シェ・イリエのお気に召すまま

旭川にある自然派フランス菓子店シェ・イリエの店主の独り言を綴っていきます。よかったら、お付き合い下さい。

最近読んだ本 2008-11月

2008-11-03 14:23:16 | 最近読んだ本
久しぶりの「最近読んだ本」
「赤めだか」立川談春 エッセィです。さすが、粋が命の落語家のエッセイ
読後感がいいです。
2008年講談社エッセイ賞 本の雑誌2008年上半期エンターテイメントベスト1
よく売れているようです。

立川談春の自伝、青春記といったところで、落語の世界のしきたりが垣間見られます。
師弟関係に関しては、どの世界も同じようで、わかる部分も多少あります。
第三話 「談志の初稽古、師弟の思い」の中のでのいろんな出来事は、
自分が師匠と一緒に働いていたときの緊張感を思い出します。

私にとっても師匠は常にある意味、恐怖の対象でした。著者は、それに加えて、家元 談志を「揺らぐ人」と言っている。
もし、自分がありすぎたら「揺らぐ人」について行くことはできないだろう。

私が師匠と一緒に飲んだとき、「最初に先輩から、『おまえは何にも知らない北海道からきた田舎ものだからな』と、言われ、すべてを否定されるところから始まった。」と自分の修業時代のことをボソッと言っていました。
おそらく、今の多くの業界では、もう通用しないし、若い人もその親も、理解できないことだろうと思います。


職人を育てることの難しさは、この本を読んでも感じます。
でも、ジャズやこの落語のように、しっかりと大切な心を継承して今日、未来に
繋げていかなければならない世界に、きちんといい人材が居る現状を見るにつけ、
自分たちの世界もがんばらなければといつも思います。

おかげで、急に落語に興味が出てきました。たまさか本屋に行くと
たまに買う「男の隠れ家」の今月号が落語特集でつい買ってしまいました。
表紙は期せずして今回の本の著者 立川談春の兄弟子の、立川志の輔

家元 立川談志というのはすごい男です。


最近読んだ本 2008

2008-01-16 19:21:34 | 最近読んだ本
今年初のミステリーは「赤朽葉家の伝説」桜庭一樹
山々を漂泊する”辺境の人”たちから山陰のとある村に置き去りにされ、村の若夫婦に育てられた万葉、彼女には未来が見えるという不思議な能力が備わっていた、やがて村の名門、赤朽葉家の総領息子の元へ嫁ぐ、そこから女系三代にわたる愛憎劇が語られる。
腰巻きにあるように今年度「このミス」の2位で日本推理作家協会賞も受賞
雰囲気があります。それぞれの名前の付け方に独特の雰囲気を出すセンスの良さを感じます。人物が皆、魅力的で主人公の言った言葉の意味が何なのか最後まできになり
終盤、ああこうなのかと思わせます。ホラーなのかファンタジーなのかミステリーなのか解らないが重厚な読後感がたまらない、クロスオーバ-な一冊でした。

最近読んだ本 2007秋

2007-10-12 18:08:31 | 最近読んだ本
警官の血 「佐々木譲」新潮社 上下巻
騒然たる時代、世相の中、警察官として生きた三代のそれぞれの人生を描いた警察小説の最高峰、   と腰帯にあり、「そんな大げさな、」と思ったけれど、
二日かけての単行本上下巻怒濤の一気読みでした。
戦後闇市の時代に始まり、全共闘、現代の経済犯罪と昭和から平成にかけての時代の
陰の部分を、生身の人間を通して鮮やかに描ききっています。
今年の和ものミステリーナンバーワンでした。

最近読んだ本 

2007-04-28 19:47:03 | 最近読んだ本
シャトゥーンヒグマの森(増田俊成)2007年の「このミス大賞」あらすじは北海道の研究林を管理する学者や親族が年末年始を仲間で過ごすためその林のなかの小屋ですごそうと集まった。そこへヒグマに襲われたという密猟者が逃げ込んでくる。やがてシャトゥーン(穴持たず)の350キロのヒグマが現れる。
ひぐまの害の読み物は良く読みます。一番最初は「羆嵐」あと福岡大学のパーティー遭難の記録、「邂逅の森」、どれも非常に生々しく原始的な恐怖が感じられるものでしたが、この本はスプラッター映画を見ているような印象です。迫力ある冒険小説ではありますが何かが足りない気がします。なんだろう?
青に候(志水辰夫)
最近この人ものを良く読みます。大人の人とゆっくり神楽坂あたりで、ぬるい燗を飲んでいるようなそんな感じがしますヘミングウエーの短編のようなハードボイルドな文体の中にも日本人らしさが感じられる文章でこの本の冒頭
「朝霧が立ちこめていた。何もかもぼんやりかすんでいる。」なんかで始められるともうだめです。作者初の時代劇、理不尽な世界を描かしたら天下一品。