも相次いで確認されるなど17~18日未明に新たに84人増え、厚生労働省や自治体によると、18日未明までで累計96人(成田空港の検疫で見つかった4人を含む)にのぼった。高校生が9割を占め、感染者が確認された学校は16日の2校から10校以上に拡大した。症状は多くが軽く、快方に向かっているという。大阪府の橋下徹知事は18日未明、「厚労省と協議した結果、府内全域の中学、高校が1週間の休校となる予定」と発表した。期間は18日から1週間。

 日本の感染者数は米国、メキシコ、カナダなどに次ぎ、急激に増えている。世界保健機関(WHO)が、警戒レベルを現在の「フェーズ5」から、世界的大流行(パンデミック)であることを示す「フェーズ6」に引き上げるかどうかの判断をめぐり、日本への注目が高まっている。

 16日に確認された兵庫県立神戸高校(神戸市灘区)と同兵庫高校(同長田区)のほかに、新たに確認されたのは私立関西大倉高校・中学(大阪府茨木市)と関西大学(同吹田市)、兵庫県立高砂高校(兵庫県高砂市)、同八鹿(ようか)高校(同養父(やぶ)市)、同豊岡高校(同豊岡市)、田山高校(同朝来市)、神戸市立工業高専(神戸市西区)、私立神戸村野工業高校(同長田区)、私立六甲高校(同灘区)など。関西大倉高校は、感染が確認された生徒のほかにも、インフルエンザのような症状を訴えている生徒が百数十人いるという。

 感染者は大阪府43人、兵庫県53人。高校生や大学生だけでなく、家族や教員にも感染者が出ている。大阪府八尾市で小学生では初めて6年生の女子が確認された。周囲には、これまでに感染が確認された人が通う高校の関係者はいないとされ、別の感染経路が考えられる。

 厚労省と関係自治体は、感染者の周囲の「濃厚接触者」に関する調査を進めている。濃厚接触者には自宅待機を要請し、健康状態や渡航歴を確認している。

 感染者が神戸市以外でも出たことについて、厚労省の担当者は会見で「(大阪と神戸は)疫学的なリンク(関係性)があるかも知れないし、独立した事象かも知れない。疫学調査の結論調査を見て判断すべきだ」と話し、政府の新型インフルの国内対策を「第2段階」から「第3段階(感染拡大期)」に移すには時期尚早との認識を示した。

 新型インフルは毒性は低いが、感染力は強いとされる。今後、兵庫県や大阪府で患者が増え、関連の病院の病床が不足する可能性がある。厚労省の担当者は、医療態勢については国と地元自治体が協議し、地域ごとに弾力的に対応する方針を明らかにした。

 また、現在は都道府県の検査で新型インフル陽性となった場合、国立感染症研究所で最終確認しているが、厚労省は神戸市、兵庫県、大阪府、大阪市の検査結果について信頼性が確かめられたとして、同研究所での確認を不要とした。

(朝日新聞、2009年5月18日1時37分)

**** 読売新聞、2009年5月18日2時5分

新型インフル国内感染数96人に

…成田検疫4人を含め

 神戸市の兵庫県立高校2校の生徒8人に新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)への感染が確認されたのに続き、18日未明までの厚労省などの発表で、新たに同県や大阪府の高校生や教諭ら84人の感染が確認された。

 海外渡航歴のない高校生が多く、感染者のいる高校では発熱などを訴える生徒も多数いる。高校を中心とした集団感染を食い止めるため、神戸市や大阪府などは大規模な休校措置を取り、休校数は1400校を超えた。「国内感染」はこれで92人となり、成田空港での検疫で判明した4人も含めると、国内の感染者数は計96人となった。

 18日午前1時現在で感染が確認されているのは、大阪府では、関西大倉中高(茨木市)の生徒36人と講師、生徒の家族など。兵庫県では、六甲高(神戸市)の生徒9人、県立神戸高(同)の生徒11人と保護者、県立兵庫高(同)の生徒12人、県立高砂高(高砂市)の生徒3人、県立八鹿(ようか)高【養父(やぶ)市】の生徒1人と教諭、県内の高校生11人など。関西大倉高では、併設の中学も含め、約190人がインフルエンザの症状を訴えたため、大阪府などが調査を進めている。

