英会話の先生から、メールがやってきた。
少しの間、レッスンを休ませてほしい。
家族に緊急事態が起こって、おうちに戻らないといけない。
電話をかけて事情を聞いてみると、叔母さんが癌で難しい状態になっていると
言う。
彼は日本語学校に通いながら、日本の大学院を目指している。
プライベートカフェレッスンで生活費を賄っている。
彼の口から、生活が苦しいと聞いたことは無かったが、察する事は出来る。
私には彼と同じ年の年の離れた弟がいる、そのせいか?
それとも、関西人のおばさんは東京にお嫁に来ても、”おせっかいなおばさん”
に見事に成長を果たしたのか?
開口一番口にしていた。
”Do you have money? Can you get a ticket?”
彼は、ルームシェアしている友人に少し、お金を借りたらしい。
私は、平日レッスンを受けた事は無かったが、彼は帰国するまでの一日を使って、レッスンを受けることによって、彼の旅費の足しにでもなればと、急遽レッスンをお願いした。
彼は、げっそりとしていた。
”僕は、どうしたらのいいの?お医者さんでも無い、医学の知識があるわけでもない?僕は叔母さんに何がしてあげられるんだろう。昨日一生懸命考えて、今日一日千羽鶴作ってたんだ。一つ手伝ってくれますか?”
そう言った、彼は折り紙を私に差し出した。
私がカフェに来る間も、一人で鶴を折っていたようだ・・・・
二人で、一つづつ鶴を折った。
”なんで、千羽鶴なんだろう?
調べたけど解らなかった。
でも折っていると、少し解ったんだ。
叔母さんのことを一生懸命、想ってた。
鶴を折るって、想いを籠める行為なのだなぁ。
そして、すごく、静かなんだ。
早く、帰りたいのに、帰れなくて・・・いらだったり、不安だったけど。
静かに時間を過ごす事が出来たんだ。
千羽折れるかな・・・?”
”千羽無くてもいいのよ、数字は重要じゃない。
あなたの想いが大切なの”
”私達も、あなたに何かしてあげたいの。あなたの大好きな日本人の伝統的
なやり方を考えたの。”
よしおさんと考えて、お見舞い金をきちんと、お見舞いのし袋に入れて。
きちんとお名前を書いて渡した。
”どんなメッセージか、見てもいい?・・・なんで?”
お金を見て、びっくりしてた。派手なメッセージカードだと思い込んでいた。
”日本のよい、文化よ。日本人なら、当然の行為よ。”
”僕はどうしたらいいの?”
”あなたは、おばさんの所に行って、彼女に沢山あなたの力を渡してあげて、
あなたに会えて嬉しくなったら、体も少し楽になるかもしれない。
彼女を抱きしめて、あなたの力を分けてあげて。それでいい。”
テーブルには、のし袋と色とりどりの鶴。
私は、当たり前だった日本の文化を、改めて感嘆の思いで見つめ直した。
ひとしきり、二人で静かな涙を流した後の3時間後・・・・
私達は、関西人のおばちゃんのように今度は、裸のお金を押し相撲。
”あかん、ちゃんとレッスン料払う。3時間もあなたの時間を使ったんだから、
受けっとって”
”だめだよ、僕は、あなたと話せて心が楽になって、すごく幸せになって、
レッスン料なんか、もらえない”
英語と関西弁どっちが勝つか?
もちろん、関西人のおばさんに勝てる訳が無い。
なんだか、ちょっと素敵な恋の始まりのようなストーリにも思える?
残念ながら彼はゲイです。
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