SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

DONALD BYRD & PEPPER ADAMS「MOTOR CITY SCENE」

2007年04月19日 | Trumpet/Cornett

モーターシティとは自動車産業で有名なデトロイトのことだ。
しかしデトロイトはソウルミュージックのモータウン・レコードも一世を風靡したように音楽の街でもある。事実この街出身のジャズマンは数多い。その代表選手が一同に集まってプレイしたのが本盤である。

ジャズの世界にはどうやら「白いジャズ」と「黒いジャズ」があるようだ。
我々のイメージではアメリカは黒くヨーロッパは白い、アメリカだけを見ても東海岸は黒く西海岸は白い、といった分け方が一般的だろう。これは単純に人種の違いということに留まらず、音楽に関する考え方の違いがそう呼ばせているのではないだろうか。そう考えると淡泊なのが白いジャズで、粘っこいのが黒いジャズ。或いは軽めの音が白いジャズで、重い音が黒いジャズなのかもしれない。

因みにデトロイトは黒人の多い街だ。だからソウルミュージックにも花が咲くわけだが、このアルバムの出だしがこのアルバムの色を決定づけている。何とこの出だしの曲は「STARDUST」である。それだけ見れば白いイメージの曲なのに、ドナルド・バードが吹くトランペットの音は限りなく黒に近い。まるで黒人霊歌を歌い上げているようだ。しかもポール・チェンバースの弾くベースの音が思いっきり重い。
その後の曲にはペッパー・アダムスやケニー・バレルといった白い面々が登場してくるが、黒い印象はどこまでも続く。
出だし数秒で白いキャンバスは黒く塗られたのである。一度塗られるとなかなか白くはならないものだ。