ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

新型インフルエンザ:妊婦は合併症危険 「抗ウイルス薬を」

2009年05月15日 | 新型インフルエンザ

米疾病対策センター(CDC)の専門家の見解:

新型インフルエンザの症例分析から、妊娠中の女性が感染すれば、肺炎などの合併症を引き起こす可能性が高い。妊婦がインフルエンザの症状を示した場合、速やかにタミフルなど抗ウイルス薬を処方することが重要である。

日本産科婦人科学会も、新型インフルエンザではタミフルなどの抗インフルエンザ薬服用を推奨する旨の見解をホームページ上に公表しています。

**** NHKニュース、2009年5月15日19時33分

“妊娠中も抗ウイルス薬を”

 妊娠中の女性の新型インフルエンザ対策として、アメリカのCDC=疾病対策センターは、治療には抗ウイルス薬が有効だとしたうえで、感染の疑いがある人と接した場合にも抗ウイルス薬を予防的に服用することが必要だする報告をまとめました。

 アメリカのCDC=疾病対策センターの報告によりますと、アメリカ国内で新型インフルエンザウイルスに感染したか、感染の疑いがある妊娠中の女性は今月10日の時点で20人に上り、3人が入院しました。このうち、ぜんそくなどを患っていた33歳の女性は、抗ウイルス薬による治療を受けないでいたところ、容態が悪化し、赤ちゃんを出産しましたが、およそ2週間後に女性は死亡したということです。

 CDCは、妊娠中の女性は、通常のインフルエンザと同様に新型のインフルエンザでも重症になるおそれがあり、ぜんそくなどの病気がある場合には、特にリスクが高いとしています。

 CDCは、妊娠中の女性に対する抗ウイルス薬の効果や副作用について、情報は少ないが、新型のウイルスに感染したか、感染の疑いがある場合には、症状が出てから48時間以内に抗ウイルス薬の投与を始め、5日間続けるべきだとしています。さらに、感染の疑いがある人と接した場合にも、10日間予防的に服用するべきだとしています。

 これについて、日本産科婦人科学会の周産期委員会の副委員長で、北里大学医学部の海野信也教授は「妊娠中は免疫の機能が低下するなどの変化があるため、新型に限らず、インフルエンザに感染すると重症になりやすく、注意が必要だ。いちばん大切なのは感染しないようにすることで、ふだんのインフルエンザ対策と同じように予防に努めてほしい。抗ウイルス薬については、赤ちゃんへの影響よりも、インフルエンザの症状が重くなることのほうが問題なので、薬を処方されたら心配せずに飲んでほしい」と話しています。

(NHKニュース、2009年5月15日19時33分)

****** 毎日新聞、2009年5月13日

新型インフルエンザ:妊婦は合併症危険 「抗ウイルス薬を」

 【ワシントン小松健一】米疾病対策センター(CDC)のシュカット博士は12日、記者会見し、新型インフルエンザの症例分析から「妊娠中の女性が感染すれば、肺炎などの合併症を引き起こす可能性が高い」と指摘した。

 そのうえで博士は、感染が確認されなくても妊婦がインフルエンザの症状を示した場合、「速やかにタミフルなど抗ウイルス薬を処方することが重要」と述べ、医療機関に注意を促した。世界の感染者数は34カ国・地域で5936人となった。

(毎日新聞、2009年5月13日)

****** 日本産科婦人科学会ホームページ
http://www.jsog.or.jp/news/html/announce_20090508.html

お知らせ

 妊婦さんはウイルスに感染した場合、基本的に重症化しやすいとされており、今回 の新型インフルエンザについても同様と考えられております。

 ついては、医師からタミフルやリレンザなどの抗インフルエンザ薬を処方された場合には、服用を推奨いたします。

             平成21年5月8日
    社団法人 日本産科婦人科学会
                          理事長  吉村泰典
         周産期委員会委員長 斎藤 滋

(日本産科婦人科学会ホームページ)

****** 東京新聞、2009年5月13日

抗ウイルス薬 投与、大半不要 

新型インフル感染者

 【パリ=清水俊郎】新型インフルエンザの感染拡大で、世界保健機関(WHO)の進藤奈邦子医務官は十二日、ジュネーブでの定例会見で、世界の医療関係者向けの指針を近く公表すると明らかにした。

 指針では、抗ウイルス薬は感染患者の大半には必要ないとし、妊婦やお年寄り、糖尿病や心臓病など慢性疾患のある人、重症者には投与を勧める。

 また、感染の中心のメキシコと米国の症例をWHOが調べたところ、新型インフルエンザは今のところ軽い症状の人が多く、抗ウイルス薬の投与が必要なかった人も多かった。入院が必要だったのは10%程度だった。

 ただ、進藤医務官はこの割合が「通常の季節性インフルエンザよりもはるかに高い」とした上で「ハイリスクの人たちと重症者にだけ抗ウイルス薬の投与を勧めるだろう」と述べた。

 解熱鎮痛剤アスピリンの使用は効果が薄く、肝臓を傷める恐れがあると指摘した。

 さらに新型インフルエンザのウイルスが今後、タミフルなどの抗ウイルス薬に耐性を持つように変異する恐れも指摘した。

(東京新聞、2009年5月13日)