MONOGATARI  by CAZZ

世紀末までの漫画、アニメ、音楽で育った女性向け
オリジナル小説です。 大人少女妄想童話

スパイラル・スリー 第六章-4

2014-03-08 | オリジナル小説

           神月に戻って

 

さっきのはなんだったのかにゃ)ドラコは足早に駅方向へと歩き去るデモンバルグを見下ろす。アギュの指示により、今度はかなりの距離を取っている。

やくざものが二人、後を追って行くがあまりうまくはない。

(あのおじいちゃん、デモンバルグを掴えたみたいなのにょ。でもすぐ、放したにょ。これはどういうことにょ?あのじいちゃん、何者にょ?

アギュは深刻な顔で考え込んでいる風情だった。

なるほど・・・]アギュはつぶやた。[なるほど]もう一人も言った。

ガリュウのホウライと言いましたか。][聞きオボエがあるな。][はい。

霊能者かなんかにょ?)ドラコの問いにアギュはうわの空のようだった。

ウラ世界のフィクサーってとこですよ。]それでも一人が説明してあげる。[クロマク。たいては悪いヤツです。](ふ~にゅ。)ドラコはパチパチと瞬きした。(アギュは知っているのにょ~そのこと、ドラコに言っていいか迷ってるにょ?聞いてもいいのかにゃ?

ああ・・・]どちらかのアギュがやっと気が付いたみたいに[ボセンの方に、ここにいるチョウサインから要チュウイ人物とホウコクされていたヤツだ。表にナマエが出て来たのはここ60年ぐらいだが。どうやらナグロスが会ったことがあるらしいぞ。

ってことは密航者なのにょ?)[かもな。

面倒くさいヤツが面倒なヤツとセッショクした。こっちはオレ達の担当ではないはずだっていうのに。][狭いホシの上ですからね。]アギュレギオンのため息を聞きながらドラコは状況を自分なりに整理しようとする。これは母船の担当ってことはガンちゃんがあれこれ頭を悩ますことにはならないってことにゃ。でもデモンバルグはアギュの担当だから・・・ひょっとするとひょっとするにゃ?ガンちゃん待望のきな臭い話とアクション担当大活躍の予感にょ!

[もういいですか、ドラコ。」唐突にアギュが切り替える。

「・・・ジンはジタクとやらがあったとしてもまっすぐ帰るかわかりませんし・・・オタク訪問はまた今度にしましょう。]ドラコも気持ちを切り返す。

処理すべき情報が多過ぎる。何も見なかった、聞かなかったことにしようっと。

(ドラコ、悪魔が昼寝したりテレビみたりしてるのとっても見たかったのにょ・・・すんごく残念なのにょ~)

そう未練を滲ませるドラコを促すとアギュは新宿の上空から後退する。

ドラコもそれに従った。

 

 

アギュとドラコ。2人は神月の屋敷に戻った。実際、アギュは疲れていた、自身がいくらかやつれたようにさえ感じる。ドラコの言う、お腹の空いた状態なのかもしれない。ドラコの方は今だに空いてなさそうだが。

(今度は香奈恵ちゃんの様子を覗きに行くのはどうにょ?)

飽くことないドラコにアギュは首を振った。

[それは・・どうでしょう。若いお嬢さん達が親元を離れて自由奔放な振る舞いに及んでる所業を覗き見てもねぇ・・・なんだか、マナー違反な感じがしませんか。嫌らしいスケベゴコロからだと誤解されかねませんし。]

(確かにのにょ~。ガンちゃんに知れたら怒られるのにょ。香奈恵ちゃんに知れたら殺されるのにょ~。それにジンと違って確かに刺激がないにょ。基本、竹本にいるのと変わらないに決まってるのにょ。)よく考えたらあまり旨味もなかった。

[では、私は・・部屋に戻ります。この間もですが、ユリは直感でワタシが何かおかしいのをさっしている気がします。それにあんまり頻繁に自分を拡散していたらそのうち、カラスやタトラにまで気付かれるかもしれません。]

そしてもっと面倒なものにもだ。小惑星帯にいる母船。先ほどから話に出ている母船の部隊は筋金入りのニュートロン達であり、アギュよりは下位にあるがイリト・ヴェガ直属の指揮下にある。すなわち、アギュ達上陸部隊の監督者だった。

(わかったにょ。ほんのちょっとでも隠密潜航作戦は楽しいにょ。今回もガンちゃんには秘密なのにょ。アギュが、試したくなった時はガンちゃんからも付かず離れずにドラコがお供できるのにょ。)

[またお願いしますよ。お互い釣り合った丁度良いメモリーみたいですから。仲良く、訓練しましょうね。]

(この次こそ、デモンバルグの裏の私生活を暴くのにょ!楽しみにょ。)

あくまでガンちゃんとの契約の範囲内でと思いつつも、ドラコはほくそ笑んだ。

(だけどにょ、アギュがガンちゃんに悪いことしたらすぐに通報するのにょ。その辺は容赦ないのにょ。それは言っとくのにょ。)

[・・オレがガンダルファに言いつけるって可能性もあるぞ。]

意地悪そうな顔のアギュがベッドの上で物理的肉体と密度を濃くして行く。

(にょ?)それを見守り、ドラコは再び首を傾げていた。

(やっぱり、アギュはちょっと捕らえ所がないのにょ~)

 

ガンダルファは自分の相棒がのそのそと意識の隅を横切るのを感じた。

『おい、遅いご出勤だな。』

(にょ~)ドラコは洗濯機にタオルを入れていたガンダルファの肩の後ろから出現する。子供達は既に洗面所から服が乾くまでと台所に向かって姿がない。お菓子と飲み物をあさるつもりなのだ。

天使とタトラが引率していくのをガンタは見送ったばかりだった。

『いつまで寝てんだよ』(寝る子は育つと言うにょ?)

