ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

長野県内初の新型インフルエンザ感染の確認

2009年06月14日 | 新型インフルエンザ

新型インフルエンザは、当初のメキシコ、米国、カナダからヨーロッパや日本、さらにオーストラリアなど冬季にさしかかった南半球を含む多数の国に拡大し、WHOは新型インフルエンザの警戒度を世界的大流行(パンデミック)を示す「フェーズ6」へ引き上げました。日本での感染が初めて確認されてからすでに1カ月が経過して、全国各地で感染確認の報道が続いていますから、身近なところで感染が確認されるようになるのも時間の問題だろうと考えてました。人類と新型インフルエンザとの戦いは今後も延々と続きます。多くの専門家が、近い将来、日本でも新型インフルエンザの大規模な感染拡大が必ず起きることを予想しています。健康被害を最小限にくい止めるために、最新情報の入手に努め、事態の変化に冷静に対応していく必要があると思います。

新型インフルエンザ、WHO フェーズ6に引き上げを宣言

****** 信濃毎日新聞、2009年6月14日

県内初の新型インフル確認 飯田の27歳女性

 県は13日深夜、飯田市の日本人事務職女性(27)が新型インフルエンザに感染したと確認した。県環境保全研究所(長野市)の詳細(PCR)検査で感染が判明した。県内での感染確認は初めて。

 県によると、女性は今月1~9日、旅行で米国ハワイに滞在。10日夜に飯田市の自宅に帰った後、11日午後7時ごろに39・2度の発熱があったため、13日、県飯田保健福祉事務所(保健所)に電話相談し、同市内の診療所を受診。簡易検査でA型陽性反応が出たため、感染症指定医療機関の飯田市立病院の発熱外来で診察を受け、ここでも簡易検査でA型陽性反応が出た。検体は県環境保全研究所に送られ、同日午後10時半、感染を確認した。

 女性は同病院に入院。13日夜現在、体温37・4度で、頭痛、鼻汁の症状があるが、容体は安定しているという。

 女性は成田空港から電車、バスを使って帰宅した。11、12日には飯田市内の職場に出勤したという。旅行には女性の家族1人が同行したが症状は出ておらず、職場の同僚などにも今のところ症状が出ている人はいないという。

 県は14日午前0時から記者会見。小林良清・健康づくり支援課長は「患者が家族や職場の人以外に感染を広げる可能性は少なく、県民に直ちに感染が広がることは想定しにくい」とし、現時点で行事や外出の自粛要請、学校の臨時休校などの対応は検討していないと説明した。

 県は14日朝、新型インフルエンザ対策本部幹事会議を開き、今後の対応を協議する。県庁や県内10カ所の保健福祉事務所に設けた電話相談の受付時間を拡大する方向で検討している。飯田市も同日朝、対策本部会議を開く。

 国内の新型インフルエンザの感染者は13日、ほかに千葉県、東京都、横浜市、名古屋市、大阪府、京都府、福岡県、福岡市、鹿児島市で新たに確認され、計594人になった。

新型インフル 飯田市は慌ただしく情報収集

 「ただちに感染が広がる事態は想定しにくい」。13日深夜に県内で初めて新型インフルエンザ感染者が確認され、14日午前0時から県庁で記者会見した県幹部は、県民に冷静な対応を呼び掛けた。感染者の女性(27)が生活する飯田市では、県飯田保健福祉事務所(保健所)や市役所本庁に職員らが次々と集まり、情報収集や電話連絡、打ち合わせなどに慌ただしく動いた。

 県庁では、桑島昭文・衛生部長と小林良清・健康づくり支援課長が会見し、感染した女性の症状などを淡々と説明。急速な感染拡大は想定しにくいとし、手洗いの徹底や人込みを避けるといった個人での予防策を引き続き行うよう県民に呼び掛けた。

