紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

60年代にニュー・トランペット・ヒーロー誕生…ゴーイン・アップ~フレディ・ハバード

2007-08-14 23:27:04 | ジャズ・トランペット
ブルー・ノート・レーベル…アルフレッド・ライオンが、次々に才能ある若手ミュージシャンを見出し、プロデュースして育て上げた伝説のレーベルだが、今日紹介の「フレディ・ハバード」も60年代に彼に見出されたアーティストだ。
本作は、デビュー作「オープン・セサミ」の次に出された、セカンド・アルバムです。

アルバムタイトル…ゴーイン・アップ

パーソネル…リーダー;フレディ・ハバード(tp)
      ハンク・モブレー(ts)
      マッコイ・タイナー(p)
      ポール・チェンバース(b)
      フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

曲目…1.エイジアテック・レエズ、2.ザ・チェンジング・シーン、3.カリオカ、4.ア・ペック・ア・セック、5.アイ・ウィッシュト・アイ・ニュー、6.ブルース・フォー・フレンダ

1960年11月6日録音

原盤…ブルーノート・レーベル
CD番号…TOCJ-6575

演奏について…前説の通り「ハバード」の若かりし頃のアルバムだが、彼の良い部分を二面見る事の出来る演奏である。

まず、「ドーハム」のリーダー作では「ロータス・ブロッサム」と言う名前で、良く知られた名曲である、1曲目「エイジアテック・レエズ」では、「ハバード」は、とてもブリリアントなトランペット・トーンで、来るべき、超新星の実力を見せ付ける。
そして、アドリブも新人らしからぬ非常にメロディアス演奏で宜しいです。
受ける「モブレー」…ベテランらしく「ハバード」以上に歌心溢れる好フレーズを連発して、若手をフォローする。
「チェンバース」はボウイングを、「フィリー・ジョー」は変幻自在のドラミングで、「ハバード」を更にアシストして、名演が生まれた。

「ハバード」の良い部分(才能)のもう一面は、5曲目のバラード曲「アイ・ウィッシュ~」で分かる。
「マッコイ」のリリカルなピアノに導かれた後、「ハバード」は情感たっぷりのソロを吹くが、とにかく美しいアドリブメロディで、切なさに心を打たれる。
続く「モブレー」のアドリブも、「ハバード」に負けず叙情的で、彼がただの便利屋テナーでは無いことを知らしめる。
「マッコイ」のピアノも「コルトレーン」の傑作アルバム「バラード」の時の様に、キレと甘さの両面を持った素晴らしい出来です。
このアルバム中ベストトラックで間違いない!!

3曲目「カリオカ」は、2曲目同様ファンキーなマイナー調の佳曲だが、曲名通りリズムはラテン調で、「フィリー・ジョー」が抜群のリズム・キーピングを見せる。
「ハバード」はノビノビと気持ち良く吹き切り、「モブレー」は渋いが、とにかくカッコイイ吹きっぷりで流石と思わせる。
ここでは、「マッコイ」が、モーダルでハイセンスなアドリブピアノを弾いて、曲にスパイスを効かせる。
後半の「フィリー・ジョー」のドラムソロが…とにかく、す、すごい!!

2曲目「ザ・チェンジング~」はファンキーなマイナー調4ビートの曲で、4曲目「ア・ペック~」は2管のユニゾンテーマからの展開で、これぞブルーノートの2管だというべき、規範的な演奏がなされる。
特に「ア・ペック~」での「マッコイ」のピアノソロは、センス抜群で聴き物。
勿論、「フィリー・ジョー」も抜群に冴えてます。

最後に…「ハバード」の類稀な才能を見せ付けられるアルバムではあるが、全編に渡ってすごいのは、やはり天才ドラマー「フィリー・ジョー・ジョーンズ」のドラミングである。
彼はタイムキーパーとしてのドラムスの役割をはるかに超えた、「歌うドラム演奏」を完璧に掌中にしており、持ちえる超絶技巧も相成って、サイドメンながらもメンバー全員を見事にコントロールしている。
本当に恐るべきドラマーだ。