 さらに、大阪府八尾市の小学6年女児(11)のほか、同府吹田市の大学生らの感染も確認され、広範囲に二次感染が進んでいる可能性が出てきた。

 厚労省と兵庫県などによると、同県内の高校で感染が確認された生徒はバレーボール部員が多く含まれていたが、ほかに文化系などの部活動の生徒もいた。厚労省によると、自治体側は16日に感染が確認された神戸、兵庫高校の生徒8人の「濃厚接触者」として161人をリストアップし、自宅待機要請や健康状態の確認などを進めている。

 大阪府は17日、茨木市など12市町に小中高校・幼稚園などを23日まで臨時休校するよう求め、府内の休校数は計676校に達した。府は全小中高・幼稚園に、児童・生徒にインフルエンザの症状があれば出席停止とするよう要請。茨木、豊中、吹田市の保育所、高齢者介護の通所施設、映画館などにも休業を求めた。

 兵庫県でも、県立高や公立小中などの休校数は743校に上っている。

(読売新聞、2009年5月18日2時5分)

**** 朝日新聞、2009年5月18日5時1分

新型インフル拡大 

「ドクターは戦場にいるような状態」

 「ドクターは戦場にいるような状態だ。能力オーバーになりつつある」

 神戸市保健福祉局の桜井誠一局長は17日午前の記者会見で、新型インフルエンザの感染者の診療にあたっている市立医療センター中央市民病院の現状について語った。

 神戸高校で初の感染者が出た16日以降、電話相談を経ずに発熱外来を直接訪れる市民が急増。ウイルスが病室外に出ないよう工夫された病床が36床あるが、感染した患者らで、すでに「ほぼいっぱい」。別の病棟を空けて検査結果待ちの患者を入れ始めた。

 大阪府北部の発熱外来には17日、発熱相談センターの紹介で17人が訪れ、直接来たのは21人。それぞれ前日の約3倍という。17日朝、市消防本部が病院前に待合用のテントを二つ張って対応した。自家用車で来た人には、車の中で待ってもらった。

 病院職員は「これ以上増えると救急医を発熱外来に回さなければならない。新型は季節性と症状も治療も変わらない。分けないで対応したいのだが……」と話す。

 一方、発熱相談センターも相談の電話が急増している。

 兵庫県と県内の政令、中核市の各発熱相談窓口に16日に寄せられた相談は、前日の6倍以上にあたる計約900件に達した。神戸市の相談センターは16日分は588件。その後もこれを上回る勢いで増え、電話回線を3本から7本に増やした。

 大阪府でも16日、15カ所への相談センターの相談件数が、前日の125件から8倍以上の1039件に跳ね上がった。その6割にあたる651件は本庁の発熱相談センターに集中。前日の65件から10倍増となった。専用電話は鳴りっ放しの状態だ。

 大阪市の発熱相談センターも市内で感染者が出てから相談件数が激増した。中川正・同市保健所長は嘆く。「発熱相談の電話でてんてこ舞い。疫学的な調査に人がさけない。感染者のつながりがどうやねんということはまだ」

(朝日新聞、2009年5月18日5時1分)


新型インフルエンザ 国内発生を初めて確認

2009年05月16日 | 新型インフルエンザ

コメント(私見):

本日、神戸市在住の海外渡航歴のない3人の高校生が、新型インフルエンザA(H1N1)に感染していたことが確認されました。この高校では、5月に入ってからインフルエンザが流行し始めて、多くの生徒が発熱で学校を休んでいたそうです。現在、発熱などの体調不良を訴える生徒が、この3人以外にも17人いるそうです。

新型インフルエンザに感染しても3分の1は発熱しないそうですし、潜伏期間のうちは発熱しませんから、空港などの検疫でウイルスの国内侵入を完全にくい止めることは不可能で、新型インフルエンザウイルスはすでに国内に持ち込まれて、どんどん広がっているはずだと多くの専門家が警告してました。

今年は、今の季節でもインフルエンザの患者さんがけっこう多くいらっしゃいます。今日までは、国内には新型インフルエンザウイルスは存在しない筈という仮定のもとに、インフルエンザの迅速診断キットでA型陽性であっても、海外渡航歴がなければ「通常の季節性インフルエンザ」として扱ってきました。しかし、これからはそういう患者さんの検体の多くが詳細な遺伝子検査にまわされることになり、新型インフルエンザと診断される症例が爆発的に増えていくことも予想されます。

