日々茫然

猫・本・アート・日常生活などを、つれづれと思いつくままに記録

『都市伝説セピア』 朱川湊人

2006-04-30 | 本と漫画の話

先日、直木賞受賞作収録の『花まんま』を読みました。
まずまずだったので、デビュー作収録の『都市伝説セピア』も借りてみました。

私はこっちの方が断然好きです。
『花まんま』は、作品ジャンルとして、主人公が不思議な体験をする物語、という程度の認識だったのですが、本の作者解説を読むと、本来ホラー作家としてデビューしていたのですね。
そう思いながら『花まんま』を思い返すと、ホラーテイストは薄かった気がします。

『都市伝説セピア』では、1番目の「アイスマン」で、なるほどこれはホラーだ、と納得。
内容も面白かった。『花まんま』では一番ホラー色が濃かった「妖精生物」に近い暗い雰囲気を漂わせながら、読後感は「妖精生物」のようにモヤモヤしませんでした。
決して「めでたしめでたし」な話ではないのは同じなのに、不思議です。

でも一番良かったのは2番目の「昨日公園」でした。
主人公の少年は、親友を事故で失います。翌日、いたたまれず家にじっとしていられなかった少年は、お通夜の時間まで隣町の図書館で時間をつぶし、その帰り道、昨日親友と遊んだ公園の前を通りかかります。
そこへ、昨日親友と遊んだ後、家へ持ち帰って机の中へ入れておいたはずのボールが転がってきます。驚いて拾い、公園へ足を踏み入れると、目の前には死んだはずの親友が…主人公は、昨日へタイムスリップしてきたのです。
昨日、親友は自分と別れた後、帰り道で事故に遭いました。主人公は、なんとか親友を救おうとします。しかし…


ホラーとは違うSFチックな話で、雰囲気は「花まんま」に近いですが、もっと最後がすっきりとして良かった。設定としては目新しくはないですが、共感できたし、良し。
ラストはちょっと泣けました。

その他の「フクロウ男」「死者恋」「月の石」も、それぞれテイストは違いますが、面白かったです。
私は『花まんま』より、『都市伝説セピア』をおすすめしたいです。

コメント (6)
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