チェロ五十代からの手習い

57才でチェロに初めて触れ、発見やら驚きを書いてきました。今では前期高齢者ですが気楽に書いてゆこうと思います。

N響チェリストと音楽の夕べ

2012年03月11日 22時12分17秒 | コンサート

千葉市のプラネタリウムでN響主席らで構成された「ラ・クァルティーナ」の演奏を聴いてきた。

このチラシを見たのは、近所を走る普通のバスの中だった。
紐にくくられてバスの入り口近くにつるされていた。
240席程度の千葉プラネタリウム。座席は全てリクライニングシート。
大人1500円、高校生600円、小中学生300円。
そこでN響の主席・藤森亮一さんと3人のフォアシュピーラーが演奏するという。

「えっ! こんな恵まれたコンサートあっていいのか?」と思ったけど
現実にあるのだと思い直し、ローソンチケットを購入しておいたのだった。

今日は3.11。昼から様々な特別番組が放映されていたけど
コンサートもバッハのアリアから始まった。
4人で演奏するG線上のアリアの響きは天上のように調和し、
桑田歩さんのベースの美しさに聞き惚れた。
(自分でも何回か演奏したことあるけど大変難しい・・・)

会場はプラネタリウムということもあって、音楽に合わせて
円天井には様々な星座や宇宙の写真などが映し出されていった。
その分、会場の光は殆ど落とされていて、オペラの演奏席のように
楽譜を照らすライトだけが4人の姿をぼんやりと照らしている。
演奏を見るのはあきらめて、音楽の響きに聞き入った。
とてもアマチュアでは聞くことができない、見事に調和したアンサンブルだった。

小さな会場を埋めている人の多くは、プラネタリウムのある科学館の
会員らしく、会員パスで入場している方もいる様子だったが、3回目となった
「ラ・クァルティーナ」の演奏を誰もが楽しみに来ている様子だ。
もっとも、その驚くほどソフトな響きに心地よい眠りに着く人も多かった

前半はクラシックだったが、休憩後はタンゴ尽くしのプログラムだった。
チェロアンサンブルとタンゴは非常に相性がいいと感じた。
チェロが4人のはずなのに、バンドネオンやギターが混じっているのでは?
と何度も感じたくらい不思議で素敵な響きだった。
真面目なN響・・・というやや固定観念があったからか、
こんなにお洒落な演奏をするんだ~と驚いた。

閉演後は、ショップの前に4人がテーブルについてCD購入者への
サイン会が行われた。

めったにない機会なので、全員のサインをCDに書き込んでもらい
藤森さんには握手してもらった。
「主席チェリストの手ってどんなだろ~」と密かに思っていたけど
鍛えられたプロの手は、柔らかく厚い掌だと感じた。


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3.11のマーラーを見て

2012年03月11日 00時13分46秒 | コンサート

昨年の3.11夜7時15分 すみだトリフォニーホールで新日本フィルの演奏会が決行された。
ダニエル・ハーディングのmusic partnerデビュー演奏会で、曲目はマーラーの5番。

その再現ドキュメントがNHKで放映された。

3月11日2時46分に大震災が起こったとき、楽団員の多くは楽屋に集まっていた。
すみだトリフォニーホールも大きな振動に見舞われてた。
ホールの安全確認ができ、4時過ぎには、
「一人でもお客様が来れば演奏しよう」と開催を決めた。
1800席以上あるチケットは完売していた。

この段階では指揮者は到着していなかった。
楽屋のテレビで、想像を越える被害が出ていることは団員も知った。
団員何人かの家族は被災地にいた。
「こんなときに開催するのか・・・」と思った楽団員も多かった。

指揮者のハーディングは日本橋で地震に遭遇していた。
ホルン奏者の一人は新橋駅からホルンを背負い会場に向け走り出していた。
(結局飲まず食わずで2時間以上を走り続け開演45分前に到着した)

演奏会前にゲネプロが開かれた。
コンマスはオケの音が萎縮していることを感じていた。
そこにハーディング登場した。
36歳の彼が動揺していないことを見て楽団員の気持ちは固まった。
(彼は『自分は一人ではなかった、音楽をする皆がいたから』という)


結局その日集まれた聴衆は105人。楽団員は90数人。
演奏開始段階では聴衆は全員到着していなかった。
2時間半歩いてきたおばあさんは第3楽章に間に合った。

こうして3.11のコンサートは始まった。
第一楽章は葬送行進曲。数奇な邂逅といえる。
トランペットのソロから普段ではない力により奇跡の演奏が実現した。

ハーディングは語る
「みな信じられない集中力を示した。オーケストラは命を懸けて演奏していた。
全員が100%音楽に入り込んでいた。生涯忘れられない演奏となった」

その夜、帰宅困難者となった聴衆と楽団員はホールに泊まった。


この放送を見ていて気付いた。
この日集まれなかった聴衆に呼びかけ、
6月20日にハーディングによるチャリティーコンサートが行われた。

その日僕はこんな背景も知らぬまま、彼らが演奏するマーラーの5番を聴いた。
知っていればもっと違った感想を持ったかもしれないが、素晴らしい演奏だった。

コメント (4)
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