SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

GREGG KALLOR「There's A Rhythm」

2007年04月23日 | Piano/keyboard

「Every Time We Say Goodbye」、ああ、なんて美しい曲なんだろう。
コール・ポーターの作曲だ。タイトルだけでもじーんとくる。ジャズにもっとも適した曲名の一つだと思う。
そういえばビル・エヴァンスの名演のひとつに「I Will Say Goodbye」という美しい曲があるが、Say Goodbyeときただけで何だか感無量になってしまう。これはあまりに単純すぎるかもしれないが、このタイトル名を聞いて何も感じない人は不幸な人だ。英語ができるとかできないとかの問題ではない。何となくでも雰囲気を感じ取れるかどうかの問題だ。これが感性である。
要するに全てはこの「感性」なのだと思う。
道ばたに咲く花を見て美しいと思う心、崩れかけた土壁を見て遠い過去に思いを馳せる心、夕暮れ時の空を見上げて遙かな未来を見つめる心、こうした私たちの思いは、全ての人における行動の原点である。これが少ない人は行動範囲が狭く、つまらない人生を送ることになる。逆に些細なことにも感動できる人はイノベーターの素質があると同時に、幸せな人生を送れる人だ。

グレッグ・カラーという青年がどれだけの人間か私は知らない。知らないが限りなくイノベーターの素質がある人だと思ってしまう。
思わせぶりな雰囲気のあるジャケット。顔を無理に出さないところがむしろ好印象だ。顔で売ろうとする一部のミュージシャンはどれもこれも底が浅い。
そして何より選曲である。「Every Time We Say Goodbye」の他にも「So In Love」、「You're My Everything」と趣味がいい。また自作曲も多く、「The Voice Of Reason」、「Lost」、「The Last Word」などからは彼のセンスの良さが伺える。
最初はそれほど印象には残らなくてもじっくり何度も聴いてほしい。ジワジワとその良さがにじみ出てくるアルバムだ。