**** 共同通信、2009年5月16日21時34分

拡大か、同じ高校の2生徒確認  新型インフル国内感染3人に

 厚生労働省は16日、神戸市の2人が国立感染症研究所の確定検査の結果、新型インフルエンザ感染が確認されたと発表した。兵庫県立神戸高校(神戸市灘区)の生徒で、初の国内感染事例となった高校3年の男子生徒(17)と同じ学校。「人から人」の感染が広がっている恐れが高まった。

 大阪府も16日、同府茨木市内の高校2年の女子生徒=同府豊中市=がリアルタイム詳細(PCR)検査で新型陽性となったと発表。国立感染症研究所で確定検査する。

 神戸市や兵庫県でも新型の疑いがあるとして市や県が検査を進めている生徒が相次いだ。

 一方、国内での感染例が出たことを受け、政府の行動計画は16日、第1段階(海外発生期)から第2段階(国内発生早期)に移行した。

 厚労省や神戸市によると、新たに感染が確認されたのは神戸高校の2年男子(16)と2年女子(16)。男子生徒は15日に熱があり学校を早退、夕方には体温が39・7度になった。16日未明、簡易検査でA型陽性となった。女子生徒は12日夜、38度の発熱があり、13日に簡易検査でA型陽性が出た。

 神戸市によると、神戸高校と複数の種目で交流試合をしている市内の別の学校の生徒5人が、簡易検査でA型陽性となった。市は詳細検査する。

(共同通信、2009年5月16日21時34分)

**** 時事通信、2009年5月16日18時16分

「既に感染拡大の可能性」=検疫体制、縮小も検討-政府専門家委・新型インフル

 新型インフルエンザに関する政府専門家諮問委員会の尾身茂委員長(自治医科大教授)は16日、政府の対策本部幹事会終了後に会見し、「感染しても軽微な例が多く、国内で既に感染がじわじわ広がっている可能性は否定できない」との見方を示した。その上で、検疫体制の縮小を検討する時期との考えを明らかにした。

 尾身委員長は、今回の新型インフルエンザの特性について「感染力が強い半面、比較的症状が軽い。高齢者よりも、基礎疾患のある感染者が重篤化しやすい」と分析。神戸市の感染例が海外渡航経験のない患者だったことなどから「既に地域での感染が始まっている」と述べた。

 その上で、現時点は感染拡大防止に重点を置くべきだとする一方、感染が拡大してしまったときには、軽症者よりも、基礎疾患のある感染者の重症化防止に重点を移すべきだと指摘した。

(時事通信、2009年5月16日18時16分)

**** 東京新聞、2009年5月16日夕刊

新型インフル 国内発生 政府行動計画 格上げ

 厚生労働省は十六日、新型インフルエンザ感染が疑われていた神戸市在住の県立高校三年の男子生徒(17)について、国立感染症研究所の確定検査で感染を確認したと発表した。検疫でなく、ウイルスの国内侵入による感染が初めて確認された。また、同じ高校の男女二人の生徒についても同市環境保健研究所で詳細(PCR)検査したところ、二人とも新型に陽性反応があり感染が濃厚となった。感染研で確定検査する。三人とも海外渡航歴がなく、人から人への感染が広がっている疑いが強まった。 

 舛添要一厚生労働相は同日午後、緊急会見を開き、「今回のインフルエンザは仮に感染しても早めに治療を受けることで多くの方が回復しているが、油断なく対策を講じていくことが必要。正しい情報に基づきどうか冷静に対応していただきたい」と訴えた。

 新型の患者の国内発生を受け、国の行動計画は第二段階「国内発生早期」に進み、これまでの水際対策から感染防止対策に重点を切り替える。国内初の感染確認となった大阪の高校生らのケースで、厚労省は入国前にウイルスの国内侵入を食い止めたと判断、「『国内発生』には当たらない」としていた。

 神戸市は国の行動計画に基づき、感染の可能性がある濃厚接触者をリストアップ、感染拡大防止のために追跡する積極的疫学調査を開始。同市や兵庫県は同日朝、それぞれ対策本部を設置。市は市内の一部の地域で七日間の市立学校の休校や人が集まるイベントの中止、市民への外出自粛要請などを決めた。

