なんとなくクラシテル

獣医という仕事をしている人間の生活の例の一。
ほとんどが(多分)しょーもない話。

GW

2021年05月09日 | 仕事

中にはまったのは、マンガ。もう最近は、細かい活字の本を読むよりか、マンガでパパっと、というだけじゃなくて、マンガの方が、今の世の中を的確に掴んでいる事が多いんじゃないかと思って。

 ハマった奴はこれ

 

 基本的に、金の話は大大好きでしてね。板子一枚下は地獄、という自営業をやってると、金の話にはとにかく敏感でいなくちゃならない。このマンガには、一般人が人生でおそらく最大級の金を動かす「土地&家」についてのえげつないお話がてんこ盛りで、それだけじゃなくて、熱血お仕事マンガにもなっている。「ナニワ金融道」よりか、面白いんじゃないかしら。

 金って、元々は「物々交換を円滑にするための仲介物質」なんですよね。大昔に「別冊宝島」で読んだ話なんだけど、当時は当然ネットなんかないからメルカリもなし、「売ります買います」情報は、あちこちの地域のタウン誌でやってました。大阪のタウン誌の物々交換コーナーの投稿って、なにかというと「せっけん」と交換する、というケースが多い、という話が出てて。大阪の人がせっけんが好きという訳じゃない、この場合は「せっけん」が物々交換の仲介物質になっていて、一種の「疑似通貨」っぽい役割を果たしていた、ということ。お金扱いのうまそうな、商人の町の大阪人が思いつきそうな仕組みですけど、こういうのが自然発生的に出てきたらしいというのも面白いですよね。

 元来その程度の物だったはずの金が、利子だのなんだの、という「金が金を産むシステム」を経て、投資だの投機だのに使われるようになって。最近は得体のしれない仮想通貨まで登場しているんだけど。金の持つ権限が大きくなるにつれて、こいつに振り回される人がどんどこ増えるという事に。で、扱う金額が大きくなるほど、脇が甘くなる。その辺がすごくリアルに描かれている。

 マンガにも出てくるが、とにかく土地や家の取引にかかわる法律は多い。多い=そうでもしないと悪い奴らにいいようにやられがち、という事で、なのに、出てくる客は誰もかれも、全然勉強してなさそうなのが印象的なんですけど。読むと、今のおうち、よくまあうまく手に入れられたものだと、冷や汗・・・・・。

 当時は、ネットなんかないから、その代わりに本を3冊くらい買って、法律関係等々と「不動産屋に騙されるな!」的な本も買って基礎的な知識&おうちに関する自分なりのイメージを詰めて交渉に臨んだのと、急がなかった(せかしてくるのは切った)のがよかったのかなあ?運かもしれないが。

 自分みたいな仕事をしてますと、「ステータス」的なものに目をつける輩が多いわけよ。「獣医のセンセイなんだから、それなりのものをどうこう」ってね。甘言をもってすり寄って来る。そういうお金をくれるんか?と浮かれちゃいけません。かなり用心深く動いているつもりなんだけど、それでも何回か騙されたり騙されかけたりしましたからねえ。結局、よく分かってないことに付け込んでくるんだけど。

 でねえ、この漫画には不動産の事が描かれてますけど、自分の仕事でも、まあ似たようなことが起きるのだよね。この場合は、動物(の子供)ってことで、かつてしょっちゅう起きていたのは「買ったばかりの子犬(または子猫)が調子悪そうなんですけど、どうすれば」という電話。これ、扱いが極めて難しい。まず、飼主は、まだ「飼主」ではなくて「買主」なんです。従って、子犬や子猫の健康状態とは何ぞや、について見る目がない。食欲がなくても、つい2・3日様子を見てしまう。ショップやブリーダーが、まさか不健康な動物を売りつけてくる、なんて思いもしてないから、ますます相談が遅れる。で、来た時にはもう命が危険です、という状態になってしまっているケースが相次いでいたのだ。主だった原因はおおむね伝染病か寄生虫の強度寄生で、それに追加して、そもそも生後1か月程度の子供という、抵抗力ほぼ0です、という時期の子犬やら子猫だから、救命率は、連れてこられた段階で10%ない、くらい。