 小林課長は「感染の可能性がある人には、われわれが連絡し調査する。今回の患者を特別視したり、どこの人かを探ったりすることは控えてほしい」とも念押しした。

 飯田市追手町の県飯田合同庁舎は13日夜、1階の飯田保健所と3階の下伊那地方事務所に明かりがともり、それぞれ佐々木隆一郎所長、岩崎弘所長が出て、職員が県庁や市役所などと電話連絡に追われた。日付が変わって県庁で発表があると、職員もやや落ち着いた表情に。感染者の行動や接触者の詳しい調査を始めているといい、対応を続けた。

 同市大久保町の市役所本庁。市長公室などがある2階に幹部職員らが集まり、上村地区などでの懇談会を終えた牧野光朗市長も13日午後10時ごろ、市長公室へ。県から感染確認の連絡を受けて協議を重ね、14日朝から対策本部会議を開くことを決めた。

 市危機管理・交通安全対策室は「現段階では県からの情報や指示に基づいて、会議で具体的対応を決めたい」。職員の間では「長丁場の対応か」などと短い言葉が交わされていた。

(信濃毎日新聞、2009年6月14日)

****** 信濃毎日新聞、2009年6月15日

新型インフル「感染広がる状況にない」と県対策本部

 米国ハワイから帰国した飯田市の日本人女性(27)が13日に県内で初めて新型インフルエンザ感染者と確認されたことについて、県は15日、女性と「濃厚に接触した」と確認したのは同日午前現在で家族と親せきの計6人で、いずれもインフルエンザのような症状は出ていないと発表した。14日には、県庁で県新型インフルエンザ対策本部の幹事会議を開催。「現時点では感染が広がるような状況にない」として、地域に対し、学校の休校や外出、集会などの自粛要請は行わないことを確認した。

 県健康づくり支援課によると、感染症指定医療機関の飯田市立病院に入院している女性は13日から治療薬タミフルを服用。15日午前8時半現在で熱は36・6度に下がり、頭痛やのどの痛みはあるが症状は落ち着いているという。厚労省の通知に基づき、女性は発症から7日後の18日まで入院。この間にウイルス検査を2回行い、いずれも結果が陰性なら退院できるという。

 女性と濃厚に接触したと確認した6人には予防のためタミフルを投与。県飯田保健福祉事務所(保健所)は女性の同僚約20人に症状の有無などの聞き取り調査を行い、一部にはタミフルも処方しているが、同課によるといずれもインフルエンザのような症状は出ていないという。

 14日の幹事会議で村井知事は「今回の新型インフルエンザは毒性がそれほど高くないことが分かっている。不要な社会的混乱を避け、正確な情報に基づく的を射た対応が大切だ」と指示した。

 一方、飯田市の幹部職員らでつくる市新型インフルエンザ対策本部は14日、市役所で本部員会議を開いた。患者と濃厚に接触した人が限られ、県が「地域の中で感染が拡大する状況にはない」としていることから、イベントや行事は予定通り実施すると確認。保育園、幼稚園、小中学校も休校などの措置は取らず、15日も平常通りだった。

 県は当面の間、県庁と県飯田保健所の電話相談を24時間態勢に拡大。ほかの9カ所の県保健所と長野市保健所は従来通りの対応とし、県保健所は午前8時半~午後5時15分、長野市保健所は午前8時半~午後7時に電話相談を受け付ける。同課によると14日(15日午前8時半までの集計)は、前日の3倍の221件の相談が寄せられた。

飯田市民は冷静な受け止め マスク姿まばら

 県内初の新型インフルエンザ感染者が確認されて初の平日となった15日、飯田市役所では職員にマスクを着用する姿は見られず、落ち着いた様子だった。14日には一時、市内の店でマスクの売れ行きが普段より増えたが、休日の大型店などでもマスク姿はまばらで、冷静な受け止めが目立った。