 厚労省や神戸市によると、高三の男子生徒はバレーボール部に所属。周囲でインフルエンザがはやっており、一人目が五月八日に部活動を休んだ。同日に他校と試合し、九日に別の二人が部活動を欠席。十日に神戸市外で試合を行い、別の二人が体調不良を訴えた。感染が確認された男子生徒は十二日に登校後、三七・四度の発熱などの症状が出て、市内の医院を受診した。

 また、高校二年の女子生徒(16)は十二日に三八度の熱を出し、この男子生徒と同じ医院を受診。サッカー部に所属する高校二年の男子生徒(16)は十五日に三九度の発熱で市内の別の医院を受診。いずれも簡易検査でA型が陽性となった。

 神戸市によると、三人のほかに、同じ高校で十七人が体調が悪いと訴えており、市が健康状態を確認中。これらの生徒はいずれも市が休校を決めた灘区や東灘区などでつくる学区に住んでいる。

(東京新聞、2009年5月16日夕刊)

**** 東京新聞、2009年5月16日夕刊

週末急転 街に動揺も 新型インフル感染 『神戸まつり』中止

 「新型は既に広がっているのか」-。神戸市東部の公立高校生が新型インフルエンザに感染していることが確認された十六日、生徒が通う学校は教職員らが慌ただしく出入りし、自宅待機となった生徒らは「まさか」と驚きと不安を口にした。十五日開幕した「神戸まつり」も一部の区まつりやメーン行事が中止になるなど市民らに衝撃と動揺が広がった。東京都なども推移を見守っている。 

 神戸まつりの区まつりのうち中央区など三区は中止に。中央区の「ふれあい中央カーニバル」の会場となる三宮・東遊園地では午前九時前、中止を知らせる張り紙が掲示された。

 出店者への連絡に追われた神戸フリーマーケット協会の堂園光啓さん(56)は「信じられない」と絶句。屋台の撤収も始まり、露天商の黒田慈行さん(21)は「二十万円の仕入れが無駄になった」と肩を落とした。

 十七日のおまつりパレードなども中止となり、市民提案型イベントに参加予定だった男性(59)は「準備をしていたのに残念」と話していた。

◆『手打ったが…』校長沈痛

 新型インフルエンザに感染した生徒が通う神戸市東部の公立高校では、校長が報道陣の取材に「打つべき手は打ってきたが…」と、沈痛な面持ちで答えた。

 校長によると、五月に入り生徒の欠席が増え、十三日から健康観察を始めた。同日からの三日間で計十二人が季節性のインフルエンザと診断され、十五日には発熱で数人が早退したという。五月に海外渡航した生徒はいないというが、家族の渡航までは把握しきれていない。この日、週末の部活動を取りやめ、生徒の自宅待機を決定。生徒約千人に伝える作業に追われた。同校には報道陣が集まる中、教職員らが次々に出勤。自宅待機を知らずに登校する生徒もいた。

 一年の女子生徒(15)宅には十六日午前六時四十分ごろ、自宅待機の電話連絡があった。「欠席が増えていたがみんな一般のインフルエンザだと思っていた。まさか自分の高校で新型感染の疑いなんて」と驚いていた。

◆『渡航歴なし』検査後回し 神戸市 生徒の検体3日放置

 新型インフルエンザに感染した神戸市内の高校三年男子生徒の検体は、診察した医師が十二日に提出していたが、実際に詳細(PCR)検査が行われたのは三日後の十五日だった。神戸市医師会は、対応の遅れを指摘している。

 同市によると、生徒を診察した医師は、生徒に海外渡航歴がなかったことから、季節性インフルエンザのソ連型か香港型か-の検査を要請したという。市は「発熱外来の検査を優先するのでいいか」と医師に確認した上で、検査を後回しにしたとしている。

 市医師会は十二日、新型インフルエンザ対策会議で、複数の学校でA型の季節性インフルエンザが流行しているとの報告を注視。「おかしいと思えば検体を提出し検査を」と医師らに促していた。市医師会は「発熱外来の受診者の検査やノロウイルスの検査もあったのでやむを得ない面はあったが、結果的にタイムラグができてしまった」と対応に課題を残したとしている。

(東京新聞、2009年5月16日夕刊)

