シェ・イリエのお気に召すまま

旭川にある自然派フランス菓子店シェ・イリエの店主の独り言を綴っていきます。よかったら、お付き合い下さい。

最近読んだ本

2007-02-25 11:40:35 | 近況報告
「打ちのめされるようなすごい本」米原万里、
テレビなどのコメンテーターで時々、拝見していたロシア語通訳者、エッセイスト、作家。
多才な人でしたが惜しくも2006年5月逝去なされ、あの軽やかに世相の本質をつく言葉を、もう生では聞けなくなりました。この本の各ページをランダムに読んであらためてこの人の理性、感性がすごいと惜しまれます。手元に置いておくべき本で、10年たって見ても脳細胞に新鮮さを送り届けてくれそうです。(最近、人はこのことを「眼から鱗」といいますね)
「凍れるいのち」川嶋康男、北海道山岳史上最大の惨事、昭和37年12月北海道学芸大学函館分校山岳部パーティー11名が冬山合宿で大雪山縦走をめざしたが、10人が遭難死亡、ただ1人リーダーの野呂幸司が両足切断の凍傷を負いながらも生還した。
その、栄光無き帰還後、詳細な報告書などすべきことをすべてした後、45年間沈黙を貫いてきた野呂氏がノンフィクション作家川嶋康男に静かに語り始めた。
いま、この社会で一番必要とされていることの一つ、「危機管理」、どんなに新聞などで大きな活字で出ていてもありふれた言葉にしか感じないのと対照的にこの本だとリアルに感じられるのは、いったいなぜだろう?
すべての価値観が経済という尺度に置き換えられそうな中で、人の命の尊さ、1人残ったリーダーがそれを背負ってどう生きて
来たのか。「打ちのめされたすごい本」でした。