 市内のドラッグストアでは14日、店頭に並べた7枚入りマスク10箱とアルコール消毒液5本ほどが午前中に売り切れた。ただ、その後は問い合わせも夕方までに数件にとどまった。別のドラッグストアは、チェーン本部の指示で同日からマスク着用で接客。売れ行きも前日までより増えたが、「(国内発生が確認された)5月に比べると落ち着いている」(店長)という。

 市内の大型店を同日訪れた同市上郷飯沼の自営業女性(40)は、国内感染が広がる中、小学1年生の娘に手洗いなどを徹底させているというが、「学校で流行すればマスクも考えるが、過剰に反応するつもりもない」。同市丸山小学校PTAの資源回収でも、保護者らはいつもと変わらぬ様子で作業に汗を流した。

 一方、首都圏などと結ぶ高速バスを運行する信南交通(飯田市)は14日の社内会議で、マスク着用はこれまで通り運転手らの判断に任せることを確認した。

(信濃毎日新聞、2009年6月15日)

****** 信濃毎日新聞・社説、2009年6月14日

インフル1カ月 秋冬への備えを急げ

 人が地球規模で移動する現代は、ウイルスもたやすく国境を越える。新型の豚インフルエンザの発生が認定されてから、わずか1カ月半で、感染者は2万7千人を突破した。世界保健機関(WHO)は、世界的大流行(パンデミック)を宣言している。

 日本で感染が確認されてから、まもなくひと月になる。感染は20都道府県以上、570人超に広がっている。集団感染も相次ぎ、終息の気配は見えない。

 新型ウイルスの病原性はいまのところ高くない。感染者の多くが軽症で回復している。当初患者が集中した大阪と兵庫も、落ち着きを取り戻した。

<貴重なデータ生かして>

 世界は強毒性鳥インフルエンザに備えてきた。政府の対策も強毒性の想定だった。実態に即して、柔軟に修正していきたい。

 冬を迎えた南半球で感染が急拡大していることに、注意が要る。北半球も、いまの流行がおさまっても、今秋以降に第2波がやってくるだろう。

 過去の大流行では、第2波、第3波で深刻な被害が出た。秋冬を見越した備えが肝要になる。

 ウイルスの分析や臨床データの集積が進みつつある。情報を各国で共有して、対策に生かしたい。

 主な症状は、38度以上の高熱とせき、のどの痛み、頭痛やだるさなど。通常の季節性インフルエンザとよく似ている。

 違いもある。患者は高齢者よりも10代などの若い世代に多い。健康な若者でも重症になるケースがある。基礎疾患のある人や妊娠中の女性もリスクが高い。

 潜伏期間は7日間程度。ポイントは、症状が出る前から感染性を持つことだ。本人も周囲も気づかないうちに感染が広がりやすい。

<重症者を確実に救う>

 こんな予想が立つ。秋以降、新型が季節性に取って代わるのか、あるいは、新型と季節性が同時に流行するか。いずれにしても、インフルエンザの患者が多数、発生するだろう。

 政府の計画では、新型に感染した可能性のある人は、感染症指定医療機関の「発熱外来」を受診する。だが、患者が急増すれば発熱外来はパンクする。兵庫と大阪で証明済みだ。

 地域の医療態勢を柔軟に組み直したい。軽症の患者は、季節性インフルエンザと同様に一般の医療機関が診るのが現実的だ。同時に、重症者に対応できる入院設備の整った治療拠点を確保しておく。つまりは、通常のインフルエンザ対策の拡充である。

 すでに仙台市が取り組んでいる。内科、小児科を中心に300を超える医療機関が、軽症者を診療する準備を進めている。

 開業医も含めて、医師らが二次感染した場合の手厚い補償が欠かせない。医療機関と自治体の連携の強化、夜間診療などの協力態勢も求められる。

 自治体は危機管理能力を磨いておきたい。流行が始まると、臨時休校、保育や介護サービスの維持、高齢者世帯の支援など、市民生活に直結する判断を迫られる。事前にできるだけシミュレーションをしておきたい。