 この場合、とにかくすぐショップ(またはブリーダー)に連絡して、どうするのか聞きなさい、というのがこちらの返事で、いきなり診察しては絶対にいけない。なぜなら、売り主に連絡なしだと「相談もなくそっちが勝手に診せたんでしょ」みたいな言いがかりをつけられるから。要は、「治療費をどこが持つか」で、もめる事必然だったわけ。

 ペットショップやブリーダーは、こんな事しょっちゅうらしくて、口がうまいったらない。この辺も不動産屋によく似ている。で、下手をすると「動物病院がヤブだから、治療ができないから、死んだんだ」とまで言われかねない。買主(未だ飼主にあらず)は、病院とショップの言う事に振り回されて(売り主側は、下痢程度は大丈夫的なことをすぐ言うがそりゃ大嘘です。子供の下痢は命に係わる)どっちが本当なのか?判断できない、で、下手をするとこっちが悪役にされるのだ。

 ショップに言いくるめられた買主に責め立てられて、死んだ子犬の代金を弁償させられた先生もいたと聞く。一回そういう目に遭わされた先生の中には、子犬や子猫は診察しない、と決めちゃった方もいたとか。とても分かる。子犬や子猫は、血管を確保するのも一苦労で、治療が極めて難しい。うちでは、従ってなるべく買主の目の前で治療してみせているのだけど、それでもピンとこない方がほとんどじゃないかな。動物医療なんか、見たことないだろうからしょうがないですけど。

 だから、まずは売り主に即連絡して、お宅の言うとおりにやってるのに病気になった、どーするんだ?と聞いて、治療費についても話をつけて、その上で診察に来てください、と言わざるを得ない。これで診察が遅れる、ますます救命率が落ちる。

 最近は、買う時に「動物健保に入ってくれ」と、半ば強制的に動物健保に加入させられてる人も増えた。動物健保は民間の損保の一種で、元来販売できるのはFPだけの筈なのに、ショップのバイトやらブリーダーやらに買わされてるのが現状で、これもおかしい。ショップ側としては、動物健保に加入させとけば、購入後1か月の治療費を健保が全額持つ、みたいな特約を付けられるから、この手の治療費トラブルを回避する手段にはなる。そういう事情を買主に言う事はないでしょうけどね。

 この件はとても不思議なのだけど、複数犬猫を飼っている人でも、簡単にショップ等々の言い分に引っかかる。今当院に来る子犬&子猫でペットショップ経由の連中はほぼ100%栄養失調なんだけど、なぜかというと「食わせてない」から。全員が言います「ショップの人に、一日○○g与えるようにって言われて」って。で、微々たる量しか与えず、腹ペコの子犬が自分のウンコまで食べる、と文句を言う。腹いっぱい食わせないからだ、と指摘すると、たいていの方は真っ青になりますけどね。「たくさんあげすぎると下痢するって言われた」というのが常套文句なんですが、下痢=病気、たらふく食べて下痢なんかするもんか、ご自分のお子さんの食べ物、ハカリで計ってやってました?と聞くと、皆さんちょっと目が覚めるんですけどね。ショップのこういうバカな言い分に、何匹育てても引っかかるから腑に落ちない。学んでないってことなのか?お願いだから、社会常識ってのを駆使して育てていただきたいんですよ。お子さんに食事制限したかどーか?

 まあ、これが原因で「動物愛護法」が改正されたわけ。決して「動物が可哀そう」だからではない。この手の金銭トラブルがめちゃ多くなったからだ。こうやって法律が厳しくなると、今度はその法律が届かない、ウサギ・ハムスター・小鳥・エキゾで、同じようなトラブルが増えてきたんですけどね。この手の動物は、死んだってほぼほぼ返金なんかされないから、何が起きてもうやむやになっちゃう。あーこの辺も不動産と一緒ですわね。法律ができるその法律をかいくぐる奴が現れるまた被害が出る、という。

 マンガを読んでて、あーいずこの業界もおんなじだわ、と思ったわけですけどね。

コメント
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