この季節に合ったさわやかな一枚。
タイトルがグリーン・グローヴということもあって、木立を抜ける風のようなピアノトリオである。
「音で色の再現はできないよ」などという夢のない人とは話したくない。ジョン・ステッチが色をイメージして音世界をつくっているのだから、僕らは目を閉じて自分なりの色でそのシチュエーションを思い描けばいいのだ。それがうまくできた人にだけ爽やかな風が吹き抜けるだろう。
このアルバムが爽やかに聞こえるのには訳がある。
やたらと録音がいいのだ。これはオーディオファンには周知の事実で、このメリハリの利いた音を聞きたいがためにこのアルバムを探している人も多い。確かにそれぞれの楽器の持ち味が存分に出ている。ピアノは一音一音の粒立ちがいいし、ベースがゴリンと鳴る瞬間や、シンバルとスティックがこすれる音もうまく捉えられている。こんな音を聴くと、もっともっといい再生装置がほしくなる。おっと危ない、危ない。
推薦曲は2曲目の「Chips For Crunch」と5曲目の「Body And Soul」。ラストを飾るピアノ・ソロによる「Zabava」も熱演だ。
誤解しないようにいっておくが、爽やかな風といっても夏のそよ風とはちょっと違う。まだ肌に冷たさが残る早春の風だ。