Diary of Caviargirl

ホラー、ゾンビ、チェコ、虫、ヤドカリ、コマ撮り、ピンクな物事…キャビアガールの好奇心日記。

ポゼッション

2005-07-01 02:21:27 | movie
アンジェイ・ズラウスキー監督の『ポゼッション』を観ました。
昔、サム・ニールにハマっていたとき(『ジュラシックパーク』公開時)、観ようと思いつつも、結局観なかった作品。
何となくDVDを借りてみたら、これが、とんでもなく凄い映画だった!

長い単身赴任を終えて妻のもとに戻った夫と、他の男のところで暮らすと家を出て、何かに憑かれたように振る舞いだす妻の壮絶な愛と狂気の物語。
ジャンル分けするとしたら、オカルトになるのかしら。
最初から最後まで狂気にもだえる人妻=イザベル・アジャーニ。それに引きずられるようにして心と体のバランスを崩していく夫=サム・ニール。二人とも恐ろしくも美しい。魂のあやつり人形のごとく、痛々しいまでに加減をせずに体を使った演技が良かったです。

水色がかった冷たい映像は、人々を人形のように、血を作りもののような鮮やかさで映し出していて、ほんとうに綺麗でした。不穏な空気を煽るカメラワークも素晴らしい。登場する建物も程よい異世界感があり、ビジュアル的にもかなり心臓わしづかみにされました。

この映画を解釈するのは難しいけれど、
主人公の魂が叫び出し、痛みや欲望を訴えていて、それを何とか肉体で表現しようとするんだけど、うまくできない-それでバタバタもだえ、自分や人を傷つけ、次第に肉体と魂のバランスが崩壊してしまった様子を描いているように感じました。
アジャーニの瞳はすごい。どこまでも青くて、魂の底まで透けて見えそうな。ピュアさと狂気が背中合わせでくっついている感じ。

噂の、体中から溢れ出してくるミルク状の体液の中を這いずりまわるシーンと、タコ型クリーチャーとのセックスシーンは、やはり衝撃的。でも、全体を通してショッキングなシーンがてんこ盛りなので、そこだけずば抜けて、という感じでありませんでした。

ピンクの靴下の意味は? バスタブに飛び込んだ息子はどうなった? 紫色の閃光に照らされた学校の先生はいったい? ・・・謎は無数に残っていますが、こういう映画は、あまり深く考えず、ただそのまま受けとめることにしています。とにかくグロテスクで美しい。悲しくて壮絶。それが全てです。

この映画、私の生まれた年に製作され、このときアジャーニはなんと今の私と同じ年! 何を思ってこの役を演じていたのだろう。今まで彼女が出ている映画はあまり観たことがなかったけれど、これを機に何本か観てみようかな。