『おい、アギュはどうしてる?』(どう?どうって、ドラコ知らないのにゃ)

『じゃあ、そろそろ起こして来いよ。』ガンダルファは蓋を締めスイッチを押す。

『いい加減、ガキンチョの相手をしてもらわないと。オレらばかりこき使われてさ。』

(そうにょ~)『なんだよ、早く行けよ。』

(もう、アギュは来ると思うのにゃ。たぶんにょ、きっと来るにょ。)

『起こして来いって言ってるだろが。天使の野郎がしきりにまた、アギュを気にしているってタトラが意識下で言うんだよ。面倒くさいから起こして来い。』

(言わなくても来るって言ってるのにょ~)

なんだか、後ろめたいドラコであった。

確かに上で床が軋む気配がする。『起きたのかな。』ガンタが天井を見上げる。

(起きたのにょ。だからもういいにょ~?)

いそいそと消えるシッポをガンタはブスッとして見守った。

なんだ、あいつ。アギュを起こしたくないのか。まぁ、アギュが好きってわけでもないだろうからな、でも。なんか変だと思ったがすぐに忘れる。

台所から聞こえて来る騒がしさの方が気になる。食器がまとめて落ちて割れたようだ。なんだあいつら、またなんかやらかしたのか。まったく、なんて目の放せない手間のかかるガキどもだ。天使とタトラじゃ、手に負えないのかよ。俺がいないとダメか? まったく、休ませて欲しいよな。お手軽な任務のシドラがうらやましぜ、ほんと。温泉なんか枯れちまうといいのに。

そうブツクサ言いながら廊下で足を速めた。

 

 

           アギュと418

 

アギュはベッドの中で自分の重さを感じながら目を開いていた。

壁の時計に目をやる。1分、いやおそらく1秒も変わってはない。この方法にはまだまだ、慣れが必要そうだった。それにしても。

アギュは身を起こす。先ほどの意地悪な影が少しその頬にある。

「ジンはほって置いて大丈夫だ。」

「大丈夫でしょう。」すぐにもう一人のアギュが答える。アギュの中に解け合ったカプートと呼ばれたアギュレギオン418。ユリの本当の実の父親である。

「ジャマにはならない。」とアギュも確認するようにつぶやく。「の、はずだ。」

「カレはまだ、ワタシ達のハアクできる範囲内にいますから。例え、何かあってもタイショできますよ、イマは。」

そうだな・・・とアギュは眉を寄せた。

「テンシも同じです。カワイソウに一生懸命、毎日毎晩ワタシ達を見張ってて。カワイイものじゃないですか。」床に足を降ろす。

「それよりも、問題はキライムラの方か。」

「ムラビトが隠れているバショはシドラ・シデンにも既に見当がついていますが・・・」

「・・・ガリュウのホウライか。ホウライはおそらくシンカタイ。」肉体が見を起こす。「ムラとは深いカンケイがあるようだな。」

「そう、ホウライとキライリサコ。ホウライは近いうちに、ボセンからハイジョされるはずだ。」

「そしてミズラ。」アギュは早口になる。

「そうミズラ、アイツだ。村の方はあのワカゾウが指揮をとっている。もしも本当にヤツもシンカタイだとしたら・・・」

「ウチュウクウカンではなく、ワクセイ上で産まれた始めてのジレイということになりますかね。」

「ヤツがケイショウシャではなく、オリジナルであるというカノウセイもな。」

「疑うんですか?」

「オマエらしくもない・・・ケンショウもせずにアタマから信用しようなどど。単純なガンダルファと一緒じゃないか。」

「いいじゃないですか。もしそうならば、ダイハッケンですよ。おマツリです。もし、ワレラの偉大なる上司、イリト・ヴェガがあのワカモノの存在を知ったとしたらフフフ、感謝感激、泣いちゃうかも・・・報告しますよね?。」

「ふん。」アギュは鼻で笑った。「オレがわざわざすることない。もうそろそろ、知ってるんじゃないのかな?」

「600光年の同調・・・知ってますかね。」

「さあな。とにかくあのムラビトがボケツを掘ったのはマチガイない。こうなったらダレもカレも捕まえシダイ、ケンサ対象だ。レンポウのケンキュウジョに送り込んでやる。」

もう一人は目に見えて逡巡する。「そんな・・・それをワタシ達がするのですか?

ケンキュウタイショウでしかないワタシ達が。」

「ジョウダンだ、418。」

アギュは滑るようにドアへと向かった。

「オレがそんなことすると思うか?レンポウなどクソくらえだ。」

「ただ、そのことをカレラに伝えるスベはありませんね。」

アギュはため息を付いた。

「もうやめましょう。ガンダルファはユリ達に手を焼いてるし、ワタシ達を呼んでいる・・・」

「オレに子守りをしろってか。冗談きついぜ418、オマエに任せる。」

「わかりました。フロントマンは、ほぼワタシですから。」

しかし、ドアを開いたアギュの手はなぜか止まったままだった。

「ガンダルファ・・・ですか?」

418の問いにうなづく。

「ダメだ、やはりあのワカゾウ・・・シドラとナグロスだけじゃ手に余るヨカンがする。」

「それでは、ますます。」アギュが肩頬で微笑む。

「ベビーシッターがいりますね。」

「抜かせ。」アギュもガンダルファを追うように階下へと向かった。


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