 政府は医療態勢の充実に、いっそう力を注いでもらいたい。

 若年層に感染者が多く出る可能性がある。医師不足が深刻な小児医療への支援が必要だ。ワクチンの開発と備蓄も急がれる。

 気がかりなのは、一部に感染者を過剰に避けたり、非難、中傷する風潮があることだ。

 感染症は、だれもがかかる可能性がある。感染しても社会から排除されることなく、安心して最善の治療を受けられる環境が保障されること。これが対策の基本であることを確認しておきたい。

<「試行錯誤」も糧に>

 99年に施行された感染症予防法は、前文に過去のハンセン病やエイズの問題を挙げ、「感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かす」とある。感染症の流行を防ぐ措置は「必要な最小限度のものでなければならない」と、条文に定めている。

 新型インフルエンザ対策も、常にこの規定に照らして検証されるべきだ。行政は過剰な規制をしていないか。いたずらに不安をあおる面はないだろうか。

 情報提供のあり方についてはメディアの役割も大きい。自戒も込めて、検証していきたい。

 未知のウイルスへの恐怖心は、だれの心にもある。それが増幅されて社会が冷静さを失うことがないよう、不安をコントロールするすべを身につけたい。

 この先、ウイルスが病原性を増す可能性もある。強毒性鳥インフルエンザの脅威も、去ったわけではない。

 数年がかりの長期戦である。山あり谷ありは覚悟のうえ、試行錯誤も将来への貴重な糧になる-。そんな心構えで、新型インフルエンザとのつきあい方を探り、社会で共有していきたい。

(信濃毎日新聞・社説、2009年6月14日)

****** NHKニュース、2009年6月13日

WHO ワクチンの製造急ぐ

新型インフルエンザの警戒レベルを世界的な大流行=パンデミックの宣言を意味する最も高い「フェーズ6」に引き上げたWHO=世界保健機関は、各国政府とも協力して、新型インフルエンザ向けのワクチンの製造を急ぐことにしています。

WHOのチャン事務局長は、日本時間の12日に行った会見で、「まもなく季節性インフルエンザのワクチンの生産が終了し、新型向けのワクチンの生産に集中することになる」と述べ、新型インフルエンザ向けのワクチンの製造を急ぐ考えを示しました。そのうえで、チャン事務局長は、安全で有効なワクチンの承認手続きが迅速に進むよう、WHOとしても各国政府と協力して取り組んでいく方針を強調しました。新型インフルエンザ向けのワクチンをめぐっては、スイスの大手製薬会社が、12日、細胞工学を使った新たな手法でワクチンの開発に成功したと発表するなど、各国の製薬会社が研究開発を急いでいます。ただ、そのほとんどは先進国の製薬会社で、十分な資本や技術を持たない発展途上国にワクチンが行き渡らないのではないかと懸念する見方もあり、ワクチンは、製造だけでなく、いかに普及させるかも大きな課題となっています。

(NHKニュース、2009年6月13日)

****** 共同通信、2009年6月13日

日本で半年以内の大規模感染確実  押谷東北大教授が警告

 世界保健機関(WHO)で感染症対策を担当した押谷仁東北大教授は13日、都内で講演し「日本で半年以内に新型インフルエンザの大規模な感染拡大が必ず起きる。地域によっては、早ければ数週間以内にも起きる」と警告した。

 国内の現状について押谷教授は「患者間の疫学的なつながりがなく感染源が特定されないケースが出ており、明らかに感染拡大が続いている。隔離や自宅待機を恐れて名乗り出ていない人もいるとみられ、感染源が特定されず地域社会に広がっている」と指摘。

 予想されるシナリオとして「南半球や東南アジアで一気に大流行する可能性がある。そうなると日本への感染者の流入をまったく止められなくなり、冬まで局地的流行が続くことも考えられる」との見方を示した。

 押谷教授は「重症化する患者に対する医療態勢の整備が課題で、各地域で真剣に考えなければならない」と述べた。

(共同通信、2009年6月13日)


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