チェロ五十代からの手習い

57才でチェロに初めて触れ、発見やら驚きを書いてきました。今では前期高齢者ですが気楽に書いてゆこうと思います。

左手の奥義 「あめんぼう運指]を教わった

2020年01月23日 22時44分07秒 | レッスン

最近レッスンといえばアンサンブル仲間でグループレッスンばかりやってもらっていた。
チェロの毛替え、弦の張替えや調整も終わったので、今度は演奏のリハビリをお願いしようと、
久しぶりに個人レッスンをお願いした。

チェロ歴12年になるけど、今日もいつも通り右手開放弦から右手の練習と思いきや、
右手には全く触れず左手の押さえ方の集中練習となった。

A線の第1ポジション、つまりシの音から始めてド、レと押さえてゆくだけの練習をまず師匠がやって見せ
「これさえできればずいぶんと変わりますよ」といわれた。

思えば10年以上前、教わり始めたころにやった基礎練習を思い出したが
「何をいまさら」とは全く思わない。
今の自分に最も必要な練習を用意してくれているに決まっているのだから。

お手本の通り「シ、ド、レ」と自分でも弾いてみるものの、師匠のようにはゆかない。
音がくすむというか、沈んだ音になる。

自分では左手指1.2.3で「シ、ド、レ」と上から叩いて押さえるのだけど、
指を落とした後、弦を押さえつける癖がどうしても抜けないという。
特にネックを下からあてがっている左手親指に力が入っていることを指摘される。

思い起こせば、これまで力が入っているときは、ネックを左親指で握りしめていたり、ひどいときには
体を楽にするためなのか、左の親指でネックを支えてすらいたことに思い至った。

師匠の演奏をつぶさに観察すると1,2,3、と押さえてゆくに従って、
左手親指が自由に動いている。
4の小指でレを押さえるときには親指はC線側のネックから親指が突き出てきている。
師匠の左手親指や、各指先を触ってみると、全く力が入っていない。

「先生こんな緩い押さえ方でいいんですか」
 「押さえているというより、置いてあるだけ」
「音が出にくいとき、思いっきり押さえつけていたのは間違いなんですね」
 「それは逆効果、押さえつけるほど音が出なくなります」

師匠が演奏するときの左手の動きを改めて凝視すると、まるで指先が弦の上で踊っているというか、
軽やかに滑っているようにも見える。「まるでアメンボウが水面を滑っているようだ」と感じた。



アメンボウは水の表面張力だけを支えに、水面をすいすいと渡ってゆく。
師匠の指もそんな感じで、弦をネックに押さえつけているそぶりもない。

「そうか、表面張力でアメンボウが浮いているように、
師匠の左指は弦がネックに最小限の力しかかかっておらず
しかも上から指をぶつけた瞬間から弾き始めているので、
弦の振動の中心の1点だけに力が集中した状態で、弦が振動している。
だから弦の振動の邪魔になる要素がすべて取り除かれ美しい音色が出てくるんだ」

その後もチェロも渡されて、師匠の真似をしてみるものの、なかなかいい響きの音が出ない。

「開放弦と同じ響きを出せるかどうか、これができれば演奏はすごく変わってきます」

「開放弦と同じ音が出せるように」・・

このワンフレーズは、まさに師匠の「奥義」を明かしてもらったと直感した。
むろん秘伝の書を覗き見できたとしても、できるわけではないのだが、
目指すべき高みを垣間見ることができたのは幸せだ。

これまで右腕の脱力だけに集中してレッスンをしていただいてきた。
おかげで最近いい音質で、軽やかに弾ける実感を持ててきた。
むろんチェロを買い替えたことも大きいが、右手の脱力感
~弓の重さだけで弾けている~
ことは感じていたが、これ以上進めるには、左手の無理やりの押さえ方に
メスを入れないといけないと、師匠は見抜いていたんだと思う。

これから目指すべきは「アメンボウ運指」だとすると、今までの左手は重々しく踏みつける動物・・・
そう象さんが地面を踏みつけるような「象足運指?」などと思いながら帰宅の途に就いたのだった。


 アメンボウのように軽やかに指が動き回り、その裏では親指もまた
アメンボウのように軽やかにネックの裏側を動き回れるようにしよう。
そのためには、何よりもチェロ本体をしっかり固定し、力を抜くことだ。

さよなら「像足運指」こんにちは「あめんぼう運指」だ!

 


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