****** 共同通信、2009年5月15日

封じ込めはできない 第2波に備えた態勢を 「インタビュー」

 世界で感染が拡大している新型インフルエンザは国内流入が時間の問題とみられている。羽田空港の現役検疫官で、著書「厚生労働省崩壊」で日本の感染症対策の問題点を指摘した医師木村盛世(きむら・もりよ)さんに、国や医療機関の対応について聞いた。

-ウイルスの水際阻止が強調されている。

 「過去のインフルエンザで、発症者や濃厚接触者を隔離して封じ込めに成功した例はない。今回も最長7日の潜伏期間があり、海外で感染、発症しない段階で大勢が検疫をすり抜けている可能性が高い。これだけ世界各国に広がって、日本だけ免れられるわけがない」

-検疫に効果は期待できないのか。

 「検疫の意義は国内発生するまでの時間稼ぎ。世界保健機関(WHO)も感染拡大を抑える機能はないとの見解を示している。秋に予想される第2波に備える時期なのに、強化するべき医療現場から医師を引きはがし、検疫の応援に送り込んでいるのが現状だ。防護服を着た検疫官が走り回る姿がテレビに映ればアピールにはなるのだろうが、現場は混乱し始めている」

-具体的にはどんな混乱が生じているのか。

 「多くの医療関係者から、インフルエンザの簡易検査キットが不足していると聞いた。医師数や設備が不十分な医療機関では、感染の可能性がある患者の診療を断っているところもある。予算措置をとり、感染疑いのある人が受診する発熱外来の整備を急ぐ必要がある。国が支援しなければ自助努力だけでは難しい」

-患者は医療機関を頼るしかないが。

 「一般への啓発活動も必要だ。毒性は従来の季節性と同程度である点を理解してもらい過剰反応が起きないようにする。大勢が不安に陥り、感染の可能性がまったくない人まで押し寄せれば、医療機関がパンクし、必要な人が受診できないケースが出てくる」

   ×   ×

 木村盛世氏(きむら・もりよ) 65年生まれ、米ジョンズ・ホプキンス大公衆衛生大学院疫学部修士課程修了。02年に厚労省入省、統計情報部などを経て羽田空港検疫官。

(共同通信、2009年5月15日)

**** 共同通信、2009年5月14日20時0分

新型インフル3分の1が発熱せず 米医師が報告、早期発見困難に

 メキシコ市の病院で新型インフルエンザの感染者を調べた米国の医師が「患者のうち約3分の1に発熱がなかった」との報告をまとめた。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)が13日、報じた。

 発熱はインフルエンザの感染を見分ける重要な指標とされる。報告が事実なら、感染の早期発見と拡大防止が、これまで考えられていた以上に困難になる可能性がありそうだ。

 同医師はメキシコ市の2つの病院で5月上旬、4日間にわたって検診に当たった。報告によると、重症者の多くは高熱を出したが、症状が軽い患者の半数ほどは発熱がなかった。せきや倦怠(けんたい)感は、ほぼすべての患者が訴えた。

 また、患者の約12%が激しい下痢を起こしたという。同医師は、患者の便に新型インフルエンザウイルスが含まれているかどうか調べるようメキシコ側に促したと説明。「ウイルスが便を介して伝染すれば、特に発展途上国での感染拡大の抑止は難しくなるだろう」と話した。

(共同通信、2009年5月14日20時0分)


新型インフルエンザ:妊婦は合併症危険 「抗ウイルス薬を」

2009年05月15日 | 新型インフルエンザ

米疾病対策センター(CDC)の専門家の見解:

新型インフルエンザの症例分析から、妊娠中の女性が感染すれば、肺炎などの合併症を引き起こす可能性が高い。妊婦がインフルエンザの症状を示した場合、速やかにタミフルなど抗ウイルス薬を処方することが重要である。

日本産科婦人科学会も、新型インフルエンザではタミフルなどの抗インフルエンザ薬服用を推奨する旨の見解をホームページ上に公表しています。

**** NHKニュース、2009年5月15日19時33分

“妊娠中も抗ウイルス薬を”

 妊娠中の女性の新型インフルエンザ対策として、アメリカのCDC=疾病対策センターは、治療には抗ウイルス薬が有効だとしたうえで、感染の疑いがある人と接した場合にも抗ウイルス薬を予防的に服用することが必要だする報告をまとめました。

 アメリカのCDC=疾病対策センターの報告によりますと、アメリカ国内で新型インフルエンザウイルスに感染したか、感染の疑いがある妊娠中の女性は今月10日の時点で20人に上り、3人が入院しました。このうち、ぜんそくなどを患っていた33歳の女性は、抗ウイルス薬による治療を受けないでいたところ、容態が悪化し、赤ちゃんを出産しましたが、およそ2週間後に女性は死亡したということです。

 CDCは、妊娠中の女性は、通常のインフルエンザと同様に新型のインフルエンザでも重症になるおそれがあり、ぜんそくなどの病気がある場合には、特にリスクが高いとしています。

 CDCは、妊娠中の女性に対する抗ウイルス薬の効果や副作用について、情報は少ないが、新型のウイルスに感染したか、感染の疑いがある場合には、症状が出てから48時間以内に抗ウイルス薬の投与を始め、5日間続けるべきだとしています。さらに、感染の疑いがある人と接した場合にも、10日間予防的に服用するべきだとしています。

 これについて、日本産科婦人科学会の周産期委員会の副委員長で、北里大学医学部の海野信也教授は「妊娠中は免疫の機能が低下するなどの変化があるため、新型に限らず、インフルエンザに感染すると重症になりやすく、注意が必要だ。いちばん大切なのは感染しないようにすることで、ふだんのインフルエンザ対策と同じように予防に努めてほしい。抗ウイルス薬については、赤ちゃんへの影響よりも、インフルエンザの症状が重くなることのほうが問題なので、薬を処方されたら心配せずに飲んでほしい」と話しています。

(NHKニュース、2009年5月15日19時33分)

****** 毎日新聞、2009年5月13日

新型インフルエンザ:妊婦は合併症危険 「抗ウイルス薬を」

 【ワシントン小松健一】米疾病対策センター(CDC)のシュカット博士は12日、記者会見し、新型インフルエンザの症例分析から「妊娠中の女性が感染すれば、肺炎などの合併症を引き起こす可能性が高い」と指摘した。

 そのうえで博士は、感染が確認されなくても妊婦がインフルエンザの症状を示した場合、「速やかにタミフルなど抗ウイルス薬を処方することが重要」と述べ、医療機関に注意を促した。世界の感染者数は34カ国・地域で5936人となった。

(毎日新聞、2009年5月13日)

****** 日本産科婦人科学会ホームページ
http://www.jsog.or.jp/news/html/announce_20090508.html

お知らせ

 妊婦さんはウイルスに感染した場合、基本的に重症化しやすいとされており、今回 の新型インフルエンザについても同様と考えられております。

 ついては、医師からタミフルやリレンザなどの抗インフルエンザ薬を処方された場合には、服用を推奨いたします。

             平成21年5月8日
    社団法人 日本産科婦人科学会
                          理事長  吉村泰典
         周産期委員会委員長 斎藤 滋

(日本産科婦人科学会ホームページ)

****** 東京新聞、2009年5月13日

抗ウイルス薬 投与、大半不要 

新型インフル感染者

 【パリ=清水俊郎】新型インフルエンザの感染拡大で、世界保健機関(WHO)の進藤奈邦子医務官は十二日、ジュネーブでの定例会見で、世界の医療関係者向けの指針を近く公表すると明らかにした。

 指針では、抗ウイルス薬は感染患者の大半には必要ないとし、妊婦やお年寄り、糖尿病や心臓病など慢性疾患のある人、重症者には投与を勧める。

 また、感染の中心のメキシコと米国の症例をWHOが調べたところ、新型インフルエンザは今のところ軽い症状の人が多く、抗ウイルス薬の投与が必要なかった人も多かった。入院が必要だったのは10%程度だった。

 ただ、進藤医務官はこの割合が「通常の季節性インフルエンザよりもはるかに高い」とした上で「ハイリスクの人たちと重症者にだけ抗ウイルス薬の投与を勧めるだろう」と述べた。

 解熱鎮痛剤アスピリンの使用は効果が薄く、肝臓を傷める恐れがあると指摘した。

 さらに新型インフルエンザのウイルスが今後、タミフルなどの抗ウイルス薬に耐性を持つように変異する恐れも指摘した。

(東京新聞、2009年5月13日)